癌症治療法 肺癌

2024/9/5、9/6 10/2

癌証

癌証の病因病理は、主に正虚(体力・免疫力の弱り・気虚・血虚・腎虚)の上に生じていて、その上に、外邪の感受や内傷七情などから、痰飲、内湿、気虚、瘀血、化火・・による熱などが生じ積結して癌証が起こるのである。

従って、熱を与える薬物や腎陽虚の薬の精力剤の継続的な服用は死期を早める。

治療においては、上記の点を考慮して解決しなければならない。

癌証の治療が困難なのは、まず、発見が大変遅れることである。

次に癌証の症状が複雑で、治療上で扶正すれば、邪の袪邪のさまたげになるのではと思慮し、攻邪すれば正虚を悪化させるのではないかと恐れて、その区分限度を掌握しにくいことである。

このほか、「陰虚と湿熱」が互いに見られたり、「痰濁と瘀血」の膠結などというように処方の決定が大変難しいのである。

それを詳細に分析して、攻補を適正に行わなければならない。

病理の変動とともに臨機応変に処方を変えれば、比較的良好な効果をあげることができる。

癌証の治療の原則は次のように帰納できる。

1,清熱解毒法

2,化痰散結法

3,活血化瘀法

4,扶正培本法

1,清熱解毒法:鬱熱化火、毒火内盛し、症状悪化時や感染症の併発時や、癌証末期に用いる。煩躁高熱、口乾喜冷飲、大便乾燥、小便黄赤、頭痛、膿血の鼻汁、痰に膿血、黄疸、癌腫局部に紅腫熱痛、発熱便秘、舌苔黄、脈数。

化火は、陰を虧損キソンするので、「清熱解毒法には養陰生津薬を併用」する・・・養陰生津薬よういんしょうしんやく:生地黄しょうじおう・天門冬・麦門冬・玄参・石斛セッコク・天花粉テンカフン(花粉・括婁根カロコン)・沙参シャジン。

生地黄しょうじおう:3~10g:消炎・解熱・鎮静・滋養強壮・強心作用。

瓊玉膏けいぎょくこう:生地黄の搾汁32.0g・茯苓末8.0g・人参末2.8g・枸杞子末0.9g・沈香末0.1g・蜂蜜(白蜜)38.5g。

天門冬3~5g:滋陰潤燥・清熱化痰・肺陰虚の虚熱の咳嗽:清熱滋陰潤燥化痰。

麦門冬3g:潤燥生津・化痰止咳:性質が滋潤で、肺を滋補するが痰を生じ易いので解表には不利。

陰虚甚だしい者には、当帰3.5g 白芍4g 玄参4g 夜交藤やこうとう(何首烏カシュウの蔓茎)10g 炒酸棗仁3g。

玄参4gげんじん:肺胃腎経:ゴマノハグサ科玄参の根:涼血解毒・降火滋陰・滋陰清熱・瀉火解毒(腎陰虚の薬):涼血・滋陰・解毒作用の要薬。皮膚・頭頸部に働く。冷やし潤す:3~4g、6~10g、10~30g:養陰清肺湯。

養陰清肺湯:滋陰清肺・涼血解毒:肺陰虚・ジフテリア・急性咽頭扁桃炎・慢性気管支炎・慢性咽喉炎:生地黄4 麦門冬4 玄参5 川貝母3 牡丹皮2 赤芍2 薄荷1(後下) 生甘草1g。

夜交藤・首烏藤:タデ科何首烏ツルドクダミの蔓茎:苦甘平:心肝経:安神・養血活絡:神経衰弱・貧血などで不眠・動悸:3~10g:交藤飲。

交藤飲こうとういん:夜交藤10g 酸棗仁5 柏子仁2 竜眼肉3g水煎服。

柏子仁はくしにん:甘辛平:心・肝・腎経:ヒノキ科コノテガシワの成熟種子を乾燥:寧心安神・潤腸通便・止汗:不眠・動悸・便秘・自汗:心血虚:2~3g:柏子仁は心血虚の不眠。酸棗仁は肝陽上亢の不眠にも。

養心安神薬の補血薬で滋腎陰薬の何首烏カシュウはツルドクダミの塊状根:苦甘渋温:肝腎経:滋陰・強壮・益精補血・緩下・養血熄風。

酸棗仁さんそうにん:クロウメモドキ科サネブトナツメの成熟種子の乾燥:甘酸平:心脾肝胆経:養肝・寧心・安神・斂汗:不眠・動悸・不安・自汗・盗汗。心臓神経症・神経衰弱・鎮静:3~6g、7~8g、10g。

陰虚が明らかなら玄参3.5g 石斛3g 鼈甲4g(先煎) 白芍4g 当帰3g。

石斛3gせっこく:生津益胃・滋陰潤肺・補陰:胃陰を滋養する:養陰生津薬。

鼈甲3g~10gべっこう先煮:シナスッポンの背部甲羅:滋陰・清熱・破血・軟堅・散結:強壮・滋養・鎮静・造血作用

天花粉3~5g・花粉・括楼根:清熱潤燥・排膿消腫・生津止渇・抗腫瘍作用・糖尿病の胃熱による傷陰に対して寒凉で滋潤作用を用いる:玉泉丸。

北沙参3g:南沙参3~6:肺陰虚(肺陰不足):乾咳・嗄声・口渇・咽乾・皮膚乾燥・泡沫状や膿性の喀痰は気管支炎・上気道炎などでみられ、生津潤肺で清熱滋潤の沙参・麦門冬・玉竹・百合びゃくごうで対処する。

清熱解毒法に熱毒入血の症状:出血、瘀斑オハン、口渇不欲飲、舌絳無苔ぜつこうむたい。

絳コウ:あか、深紅しんく・こい赤色。

清熱解毒法に湿熱兼挟の症状:胸腹痞満、嘔悪納呆オウオノウホウ、舌苔黄じ(黄色がかった厚ぼったい舌苔)。

胃もたれ(納呆のうほう・胃中不和)

清熱解毒法に陰虚兼挟の症状:唇乾歯燥シンカンシソウ、舌光無津ゼッコウムシン。

清熱解毒薬:金銀花・蒲公英ほこうえい・紫花地丁しかじちょう・天葵子テンキシ・野菊花のぎくか・連翹・敗醤草ハイショウソウ・草河車ソウカシャ(拳参ケンジン)・山豆根サンズコン・板藍根・黄連・黄芩・黄柏・山梔子・土茯苓ドブクリョウ(サンキライ)・白花蛇舌草びゃっかじゃぜっそう・半枝蓮はんしれん・半辺蓮はんぺんれん・山慈姑さんじこ。

熱毒入血には清熱涼血薬を加える:犀角サイカク(クロサイの角)・牡丹皮・紫草シソウ(紫根しこん)・生地黄しょうじおう。

清熱解毒法に湿滞兼挟には化湿滲利薬カシツシンリヤクを加える:

藿香カッコウ・佩蘭ハイラン・白豆蔲ビャクズク・薏苡仁・茯苓・沢瀉・猪苓・通草ツウソウ(代用:木通モクツウ)・滑石。

金銀花・忍藤ニンドウ・双花・二花・土銀花:清熱解毒・芳香化濁:皮膚や頭頸部や肺の熱毒を除き、湿濁を化す:3~10g:銀翹散(『温病条弁』、呉塘(呉鞠通)。

銀翹散ぎんぎょうさん:辛涼透表・清熱解毒:連翹30 金銀花(忍冬・忍藤)30 桔梗18 薄荷18 竹葉2 生甘草15 荊芥穂12 淡豆鼓15 牛蒡子18:麻疹はしかに辛涼透疹作用:咽痛が目標・口渇・舌尖紅・高熱・咳・胸痛:頭皮に角が生える人に金銀花。

三金湯:金銀花(スイカズラの花蕾)・菊花・蒲公英(タンポポの根)。

宣肺には風寒では、麻黄(宣肺平喘)・杏仁(温肺薬)・前胡(疏散風熱)・桔梗・象貝母(潤燥化痰)などだが、風熱には、さらに清熱解毒の金銀花・連翹・蒲公英・板藍根・大青葉などが必要。

連翹:苦寒:心肺経:清熱解毒・清心熱・消瘡:皮膚や頭頸部の風熱を散じ、熱毒による発疹を消す。連翹は心熱を冷まし、金銀花は解表する:3~5g。

蒲公英・公英・黄花地丁:タンポポの根をつけた全草:苦甘寒:肝胃経:

