2024/10/25
葛根湯の口訣集
葛根湯:太陽傷寒・表実:無汗・辛温解表・生津・舒筋(太陽膀胱経上の筋肉を緩める):葛根8 桂枝3 麻黄4 白芍3 甘草2 生姜4 大棗4:首から上の初期の炎症症状を緩和する:無汗であることが重要。
無汗:肌がカサカサしている状態:麻黄湯・葛根湯・小青竜湯・大青竜湯・越婢加朮附湯・桂枝麻黄各半湯・桂枝二麻黄一湯・桂枝二越婢一湯などが適用する。
葛根湯は首から肩にかけてのこわばり、こり、痛みをとる方剤として有名。
首、肩、背中の上部、上腕痛(臑痛)、肘のあたりの痛み、関節の痛みをとる解表剤。
葛根湯・・(無汗・肩こり・頭痛・悪風・体痛・鼻水):桂枝湯に葛根8g、麻黄4gを加える。項背強痛し無汗の者を治す。
桂枝湯:辛温解肌・調和栄衛:表寒・自汗・表虚を補う:
桂枝4 芍薬4 大棗4 生姜4 甘草2g。
自汗:汗をかきやすく首筋や脇の下の肌に手で触れるとしっとりしているカゼの表虚症には桂枝湯類・五苓散・防已黄耆湯・玉屏風散を使い、自汗では葛根湯や麻黄湯・小青竜湯・大青竜湯を使ってはいけない(壊病エビョウを招きやすい)。
葛根湯の葛クズは生津作用ショウシンサヨウで、咽の渇きを止める作用がある。
太陽膀胱は下焦にあり、津液を内臓している。
津液の流れも肝と関係がある。小便が気持ちよくでること、涙の出が悪い人、汗の出が悪い人も肝と関係がある。
葛根湯の麻黄、桂枝、生姜は辛温で散寒し、発汗解表する。
葛根湯の芍薬は、葛根を助けて筋脈を緩め、血流を促進する。
葛根湯は、無汗で首から背中にかけて凝るのが、用いる目標である。風邪でも首・背中のこりがなければ葛根湯は用いない。
臑:じゅ・じ・どう:ひつじや豚の前足。前足の上半部。足の関節。やわらかいさま。すね。膝からくるぶしまでのあいだ:臑ジュ(上腕)・臂ヒ(前腕):
臑痛ジュツウは上腕痛:
臂痛ヒツウは前腕痛。
歯痛の処方:葛根湯(風寒証)、葛根湯加桔梗石膏(風寒化熱証)、立効散(軽い風熱証):これらは歯齦の痛みは少ないが熱による歯齦や口内の熱感に適用。歯齦の化膿・出血はみられない場合に適用。
葛根湯は、発汗解表だけでなく、津液を上昇させて項背の筋脈を滋養して拘緊を緩和する作用がある。
葛根湯は太陽陽明合病に用いる:悪寒、発熱、頭痛、無汗、軽度の腹痛、下痢、裏急后重、脈浮数、舌苔薄白微黄(風寒化熱した状態):カゼの下痢に用いる。
太陽の病たる、脈浮に、頭項強ばり痛み、而して悪寒す:傷寒論。
陽明病の症状:「身熱、発汗、不悪寒、反って悪熱、脈洪大」:傷寒論。
裏急后重は、腹痛で肛門が重い状態で、まだ便が残っているような感覚である:葛根湯。
葛根湯の適応:下痢する急性大腸炎などの発熱性疾患:悪寒・発熱・しぶり腹の下痢:太陽陽明合病:腹痛は無いかあっても軽度。
「漢方診療三十年」大塚敬節:119、腎出血とフルンケル(癤・癰の初期には、葛根湯・十味敗毒湯を使用する。少陽病の七症がでてきたら小柴胡湯、十味敗毒湯で完治:フルンケルと腎出血。十味敗毒湯は経絡のめぐりを促進する。
