肝炎・肝臓病

2023/11/21

肝炎・肝臓病

肝臓病の特徴:肝気鬱結と倦怠感だるさがメインで、その他、くよくよする・イライラしやすく、黄疸・胸脇苦満・肝臓が腫れて触れる・食欲不振・目が疲れ易く・眼痛・手足がつり易いなど。

肝気鬱結(肝鬱)の症状:気滞の特徴として浮腫は脹った感じをともない、気滞では浮腫は圧してもすぐに戻る。同時に胸脇部が脹って苦しい(胸脇苦満)、ため息が多いなど。

肝気鬱結では、さまざまな神経症が現れる。くよくよする、厭世的えんせいてき、楽しくない、晴れ晴れしない、孤独感などを現すなど、鬱証やヒステリーに出現する症状に半夏厚朴湯は適応する。

肝気鬱結の軽症には加味逍遙散;肝鬱化火でイライラする(肝火上炎の軽症・肝陽上亢)・脾虚・湿邪・血虚:柴胡 芍薬 薄荷 当帰 牡丹皮 山梔子 茯苓 白朮 生姜 甘草:処方量が多いと足が逆にひどく浮腫むので注意して少量1/2の処方とする。

肝気鬱結の重症では肝鬱化火となり、くよくよではなく、イライラが強く、肝火で熱状がでてくると、大柴胡湯や竜胆瀉肝湯を使う。

大柴胡湯:肝火上炎・肝気鬱結・胃実熱・胃熱のため心下痞硬が特徴。柴胡6 黄芩3 白芍3 半夏4 生姜4 大棗3 枳実2 大黄1(心下痞硬は上腹部の脹りで、胃熱が原因)。

竜胆瀉肝湯:肝と胆は表裏をなし、胆は少陽に属し、少陽の経脈は耳中に入り、脇肋をめぐり、肝胆熱盛により清竅が閉塞すれば耳鳴・耳聾・耳腫が生じ、熱が経脈に塞がって阻滞すれば脇肋は痛む:瀉火・利湿・補血:竜胆草 柴胡 黄芩 山梔子 木通 車前子 沢瀉 当帰 地黄 甘草。

通草つうそう(木通)で、陰陽を通じさせて血脈を利する。

食欲不振の肝炎では、六君子湯・参苓白朮散を使い、慢性では腎虚・瘀血なので六君子湯合真武湯・参苓白朮散合真武湯・六君子湯合真武湯合桂枝茯苓丸。

脾虚に八味丸を使うと悪化するので真武湯を使う。

六君子湯:補気健脾・理気化痰:六君子だが六味ではなく八味である(乾生姜・大棗はよく記載が省略される):人参4 白朮4 茯苓4 甘草1 乾姜0.5 大棗2 半夏4 陳皮1:半夏・陳皮は行気・化痰作用。

参苓白朮散は、慢性腎炎で尿中に蛋白があり、久しく消えないものは、脾虚して精微を摂納できない者として、慢性腎炎にも応用できる。

参苓白朮散:補気健脾・理気化湿・止瀉:党参 白朮 茯苓 炒白扁豆 炒山薬 薏苡仁 蓮子 陳皮 縮砂 桔梗 炙甘草:消化不良・泥状便・水様便・カゼの嘔吐・ノロウイルスの嘔気・嘔吐。

真武湯しんぶとう:附子1 茯苓5 白朮3 白芍3 生姜3:

回陽救逆・温陽利水。

蓄膿で、脾虚が強い場合は、脾虚の薬を一緒につかわないとなおらないし、慢性病化した時は、瘀血と腎虚をともなうので、駆瘀血薬の血府逐瘀湯や桂枝茯苓丸と半夏白朮天麻湯や六君子湯や参苓白朮散と補腎薬の真武湯を使う。