清熱解毒・抗菌・健胃:急性乳腺炎・急性虫垂炎:5~10~20g。

紫花地丁3~5g、単味10~20gシカジチョウ・紫地丁・地丁:清熱解毒・消腫:消炎・抗菌:五味消毒飲。

野菊花3~6g・新鮮品10gのぎくか・野菊:清熱解毒:疔・癤・癰などの化膿症に野菊湯;野菊花10 金銀花30 蒲公英10 紫花地丁10 水煎服。

発熱するものには金銀花3~6g・連翹4g・大青葉3~5g、10~20g・板藍根3~10~20gを加える。

連翹4g:清熱解毒・疎風清熱・消腫排膿:目耳鼻皮膚の薬。

敗醤草はいしょうそう・敗醤3~10g:清熱解毒・消癰排膿・活血袪瘀:抗菌・肝庇護・急性虫垂炎。

拳参ケンジン2~5g、癌5~10g・草河車2~5g・七葉一枝花:清熱解毒・化痰散結:毒蛇の咬傷に:喘息・肝炎:肺癌に七夏豆根湯:効果は未確認。

山豆根2~5gさんずこん:清熱利咽:消炎・抗腫瘍:咽喉や歯齦の実熱の腫脹疼痛、肺癌・喉頭癌の初期に、白花蛇舌草10g・魚醒草(ドクダミ)10gなどと配合して用いる。効果は未確認。

大青葉たいせいよう:キツネノゴマ科馬藍、アブラナ科の葉:苦鹹・大寒:心胃経:清熱解毒・涼血・解熱。乙脳方:3~5g、10~20g。

板藍根3~10~20g:涼血解毒・清利咽喉:中国では風邪やインフルエンザの時の民間で抗菌・抗ウイルス薬として常用。

黄連0.5~3g:苦寒:心胃経:清熱燥湿(冷まし乾かす作用)・瀉火解毒・涼血止血:清熱解毒の作用、気分・血分の熱を冷ます。

黄芩3~5g、2歳以下は0.5~1.5g:清熱燥湿、清熱瀉火、解毒涼血(血熱を清熱する)、清熱安胎:寒で凝固作用。

黄柏1~4g・黄檗おうばく:キハダのこと:清熱燥湿・瀉火解毒・清虚熱:ベルベリンが主成分。

山梔子3~4g、5~8g:瀉火除煩・清熱化湿・降火通淋・解毒・涼血止血:化湿解毒し尿より出す・三焦の熱を冷ます。

土茯苓どぶくりょう10~20g、癌160~250g:清熱解毒・袪湿通絡:土茯苓とバッカツ:バク葜。

白花蛇舌草5~20g。癌25~50g:アカネ科フタバムグラの全草:甘淡涼:胃大腸小腸経:清熱袪瘀・消癰解毒:急性虫垂炎。小児腎炎に白車湯:白花蛇舌草5・車前草5・山梔子3・茅根ボウコン10g・紫蘇子2g。

半枝蓮10gはんしれん

半辺蓮5~12gはんぺんれん:キキョウ科半辺蓮の根付き全草:甘辛平:心小腸肺経:利水消腫・解毒・腫脹消退:毒蛇・サソリ・蜂の刺傷・胃癌直腸癌肝癌に白花蛇舌草などと配合して用いる。

山慈姑さんじこ3~5g:ラン科サイハイラン・ユリ科アマナの鱗茎:甘微辛・寒・小毒:清熱解毒散・強心・抗がん・抗インフルエンザ・乳癌:乳癌方。

紫金錠(玉枢丹):陳実功:外科正宗:山慈姑さんじこ 紅芽大戟こうがたいげき 五倍子ごばいし 麝香じゃこう 千金子を糯米もちごめ で錠剤とし外用。

乳癌方:安徽省人民医院方:紫金錠4錠・竜脳0.6g(りゅうのう:ボルネオール) 金銀花10 王不留行10 猫目草10 後の3薬でエキス末をつくり、紫金錠と竜脳の2薬を加えて粉末にし、1日4回0.5~1gずつ服用する。

王不留行おおふるぎょう:ナデシコ科ドウカンソウの成熟種子、クワ科オオイタビの成熟果殻カカク:甘苦平:肝胃経:催乳・痛経・消腫・止痛:乳汁分泌不足・排乳困難:乳腺炎に、王不留行5,蒲公英10,白芷2gビャクシ:妊婦には禁忌。

大戟たいげき・京大戟:トウダイグサ科タカトウダイの塊根:苦寒・有毒:肺脾腎経:瀉水逐飲・消腫散結:控涎丹コウゼンタン(三因方さんいんぽう)京大戟・甘遂かんずい・白芥子ハクガイシ各等分の粉末をカプセルにいれ大棗タイソウの煎液で服用

升麻0.6~3g、は古より犀角の代用にして止血の効あり::甘辛微寒:

発表透疹・清熱解毒・升挙

犀角は清熱解毒作用が羚羊角より強いが、羚羊角鎮痙熄風作用が強く、

高熱・意識障害・痙攣がひどい時は両者を併用する。升麻は古より犀角の代用にして止血の効あり。

犀角0.5~3g:サイ科クロサイ角:苦酸鹹寒:心肝胃経:清熱定驚・涼血解毒・強心・解熱・鎮静:・止血:ヤスリですった粉末を衝服か、すりつぶした汁を衝服。犀角は効果なため牛角10~40gで代用する。

牡丹皮2~3g:牡丹の根の皮:苦辛微寒:清熱涼血・活血袪瘀・清肝瀉火:清熱袪瘀薬:冷やし活血して瘀血を去る。

紫草シソウ・シコン:麻疹の予防:紫根3g、甘草1gを煎じて隔日に1度ずつ3回服用

血熱の生薬の紫根1~3g・紫草・紫草根・紅条紫草:ムラサキ科ムラサキの根:甘鹹寒:心肝経:涼血解毒・透疹:水痘・麻疹の主薬:はしかの初期で色が赤くて発疹しそうで発疹せず便秘に使用で、下痢・泥状便や鮮紅色に発疹したものには使用しない。

藿香2~5g・広藿香:化湿和中・解暑・解表・健胃・解熱:辛散により風寒を除き、芳香化濁により湿濁を化湿、醒脾和中セイヒワチュウにも働く。

佩蘭ハイラン1.5~3g・省頭草:キク科フジバカマの全草:辛平:脾胃経:化湿和中・解暑:暑湿に対する常用薬である。

白豆蔲びゃくずく1.5~3g:・白豆仁・白叩仁・蔲仁:ショウガ科白豆蔲の果実中の種子:辛温:肺脾胃経:化湿和胃・行気寛中:草豆蔲・草果と似ている。

清熱解毒の方剤:五味消毒飲・黄連解毒湯・犀角地黄湯・清営湯・化斑湯・梔子金花湯。

薏苡仁3~10,20~30g・生米仁:甘淡微寒:利水滲湿・清熱・排膿・除痺・健脾止瀉。

蠲痺湯けんぴとう:行痹:関節腫脹・舌苔白じに加える:蒼朮3,防已4,生米仁5(薏苡仁)。 

茯苓3~6g、10~15g・雲茯苓3~6g:利水滲湿、健脾補中、寧心安神ねいしんあんしん。           

沢瀉2~5gタクシャ:利水・滲湿・清熱。量は多く使わない方がよいという。

猪苓2~5gチョレイ:利水滲湿・清熱:利尿。

木通0.8~3g:アケビ科アケビ、ウマノスズクサ科木通の木質茎:苦寒:「通草つうそうウコギ科カミヤツデ」の原名?:降火利水・通乳:中品:悪蟲を去り、脾胃の寒熱を除き、九竅きゅうきょう、血脈、関節を通利す。

通草つうそう1~2g・白通草:ウコギ科のカミヤツデの茎の髄:甘淡寒:肺胃経:清熱利水・通乳:催乳の常用薬。妊婦の服用は避けた方が良い:下乳方。

                                                                                                                                                                                                         滑石3~5g,8~10gかっせき:含水ケイ酸マグネシウム・石灰・粘土:甘寒:利水滲湿・清熱・小便赤。

五味消毒飲ごみしょうどくいん:医宗金鑑:清熱解毒・消散疔瘡チョウソウ:金銀花(忍冬)5g 野菊花2 蒲公英2 紫花地丁2 紫背天葵子2gシハイテンキシ:舌紅、舌苔黄、脈数:温熱火毒を外受したり、辛辣炙燥シンラツシャソウの嗜好で臓腑に熱が結聚。