葛根湯の適応:悪寒・発熱から発赤・腫脹が体表部や身体上部の陽部(太陽膀胱経)にある化熱現象のフルンケル等に適用する:慢性の発赤腫脹には不適用:慢性では臓腑に病変が裏証であるため葛根湯は不適。
癤・癰の初期には、葛根湯・十味敗毒湯を使用する。少陽病の七症がでてきたら小柴胡湯・小柴胡湯加桔梗石膏などの柴胡剤を使う。
七症の一症を伴う癤・癰:小柴胡湯加桔梗石膏、初期の場合は葛根湯・癤・癰などの化膿:葛根湯加桔梗石膏、十味敗毒湯加桔梗石膏。
(葛根湯:麻黄湯去杏仁+葛根8・白芍3・生姜4・大棗4)
十味敗毒湯:風湿熱:袪風化湿・清熱解毒:防風2.5 荊芥1.5 独活1.5 柴胡2.5 桜皮2.5 桔梗2.5 川芎2.5 茯苓2.5 乾生姜1 甘草1.5 +(連翹):華岡青洲が作ったおできの薬。現在では風熱で赤く汚いニキビにも使う。
麻黄湯や葛根湯を用いて汗が出たが、熱も寒気がとれない時に桂枝湯(重要:風邪の名残には柴胡桂枝湯が良い)を用いてよいことがあるが、脈は浮弱である。
江戸時代の人が「横なで」の症という小児が舌をペラペラと出して、口のまわりをなめまわすような状態があれば葛根湯がよく効くと村井琴山は言っている。(口の周囲の「横なで」はアトピー体質の子供による「横なで」による皮膚炎の症状:アトピーには脾虚の薬を併用しないと治らない)。
葛根湯を、古人は破傷風のような症状にも用いている。
つまり「口噤コウキンして語るを得ず、剛痙をなさんと欲す、葛根湯之を主る」という、
葛根湯は破傷風の初期で、顔面筋肉が拘攣し口が開かないものに使用された。
葛根湯は本来、口の開かないものに使った。
「漢方診療三十年」大塚敬節:急性多発性関節リウマチも、軽症のものは葛根湯でよくなることがある。18歳の男子、二週間前から、朝起きた時、背中が痛み、手足の関節が痛むが仕事を始めると痛みは軽くなるという。
「漢方診療三十年」大塚敬節:十日前突然顔面神経麻痺(三叉神経痛)にかかり左眼を閉じることができなくなり、口がゆがみ、気分が重いという。脈浮大で首がこる。葛根湯を5日分服用で九分通り治りあと五日分で全治。
葛根湯の適応:三叉神経痛など、顔面部の痛み。
風寒の邪気が陽明経に侵入して、顔面紅潮、前額部痛、発熱悪寒、無汗、目の痛み、鼻が乾く、安眠できない、脈浮長あるいは脈浮大、舌苔薄白などの時は、葛根湯を用いて、少し発汗させる。
陽明経:足の陽明胃経と手の陽明大腸経の経脉のこと。陽気の最も盛んな経脈・病態。
半夏白朮天麻湯は、耳だれ・蓄膿・めまい・頭痛に使うが頭重が主で、前額部痛だけで後頭部痛には効かない。前額部は胃腸の経絡:半夏白朮天麻湯は前額部の頭痛・頭重で、釣藤散は後頭部の頭痛である:「小児のちくのう」はほとんど半夏白朮天麻湯。
半夏白朮天麻湯:化痰熄風・補気健脾・利水消食:製半夏3 天麻2 白朮3 人参2 黄耆2 茯苓3 沢瀉2 蒼朮3 陳皮3 神麹2しんきく 麦芽2 黄柏1 乾姜1:脾気虚の痰濁上擾たんだくじょうじょう:神麹 麦芽は消化促進剤。