肝陰虚は、腎陰虚をともないやすく、肝腎陰虚となりやすく、肝と腎は関係が深い。

肝陰虚:清骨散加味:過度の疲労や肝病の持続のため陰血が消耗して五心煩熱が生じ、肝陰が虚して肝胆火旺をともないやすく症状は口渇不欲飲・浅眠・疲労倦怠感・脈弦細数。

五心煩熱;五心:掌心・足心の裏・胸の五カ所の火照った熱苦しい熱感で、疲労の蓄積により津液不足となり火照る。

慢性腎炎の半分は脾虚が原因で胃腸を丈夫にする必要があり半夏白朮天麻湯や六君子湯や参苓白朮散などを使うが、慢性なので真武湯を併用する。

肝炎でも腎炎でも、胃腸が弱っている疾患(脾虚)は多いので、参苓白朮散や六君子湯を使うことが多いが、慢性では真武湯を併用する。

六君子湯はすぐには効かない体質改善薬である。慢性の小児喘息やアトピー性皮膚炎(当帰飲子)は、柴朴湯や六君子湯で脾虚を治さないと治らない。柴朴湯の長期使用は陰虚の発生に注意する。

当帰飲子とうきいんし:補血潤燥・止痒:血虚生風:当帰5 芍薬3 川芎3 地黄4 白蒺蔾3びゃくしつり 防風3 何首烏2かしゅう 荊芥1.5 黄耆1.5 甘草1:四物湯が入っているので赤味や熱感の炎症・浮腫・湿潤の皮膚炎には適さない。

蒺蔾子しつりし・白蒺蔾・刺蒺蔾:ハマビシ科ハマビシの果実:辛苦微温:肝経:疏肝熄風・行瘀袪滞・解鬱・明目・止痒:降圧・鎮静・眼科の常用薬。

補血薬で滋腎陰薬の何首烏かしゅう:タデ科ツルドクダミの塊状根:苦甘渋温:肝腎経:滋陰・強壮・益精補血・緩下・養血熄風:夜交藤(タデ科何首烏ツルドクダミの蔓茎:安神・養血活絡)。

荊芥・荊芥穂:辛。温。肺・肝経: 袪風解表、宣毒透疹、散瘀止血、袪風止痙。 シソ科、荊芥の花穂をつけた茎枝あるいは花穂(荊芥穂)。 黒く炒ったものを黒荊芥あるいは荊芥炭という。

荊芥:辛微温:袪風解表・止血・消炎・咽痛には古人は必須とした:風病・血病・産後の主要薬:辛温でも燥ではない。

アトピー性皮膚炎は、脾虚を兼ねているので、当帰飲子合小建中湯とする。

小建中湯:傷寒論:裏急(疲れると腹痛)に対して緩急止痛・温中補虚・除熱(疲労による発熱を除く作用):桂枝4 芍薬6 大棗4 生姜4 甘草2 膠飴20:脾虚・腎虚・肝血虚に適応する。

小建中湯は、脾虚でも食欲がほどほどあり、食欲が無い場合は、参苓白朮散や補中益気湯を当帰飲子に合方する。

小建中湯:六味丸や八仙丸が無い場合は、小建中湯を使う。

小建中湯は、腎虚・脾虚・肝血虚に適応する:かかと痛(腎虚)・ふくらはぎ痛(肌肉は脾虚)・肝血虚で疲労すると腹痛が生じる体質に小建中湯が効く。

八仙丸はっせんがん:六味丸+五味子・麦門冬:麦味地黄丸ばくみじんきがん に同じで、人参は入っていない。

慢性となると腎虚なので、真武湯や、脾虚でなければ八味丸を合方する

肝炎で、だるさが強ければ、補中益気湯・補中益気湯合真武湯。

六君子湯の適応:倦怠・懶言らんげん・食欲不振(食少)・軟便:これに自汗があれば補中益気湯。

懶言らんげん:ものうい話し方。

補中益気湯:補気健脾・昇陽虚寒・甘温除熱:黄耆4、甘草1.5 人参4 当帰3 陳皮2 升麻0.5 乾姜0.5 柴胡1 白朮4 大棗2:中気下陥・脱肛には補腎の真武湯を合方・疲れると発熱する者(小建中湯も使う)に適応。

黄疸では、茵蔯蒿湯いんちんこうとう。

茵蔯蒿湯:肝胆湿熱:胆石・胆嚢炎・黄疸・肝炎・急性膵炎:山梔子3+茵蔯蒿4+大黄1:湿熱によって、小便不利・無汗・口渇・多飲・心煩懊憹おうのう・軽い腹満・黄疸。

茵蔯蒿:カワラヨモギの幼苗ようびょう:苦平微寒:清熱利湿・退黄疸:胆汁分泌促進・黄疸の主薬。