黄連解毒湯:黄連1.5・黄芩3・黄柏1.5・山梔子2、はすべて消炎・鎮静・燥湿作用(乾かす作用)がある。炎症や出血・脳の興奮性増大、自律神経興奮、代謝亢進状態を治す。

犀角地黄湯:涼血解毒が主: 犀角(升麻) 生地黄 赤芍 牡丹皮:意識障害・うわごと・舌質紅絳ぜっしつこうこう・斑疹など全身的な熱毒症状が明らかな場合に適合する。

清営湯せいえいとう:清営透熱・養陰活血:熱傷営陰:犀角0.6 生地黄5 玄参3 麦門冬3 金銀花(忍冬)3 連翹2 黄連1.5 竹葉心1 丹参2g:夜に増悪・発熱・熱感・焦躁感・不眠・口渇・狂躁・皮下出血・舌絳・無苔。

化斑湯かはんとう:温病条辨:清気涼血化斑:石膏10 知母4 生甘草3 玄参3 犀角0.6(衝服) 粳米3gこうべい:高熱・口渇・煩躁・意識障害・吐血・鼻出血・皮下出血・舌絳・苔黄乾燥・脈数。

衝服しょうふく(沖服ちゅうふく):少量の散剤をもつ薬湯を服用するとき、湯に入れて攪拌して服用すること。琥珀コハク・朱砂シュシャは浮きやすく沈みやすいので衝服するときは蜜で調えてから服用する。

2,化痰散結法:痰凝聚結タンギョウジュケツで生じた腫瘍、比較的堅く、按じても痛まず、圧痛があり、押せば動く、固まって動かないものに用いる。

痰の病は、脾虚により産生されるので、化痰散結法は健脾益気薬と併用する・・・健脾益気薬:人参・党参・黄耆・白朮・茯苓・山薬サンヤク・太子参タイシジン。

人参・吉林参・朝鮮参・高麗参・紅参・白参・直参:ウコギ科:甘微苦:微温:肺脾経:大補元気・安神益智・健脾益気・生津:1~3~10g。

党参:キキョウ科ヒカゲツルニンジンの根:甘微温:補中益気:甘微温:補中益気:強壮健胃・造血・降圧・袪痰鎮咳:四君子湯・六君子湯・参苓白朮散には党参が適す。4~10~30~40g:人参の2~3倍使う。

黄耆:マメ科キバナオウギ根:甘微温:脾肺経:補気升陽(陽気昇陽)・固表止汗・利水消腫(浮腫を去る)・托毒排膿:強壮・利尿・降圧・血管拡張・強心:補気の要薬。炙黄耆3~5g。

黄耆:急性あるいは慢性腎炎に用いる。黄耆の利尿で浮腫消退し蛋白尿を軽減。急性腎炎では悪風・関節痛・肢体や顔面の浮腫、脈浮の風水の症状に、防已・白朮・甘草配合の防已黄耆湯を使用する。炙黄耆3~5g。

黄耆:痹証に:末梢神経麻痺・脳卒中後の半身不随・リウマチ・肩関節周囲炎:これらは気血両虚のため循環障害で疼痛やしびれである。疼痛には黄耆桂枝五物湯を用いる。運動麻痺には桃仁・紅花・川芎・地竜配合。

黄耆:補陽還五湯は、脳卒中の半身不随に使うが、意識が澄明で体温正常時だけ適用。脳出血が止まり、脈軟弱(気血両虚)を確認して使い脈浮は禁忌。発病後3ヶ月以内は効果があるがすぎると余り効果はない。

白朮:キク科オオバナオケラの根茎:甘微苦:温微香:補脾益気・燥湿利水:健胃・利尿・鎮静:風湿のリウマチなどの関節痛に用いる。蒼朮は辛烈・燥散の作用が強く補益力は弱い。白朮は補益力があり、健脾に適す。

山薬さんやく:薯蕷しょよ:長芋:ヤマノイモ科甘微温:脾肺経:補脾胃・益肺腎・止瀉・袪痰3~10~30~40g。

太子参たいしじん・孩児参がいじじん:ナデシコ科孩児参ワダソウの塊根:甘微苦:微温:脾肺経:益気・生津:肺の気陰両虚・滋潤性がある:滋陰降火は沙参・玄参より弱く、補気作用は党参よりはるかに弱い。5~10g。

半夏ハンゲ・法半夏・姜夏・製半夏3・蘇夏・清半夏(明礬水):辛温:燥湿化痰・降逆止嘔・消痞散結:サトイモ科カラスビシャクの球状塊茎:制吐・催吐(生半夏)・鎮静・眼圧低下・袪痰:3~4g。

化痰散結薬:天南星てんなんしょう・半夏・貝母ばいも・全栝楼ぜんかろ・山慈姑さんじこ・白芥子はくがいし・皂角刺そうかくし・海浮石かいふせき・海蛤殻かいごうかく・生牡蛎・猫爪草びょうかそう(キャッツクロー)・青もう石・海藻・昆布・黄薬子おうやくし。

天南星てんなんしょう・製南星・胆星・南星・胆南星たんなんしょう:サトイモ科天南星の根茎:微辛・辛苦・温:熄風解痙・燥湿化痰:微辛温:辛苦微温:肺肝脾経:鎮静・鎮痙・強い袪痰・袪風痰・顔面神経麻痺:胆南星1.5~3g。

天南星:袪風痰に用いる。風寒痰湿が経絡を阻滞し、眩暈・顔面神経麻痺・半身不遂・手足痙攣・牙関緊急(脳卒中・破傷風)に用いる。脳卒中による運動麻痺には製南星がよい。

天南星:脳卒中初期には三七・大薊タイケイなど止血薬を用い、安定後の半身不随には蜈蚣・鶏血藤など通経活絡薬を配合し、煩躁が生じたら製南星を中止するか:胆南星1.5~3gに変更すべきである。

天南星:破傷風には胆南星1.5~3gを用い、全蠍サソリ・蜈蚣ムカデなどを配合し鎮痙熄風する。防風・天麻3gを配合して玉真散としてもよい。

玉真散ぎょくしんさん(外科正宗):南星 防風 白芷 天麻 羗活 白附子各等分を粉末1回1~3g熱酒で服用:破傷風、牙関緊急、身体強直腰背反張、狂犬病:止痙の強化に全蝎ゼンカツ・蜈蚣ゴショウ・白僵蚕ビャッキョウサンを加える。妊婦は禁忌。

貝母:アミガサユリの鱗茎:苦・寒:開泄肺気・清熱散結:鎮咳薬に配合:浙貝母(象貝母)と川貝母の区別があり、浙貝母を実証に、後者を虚証に用います。また、価格的にも川貝母の方がかなり高価。浙貝母2g。

瓜呂仁・瓜楼仁・栝楼・栝楼仁2~6g:楼仁:楼実:清熱化痰・潤肺化痰・利気通便:熱痰・理気寛中に適用:ウリ科シナカラスウリ・キカラスウリの成熟種子:苦寒:肺胃大腸経。

全栝楼3~6g:栝楼の果実を乾燥したもの。栝楼仁・栝楼皮とほぼ同じで、栝楼仁2~6g・栝楼皮で代用している。  

栝楼皮:栝楼殻ともいう。栝楼の果殻を乾燥したもの。栝楼仁とほぼ同じ。

天花粉てんかふん・花粉・括楼根:ウリ科シナカラスウリの塊根・甘大寒:心肺胃経:清化熱痰:風熱による咳嗽:10~30g衝服。

山慈姑さんじこ3~5g:ラン科サイハイラン・ユリ科アマナの鱗茎:甘微辛・寒・小毒:清熱解毒散・強心・抗がん・抗インフルエンザ・乳癌:乳癌方。

白芥子はくがいし:アブラナ科白芥の成熟種子:辛温:肺経:利気袪痰・消腫止痛:温化寒痰の常用薬:三子養親湯(白芥子・蘇子・莱菔子ダイコンの種、各1g)

皁角刺そうかくし:皁角樹の茎枝の鋭利な棘トゲ:辛温:散腫・解毒・袪風:化膿を消散し早めに自潰させる。サイカチのさやを天日で乾燥させた生薬を皀莢(そうきょう)、サイカチの刺のみを乾燥させたものを皀角刺(そうかくし)といい、種子に熱湯を通して天日で乾燥させたものを皀角子(そうかくし)と言う:刺激性が強いので0.1~0.2g。

