2024/12/28 12/29 12/31 2-25/1/22 9/19
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎の処方:体質+鼻炎になってからの症状。表虚・衛表不固・裏証・脾虚・痰飲・血虚・瘀血・肝鬱・腎虚を弁別して論治する。
桂枝湯(表虚・ジワジワ自汗・悪風・発熱・裏証無し)
桂枝加黄耆湯(自汗・悪寒発熱・鼻水多くだるい)・
六君子湯(脾虚痰飲・食少・怠い)
六君子湯合真武湯(脾虚痰飲・腎陽虚:足冷・便溏・畏寒・久病)
六君子湯合真武湯合血府逐瘀湯(脾虚痰飲・腎陽虚:足冷・便溏・畏寒・久病による瘀血)
柴胡桂枝湯(自汗・裏証:悪心・食少・軟便)
黄耆(気虚)
補中益気湯(臓腑の気の不足・中気下陥で手足だるい)
玉屏風散(表虚・衛表不固・衛気の不足で易感冒)
桂枝加黄耆湯合玉屏風散(自汗・鼻水多く易感冒)
小建中湯(腎虚で脾虚肝乗で肝血虚)
補中益気湯合玉屏風散(気虚・食少・手足怠い・易感冒)
荊防敗毒散(悪寒発熱・無汗・疲れ易い)
小青竜湯(悪寒発熱・無汗・多痰・面浮腫)
防已黄耆湯(悪寒発熱・自汗・浮腫・怠い)
麻黄湯(ゾクゾク悪寒・鼻づまり・体痛・喘鳴)
抑肝散加陳皮半夏(一年中鼻炎・易怒・額青筋)
半夏白朮天麻湯(陰天時悪化・目眩・前額痛・怠い・鼻づまり・消化不良・胃もたれ)
人参湯(胃冷・蒲団にサラサラよだれ・食少・食事で改善)
半夏瀉心湯(胃熱・食欲亢進・嘔気・食少・心下痞・軟便)
玉屏風散;衛表不固:黄耆8 白朮3 防風3g。
黄耆:補気升陽・固表止汗・利水消腫・托毒排膿:補気元気・止汗・皮膚病の主薬。
漢方では花粉症は、花粉が原因だとは考えない。体の中の不足である陽虚(脾陽虚・腎陽虚)や血虚(肝血虚・心血虚)や気虚(脾気虚・肺気虚・腎陽虚)や腎陰虚、袪邪する必要のある邪の存在の風邪・寒邪・湿邪・湿熱・痰飲などの影響と考える。
花粉症は、いわば毎朝 風邪にかかるような症状である。
漢方では、感冒は風邪フウジャが体内に侵入してくると考えるが、花粉症もフウジャの侵入だとしている。
風が体内に入り易い状況があるのは、第一に、体に何か不足(衛気虚・衛表不:玉屏風散)するものがあり、それで邪が侵入しやすい状態になっていると考える。
体の中の虚という状態を補う補虚(表虚・裏虚・陽虚・陰虚・血虚・腎虚)と、袪邪(風邪・寒邪・痰飲・湿邪・湿熱)という風邪を取り除くことを同時に行う必要がある。
虚にはどのようなものがあるか?
先ず陽気の不足(陽虚:冷え症)がある。冷え症の人は、風にあたっただけで冷え、それが風邪の症状を引き起こす。
たとえば、陽虚で衛表不固の人は床屋に行くと、その後必ず、鼻水・クシャミがでて、その後、風邪症状で、喉が痛くなって、ひどくはならず、やがて治っていくことを繰り返す人がいる:体表面の気虚:
桂枝湯(表虚)・桂枝加黄耆湯・玉屏風散・補中益気湯合玉屏風散。
陽虚・(表虚:桂枝湯加減)の人は、このように風邪カゼを頻繁に繰り返す:真武湯。
二番目には栄養の不足(血虚)である:四物湯・小建中湯・十全大補湯・補中益気湯・帰脾湯・当帰芍薬散・加味逍遙散・黒逍遥散・当帰建中湯。
血虚の特徴は、肌のカサカサや髪の毛のパサつきです。
血虚の症状:顔色が淡白でつやがない、面色萎黄、肌のかさつき・髪の毛のパサつき・頭暈、目のかすみ、舌質淡、脈細、間歇的な動悸、持続性の動悸、不眠、多夢、手足のしびれ、手足のつり。
虚には、血虚の他に気虚もあり、気虚が最も多く、防衛力の低下である(脾気虚・肺気虚)。益気固表する必要があり、黄耆や補中益気湯・六君子湯・玉屏風散ぎょくへいふうさん・ぎょくびょうぶさんは益気固表する。
表を固める衛表不固に対しては玉屏風散(黄耆8 白朮3 防風3):
表衛不固ひょうえふこ:毛穴が開いておりフウジャが侵入し易く、自汗があり、鼻閉を起こしたりカゼをひきやすい:花粉症の鼻炎に玉屏風散と他剤を併用して、または単独で使う:玉屏風散合桂枝加黄耆湯など。
白朮:キク科オオバナオケラの根茎:甘微苦:温微香:補脾益気・燥湿利水:健胃・利尿・鎮静:風湿のリウマチなどの関節痛に用いる。
蒼朮は辛烈・燥散の作用が強く補益力は弱いが鎮痛作用がある。
白朮は補益力があり健脾の補脾益気・燥湿利水に適す。
気虚には、「衛気の不足」と、「臓器の気の不足」がある。
「陽気の不足(陽虚)」も「血の不足(血虚)」も抵抗力の低下をもたらし、衛気の体を守る働きがなくなると容易に風邪をひくようになり花粉症となる。
衛気えき・・陽気の一部で脈外をめぐり迅速にして滑らかに(剽悍滑利ひょうかんかつり)臓腑や肌表腠理キヒョウソウリのいたるところを温養し温潤し、肌表を衛り汗腺を開閉し、外邪に抵抗するので衛気エキ(守る気)という。