肝気上逆の釣藤散:平肝潜陽・明目・補気健脾・化痰(痰飲):脾胃気虚・痰湿の肝陽化風に:釣藤鈎 菊花 防風 石膏 麦門冬 半夏 陳皮 人参 茯苓 生姜 甘草:釣藤鈎+菊花で肝鬱に適応。
「漢方診療三十年」大塚敬節:中耳炎の急性期の初期には葛根湯の応ずるものが多い。
柴胡剤や苓桂五味甘草湯や桂枝加黄耆湯で中耳炎によいものがある。
黄汗おうかん:金匱要略水気病:黄汗の病たる、身体腫れ、発熱し、汗出でて渇し、状は風水の如く、汗衣を濡らして、色 正黄にして蘗汁バクジュウの如く脈自ずから沈:桂枝加黄耆湯の黄汗。
柴胡剤は七症を治す:往来寒熱・胸脇苦満・口苦・咽乾・目眩・黙黙不欲飲食・心煩喜嘔しんぱんきおう。どれか一つあれば適応となり、附随する他の症状も軽快する:耳は肝経の通る所で耳の症状に柴胡剤が効く。
上焦部の痛みである寝違え(落枕らくちん)は急性病で、風寒邪+血瘀です。疎経活血湯に桂枝加朮附湯あるいは桂枝湯、激痛の場合は葛根湯や独活葛根湯(風寒湿邪)を合方する。
寝違え:
疎経活血湯`桂枝加朮附湯
疎経活血湯+桂枝湯
疎経活血湯+葛根湯
疎経活血湯+独活葛根湯
独活葛根湯:葛根5 桂枝3 芍薬3 麻黄2 独活2 地黄4 大棗1 生姜1 甘草1:落枕らくちん(寝違え)・肩こりの特効薬。
独活:セリ科のシシウド・ウコギ科のウド:袪風湿・通経絡:特に項背部の筋肉や下半身の関節の風湿を去る・臀部の痛み・両足のしびれ。
前腕痛:臂痛ヒツウ。
上腕痛:臑痛ジュツウ。
咳嗽のある場合に麻黄湯や葛根湯(二者とも無汗に適応)で発汗すると、皮毛と肺は表裏関係にあり発汗によって肺が乾いて、かえって咳嗽を増悪させることがある。喘息には適応する。
太陽膀胱経の流注不利で項背強ばること「几几シュシュ」の葛根湯証(麻黄湯加減証)。
「傷寒論」で「項背強ばること几几」である「几几」とはもともと短翼の鳥が飛び立とうとして飛び立てず、頸を伸ばしている状態の形容であり、項背強痛して伸びない状態のたとえである。
食欲がなく、食べ物の味がしない:味覚障害このような感冒に、葛根湯などの発汗剤を使用すると、悪化するので、注意が必要である:柴胡剤を使う:黙黙不欲飲食もくもくとしていんしょくをほっせず。
柴胡剤は七症を治す:往来寒熱・胸脇苦満・口苦・咽乾・目眩・黙黙不欲飲食・心煩喜嘔:七症を記憶すること。
五十肩の初期(肩背部の緊張、裏に異常の無いもの):葛根湯(独活葛根湯・湿痺の五十肩には二朮湯が適応)。
荊防敗毒散けいぼうはいどくさん:風寒の風邪一般の葛根湯より守備範囲が広くて繁用されるべき風寒湿の処方だが余り使われていない。
荊防敗毒散:風邪薬のファーストチョイス:辛温解表・袪風邪湿邪・止咳化痰・止痛:荊芥3 防風3 羗活2 独活2 柴胡3 前胡2 川芎2 桔梗1 枳穀2 茯苓3 炙甘草1 生姜1 薄荷1。
袪風薬:秦艽・防風・荊芥・羗活・独活・川芎・桂枝・細辛(風邪フウジャを駆逐する薬)。