皁角刺そうかくし:皁角樹の茎枝の鋭利な棘トゲ:辛温:散腫・解毒・袪風:化膿を消散し早めに自潰させる:刺激性が強いので0.1~0.2g。

海浮石・浮海石・浮石・海石:火山の石が海水に長年侵食され軽くなり水に浮く:二酸化ケイ素・酸化アルミニウム:微鹹微渋微寒:肺経:清肺化痰・軟堅散結:多孔珊瑚石・石花もほぼ同じ:3~5g。

海蛤殻かいごうかく:ハマグリ科オキシジミの貝殻を焼いて粉:清熱利湿・化痰散結:清熱化痰・咳嗽・甲状腺腫瘍「甲状腺ガンに四海舒欝丸」:風邪の熱痰には海浮石、肺気腫・慢性喘息性気管支炎には海蛤殻1~3g。

牡蛎ぼれい:牡蠣カキの貝殻:鉱物など重い生薬:鹹渋・微寒:肝胆腎経:重鎮安神薬。重鎮安神・平肝潜陽・収斂固渋・軟堅散結(軟堅消痞)・制酸止痛:粉剤1~2g、湯剤5~10g。

猫爪草ねこつめくさ:猫爪草は1977年に『中国薬典』に収録され、化痰散結、解毒消腫、痰核、褥瘡腫毒、蛇虫咬傷。現在、抗腫瘍、抗肺結核。

青もう石:雲母の一種:砕き焼き水飛して精製。辛鹹平:肺肝経:袪積痰・除結熱・定驚悸:慢性難治性の痰証に使用:もう石滾痰丸:清熱滌痰:大黄48g黄芩48gもう石6g沈香5g:毎日1.5~3g湯で服用(もう は、石偏に蒙)。

滾痰こんたん:痰を流し去ること。

海藻:ホンダワラ科馬尾藻などの全草:苦鹹寒:肝胃腎経:消痰結・散癭瘤:甲状腺腫に使用:海藻玉壺湯加減:海藻3g 浙貝母3 連翹2 昆布3 法半夏2 青皮1 海浮石3 当帰2 川芎1 海帯3g水煎服。

昆布・海帯に同じ:コンブ科マコンブ・クロメの葉状体:鹹寒:肝胃腎経:軟堅散結・化痰清熱:単純性甲状腺腫に効果3~6ヶ月服用:慢性頸部淋巴腺炎には、昆布消癧湯こんぶしょうれきとう:昆布3 海藻3 夏枯草5 牡蛎10(先煮)白芍3 陳皮2g。

黄薬子おうやくし・黄薬脂・黄独:ヤマノイモ科ニガカシュウの塊茎:苦平:肝心経:涼血降火・散結解毒:黄薬子酒は、とくに食道癌に効果があった:肝臓障害の可能性に注意。

黄薬子酒:黄薬子300gを62度の白酒1500mlとともに陶器製の器に入れて密封し、水をはった鍋に入れ、2時間、弱火で煮る。やや冷えてから水中に入れ、7日後に取り出し残渣ザンサを除く。1日20~50mlを少量ずつ頻回に服用する。

化痰散結法に肝鬱兼挟なら疏肝理気薬を兼用:香附子・鬱金ウコン・青皮じょうひ・陳皮・佛手ぶっしゅ・橘葉きつよう・柴胡・川楝子センレンシ。

香附子こうぶし・別名(香附:莎草さそう):カヤツリグサ科浜菅ハマスゲの根:辛微苦平:肝三焦経:疏肝理気・調経止痛:生理痛など婦人薬に繁用:2~3g。

鬱金うこん・広鬱金・川鬱金・玉金:ショウガ科姜黄キョウオウの広鬱金を一般に使う、鬱金ハルウコンの川鬱金は薬性が温和・温鬱金の塊根:疏肝理気・解鬱袪瘀・止痛・健胃・利胆:ターメリック:1~3g。

青皮じょうひ:ミカン科柑桔の熟する前の青い果皮:効能は陳皮と同じだが行気・化滞作用は陳皮より強い:苦辛温:肝胆経:疏肝破気・散積化滞:気滞を改善し左脇痛(膵炎の痛みなど)に青皮が使われる:1~2g。

陳皮ちんぴ3g・広陳皮2~3g・広柑皮:理気健脾・燥湿化痰:陳皮は、陳橘皮の橘を省略した言葉で、橘皮が正しい。

仏手柑ぶしゅかん・陳仏手・佛手ぶしゅ:ミカン科ブシュカンの果実の切片を日干し:辛苦酸温。肺脾経:理気止嘔・止痛:健胃作用:2~3g~10g。

柴胡サイコ:苦微寒:セリ科ホソバミシマサイコ:苦微寒:心包・肝三焦・胆経:解表・解熱・疏肝解鬱・升挙陽気:鎮静・鎮痛・抗菌:月経調整作用:気の流れを正し解表解鬱するので風邪薬にもなる:2~6g。

川楝子せんれんし・金鈴子きんれいし・苦楝子くれんし:センダン科トウセンダンの成熟果実:苦寒:肝・心包・小腸・膀胱経:理気止痛・殺虫:アニサキスに:1.5~4g:軟便を来すので多量に使用しない。

化痰散結法に血瘀があれば活血化瘀薬を兼用:丹参タンジン・赤芍・桃仁・紅花コウカ・劉寄奴りゅうきど・生蒲黄しょうほおう・五霊脂ごれいし・馬鞭草ばべんそう・三棱さんりょう・莪朮がじゅつ。

丹参:シソ科タンジンの根:苦微寒:心・心包経:活血袪瘀・涼血・養血安神:血管拡張・鎮静・精神安定・鎮痛・肝不全の疼痛・神経衰弱・動悸・不眠・煩躁・不安など心血虚:天王補心丹:2~5g~10~20g。

天王補心丹:心腎陰虚(心腎不交):酸棗仁10 生地黄20 柏子仁10 麦門冬10 五味子10 当帰6 遠志5 丹参5 玄参5 桔梗5 粉末を蜜丸とし朱砂をまぶし、1回2gずつ服用。

赤芍せきしゃく:ボタン科シャクヤクの根:苦微寒:肝経:清熱涼血・活血袪瘀:補血養陰・鎮静鎮痛には白芍を、涼血逐瘀・活血袪瘀には赤芍を使い、赤芍と白芍を併用することもある:2~5g:冠不全の狭心痛に冠心二号方。

桃仁:バラ科桃の成熟種子の仁:苦甘平:心肝大腸経:活血通経・袪瘀療傷・破血袪瘀・潤燥滑腸:鎮痛・消炎・解毒・通便作用:桃仁泥として用いる:1~3g。

紅花コウカ・紅藍花:キク科ベニバナの管状花:辛微苦温:心肝経:破瘀活血・活血通経・散瘀止痛:血流改善・子宮興奮作用で妊婦は禁忌:1~3g~4~5g。

蒲黄ほおう:ガマ科のガマの穂である蒲黄ほおうの成熟花粉:甘平:肝心包経:収斂止血・活血袪瘀:血淋の常用薬:失笑散(五霊脂 生蒲黄):妊婦には禁忌:因幡の白ウサギの止血に使用:1.5~3g衝服がよい。

五霊脂ごれいし:オオコウモリの糞便乾燥物:鹹温:肝経:袪瘀止痛・通経、生では活血、炒用では止血・鎮痛・瘀血による疼痛で婦人科で失笑散として多用・胃を障害しやすい:2~3g。

失笑散しっしょうさん:五霊脂・蒲黄各等分を粉末にし1回2gを黄酒か醋で衝服する。各1gを水煎服してもよい。活血袪瘀・散結止痛:瘀血停滞作痛を治す・月経不順・悪露不行に活血袪瘀で止痛する。服すれば痛みを忘れ笑みがこぼれるので失笑と名づく。

三稜さんりょう・荊三棱:カヤツリグサ科荊三棱ウキヤガラの塊茎:苦平:肝脾経:破血袪瘀・(三稜+莪朮:破血行気):腹腔内腫瘤・月経不順:1~3g:莪朮との配合では等量の人参か党参・黄耆で補元気する。