桂枝・桂枝湯は衛気を調整する。
桂枝湯:辛温解肌しんおんげき・調和営衛:表寒や表虚を補う:
桂枝4 芍薬4 大棗4 生姜4 甘草2:
桂枝湯:肌表キヒョウの邪を外解ガイゲし、営衛エイエを調和する。
適用には自汗であることが必要。
陽虚の症状は、
冷え症で寒がり(畏寒)、手足冷(真武湯・八味丸)、
下利軟便(真武湯・真武湯合半夏瀉心湯)、
夜間排尿(八味丸・牛車腎気丸・真武湯)、
起床時に顔がむくむ(真武湯・当帰芍薬散・苓姜朮甘湯)。
痰飲も顔がむくむ:二陳湯・平陳湯・胃苓湯・苓桂朮甘湯)、
小便は無色透明(八味丸・真武湯・当帰芍薬散・苓姜朮甘湯)、
胸を縮こませた格好で寒さを嫌う。
体表面の気虚だけの人はすぐ風邪をひくが、裏証などがひどくならなず鼻炎症状だけが続く。
体表面の症状はクシャミ・鼻水・頭痛・喉の軽い痛み痒み・目の痒み程度でおさまり、食少や悪心、吐き下しなどの裏証にならず、いわゆる鼻炎症状だけになる:桂枝加黄耆湯・玉屏風散。
鼻炎でも裏証(胃不和・軟便・悪心・食欲不振):
柴胡桂枝湯・六君子湯合真武湯を示す重症者もいる。
陽気不足や血虚や気虚が原因で、防衛力が低下しているため毎朝花粉症に繰り返しかかり続けることになる。
「衛気の不足」には黄耆や桂枝湯・玉屏風散・桂枝加黄耆湯が適応し、
臓腑の気の不足には補中益気湯・真武湯・六君子湯・参苓白朮散などを使う。
補中益気湯:補気健脾・昇陽虚寒・甘温除熱(疲労時の発熱を治す):
黄耆4、甘草1.5 人参4 当帰3 陳皮2 升麻0.5 乾姜0.5 柴胡1 白朮4 大棗2:中気下陥を昇陽挙陥キョカンするので、怠さの強い肝炎に用いる。
風邪にかかりにくくなる処方は、補中益気湯・小建中湯・黄耆建中湯・玉屏風散・補中益気湯合玉屏風散・桂枝加黄耆湯・六君子湯合真武湯・補中益気湯合真武湯。
小建中湯証:腎虚・肝血虚(脾虚肝乗)・脾虚の三点セットに適応する。
小建中湯:胃の陰虚(麦門冬湯)による脾虚肝乗の胃痛の薬:緩急止痛(疲労で腹痛が生ずる体質)・温中補虚・除熱:疲労発熱(少し遠くに出かけると疲労で腹痛・発熱し風邪をひく子供など)。
小建中湯の腹痛は「中焦虚寒」で「脾虚肝乗」に用いる。
小建中湯の有名な説明文:外出したりして「疲れるとお腹が痛い(脾虚肝乗)」と言い、動悸・鼻衄ビジク(鼻血)などもあり、「手足の筋がだるく痛んで(肝血虚)火照り(陰虚:骨蒸潮熱)」、「喉が乾いた(陰虚)」と言う子供には小建中湯を与える。
骨蒸潮熱:発熱の状態が骨髄から発するようにおぼえ、陰虚内熱が原因で潮熱が裏の奥深いところからでる状態:午後あるいは夜間の発熱:陰虚の症状。
骨蒸潮熱の症状は、潮熱・盗汗・喘息して無力・心煩・浅眠・手の平が常に熱い・小便黄赤・歯が黒くなる・腰痛・二十三蒸の一つ。
子供の鼻血に小建中湯。
脾虚の特徴は、「面蒼白」、「下利」、「顔がむくむ」(脾虚痰飲:六君子湯)・・の三点が重要。
脾虚の症状:面蒼白・顔色が悪い、下利、顔がむくむ、脾の運化が弱いので味がしない(六君子湯)・四肢無力・中気不足で倦怠無力感(補中益気湯)・息切れ・懶言ランゲン・語声低微・舌質淡で歯痕がある・舌苔白・脈細軟。
痰の病(二陳湯・平陳湯・半夏厚朴湯・苓桂朮甘湯・導痰湯・温胆湯・二朮湯)は、脾虚により産生されるので、健脾薬(六君子湯・補中益気湯・苓桂朮甘湯・参苓白朮散・人参湯・半夏白朮天麻湯など)と併用する。
一年中鼻炎が起きている人は、「陽虚」「血虚」「臓腑の気の不足」(脾虚痰飲など)のどれかが原因である。
一方、春になると鼻炎になる人は、「体表面の気が不足(表虚:桂枝湯加減・玉屏風散)」しているがもちろん臓腑の気の不足も並存している。
表虚に対しては、衛表不固エヒョウフコして対処するが臓腑の気の不足も考慮する(玉屏風散・桂枝湯・桂枝加黄耆湯・補中益気湯などに脾虚・痰飲・瘀血・腎虚などを考慮する)。
陽虚の場合:両足の浮腫・泥状~水様便(脾虚・脾陽虚)、尿がうすく量多(腎陽虚)、手足の冷え(脾陽虚・腎陽虚・脾腎陽虚)がある。
陽虚で発汗(冷汗を多汗)する場合など、つまりショック状態などの危急の場合には、附子でなければ汗は止められない。
四逆湯:附子1、乾姜2、炙甘草3:回陽救逆。
参附湯:人参10g、附子4g):回陽救逆。
陽虚の四肢強直:陽虚の四肢の筋肉や関節の強直は、慢性病の消耗により陽気が外泄し、筋脈が温煦オンクされないために生じる:冷えによる陽虚の足のつりなどだが、血虚による足のつりもある。
陽虚では、面色不華で顔色が悪い・面色蒼白、或は黒っぽい顔色ですすけた顔色である。舌質は血色がなく(舌淡)、舌苔が白い(苔白)。これは疑いもなく陽虚のあらわれである。
