六淫の解説

2023/12/30  2024/8/17改訂

六淫ろくいん:風・寒・暑・湿・燥・火

黄帝内経「喜は心(精神)を傷り、怒は肝を傷り、思は脾(胃腸)を傷り、憂は肺を傷り、恐は腎を傷り」

風邪の症状:発熱悪風、頭重・頭痛、鼻塞、音声重く、流涙、喉頭発痒、軽微な咳、脈浮緩、舌苔薄白、風邪は神経が侵されたために起こる疾病だという説がある。

寒邪の症状:悪寒発熱、頭項部痛、腰脊強直、全身疼痛、肌膚の粟立ち、無汗、脈浮緊、舌苔薄潤:身体冷え、喜熱、排泄物清冷、喀痰清稀、水様便、清水を嘔吐。寒邪が深部に入ると吐き気、腹痛を生ずる。

寒邪かんじゃ、が体内に侵入するツボは風門フウモンといわれている。

暑邪ショジャの症状:暑熱と暑湿に分けられる。

暑熱の症状:高熱、口渇、心煩、無汗・大汗出、脈洪大(白虎加人参湯の適応)、高熱では気虚・傷津となり、無力、呼吸短促、舌苔乾燥し、激しいものは中暑という:生脈散・生脈散合知柏地黄丸を使う。

暑湿の症状:身熱起伏、四肢倦怠、食欲不振、胸悶、悪心嘔吐、大便異常、小便赤短、脈濡みゃくじゅ、舌苔厚じ:藿香正気散を使う。

藿香正気散:和剤局方:解表化湿・理気和中:外感風寒・内傷湿滞を治す:藿香90 紫蘇30 白芷30 大腹皮30 茯苓30 半夏麹60 白朮60 陳皮60 厚朴60 桔梗60 炙甘草75gを細末とし、1回2g。

湿邪の症状:湿は重濁粘稠で、除去しにくく経過は長い(六君子湯)。肢体困倦沈重、関節痛、運動障害、食欲不振、消化不良、胸悶、悪心、腹脹、舌苔厚じ、脈濡緩みゃくじゅかん、水腫、白帯下、湿疹。

燥邪の症状:鼻孔乾燥、鼻出血、口乾、口唇乾燥し割れる、咽乾、咽痛、乾咳、皮膚乾燥、舌乾少津、燥邪は体内の水分不足の状態を指す(陰虚は体内の津液・水分・栄養不足)。

燥邪は、「涼燥」と「温燥」に分かれる。

涼燥の症状:悪感・咳・鼻閉、軽い頭痛:涼燥を温めて治す杏蘇散きょうそさん:西からのからっ風で生ずる。

杏蘇散:涼燥・風寒を温め・宣肺化痰:蘇葉1 半夏1.5 茯苓2 炙甘草0.5 前胡2 桔梗1 枳殻1.5 生姜1.5 橘皮1 大棗2個 杏仁2。

杏蘇散の温薬の蘇葉そよう・紫蘇葉:辛温:発汗解表・行気寛中・安胎・魚毒の解毒。

杏蘇散の寒薬の前胡;苦辛微寒:セリ科白花前胡の根:苦辛微寒:

下気化痰・疏散風熱:風熱が原因の咳・痰を止める。

杏蘇散の桔梗:辛平:肺経:宣肺袪痰・排膿消腫・引経上浮:桔梗石膏ききょうせっこう。

杏蘇散の杏仁は苦温で肺を利し、麻黄の宣肺平喘作用を助ける。

温燥の症状:激しい咳、口渇、舌尖紅、咽痛、胸痛し痰に血がまじる:温燥を冷やして潤す桑杏湯・清燥救肺湯。

温燥を治す清燥救肺湯:温燥・燥熱の邪による乾咳・無痰に:桑葉3 石膏5 人参1 胡麻仁 阿膠2 麦門冬3 杏仁2 枇杷葉3 炙甘草1。

清燥救肺湯の桑葉:袪痰・鎮咳・抗菌:肺熱を冷やし・肺を潤し・風熱を冷まし、清肝する:夏の暑気払いのお茶にして、イライラも清肝する。

清燥救肺湯の生石膏きせっこう:含水硫酸カルシウム:石膏:甘辛大寒:肺胃経:清熱瀉火・解渇・除煩。焼石膏やきせっこう とは別物。

生石膏:生薬石膏の主成分は、含水硫酸カルシウムです。 光沢のある白色の繊維状結晶塊で、砕くと針状もしくは繊維状の粉末となります。 石膏は東洋医学では体を冷やす「寒」の性質があるとされ、漢方処方としては解熱用の「防風通聖散」や、止渇用の「白虎加人参湯」などが知られています。