莪朮がじゅつ:ショウガ科莪朮の根茎:苦辛温:肝脾経:行血破瘀・攻逐積滞:抗腫瘍・健胃・気滞血瘀による月経不順・腹腔内腫瘤:三棱との配合では等量の人参か党参・黄耆で補元気する:1~3g。

冠心二号方:かんしんにごうほう:活血化瘀・止痛:丹参たんじん 赤芍 川芎 紅花 降香こうこう 木香 香附子:すべて行気薬と活血薬で組成されているので、血虚のない実証には血府逐瘀湯より効果は高い::製品有り。

劉寄奴りゅうきど・劉寄奴草:キク科奇蒿キコウ。ゴマノハグサ科のヒキヨモギの全草:活血通経・消腫止痛:瘀血による腹痛の常用薬で袪瘀による止痛:2~3g~5g

化痰散結の方剤:導痰湯どうたんとう・指迷茯苓丸しめいぶくりょうがん・もう石滾痰丸こんたんがん・半貝丸はんかいがん。

導痰湯(済生方):痰迷心竅:製半夏3 陳皮2 製南星3 枳実2 茯苓2 炙甘草1 大棗1 乾生姜1:痰迷心竅で熱証のみられない舌体白じ・脈弦滑の時に使用:温胆湯の竹筎を製南星に替えた処方:竹筎温胆湯加天南星(天南星は単味がある)

化痰散結法にもう石滾痰丸:清熱滌痰せいねつじょうたん・袪積痰・除結熱・定驚悸:慢性難治性の痰証に使用:大黄48g 黄芩48g もう石6g 沈香5g:毎日1.5~3gを湯で服用

沈香じんこう:ジンチョウゲ科白木香ビャクモッコウ(沈香)の黒褐色の樹脂を含む木材を乾燥加工したもの:辛苦微温:脾胃腎経:降気和中・抗瘧平喘コウギャクヘイゼン・温腎補陽・散寒:沈香は、気虚下陥キキョゲカン・陰虚火旺には禁忌。沈香の樹脂は、虫害や人工的な切り傷の沈香の樹皮から分泌されたもの。独特の香りがある。

3,活血化瘀法:気滞血瘀によって腫瘍が形成され、または症状にも血瘀があり、腫塊が痛み、固定痛で肌膚甲錯キフコウサクし、舌青紫または暗、舌に瘀斑や瘀点があり、脈沈細または弦細。

肌膚甲錯:慢性病で皮膚の乾燥が強く、触れるとザラザラするのは「肌膚甲錯きふこうさく」で陰血不足・瘀血内結である。

「気行れば血行り、気滞すれば血瘀となる」ので、活血化瘀薬は行気薬ギョウキヤクと併用される。また、「瘀血は正虚の上で産生されるので、活血化瘀には、常に補気薬または養血薬と同時に処方される」。袪瘀血の薬には四物湯が必要とされる。

活血化瘀薬:当帰・赤芍・川芎(以上四物湯の三成分)・丹参・桃仁・紅花・生蒲黄ホオウ・五霊脂ゴレイシ・三棱・莪朮・水蛭すいてつ(ヒル)・虻虫ぼうちゅう(アブ)・血竭けっけつ・穿山甲せんざんこうのウロコ・䗪虫しゃちゅう(シナゴキブリ)。

当帰・帰身きしん・当帰尾・帰尾・全当帰:甘辛温:心肝脾経:補血・行血・潤腸通便・調経:補血の主薬:1~3~4~10g、当帰生姜羊肉湯は10g以上。血液循環には全当帰、血虚・月経には帰身、瘀血には帰尾。

赤芍せきしゃく:ボタン科シャクヤクの根:苦微寒:肝経:清熱涼血・活血袪瘀:補血養陰・鎮静鎮痛には白芍を、涼血逐瘀・活血袪瘀には赤芍を使い、赤芍と白芍を併用することもある:2~5g。

水蛭すいてつ:ウマビル:鹹苦平・有毒:肝膀胱経:破血逐瘀:煎剤は0.6~1.5g、散剤0.1~0.2g、なまぐさいので粉末をカプセルで。水蛭をけずるか炙り粉末にして黄酒か湯で服用、酒に漬けて内服。

虻虫ぼうちゅう:アブ科ウシアブ・フタスジアブ・雌の成虫の乾燥体:破血逐瘀:牛馬の血を吸う:通経、駆瘀血薬、月経閉止、胸腹中の蓄血・血脈及び九竅を通利する:妊婦には禁忌。  

血竭けっけつ・キリン血:ヤシ科キリンケツの樹脂:甘鹹平:心包肝経:止血止痛・活血生肌:辛熱で強い燥性があるので陰虚・血熱には禁忌:内服は0.3~0.5g、丸剤・散剤とし、湯剤には用いない。

全蝎・全蠍ぜんかつ・全虫・蝎尾かつび:キョクトウサソリ科のキョクトウサソリの全身:辛平小毒:肝経:熄風鎮痙・袪風止痛・解毒散結:破傷風・熱性痙攣・半身不随・顔面神経麻痺:粉末0.4~1g~2g。

穿山甲せんざんこう・炮山甲・山甲珠ざんこうじゅ・山甲片:センザンコウの甲羅片:鹹微寒:肝胃経:消腫排膿、下乳通経、袪瘀通絡:催乳、膿瘍、高血圧症、神経衰弱、腹腔内腫瘤などに他薬と配合:1~3g。

䗪虫しゃちゅう:地鱉虫ジベッチュウ・土鱉虫:シナゴキブリの雄の全虫:鹹寒:有毒:肝経:破血逐瘀・續筋骨:筋骨折傷,瘀血閉経,癥瘕痞塊。血瘀による肝腫大及腰痛、捻挫:妊婦は禁忌:2~3gを酒で。

活血化瘀薬に気滞兼挟に行気薬ぎょうきやく:鬱金うこん(ターメリック)・香附子・延胡索えんごさく・降香こうこう・乳香にゅうこう・没薬もつやく。

香附子こうぶし・別名(香附:莎草さそう):カヤツリグサ科浜菅ハマスゲの根:辛微苦平:肝三焦経:疏肝理気・調経止痛:生理痛など婦人薬に繁用:2~3g。

延胡索:ケシ科エゾエンゴサクの塊茎:辛苦温:活血・理気・止痛・鎮静・鎮痙:気滞血瘀に対して活血行気で血滞を除き止痛する。折衝飲・金鈴子散・芎帰調血飲第一加減に配合:1~3g。

降香こうこう・降真香:ミカン科降香の木部乾燥:辛温:肝経:理気止痛・袪瘀止血:打撲捻挫・陰虚火旺や血熱には禁忌:粉末0.8~1gを衝服、煎剤1~2g:冠心二号方に配合。

冠心二号方(北京地区防治冠心病協作組)降香5 丹参10 赤芍5 川芎5 紅花5g、毎日1剤を3回に分けて沖服する。4週間を1クールとし、連続3クル服用する。

衝服しょうふく(沖服ちゅうふく):少量の散剤をもつ薬湯を服用するとき、湯や酒に入れて攪拌して服用すること。琥珀・朱砂は浮きやすく沈みやすいので衝服するときは蜜で調えてから服用する。

沖服ちゅうふく:(を湯・酒で溶いて服用する)。

乳香:カンラン科の乳香樹の樹皮より滲出した樹脂:辛苦温:心肝脾経:活血・止血・舒筋:瘀血による疼痛の鎮痛・消炎:1~3~5g。

没薬もつやく:カンラン科没薬樹から産出する樹脂:苦平:肝経:活血袪瘀止痛。乳香と没薬はよく一緒に痛み止めに用いられる:1~4~5g:妊婦や月経過多には禁忌。

活血化瘀薬に気虚兼挟に補気薬:人参・党参・黄耆・太子参。

活血化瘀薬に血虚兼挟に養血薬:当帰・川芎・赤芍・熟地黄・何首烏かしゅう・阿膠アキョウ。

熟地黄・熟地:ゴマノハグサ科カイケイジオウの塊状根:酒にて蒸す:血虚に適す:滋陰・補血:4~10g~15~20g~30g。

補血薬で滋腎陰薬の何首烏かしゅう:タデ科ツルドクダミの塊状根:苦甘渋温:肝腎経:滋陰・強壮・益精補血・緩下・養血熄風:3~5g。:制首烏は補益肝腎、生首烏は潤腸・瀉下・消炎が強い:夜交藤はタデ科何首烏ツルドクダミの蔓茎:安神・養血活絡)。