陽虚の症状は、冷え症で寒がり(畏寒)、手足冷、夜間排尿、起床時に顔がむくむ(牛車腎気丸・真武湯・附子・人参湯・苓姜朮甘湯・小建中湯)(痰飲でも顔がむくむ場合は平陳湯・胃苓湯・苓桂朮甘湯)、小便は無色透明、胸を縮こませた格好で寒さを嫌う。
陽虚は体を温める力が不足した状態です:
人参湯(脾陽虚)
八味丸(腎陰陽両虚)
真武湯(腎陽虚)
小建中湯(脾陽虚・腎虚)
苓姜朮甘湯(寒湿)
大建中湯(脾陽虚)
四逆湯(深刻な陽虚を回陽救逆)
参附湯(深刻な陽虚を回陽救逆)
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(疝痛:寒帯肝脈)
呉茱萸湯(中焦実寒・寒帯肝脈)
安中散(胃実寒)
温経湯(寒帯肝脈・下焦の衝任虚寒・血瘀・血虚・陰虚火旺)。
温経湯:温経散寒・補血調経・活血化瘀・益気和胃:下焦虚寒から血瘀となり血虚が生じ酷ければ陰虚火旺となる:半夏4 麦門冬4 呉茱萸1 乾姜1 当帰3 桂枝2 白芍2 川芎2 人参2 甘草2 阿膠2 牡丹皮2:太陽・少陰が同時に病む両感証・寒帯肝脈。
少陰病は、概括して言うと陰陽偏衰の病変に属しているが、陽虚の証候が主となっている。
陽虚:四肢強直・面白・手足冷・陽虚がひどいショックで状態では低体温症(四逆湯)で、冷汗でびっしょり(危急状態)、意識混濁・寡黙・人の識別不能・大小便の失禁・舌質淡・舌苔薄白で潤・脈沈細で渋結・ときに四肢がピクピクひきつる筋惕肉瞤きんてきにくじゅん(筋肉がピクピク痙攣する)。
陽虚の筋惕肉瞤(四逆湯)ではなく、
痰飲原因の筋惕肉瞤の場合:苓桂朮甘湯・平胃散合五苓散(胃苓湯):
肝風によるものは抑肝散加陳皮半夏。
小建中湯:腎虚の腰痛で、食欲がなければ(脾虚)、陰虚でも陽虚でも小建中湯。
いつもかったるい人の腰痛には黄耆建中湯を使う。
腰を伸ばせるが腰を曲げている人・曲げて歩く人には
帰耆建中湯・独活寄生湯合小建中湯。
帰耆建中湯:腰や背中の痛み。疲れると、すぐに腰や背中が痛くなり、居動作に困難を覚える。のばすことが可能な腰まがりの処方:帰耆建中湯・独活寄生湯合小建中湯。
小建中湯は中焦虚寒で脾虚肝乗に用いる:脾虚肝旺ひきょかんおうして肝の疏泄そせつが大過となると遺精が生じ、脾虚肝乗では裏急し腹痛となる。
「裏急」は、筋脈の攣縮のことで「腹痛」をさす:
脾虚肝乗では小建中湯を使う。腹痛便秘には当帰芍薬散を使う。
当帰芍薬散:肝血虚・脾虚湿滞:当帰3 白芍4 白朮4 茯苓4 沢瀉4 川芎3:過敏性大腸炎(真武湯も適用):脾虚では当帰芍薬散の川芎・当帰がもたれ胃痛になる人もいる。
「裏急后重」は、腹痛が生じて肛門が重い状態で、まだ便が残っているような感覚だがスッキリでないしぶり腹の状態。
「後重・后重」は「しぶりばら」のことで、便がスッキリ出ず、肛門部が重苦しい症状。
陽虚では体が冷えている人に小建中湯(腎虚・肝血虚・脾虚)を使えるが糖尿病には膠飴があるので小建中湯は使えない。
陰虚では咽が乾き、手の平、足の平の、いわゆる陰の部分がほてる状態に小建中湯は適応する。
(小建中湯は脾虚なら腎陽虚・腎陰虚にも使える)。
小建中湯:桂枝4 芍薬6 大棗4 生姜4 甘草2 膠飴20:老人や子供に多い便秘で、「疲れて(陰虚)・咽が渇いて(陰虚)・お腹が痛い・手足が怠い(脾虚肝乗」の便秘や発熱に用いる。
腎の陰陽両虚(腎虚)で脾虚で、無汗には小建中湯、汗っかき(自汗)には黄耆建中湯。
黄耆建中湯:体力がかなり衰え、すぐ寝込んでしまう人。年中カゼをひいているような怠さがあり、すぐ息切れして、汗が皮膚から漏れ出る。寝たきりで衰弱し、床ずれにもよい。
理中湯(人参湯):温中散寒・補気健脾:脾陽虚・胸痞(金匱要略):人参3 乾姜3 白朮3 甘草3。
体表部が不足していると、春に鼻炎がでてくるタイプとなるが、これに対応する処方の選択が難しい。最初は鼻炎によく効いた処方が、少し経つと全く効かないことがある。これは鼻炎の原因が体表面の不足だけでなく、色々な原因が現れるためである。
さまざまな処方を用いなければならないのは、今までの体質と鼻炎になった時点での体質が人によって違うからである。
体表面の症状(表証)は、時期によって分かれる。
鼻炎を感冒と考えれば、感冒の初期と後期の違いがある。
初期はクシャミ・鼻水・鼻閉などの単なる表証であるが、花粉症のように一ヶ月も続くとしたら内傷病などが顔を出し、初期には効いた処方がずっと同じでよいはずがない。
感冒とアレルギー性鼻炎の初期症状は、同じで、ただ涙が出ないとか、目や鼻が痒いなどの程度の違いである。つまり、鼻炎は、感冒の初期とほとんど同じである。そこがアレルギー性鼻炎の対処が難しい理由であるが、その鼻炎症状以外に現れた症状をどのように認識するかが鼻炎の治療には重要となる。