天然の生薬の二水石膏は、日本薬局方に医薬品名「石膏」として記載されている生薬である。天然物であるから純粋の硫酸カルシウム・2水和物ではなくケイ素アルミニウムなどの化合物が少量含まれる。

生薬としての石膏は、解熱作用や止渇作用などがあるとされる。石膏を含む漢方方剤は竹葉石膏湯防風通聖散麻杏甘石湯桔梗石膏など多数ある。

焼石膏:石膏を加熱し、脱水して得られる白色の粉末。 水を加えると発熱・膨張して固まり、石膏に戻る。 石膏細工や建築・歯科材料などに使用。二水せっこうは120℃~150℃に加熱すると結晶水全体の3/2を失って「焼せっこう」になります。 「焼せっこう」に水を加えると水和反応を起こし、再び元の「二水せっこう」に戻って固まります。

清燥救肺湯の胡麻仁ごまにん・胡麻・黒芝麻・黒脂麻・巨勝子:甘平:肺・脾・肝・腎経:潤燥滑腸・滋養肝腎。

清燥救肺湯の阿膠:滋潤・滋養・止血・皮膚枯燥・口唇乾燥などの燥証・虚証・血証に有効。

清燥救肺湯の燥熱乾咳の 枇杷葉:苦平:化痰止咳・和胃止嘔・清熱:上焦の熱を冷ます。肺熱を冷まし肺炎に。石膏も肺熱をさます。夏によく飲まれる枇杷葉茶は、江戸時代には夏になると薬屋の店頭に枇杷葉茶釜が置かれ通りがかりの町人が無料で飲んでいた。。

桑杏湯:温病条辨:潤肺止咳・解表宣肺:温燥・燥熱の 表証(乾咳・少痰の風邪薬)に使用する:桑葉3 杏仁3 沙参4 浙貝母3せつばいも 淡豆鼓3 山梔子2 梨皮10。

桑杏湯の桑葉:袪痰・鎮咳・抗菌:肺熱を冷やし・肺を潤し・風熱を冷まし、清肝する。

桑杏湯の沙参:滋陰潤肺の沙参しゃじん:南沙参のキキョウ科ツリガネニンジン:甘苦微寒:肺・腎経:養陰清肺・清虚熱・潤燥止咳:袪痰作用。

桑杏湯の潤燥化痰薬で冷やし潤す川貝母・浙貝母・象貝母:苦甘微寒:潤燥化痰。

桑杏湯の豆鼓とうし・ずし・淡豆鼓・香鼓こうし:マメ科大豆の種子を加工したもの:苦寒:肺胃経:解表・除煩:軽度の発汗・健胃・消化の補助:乳汁分泌抑制作用:無汗で上腹部膨満感のある感冒に葱白と葱鼓湯そうしとうとする:陰虚の感冒に使える。

梔子鼓湯しししとう:傷寒論:清熱除煩:胸膈鬱熱を清する:山梔子3 香鼓(淡豆鼓)4:「身熱を治し」「虚煩眠るを得ざるを治し」「心中懊悩を治す」。

桑杏湯の梨皮りひ:清心潤肺、降火生津、滋腎益陰、生津止渇、除煩祛湿、清熱潤燥、止咳化痰:バラ科ナシ属ナシあるいはホクシヤマナシの成熟果実の皮:ナシの皮は生津するも除湿する。

火邪の症状:熱邪である。高熱、喜冷飲、顔面紅潮、目赤、舌紅、尿赤、舌苔黄、脈数、できものが赤く腫れて熱をもち、痛みがある全身や局所の著明な熱の状態をあらわす。排泄物は粘稠で灼熱感、病勢は急激。

火邪の症状:濃い鼻汁、喀痰黄濃、小便混濁、急性の熱瀉、舌乾少津、口渇冷飲、大便硬、火邪は脈絡を焼灼し出血傾向、神明を擾乱し意識障害、狂躁状態になる。火は虚火(陰虚内熱)と実火、外火と内火(肝火上昇)がある。

癘レイ・ライ:らいびょう・レプラ・えやみ・流行病・はげむ

癘気れいき:六淫とは異なる外因の一つ。戻気ともいう流行病の原因で、口鼻から感染。外感病は六淫によるものより多いと言われている。丹毒、コレラ、マラリア、疫痢、ジフテリア等等の原因とされた。