阿膠:滋潤・滋養・止血・皮膚枯燥・口唇乾燥などの燥証・虚証・血証に有効:炙甘草湯の生地黄、麦門冬、阿膠、麻子仁、大棗は、心血を補い、心陰を滋潤して血脈に栄養を与える。

活血化瘀処方:大黄䗪虫丸だいおうしゃちゅうがん・犀黄丸さいおうがん、小金丹しょうきんたん・血府逐瘀湯・桂枝茯苓丸・桃核承気湯・田七(田三七)・折衝飲・抵当湯・温経湯ウンケイトウ・失笑散シッショウサン・通竅活血湯ツウキョウカッケツトウ・復元活血湯。

血府逐瘀湯:活血化瘀行気止痛:胸中血瘀・血行不暢:脹痛・頭痛が慢性的。吃逆・活血化瘀に行気解鬱。吃逆・呃逆・熱感・怒りっぽい・動悸・不眠・口唇や目の周囲がどす黒い、舌質暗、瘀点や瘀斑。脈渋・弦。

暢チョウ:のびる、長くなる、のびのびする、やわらぐ、ゆきわたる、とおる:流暢りゅうちょう。

阿仙薬アセンヤク・児茶ジチャ・孩児茶ガイジチャ・鉄児茶・珠児茶:マメ科孩児茶の樹枝を乾燥し、水煎液を濃縮乾燥:苦渋平:肺経:収湿・収斂・斂瘡・消炎・止血作用。

阿仙薬の外用は適量:児軽散:阿仙薬(児茶)3g 軽粉2g 竜脳0.3g 竜骨3g細末を水で練って塗布する。

軽粉けいふん・水銀粉:水銀から昇華法で生成した塩化第一水銀(甘汞かんしょう)の白色結晶性粉末で非常に軽いので軽粉という:辛寒・有毒:殺虫・逐水:舟車丸しゅうしゃがん に使用。

桂枝茯苓丸:金匱要略:活血化瘀・緩消癥塊:桂枝 茯苓 牡丹皮 桃仁 赤芍各3g:下腹部の腫瘤・圧痛・腹のひきつり・不正性器出血・月経痛・無月経・胎盤残留・死胎の残留・悪露停滞。

桂枝茯苓丸加薏苡仁:薏苡仁のもつ清熱解毒・排膿・利水・滲湿・治疣贅の作用が加わっている。

桃核承気湯:傷寒論:破血下瘀:桃仁4 大黄4 桂枝2 炙甘草2 芒硝2g 蓄血証で排尿は異常がない。下腹部が硬く脹る・うわごと・夜間の発熱・狂躁状態:熱邪と血が小腸で結した蓄血証:血分の熱は夜間発熱し、瘀熱が心神上擾でうわごと・狂躁状態:熱膀胱に厥し、その人狂のごとく。血自ずと下るものは愈ゆ。

田七・田三七・三七・参三七:ウコギ科人参三七の根:チクセツニンジン竹節三七の根茎:甘微苦温:肝胃経:止血・袪瘀・消腫・止痛:止血と袪瘀の主薬である。内出血・外傷の出血に袪瘀止血・消腫止痛粉末1gを重湯・あたためた黄酒・白酒30mlで服用。沖服してもよい。

折衝飲:活血化瘀・理気止痛:当帰5 桃仁5 牡丹皮3 川芎3 赤芍3 桂枝3 牛膝3 紅花2 延胡索3(すべて袪瘀作用がある生薬):心陽虚・瘀血による鎮痛効果が血府逐瘀湯より高い。

温経湯:温経散寒・補血調経・活血化瘀・益気和胃: 半夏4 麦門冬4 呉茱萸1 乾姜1 当帰3 桂枝2 白芍2 川芎2 人参2 甘草2 阿膠2(皮の膠)牡丹皮2:太陽と少陰が同時に病む両感証に使用。

癌症 4,扶正培本法:主に、正虚に用いられる。

人体の陰陽臓腑気血の失調を調整して強壮にし、袪邪させる。

扶正培本は、脾腎を論治することである。

癌証の患者の症状によって、扶正培本もいくつかに分類される。

1,健脾益気

2,滋陰養血

3,養陰生津

4,温補脾腎

扶正培本に、1,健脾益気する症状は、脾虚気弱で、全身疲乏、言語低微、気短自汗、食欲不振、大便溏、舌淡または舌嫰ぜつどん(舌がふにゃふにゃ)歯痕、脈沈緩か濡じゅ。

健脾益気の常用生薬:人参・党参・黄耆・太子参・蒼朮・白朮・薏苡仁・山薬さんやく・扁豆ヘンズ(白扁豆ハクヘンズ)・黄精おうせい・大棗タイソウ・甘草。

人参・吉林参・朝鮮参・高麗参・紅参・白参・直参:ウコギ科:甘微苦:微温:肺脾経:大補元気・安神益智・健脾益気・生津:1~3~10g。

党参:キキョウ科ヒカゲツルニンジンの根:甘微温:補中益気:甘微温:補中益気:強壮健胃・造血・降圧・袪痰鎮咳:四君子湯・六君子湯・参苓白朮散には党参が適す。4~10~30~40g:人参の2~3倍使う。

黄耆:補気升陽・固表止汗・利水消腫・托毒排膿(元気を補い汗を止め、皮膚病を治す)

太子参たいしじん・孩児参がいじじん:ナデシコ科孩児参ワダソウの塊根:甘微苦:微温:脾肺経:益気・生津:肺の気陰両虚・滋潤性がある:滋陰降火は沙参・玄参より弱く、補気作用は党参より弱い。5~10g。

蒼朮:キク科ホソバオケラの根茎:苦辛温:燥湿健脾・袪風湿・風湿の筋肉疾患の鎮痛薬。(白朮:オオバナオケラの根茎)

白朮:キク科オオバナオケラの根茎:甘微苦:温微香:補脾益気・燥湿利水:健胃・利尿・鎮静:風湿のリウマチなどの関節痛に用いる。蒼朮は辛烈・燥散の作用が強く補益力は弱い。白朮は補益力があり、健脾に適す。

薏苡仁3~10,20~30g・生米仁:甘淡微寒:利水滲湿・清熱・排膿・除痺・健脾止瀉。

山薬さんやく:薯蕷しょよ:長芋:ヤマノイモ科甘微温:脾肺経:補脾胃・益肺腎・止瀉・袪痰:3~10~30~40g。

白扁豆・扁豆:マメ科フジマメの種子:甘微温:脾・胃経:消暑化湿・和中健脾:夏季の胃腸型感冒や胃腸炎

黄精おうせい:ユリ科黄精カギクルマバナルコユリの根茎:甘微温:脾肺経:補脾潤肺:滋補強壮・抗菌・肺陰虚の咳嗽:3~10g。

大棗・生姜・炙甘草は中焦を振奮しんふん(ふるいたたせ)し衛気(脈外で全身をめぐり防衛する気)を宣発せんぱつ(全身に散布)し、邪が裏に侵入するのを防止する。

甘草:甘草の甘温は益気和中(気を益し、胃を和す)して血脈を滋潤する。

健脾益気の方剤:補中益気湯・四君子湯・六君子湯・参苓白朮散じんりょうびゃくじゅつさん。

補中益気湯:補気健脾・昇陽虚寒・甘温除熱:黄耆4、甘草1.5 人参4 当帰3 陳皮2 升麻0.5 乾姜0.5 柴胡1 白朮4 大棗2:中気下陥を昇陽挙陥するので、怠さの強い肝炎に使う。

六君子湯:健脾益気・和胃化濁:党参4 茯苓4 炒白朮3 炙甘草1 製半夏4 陳皮3 乾姜0.1 大棗2.