アレルギー性鼻炎を区別する症状として、自汗か無汗か(表虚か実症か?)、咽乾か不渇か(陰虚か熱邪か陽虚か寒湿か風湿か風寒湿か?)、むくみは(痰飲:寒痰・湿痰・熱痰?)?、胃腸の不調や下利は(裏証・脾虚・腎虚・脾腎陽虚は?)?などを確認する。
アレルギー性鼻炎になったばかりなら、的確な処方なら三日で治るが、その後一週間くらいして、また同じような症状がでた場合は、その時点では最初の処方とは異なっている。
カゼの初期なら、悪寒・発熱・頭痛・体痛で自汗ならば桂枝湯を使う。
しかし、この症状に何となく胃不和があり、胃のあたりが重苦しくつかえる裏証となれば柴胡桂枝湯の適用となる。
たった一つの症状の違いで、病理も処方も違ってくる。
桂枝湯:辛温解肌しんおんげき・調和営衛:表寒や表虚を補う:
桂枝4 芍薬4 大棗4 生姜4 甘草2:
桂枝湯は肌表きひょうの邪を外解がいげ し、営衛を調和する。
適用には自汗であることが必要。
柴胡桂枝湯は、小柴胡湯の証に似て(柴胡証の七症)悪寒、発熱、関節痛、頭痛、腹痛に用いる。そのため、柴胡桂枝湯は風邪のこじれたものや胃炎、胃潰瘍、胆嚢炎、虫垂炎、肝炎に用いる。
柴胡証の 七症:往来寒熱・胸脇苦満・口苦・咽乾・目眩・黙黙不欲飲食・心煩喜嘔どれか、一つあれば柴胡剤(半表半裏証)を使える。
半表半裏証(柴胡証):病が太陽病の表を離れたが、陽明病の裏にも入っていない表と裏の間にある少陽の経にある証で発汗剤でも瀉下剤でもない和解剤(三禁湯)を使う。三禁:汗・吐・下を禁ずる処方が柴胡剤。
アレルギー性鼻炎の症状には、三つの分類に分かれる。
一つ目は、外感病の初期のカゼの症状が早ければ11月から翌年5月初めまで同じように続く場合である。
二つ目は初期症状からすぐに変わり、裏証(胃腸症状:内傷病:柴胡桂枝湯・六君子湯など)となる人である。
三つ目はひどいアレルギー性鼻炎の方で、最初から内傷病(裏証:臓腑の不調症状・発熱や強い怠さ)がでる人になる。
内傷とは、たとえば七情内傷・飲食不摂生・労働過多・房事不節などで、臓腑機能を内損する現象を指す。内傷病は内傷によって生ずる病のこと。
外感病か内傷病かをまず区別する。アレルギー性鼻炎の症状は、感冒の初期と同じで外邪を感受した外感病(桂枝湯加減)である。
内傷病は、体内の不足(気虚・脾気虚・肺気虚・血虚・陽虚・陰虚・腎虚)や異常(痰飲・陰虚・湿熱)によって生じるもので、慢性病はほとんどが内傷病である。
外感病の分類:悪寒・発熱の状態。
一つ目は、悪寒と発熱が同時に発生し、ゾクゾクして顔がボーッとする(桂枝湯加減・荊防敗毒散・小青竜湯等)。
二つ目は、ソクゾクと悪寒が強く熱感が少なく顔が蒼白い(麻黄湯・荊防敗毒散など)。
三つ目は、発熱が強く喉が渇き悪寒が少ない(風溫ふうおん:温病うんびょう・銀翹解毒散・桑菊飲ソウギクインなど)。
荊防敗毒散:辛温解表・袪風邪・袪湿邪・止咳化痰・止痛:
荊芥3 防風3 羗活2 独活2 柴胡3 前胡2 川芎2 桔梗1 枳穀2 茯苓3 炙甘草1 生姜1 薄荷1:無汗で疲れ易い体力の無い人の風邪。無汗で体力のある人のカゼは麻黄湯だが子供には注意して使う。葛根湯が無難。
鼻炎のほとんどは風邪フウジャが侵入してザワザワしている悪風(桂枝湯類)であるので、冷え(寒邪)の侵入(風寒・悪寒:麻黄湯)は余りない。
この時点では、自汗か無汗かが重要な鑑別点となる。悪風でザワザワして自汗なら桂枝湯で、冷えの侵入でゾクゾク(悪寒)して無汗なら麻黄湯(体質は丈夫)・荊防敗毒散(体質はやや虚弱)である。
麻黄湯を服用三日間でそのまま治った花粉症が、翌年には効果が無かった症例がある。
自汗の判定は、自汗は、汗をかきやすく首筋や脇の下の肌に手で触れるとしっとりしている中風の表虚症:桂枝湯類・五苓散・防已黄耆湯(普段から汗かき)・玉屏風散(鼻炎になってから自汗)を使う。
他方、無汗は、脇の下はサラサラ・スベスベしている状態で、
荊防敗毒散・葛根湯や麻黄湯・小青竜湯・大青竜湯を使う。
荊防敗毒散:辛温解表・袪風邪・袪湿邪・止咳化痰・止痛:
荊芥3 防風3 羗活2 独活2 柴胡3 前胡2 川芎2 桔梗1 枳穀2 茯苓3 炙甘草1 生姜1 薄荷1:無汗で疲れ易い体力の無い人(麻黄が無い)の風邪。
葛根湯の適用:鼻風邪、鼻づまり、鼻水、クシャミ:無汗であり、胃腸症状など裏証(裏証:柴胡桂枝湯など)がないことを確認する。
麻黄湯:無汗・辛温解表・発散風寒(悪寒)・解表宣肺・脈浮緊・太陽傷寒:麻黄5 桂枝4 杏仁5 炙甘草1.5。
杏仁は苦温で肺を利し、麻黄の宣肺平喘作用を助ける。