荊芥けいがい:辛微温:袪風解表・止血・消炎・咽痛には古人は必須とした:風病・血病・産後の主要薬:辛温でも燥ではない。
防風:セリ科防風の根:辛甘微温:膀胱肝脾経:袪風解表・袪湿解痙・止瀉止血:発汗・解熱・鎮痛:袪風の主薬。
羗活きょうかつ:セリ科羗活の根や根茎:辛苦温:散寒燥湿・解表(カゼ薬)・袪風湿・止痛;羗活は風邪薬によく配合される:荊防敗毒散・川芎茶調散・疎経活血湯・大防風湯。
独活どっかつ:袪風湿・通経絡:特に項背部の筋肉や下半身の関節の風湿を去る・臀部の痛み・両足のしびれ:独活寄生湯。
独活寄生湯加減:調補気血・舒筋活絡:気血虚痹:独活3 桑寄生4 秦艽3 当帰3 白芍4 川芎3 生地黄3 杜仲4 牛膝3 党参3 茯苓4 桂枝2 炙甘草1.5:肝が昂ぶりの無い、単純なリウマチに使われる。
川芎は活血作用は強く、薬を上に引き上げる作用があるので、服用するとのぼせる:当帰芍薬散:当帰3 白芍4 白朮4 茯苓4 沢瀉4 川芎3gは、のぼせる人には使わない。
出産後、乳汁分泌不足に適応:葛根湯(項背拘急・乳房が脹って痛む:表証の薬)。
葛根湯の適応:乳腺炎(発赤・腫脹・悪寒発熱)。
木通0.8〜3g:アケビ科アケビ、ウマノスズクサ科木通の木質茎:苦寒:「通草つうそうウコギ科カミヤツデ」の原名?:降火利水・通乳:中品:悪蟲を去り、脾胃の寒熱を除き、九竅、血脈、関節を通利す。
通草つうそう1〜2g・白通草:ウコギ科のカミヤツデの茎の髄:甘淡寒:肺胃経:清熱利水・通乳:催乳の常用薬。妊婦の服用は避けた方が良い:下乳方。
葛根湯の適用:痺証(上焦・陽部:筋肉攣急、疼痛:肩や二の腕の痛み)。
痒み、赤み、熱感のある湿疹・皮膚炎の初期:葛根湯(表証の方剤なので慢性病や裏証の皮膚炎には不適:葛根湯などの表証に用いる発表剤は皮膚炎を一般に悪化させる)。
葛根湯の適応:上半身の緊張・項背の拘急・肩こり(裏証の無い単純性のもの):バイオリン奏者は練習だけでは体幹ジストニアで背骨がゆがんでくる(音楽家ジストニア)ので、水泳などで補正している・歯科医師の職業寿命を延ばす。
葛根湯の適用:風寒の表証でも、やや化熱した病態(咽痛・咽喉や顔に赤み、粘鼻水、舌尖の赤味:温病)葛根が辛涼発表薬であることから使える。
寒冷性蕁麻疹でも赤い膨疹(冷えで発症して、風寒化熱型):葛根湯(葛根は冷やす作用もある)。
中耳炎の初期には、葛根湯。
葛根湯の適応:麦粒腫(ものもらい)の初期で発赤・腫脹。
赤く腫脹したフルンケル・カルブンケル・面疔の初期(悪寒・発熱)葛根湯(初期で症状が強い時は、葛根湯加桔梗石膏)
葛根湯の適用:鼻風邪、鼻づまり、鼻水、クシャミ:無汗であり、胃腸症状など裏証がないことを確認する。
裏証りしょう:胃腸症状のこと、食欲不振、悪心おしん、嘔気おうき、嘔吐、下痢、腹痛など。裏証には、少陽病の小柴胡湯などが適応する。
葛根湯の適応:項背が強ばり前額部痛の副鼻腔炎(ちくのうしょう)で、「肩こり」の有る者で「額の痛み」のあることが特徴。