参苓白朮散:補気健脾・理気化湿・止瀉:党参 白朮 茯苓 炒白扁豆 炒山薬 薏苡仁 蓮子 陳皮 縮砂 桔梗 炙甘草:消化不良・泥状便・水様便・カゼの嘔吐・ノロウイルスの嘔気・嘔吐。

扶正培本に、2,滋陰養血すべき症状は、血虚で顔色が悪く、頭暈、心悸、月経量少ない、舌淡苔薄、脈沈細。

滋陰養血の生薬:熟地黄・何首烏・当帰・白芍・枸杞子・阿膠・竜眼肉・大棗など。

熟地黄・熟地:ゴマノハグサ科カイケイジオウの塊状根:酒にて蒸す:血虚に適す:滋陰・補血:4~10g~15~20g~30g。

補血薬で滋腎陰薬の何首烏かしゅう:タデ科ツルドクダミの塊状根:苦甘渋温:肝腎経:滋陰・強壮・益精補血・緩下・養血熄風:3~5g。:制首烏は補益肝腎、生首烏は潤腸・瀉下・消炎が強い

当帰・帰身きしん・当帰尾・帰尾・全当帰:甘辛温:心肝脾経:補血・行血・潤腸通便・調経:補血の主薬:1~3~4~10g、当帰生姜羊肉湯は10g以上。血液循環には全当帰、血虚・月経には帰身、瘀血には帰尾。

赤芍:ボタン科シャクヤクの根:苦微寒:肝経:清熱涼血・活血袪瘀:

補血養陰・鎮静鎮痛には白芍を、涼血逐瘀・活血袪瘀には赤芍を使い、

赤芍と白芍を併用することもある。

枸杞子クコシ:ナス科クコの成熟果実:甘平:肝腎経:滋補肝腎・生精血・明目:肝庇護作用(一貫煎)・腎虚・眼科に杞菊地黄丸:2~6g。

明目には、杞菊地黄丸に巴戟天・肉ジュ蓉などの補腎薬を配合する。

阿膠アキョウ・阿膠珠ジュ・陳阿膠・驢皮膠ロヒキョウ:甘平:肺肝腎経:補血・止血・滋陰・潤燥:滋潤・滋養・止血・皮膚枯燥・口唇乾燥などの燥証・虚証・血証に有効:1~5gを衝服。

養心安神薬の 竜眼肉・桂円:ムクロジ科リュウガンの果肉:甘温:心脾経:補心安神・補脾養血・鎮静・健胃・滋養:

滋陰養血の方剤:当帰補血湯・帰脾湯・人参帰脾湯・八珍湯・十全大補湯。

帰脾湯:気血双補・健脾益気・養心安神:脾不統血:白朮3 茯神3 黄耆2 竜眼肉3 酸棗仁3 人参3 木香1 炙甘草1 当帰2 遠志1.5 乾生姜1 大棗1.5:出血傾向・動悸・不安感・不眠・多夢に。

人参帰脾湯:

気血両虚の足痛に十全大補湯:気血双補・補腎陽:人参4、白朮4、茯苓4、甘草1 大棗1 生姜1+当帰4 白芍4 川芎4 熟地黄4+黄耆・桂枝(肉桂):気血双補・袪寒(桂枝湯が入っている)

扶正培本に、3,養陰生津よういんしょうしん:陰虚の症状で、咽乾唇燥、口乾喜飲、大便乾結、五心煩熱、舌紅無苔または剥苔、脈沈細数。

扶正培本に、養陰生津の生薬

肺陰を養う:天門冬・麦門冬・百合。

天門冬3~5g:滋陰潤燥・清熱化痰・肺陰虚の虚熱の咳嗽:清熱滋陰潤燥化痰。

麦門冬3g:潤燥生津・化痰止咳:性質が滋潤で、肺を滋補するが痰を生じ易いので解表には不利。

百合ひゃくごう:甘苦微寒潤:ユリ科オニユリ・ハカタユリの鱗茎:潤肺止咳・寧心安神:「神農本草経」の中品「味は甘く平。川谷に生ず。邪気、腹脹、身痛を致死、大小便を利し、中を補い、気を益す」。

消渇しょうかち:水を飲んでもいやされない甚だしい口渇:糖尿病などにも現れる口渇。

胃陰を養う:沙参・麦門冬・石斛・玉竹ギョクチク(アマドコロ)。

北沙参3g:南沙参3~6:肺陰虚(肺陰不足):乾咳・嗄声・口渇・咽乾・皮膚乾燥・泡沫状や膿性の喀痰は気管支炎・上気道炎などでみられ、生津潤肺で清熱滋潤の沙参・麦門冬・玉竹・百合で対処する。

麦門冬3g:潤燥生津・化痰止咳:性質が滋潤で、肺を滋補するが痰を生じ易いので解表には不利。

石斛3gせっこく:生津益胃・滋陰潤肺・補陰:胃陰を滋養する:養陰生津薬。

玉竹ぎょくちく:ユリ科アマドコロの根茎:甘微寒:滋陰潤肺・養胃生津よういせいしん:養陰生津薬

肝陰を養う:熟地黄・何首烏・白芍・枸杞子・女貞子・亀板キバン・鼈甲ベッコウ。

補血薬で滋腎陰薬の何首烏かしゅう:タデ科ツルドクダミの塊状根:苦甘渋温:肝腎経:滋陰・強壮・益精補血・緩下・養血熄風:3~5g。:制首烏は補益肝腎、生首烏は潤腸・瀉下・消炎が強い

枸杞子:クコの実:滋補肝腎・生精血・明目

滋陰・補陰の女貞子:モクセイ科トウネズミモチの成熟果実:苦平:肝腎経:補腎滋陰・養肝明目:中心性網膜炎に網膜炎方。

亀板きばん:ツチガメ科クサガメの腹部甲羅・背部甲羅:滋陰潜陽・強筋骨・涼血補血・止血

鼈甲3g~10gべっこう先煮:シナスッポンの背部甲羅:滋陰・清熱・破血・軟堅・散結:強壮・滋養・鎮静・造血作用

腎陰を養う:熟地黄・枸杞子・桑椹子そうじんし(クワの実)・女貞子じょていし・亀板きばん・鼈甲べっこう。

桑椹・桑椹子:クワ科マグワの成熟果実:甘微酸温:養血袪風・補益肝腎・利尿・鎮咳・肝腎平補

滋陰・補陰の女貞子:トウネズミモチの成熟果実:モクセイ科トウネズミモチの成熟果実:苦平:肝腎経:補腎滋陰・養肝明目:中心性網膜炎に網膜炎方

鼈甲3g~10gべっこう先煮:シナスッポンの背部甲羅:滋陰・清熱・破血・軟堅・散結:強壮・滋養・鎮静・造血作用。

扶正培本に、3,腎陽を温める生薬:鹿茸ロクジョウ・巴戟天ハゲキテン・仙霊脾センレイヒ(インヨウカク)・仙茅センボウ・補骨脂ホコッシ・附子・肉桂・菟糸子トシシ・肉ジュ蓉ニクジュヨウ。

左帰丸の鹿茸ろくじょう:鹿角・血茸片:甘・鹹・温:温腎補陽・強筋骨・健胃・生精補血:婦人科疾患は多くは「帯脈」の異常、これに鹿茸が効くので子宮疾患・子宮筋腫に鹿茸を使う:女性に効く:0.3~0.5g。

腎精不足の治療薬の巴戟天はげきてん:アカネ科巴戟天の根:辛甘微温:腎経:温腎補陽・強筋骨・袪寒湿:淫羊藿(仙霊脾)と同じ:下焦の腰や膝の寒湿による障害に適す:腎陽虚によるED・失禁・頻尿に用いる:巴戟去痹湯:2~4g。

巴戟去痹湯はげききょひとう:進行性筋萎縮症:巴戟天3 杜仲3 牛膝3 続断3 杉寄生5 山茱萸2 山薬4g、水煎服。

仙霊脾センレイヒ・淫羊藿インヨウカク・羊藿・碇草イカリソウ:辛温:肝・腎経:補腎壮陽・袪風湿:腎陽虚のEDや婦人の月経不順や不妊症の陰陽両虚に八珍湯と用いる:2~4g。

淫羊藿酒:淫羊藿30g、枸杞子30g、党参、巴戟天、胡芦巴を米酒500mlに20日間つけて5ml服用:インポテンツや女性の不妊症(八珍湯)。

仙茅:ヒガンバナ科仙茅(キンバイザサ)の根茎:辛熱有毒:腎経:温補腎陽・強筋骨:補益薬として長期服用しないこと。陰虚火旺の熱証や鼻出血には使用すべきではない:二仙湯:1~3g。

補骨脂ほこつし・破故紙はこし:マメ科オランダヒユの果実:辛苦大温:脾・腎経:補腎温脾・固精縮尿:五更瀉ごこうしゃに用いる:完穀下痢に少し炒めて粉末にし毎回0.5g服用:1~2g多服禁止。