小青竜湯:無汗・辛温解表・温肺化痰・平喘止咳・利水:
麻黄 乾姜 細辛 五味子 桂枝 白芍 甘草 各3g 半夏6g:
「乾姜・細辛・五味子の三薬」の配合は、肺の水飲を温散し鼻水を抑え、止咳平喘の効果があり張仲景がよく用いた。
小青竜湯の症状:無汗で、悪寒と発熱が同時に出て、痰が多く、小便不利、或は浮腫があるという特殊な症例に使う。
小青竜湯:寒がりで背中がゾクゾクし・四肢冷・小便不利・溢飲イツインの浮腫・四肢や顔のむくみ・下腹部の腹満・くしゃみ・鼻水・呼吸困難・泡沫状の白色痰・喘鳴・下痢・嘔気・顔色蒼白。
溢飲:水液が体表に留まり、顔面や四肢などに浮腫の見られる病証。
大青竜湯:麻黄湯(麻黄5 桂枝4 杏仁5 炙甘草1.5)+生石膏10・生姜2・大棗3:無汗煩躁・辛温解表・表寒裏熱:清熱除煩・利水・止咳平喘(生石膏は裏熱を冷まし清熱除煩す)。
麻黄湯:無汗・辛温解表・発散風寒(悪寒)・解表宣肺・脈浮緊・
太陽傷寒:麻黄5 桂枝4 杏仁5 炙甘草1.5。
鼻炎で自汗の処方は、桂枝湯・桂枝加黄耆湯・桂枝湯合玉屏風散(黄耆・防風・白朮)・代用処方に桂枝湯合防已黄耆湯(防風の代わりに防已が入っている)を使うが、内傷が現われれば効果は数日しか効かない。
汗が出る自汗の鼻炎には、桂枝湯の加減法を使う。
通常自汗の鼻炎には、桂枝湯に黄耆が加わった桂枝加黄耆湯である。
桂枝加黄耆湯:桂枝湯に黄耆3gを加える。黄色い汗を治す。腰以上或は脇の下の発汗(自汗)で、衣類を濡らし色が黄柏汁のようで、両脛が冷え、体が重痛する者を治す:桂枝加黄耆湯:金匱要略:桂枝湯+黄耆3g。
黄耆は痹証に用いる:末梢神経麻痺・脳卒中後の半身不随(補陽還五湯)・リウマチ・肩関節周囲炎:これらは気血両虚(十全大補湯・帰脾湯)のため循環障害で疼痛やしびれである。
疼痛には黄耆桂枝五物湯を用いる。
運動麻痺には桃仁・紅花・川芎・地竜ジリュウを
黄耆桂枝五物湯や十全大補湯に配合。
補陽還五湯:気虚・血虚・瘀血の 脳卒中後遺症・心筋梗塞・高次脳機能障害:代用処方は十全大補湯合血府逐瘀湯:益気活血・和営通絡:
黄耆40g 当帰3 赤芍3 川芎3 桃仁2 紅花3 地竜3:適用には気虚が必ず必要。
十全大補湯:気血双補・補腎陽・袪寒:四君子湯+四物湯+黄耆・桂枝(肉桂):気血両虚の症状:筋の萎縮・四肢の無力・頭暈・目花・倦怠無力感・動悸・息切れ・自汗・盗汗・舌淡・苔少・脈微細。
黄耆桂枝五物湯:営衛気血不足し邪が血分に入り渋滞を生じ、血痹し肌肉が頑麻ガンマ、痹痛などの証を治す。(しびれに適応):金匱要略:
黄耆3 桂枝3 白芍3 大棗3 生姜6g(甘草2gは無い)。
桂枝湯:桂枝4 白芍4 大棗4 生姜4 甘草2g。
黄耆が多い補陽還五湯は、脳卒中の半身不随に使うが、意識が澄明で体温正常時だけ適用。脳出血が止まり、脈軟弱(気血両虚)を確認して使い、脈浮は禁忌。発病後3ヶ月以内は効果があるが、過ぎると余り効果はない。
浮脉(脈浮)は陽気が盛んであることを意味するので補陽還五湯は脳卒中を悪化させる。
脳卒中に大柴胡湯:肝胆の火が上攻した顔を真っ赤にした頭痛、肩こり、耳鳴、耳聾、眼目の雲翳ウンエイ・赤眼疼痛、発狂、脳卒中の肝火上炎、動悸、及び胆胃不和による嘔吐不止、心下急痛、胸脇痞硬痛などの証で、口苦、舌紅、舌苔黄。
鼻炎には自汗なら桂枝加黄耆湯であるが、黄耆の入っている黄耆建中湯は、芍薬が倍量と膠飴が入っているので、効果の方向性は体の中の方ばかりに効き外感病の鼻炎は治らない(内傷病の鼻炎には使う)。当帰建中湯も当帰が入っているので体の中の方しか効かない。
鼻炎で、汗がダラダラでるものには、生脈散(人参・五味子・麦門冬)が使える。体の気が一過性に不足した気虚で、汗が止まらない状態が風が吹いた途端に出て、クシャミも出る人には劇的に効くが多くはない。それ以外の自汗にはほとんど桂枝湯加減を使うがザワザワする悪風が目標である。ゾクゾクは悪寒で荊防敗毒散・麻黄湯・葛根湯を使う。
一般に、悪寒・悪風と発熱が同時にでて自汗ならすべて桂枝湯加減をつかう。
無汗で悪寒でゾクゾクして発熱し体力のある人は、麻黄湯を使うが、
無汗で疲れ易い体力の無い人の風邪には荊防敗毒散を使う。
麻黄湯や葛根湯は発汗し過ぎるので使い方は難しい。
荊防敗毒散:辛温解表・袪風邪・袪湿邪・止咳化痰・止痛:
荊芥3 防風3 羗活2 独活2 柴胡3 前胡2 川芎2 桔梗1 枳穀2 茯苓3 炙甘草1 生姜1 薄荷1:無汗で疲れ易い体力の無い人の風邪(麻黄が無いためやや弱い体質に使える)。
小青竜湯の鼻炎の症状:普段の症状(内傷病)ではなく、外邪で鼻炎になった時に初めて生ずる症状を確認することが大切。
