うつ病

2024/10/29

憂鬱感・鬱病・くよくよ

ちいさなことに思い悩み、常に気分が晴れない状態・鬱病。

1,心脾気結の鬱病:帰脾湯加鬱金・香附子(香蘇散で代用)

香蘇散:理気和胃・理気解表 :香附子4、紫蘇葉1、陳皮2、甘草1、生姜3g。

鬱金うこん・広鬱金・川鬱金・玉金:ショウガ科姜黄キョウオウ(広鬱金を一般に使う)、鬱金ハルウコン(川鬱金は薬性が温和・温鬱金)の塊根:疏肝理気・解鬱袪瘀・止痛・健胃・利胆:気の流れを促す:ターメリック:1〜3g。

2,肺気不足の鬱病:補肺湯(人参 黄耆 五味子 熟地黄 桑白皮 紫苑)加白朮・陳皮。人参養栄湯合補中益気湯半量。

人参養栄湯(和剤局方):気血双補・安神・袪寒・止咳:黄耆2 桂枝2.5 人参3 白朮4 茯苓4 甘草1 当帰4 芍薬2 地黄4 遠志2 陳皮2 五味子1)川芎が無い。

燥熱乾咳に肺を潤す瀉白散の桑白皮:桑マグワの根の皮:甘・辛・寒:瀉肺平喘・行水消腫・利尿・消炎:肺熱を冷やし利水消腫す。

紫苑:辛苦温・辛燥:キク科シオンの根:慢性咳嗽多痰に止咳化痰: 温肺薬:温め乾かすので肺陰虚の乾咳や声がれや口乾には禁忌:紫苑の量が多いと咽がカラカラになる:止嗽散。

止嗽散:痰がからみ何日も続く咳:疏風解表・化痰止咳:桔梗 荊芥 紫苑 白前 各3g 百部4 陳皮2 炙甘草1g:咳嗽の留守番処方(弁証しないで咳止め薬として処方できる):製品無し。

1,心脾気結の鬱病は、過度の心労・過緊張・思慮過度・疑念などによって気滞が生じて気が結して鬱病が生じる。

特徴は、くよくよして憂鬱(心神不足)、胸脇苦満で脹って苦しい(肝鬱の症状)、肝鬱気滞の症状がある、思慮過度により食欲不振(脾虚の症状)、鬱病の初期症状は不眠である。言語顛倒して意味不明。

「脾は思を主る」。
思慮過度は脾を傷り食欲不振となる。
肝鬱は気滞を伴う。

気滞の一般症状:胸脇が脹って苦しい・イライラし顔が赤くのぼせる・頭痛・眩暈・嘔気・むね焼(嘈雑そうざつ)・腹満して便秘・ゲップや放屁やため息がよくでる・脹痛が特徴・頭脹痛・胃脹痛・腹満痛・経前乳脹痛:加味逍遙散・柴胡疏肝湯(四逆散に川芎、香附子、青皮ジョウヒを加えたもの)。

労心思慮して驚悸し煩熱すると心神不足を生じ、不眠となる。
思労して心脾を傷ると、健忘気味となり、失敗を重ねる。

2,肺気不足の鬱病

虚弱体質が根底にあり(小建中湯は虚弱体質、特に小児にもちいられるが、平素丈夫な人でも、無理を重ねたり、疲れているときは小建中湯証をあらわす)、虚弱体質で気の生化不足や、過度の悲しみで肺気を消耗し鬱病を発生する。

「悲しみは肺を傷る」。肺癌が増えているのは、悲しみが満ちている世相の反映?なのか?

帰脾湯:心血虚・脾気虚の心脾両虚に使う・気血両虚:心臓を治す動悸の薬。疲れると生ずる動悸は心血虚の症状。心脾両虚では食欲があまりない。失恋した時の症状。

肺は気を主り、外は皮毛に合し、表を主る。肺気不足では、肺の宣散粛降が障害されて気滞が生ずる。そのため、胸苦しい・息切れ・弱々しい咳嗽・疲労倦怠感・舌淡・脈弱など「気虚の症状」を伴う。

気虚は一般には、脾気虚を示すが、肺気虚は脾肺気虚と同じ構造で、疲倦・自汗・気短(息切れ)・心悸・懶言(らんげん:話すのがおっくう)・面色蒼白・咳嗽・多痰の症状に加え、脾気虚の食少・軟便・面色萎黄・食べるとすぐ胃がもたれたり気持ちが悪くなる時は六君子湯を使う

気虚の全身症状:倦怠無力感(疲れると誰でも鬱的になる)・元気不足・息切れ・物を言うのがおっくう(懶言)・動きたがらない・声に力がない(語声低微)・自汗・舌質が淡色あるいは胖大・脈は細数で無力:

補中益気湯(手足の怠さ・倦怠感強い)

六君子湯(気虚痰飲の基本処方:もたれやすい人に)

人参養栄湯(心神不足)

参苓白朮散(脾虚・嘔吐や下痢し易い)

帰脾湯(気血両虚・心脾両虚)

十全大補湯(気血両虚で腎虚)。

十全大補湯:気血双補・補腎陽・袪寒:人参4、白朮4、茯苓4、甘草1 大棗1 生姜1(以上は四君子湯)+当帰4 白芍4 川芎4 熟地黄4g(以上は四物湯)+黄耆・桂枝(肉桂は補腎陽):(十全大補湯には桂枝湯が入っている)

参苓白朮散:補気健脾・理気化湿・止瀉:党参 白朮 茯苓 炒白扁豆 炒山薬 薏苡仁 蓮子 陳皮 縮砂 桔梗 炙甘草:消化不良・泥状便・水様便・カゼ時の嘔吐・ノロウイルスの嘔気や嘔吐。

補中益気湯:補気健脾・昇陽虚寒・甘温除熱:黄耆4、甘草1.5 人参4 当帰3 陳皮2 升麻0.5 乾姜0.5 柴胡1 白朮4 大棗2:中気下陥を昇陽挙陥するので、怠さの強い肝炎に使う。

六君子湯:健脾益気・和胃化濁:党参4 茯苓4 炒白朮3 炙甘草1 製半夏4 陳皮3 乾姜0.1 大棗2.

人参養栄湯(和剤局方):気血双補・安神(人参と茯苓と遠志)・袪寒(桂枝)・止咳(人参と五味子と地黄):黄耆2 桂枝2.5 人参3 白朮4 茯苓4 甘草1 当帰4 芍薬2 地黄4 遠志2 陳皮2 五味子1):川芎は無い。

帰脾湯:気血双補・健脾益気・養心安神:脾不統血を治す:白朮3 茯神3 黄耆2 竜眼肉3 酸棗仁3 人参3 木香1 炙甘草1 当帰2 遠志1.5 乾生姜1 大棗1.5:出血傾向・動悸・不安感・不眠・多夢に。

鬱病は、精神的原因で起こるので、漢方薬に精神療法(認知行動療法)などを併用することが大切である。