完穀下痢:食べた物がそのまま下痢に出てくる。

「五更」とは夜明け前の時で、天の気の陰気が最盛になり陽気が萌芽するが、腎陽虚衰では至るべき陽気が至らないので、陰気がきわまって下行し、毎日この時間だけ下利するので五更泄瀉という。

肉桂(桂皮)・官桂(旧名)・桂心:甘辛大熱:クスノキ科肉桂(桂皮)の枝皮・幹皮:甘辛大熱:肝腎脾経:温中補陽・散寒止痛・温補腎陽:循環促進・健胃:桂枝は温経通絡・肉桂は温腎袪寒:粉末0.2~0.8g。

菟糸子:ヒルガオ科ハマネナシカズラの成熟種子:辛甘平:肝腎経:補腎益精・明目・止瀉・安胎:菟糸子は平補で性質は穏やか:眼科は八味丸加菟糸子:遺精に菟糸子丸:2~6g。

菟糸子丸:清代・沈氏尊生書:温腎固渋:菟糸子 15g,茯苓、山薬、蓮子肉、枸杞子各10g:丸とし毎回2g。

菟糸子丸:補腎益精:菟糸子30g 五味子30 細辛30 沢瀉30 茺蔚子60 熟地黄60 山薬45gを丸薬とし毎回2gを服用。

腎精不足の薬の肉ジュ蓉にくじゅよう:ハマウツボ科ホンオニクの肉質茎:甘鹹温:腎大腸経:滋腎益精・補陽潤腸:強壮・通便:肉ジュ蓉は穏やかで補陽でも燥でなく滋してしつこくないので従容という:2~6g。

扶正培本に、温補腎陽の方剤:附子理中湯・附子湯・真武湯・参附湯・朮附湯・桂附地黄湯・還少丹。

附子理中湯(人参3 白朮3 乾姜2~3 甘草3 附子1)

附子湯:温陽益気、固本培元:附子1 人参3 白朮5 茯苓4 白芍4。

真武湯:回陽救逆・温陽利水:附子1 茯苓5 白朮3 白芍3 生姜3:冷えとストレスをとるが脾虚は補わないので、腎炎の浮腫への留守番処方は真武湯合参苓白朮散とする:足冷の動悸・下利に適用。

参附湯:回陽救逆:人参5 附子4。

朮附湯:漢・金匱要略:白朮3g 炮附子2g。 

桂附地黄湯:桂附八味丸:八味丸、みな同じ:金匱要略。

還少丹:明・医方集解:山薬 牛膝 遠志 山茱萸 茯苓 五味子 巴戟天 肉ジュ蓉 石菖蒲 ショ実 茴香 枸杞子 杜仲各一両、熟地黄一両半。

上述の治療法は、常に併用したり、臨床での弁証に基づいて運用すべきである。

肺癌

1,肺癌:「肺脾気虚」:六君子湯加減

2,肺癌:「肺腎陰虚」:六味丸・生脈散・百合固金湯・瓊玉膏

3,肺癌:「気陰両虚」には、大補元煎、参耆麦味地黄湯の加減

以上の三種に、

痰が黄変し、痰中帯血、胸悶気急で、舌紅、舌苔黄じ(黄色がかった厚ぼったい舌苔)、脈滑数は、痰熱を兼挟。

瘀滞では、脇肋脹痛、唇紫暗、舌質青紫となる。

肺癌の症状:咳嗽・胸痛、気急。喀痰は稀薄・粘稠・血痰。肺咳は咳して喘息・唾血。心咳は咳し心痛・咽腫喉痹。肝咳は両脇下痛、転則不可、転則では両肢下満す。末期は大骨枯槀ココウ・大肉陥下・胸中気満・喘息・内痛肩項ケンコウ・身熱。

槀コウ:枯れる。

1,肺癌:「肺脾気虚」:短気自汗、咳嗽、痰多稀薄、全身疲労、納呆腹脹、大便稀溏キトウ、舌淡、歯痕、舌苔が白く厚い、脈沈緩か濡ジュ。

胃もたれ(納呆のうほう・胃中不和)。

肺癌:肺脾気虚には益肺健脾:六君子湯加減。四君子湯は健脾益肺し、半夏・陳皮は袪痰化湿する。適宜、山薬・黄精・沙参などを加えて補益力を増強する。

山薬さんやく:薯蕷しょよ:長芋:ヤマノイモ科甘微温:脾肺経:補脾胃・益肺腎・止瀉・袪痰3~10~30~40g。

黄精おうせい:ユリ科黄精カギクルマバナルコユリの根茎:甘微温:脾肺経:補脾潤肺:滋補強壮・抗菌・肺陰虚の咳嗽:3~10g。

北沙参3g:南沙参3~6g:肺陰虚(肺陰不足):乾咳・嗄声・口渇・咽乾・皮膚乾燥・泡沫状や膿性の喀痰は気管支炎・上気道炎などでみられ、生津潤肺で清熱滋潤の沙参・麦門冬・玉竹・百合で対処する。

麦門冬3g:潤燥生津・化痰止咳:性質が滋潤で、肺を滋補するが痰を生じ易いので解表には不利。

玉竹ぎょくちく・葳蕤いすい:ユリ科アマドコロの根茎:甘微寒:滋陰潤肺・養胃生津よういしょうしん:養陰生津薬:力は弱いの多量に用いる3~5g、強心には10~20g。ハシリドコロは毒草。

2,肺癌:「肺腎陰虚」:乾咳無痰・痰少なく排出困難・陰虚火旺し喀血・胸悶気短・心煩口渇・潮熱盗汗(寝汗)・午後頬紅キョウコウ・腎陰不足で嗄声サセイ(しわがれ声)・舌紅で乾・舌苔薄或は光剥コウハク・脈細数など陰虚内熱の象。

気短:呼吸が浅く速い状態・息切れ。

肺癌:肺腎陰虚には滋腎潤肺:六味丸・八仙丸・生脈散・百合固金湯・瓊玉膏などの加減。

六味丸は補腎陰し、生脈散や百合固金湯は肺陰を清養し、肺腎双補の効果あり。

八仙丸:喘息の腎陰虚の場合(肺腎陰虚)は、緩解期であれば八仙丸であり、普段から飲ませる。八仙丸の代用には小建中湯を使う。但し、帰耆建中湯では、薬効がすべて上の方に行き、肺に行くが腎には行かない。

肺腎陰虚の八仙丸・八仙長寿丸・麦味地黄丸:六味丸+五味子・麦門冬

生脈散:人参6・五味子3・麦門冬6(生脈散合炙甘草湯・生脈散合補中益気湯・生脈散合真武湯)

肺腎陰虚の薬の百合固金湯:滋陰清肺・化痰止咳:肺陰虚に使用:生地黄4 熟地黄3 麦門冬5 玄参3 当帰3 白芍3 百合5(冷やし潤し止咳) 川貝母3(潤し冷やす) 桔梗2 生甘草3:八仙丸。

瓊玉膏けいぎゃくこう:生地黄の搾汁32.0g・茯苓末8.0g・ニンジン末2.8g・枸杞子末0.9g沈香末0.1g・蜂蜜(白蜜)38.5g。

3,肺癌:「気陰両虚」

症状:咳嗽して痰は少ない。または血痰、精神倦怠乏力、口乾喜飲、大便乾結、舌質淡紅、歯印あり、脈沈細。脾肺気虚では精神疲乏・食少・腹脹。

肺陰虚では、口乾喜飲、大便乾結、咳嗽痰少、血痰。

肺気陰両虚を呈する時は、益気養陰するために四君子湯合八仙丸や補中益気湯合八仙丸とする(六君子湯では陰虚を助長する畏れ)

肺癌:「気陰両虚」には、大補元煎、参耆麦味地黄湯の加減。

人参・黄耆は補気。養血滋潤の熟地黄・当帰・山茱萸・枸杞子・麦門冬。

痰熱兼有では、貝母・栝楼・天花粉・魚醒草・黄芩・知母・白花蛇舌草を加え、袪痰清熱する。

瘀血兼有では、当帰尾・赤芍・桃仁・紅花・鬱金・延胡索・丹参・三棱・莪朮などを加え活血袪瘀する。

大補元煎だいほげんせん:明・景岳全書:人参1~2両、炒山薬2銭、杜仲2銭、熟地黄2銭~3両、当帰2~3銭、枸杞子2~3銭、山茱萸1銭、炙甘草1~2銭。

参耆麦味地黄湯