無汗で、悪寒と発熱が同時に出て、痰が多く、小便不利、或は浮腫があるという特殊な症例に使う。
鼻炎が何年も続いている場合は普段からのすべての症状(内傷病)を聞く。
小青竜湯:無汗・辛温解表・温肺化痰・平喘止咳・利水:
麻黄 乾姜 細辛 五味子 桂枝 白芍 甘草 各3g 半夏6g。
「乾姜・細辛・五味子の三薬」の配合は肺の水飲を温散し止咳平喘の効果がある。
苓甘姜味辛夏仁湯:温肺化痰し薄い鼻水を止める・平喘止咳・浮腫を利水:茯苓4 製半夏4(化痰) 杏仁4(温肺) 乾姜2 細辛2 五味子3 炙甘草2:
苓甘姜味辛夏仁湯合半夏白朮天麻湯:化痰熄風・補気健脾・利水消食:製半夏3 天麻2 白朮3 人参2 黄耆2 茯苓3 沢瀉2 蒼朮3 陳皮3 神麹2 麦芽2 黄柏1 乾姜1:脾気虚の痰濁上擾(鼻汁・鼻閉・頭重・中耳炎の流膿)
痰濁上擾:眩暈し頭重し頭冒感があり、悪心胸悶・動悸、少食多寝でひどければ嘔吐し目が回る。舌苔白じ、脈濡滑じゅかつ、鼻汁・鼻閉・中耳炎の流膿:半夏白朮天麻湯は化痰熄風・補気健脾・利水消食。
中耳炎:耳は肝経が通る・咽頭炎・熱状・化膿:小柴胡湯加桔梗石膏。
桔梗石膏は清熱解毒・袪痰排膿。
麻黄附子細辛湯:温経散寒法(温経湯も)で表裏双解する:
麻黄4 附子1 細辛1:肩や肘の屈曲や関節痛に使う:
風寒+陽虚に適応。冷えて活動エネルギーがない状態で手足の冷えと倦怠感があるカゼの初期に使いる。
寒湿の股陰痛:大腿内側に腫瘤・しびれ・疼痛・長引くと足甲部の浮腫や両下肢の脱力:胃苓湯加桂枝・附子・地竜。
風溫の鼻炎は温かい冬に少し出る:風溫の無汗(鼻炎)には桑菊飲・銀翹散を使い、自汗には桂枝湯加減を使う。
桑菊飲そうぎくいん:疏散風熱・宣肺止咳:杏仁3 連翹4 薄荷2.5 桑葉3 菊花3 桔梗2 生甘草1.2 芦根6ロコン:秋風の温燥の邪による咳のカゼに用いる温病の薬:製品無し。
葦茎湯いけいとう:千金方:清肺化痰・袪瘀排膿:芦根3 生薏苡仁10 冬瓜仁7 桃仁4:肺化膿症・肺炎の肺熱・肺癰に特効する:
喉頭痛・熱感・煩躁・鼻出血・上気道炎・急性気管支炎・肺炎・肺膿瘍:
コロナのカミソリを飲んだ時のような咽喉痛に適用する。
芦根ろこん・葦茎いけい:イネ科・アシ:清肺瀉熱・清熱生津:抗菌・解毒:魚・蟹・ふぐ中毒:肺熱に用いる:葦茎湯・銀翹散・桑菊飲に配合:5~20g。
銀翹散ぎんぎょうさん:辛涼透表・清熱解毒:連翹30 金銀花 桔梗 薄荷 竹葉 生甘草 荊芥穂 淡豆鼓 牛蒡子:麻疹に辛涼透疹作用:咽痛が目標・口渇・舌尖紅・高熱。咽喉痛:咽喉痛は清熱の銀翹散が適応。各社製品あり。
桑菊飲:疏散風熱・宣肺止咳:杏仁6 連翹4.5 薄荷2.5 桑葉5 菊花3 桔梗6 甘草2.5 芦根6g(葦茎6g)。製品無し。
杏蘇散きょうそさん:涼燥の邪(秋の冷えた乾燥した風で生ずる)・風寒を温めて解表・宣肺化痰:蘇葉1ソヨウ 半夏1.5 茯苓2 炙甘草0.5 前胡2ゼンコ 桔梗1 枳殻1.5 生姜1.5 橘皮1キッピ 大棗2個 杏仁2g:製品無し。
紫蘇葉・白芷びゃくし・桔梗:寒を散じ、膈塞かくそく(上下不通)して通じないものを利し、表邪を発散する。
内傷病の鼻炎:風邪の初期の症状を伴う鼻炎症状がすぎると、
二番目として内傷症状が出てきて、浮腫や体のだるさや胃腸の不調を訴える人がいる:柴胡桂枝湯。
三番目として、脾虚だが、花粉で胃熱の食欲亢進になる人もいるが、そうではなく食欲が落ちる人がいる。
胃熱の処方:大柴胡湯(心下痞硬)・防風通聖散・黄連解毒湯・三黄瀉心湯・半夏瀉心湯(心下痞)・苓甘姜味辛夏仁黄湯・調胃承気湯・大承気湯・小承気湯・温胆湯・涼膈散・竹筎・大黄・センブリ。
四番目として、鼻炎が何年も続いている内傷病の場合で、久病は腎虚か瘀血だが、鼻炎の場合に限っては腎虚(真武湯・八味丸・六味丸類・桂枝加龍骨牡蠣湯・柴胡加竜骨牡蠣湯)をまず疑う。
五番目として、陰虚の鼻炎の症状は、鼻炎になってからの症状として
「手足のほてり」「口乾」「顔がのぼせる」の三つの症状が同時にある場合は陰虚(六味丸類、小建中湯は脾虚の腎陰虚)である。
鼻炎の初期症状では、浮腫がなかったがしばらくして浮腫が出た場合、
(1)体の怠さを伴う人と、(2)食欲不振になる人・・に分けられる。
鼻炎になってから、体が怠くなった人は湿邪や痰飲なので二陳湯や平胃散や平陳湯である。
平胃散:理気化湿・和胃:蒼朮4 厚朴3 陳皮3 大棗2 生姜1 甘草1:蒼朮が主薬の平胃散は理気し湿気を去る鎮痛剤でもある。
二陳湯:燥湿化痰:半夏5、陳皮4、茯苓5、生姜1、甘草1:痰飲の基本処方。
鼻炎になってから、食欲が落ちた人は脾虚なので、
六君子湯・小建中湯・人参湯・補中益気湯。
鼻炎になってから、顔色が悪く、食欲不振なら、香砂六君子湯や六君子湯。
浮腫があり、体が怠く、いつも眠い人は、苓甘姜味辛夏仁黄湯(支飲の胃熱上衝)を使うが、これは風邪が裏に侵入して胃腸症状に胃熱が生じて空腹感で食欲亢進する場合である。
支飲:水液が胸部から心下部にかけて停滞し、咳嗽や呼吸困難を生じる病証:木防巳湯:肺水腫・胸水による咳嗽・呼吸困難・うすい泡状の血痰・うすい多量の鼻水。
木防巳湯:支飲(胸部の痰飲・胸水)・肺水腫の呼吸困難・尿量減少・口渇・発熱、利尿・鎮静・消炎・軽度の強心:鬱血性心不全・肺水腫・心臓喘息:利水滲湿・益気・清熱:
木防已4 桂枝3 人参3 石膏10g。
木防已:ウマノスズクサ科広防已の根:苦辛寒:膀胱肺経:袪風利湿・清熱:鎮痛・口渇・胸悶・舌苔黄じ(黄色の厚い舌苔):表虚や裏虚に使用:利水消腫(肺水腫・胸水の利水)・袪風止痛(風邪薬・鎮痛剤)。
苓甘姜味辛夏仁湯:温肺化痰で薄いサラサラした鼻水を止める・平喘止咳・利水で浮腫や怠さを軽減する:
茯苓4 製半夏4 杏仁4 乾姜2 細辛2 五味子3 炙甘草2g。
乾姜・細辛・五味子の三薬の配合は、肺の水飲を温散しサラサラの痰や薄い鼻水を止め、アレルギー性鼻炎や止咳平喘の効果があり、張仲景がよく用いる、咳喘や薄い鼻水治療の薬物配合の一つである。
杏仁は苦温で肺を利す温肺薬で、麻黄の宣肺平喘作用を助ける。
159:鼻炎になってから、浮腫があり(痰飲・陽虚・湿邪)、
ムカムカ(胃気上逆)して痰(痰飲)があり軟便(脾虚)になる人は、平陳湯や茯苓飲を使う。
茯苓飲:理気化痰・ムカムカを和胃降逆・健脾益気:
茯苓5 白朮4 枳実2 陳皮3 人参3 生姜3:溜飲症状で食後ゲップや胸焼けが多くて、みぞおちあたりが常に気持ち悪い症状に適応:
胃の機能性ディスペプシア(旋覆花代赭石湯)など。
旋覆花代赭石湯・旋覆代赭湯:傷寒論:降逆化痰・益気和胃:
旋覆花2 代赭石3 法半夏5 生姜4 炙甘草2 大棗3:
痰飲による胃気上逆の症状:上腹部のつかえと苦悶感・
胃の機能性ディスペプシア。痰湿による肺気逆。
旋覆花センプクカ:上逆した肝気を正常にめぐらす:キク科旋覆花の頭状花序を包煎(全草は金沸草きんふつそう):苦辛微温:肺脾胃大腸経:止嘔逆・軟堅痰:制吐・袪痰作用。
鼻炎で、手足が冷えて、食後にお腹が痛くなれば、五積散。
五積散:「風寒湿に使う」:
1.腰冷痛、2.腰腹攣急(ぎっくり腰・腹痛)、3.上熱下冷、4.食後に小腹痛の四症が目標となる:寒いと小便頻数となる人・のぼせる人の神経痛・腰痛・手の痛みに効果がある。
五積散合平胃散:風寒湿・理気化湿・和胃。
寒湿に平胃散:理気化湿・和胃:蒼朮4 厚朴3 陳皮3 大棗2 生姜1 甘草1:
蒼朮が主薬の平胃散は、理気し湿気を去る鎮痛剤でもある:
五積散にさらに平胃散を合方すると半夏+陳皮となり袪痰する。
半夏厚朴湯:痰気鬱結に理気化痰する:化痰の半夏が主薬:
半夏6 厚朴3 茯苓5 生姜4 紫蘇葉2:
肝鬱痰飲の薬:竄痛ざんつう の薬。
五積散合平胃散:「理気袪痰」となり「痰飲除去作用」が強まる。
額が重く(陽明胃経が通る)、食欲不振の鼻炎は痰飲が原因で慢性化していることが多く、これには半夏白朮天麻湯を使う。
半夏白朮天麻湯は、痰濁上擾で上部の痰飲症状の蓄膿やアレルギー性鼻炎・(滲出性中耳炎は小柴胡湯合半夏白朮天麻湯)にはなくてはならない。
中耳炎・咽頭炎等:熱状、化膿:小柴胡湯加桔梗石膏。
黄色い鼻水や濁った鼻水は、漢方ではアレルギー性鼻炎ではなく、蓄膿症であり、くしゃみ鼻水がでても、漢方では蓄膿症なので脾虚なら半夏白朮天麻湯、食欲があれば防風通聖散や平胃散・平陳湯などが適応。
鼻炎になってから、浮腫、足冷、腰から下が怠く、腹痛や下利(白朮+白芍の組合せ)、とにかく疲れがひどい人には真武湯を使う。
真武湯:回陽救逆・温陽利水:附子1 茯苓5 白朮3 白芍3 生姜3g。
白朮+白芍の組合せは、お腹の痛みを止める薬であるので、過敏性大腸炎に使える。(白朮+白芍の組合せ:真武湯・当帰芍薬散・痛瀉要方)
寒湿の邪には苓姜朮甘湯を使うが、寒湿による腹痛の場合は真武湯を使う。
真武湯は補脾作用が無いので、脾虚のめまいや下痢には、補中益気湯や人参湯・参苓白朮散など補脾薬を併用する:真武湯は附子1 茯苓5 白朮3 白芍3 生姜3で、「冷え」と「ストレス」をとるが脾虚は補わない。
脾虚の鼻炎は食欲不振が原則(六君子湯)である。例外は、胃強脾弱(半夏瀉心湯の病理)で、胃熱があると脾虚(六君子湯・参苓白朮散・人参湯・補中益気湯)でも沢山食べられるので注意する。
鼻炎になってから、面色蒼白、或は面色萎黄で、脾虚なら六君子湯である。
脾虚の症状:面蒼白・顔色が悪い、下利・軟便、顔がむくむ、脾の運化が弱いので味がしない(六君子湯)・四肢無力・中気不足で倦怠無力感(補中益気湯)・息切れ・懶言らんげん・語声低微・舌質淡で歯痕がある・舌苔白・脈細軟。
鼻炎になってから、動悸や息切れがあれば、六君子湯合生脈散。
頻脈100前後の脈搏は動悸とみなす。
生脈散や炙甘草湯の加減は、不整脈・動悸・息切れして苦しむ・心不全・心臓の弱りによる下肢の浮腫に用いる。
自汗・悪風・浮腫(風水)・小便不利(小便がスッキリ出ない)には、自汗の防已黄耆湯合六君子湯とする。
症状によって、
防已黄耆湯合香砂六君子湯
防已黄耆湯合参苓白朮散
防已黄耆湯合半夏白朮天麻湯とする。
鼻炎で自汗の処方は、
桂枝湯
桂枝湯合玉屏風散(黄耆8 白朮3 防風3g)
代用処方に桂枝湯合防已黄耆湯(防風の代わりに防已が入っている)。
防已黄耆湯:補気健脾・利水消腫・袪風止痛・虚弱者で自汗の風水:気虚の浮腫・気虚の関節痛:黄耆5~10 木防已5 白朮3 生姜3 炙甘草2 大棗3:動くとすぐに汗がでる人・全身に痛みが動く人。
風水:全身の浮腫をともなう状態:越婢加朮湯(無汗で丈夫な人):
疏風宣肺・利水・風水に適応:気虚がみられない丈夫な体質の時に使う。気虚の風水で、息切れ・元気不足などの虚弱者には防已黄耆湯(自汗)を使う。
木防已:ウマノスズクサ科広防已の根:利水消腫(肺水腫・胸水の利水)・袪風止痛(風邪薬・鎮痛剤):袪風利湿・清熱。
木防巳湯:支飲(胸部の痰飲・胸水)・肺水腫の呼吸困難・尿量減少・口渇・発熱、利尿・鎮静・消炎・軽度の強心:鬱血性心不全・肺水腫・心臓喘息:利水滲湿・益気・清熱:
木防已4 桂枝3 人参3 石膏10g。
鼻炎になってから、自汗・寝汗(陰虚)・手足がほてり(陰虚)・咽乾(陰虚)なら黄耆建中湯(内傷病)を使うが、無汗なら小建中湯(内傷病)を使う。
黄耆建中湯(金匱要略):桂枝4 白芍6g 大棗4 生姜4(乾姜1) 甘草2 膠飴20 黄耆4。
黄耆建中湯:体力がかなり衰え、すぐ寝込んでしまう人。年中カゼをひいているような怠さがあり、すぐ息切れして汗が皮膚から漏れ出る。寝たきりで衰弱し、床ずれにもよい。
陰陽両虚:冷え症(陽虚)だが疲れると火照る(陰虚)という時、陰陽両虚の八味丸を使うが、冷えには八味丸、疲労で火照る時は六味丸か少量の八味丸を使う。
陰陽両虚(腎虚)で脾虚で、無汗には小建中湯、汗っかき(自汗)は黄耆建中湯。
鼻炎が無汗なら小建中湯(内傷病)で治る例が多い。子供の鼻炎の場合は、六君子湯や真武湯を使うことが多い。一般に、小児には小建中湯・六君子湯・参苓白朮散・小柴胡湯・真武湯を体質改善に使うことが多い。
蓄膿で、脾虚が強い場合は、脾虚の薬を一緒につかわないとなおらないし、慢性病化した時は、瘀血と腎虚をともなう。
半夏白朮天麻湯や六君子湯や参苓白朮散と補腎薬と駆瘀血薬。
慢性病化した蓄膿:半夏白朮天麻湯合真武湯合血府逐瘀湯。
慢性病化した蓄膿:六君子湯合真武湯合血府逐瘀湯。
慢性病化した蓄膿:参苓白朮散合真武湯合血府逐瘀湯。
鼻炎で、手足冷・寒がり・唾液が沢山でて枕を濡らす人は人参湯。人参湯は寒くなるとよく涎ヨダレがでて、寒暖差で太陽を見るとクシャミがでる。さらに人参湯合真武湯とする場合もある。
理中湯りちゅうとう(人参湯):温中散寒・補気健脾:脾陽虚:
人参3 乾姜3 白朮3 甘草3g。
煨生姜わいしょうきょう・乾姜:未発芽の煨生姜わいしょうきょう・ひねしょうが:大辛・大熱:心肺脾胃腎経:温中散寒・回陽・温肺化痰・健胃・止嘔:呉茱萸とともに用いて寒が中焦に凝集した状態に適応。
煨生姜わいしょうきょう・ひねしょうが。
煨ワイ:うずみ火。湿らせた和紙に包み、火の灰の中に埋めて長時間じっくり熱したもの(附子の修治法で毒性の低下した炮附子となる)。
人参湯:陽虚の原因として生野菜や生もの・冷たい飲み物で冷えてた人には人参湯。涎で枕を濡らす人や下を向いて作業をしていてサラサラしたよだれが垂れたり、電車で居眠りして涎を垂らす人が人参湯である。
理中湯りちゅうとう(人参湯):温中散寒・補気健脾:脾陽虚・胸痞:人参3 乾姜3 白朮3 甘草3g。
腎陽虚の鼻炎:腎虚で体が冷えているときは真武湯だが、真武湯合六君子湯・真武湯合補中益気湯・真武湯合半夏白朮天麻湯とすることも多い。
真武湯合六君子湯
真武湯合補中益気湯
真武湯合半夏白朮天麻湯
真武湯は、附子1 茯苓5 白朮3 白芍3 生姜3で、冷えとストレスをとるが脾虚は補わないが、白朮+白芍の組合せは、お腹の痛みを止める薬で腹痛・下利をとめるので、過敏性大腸炎に使える。
腎陰虚の鼻炎:顔がのぼせ・口が乾き(口乾)・手足がほてる時は、
麦門冬湯・六味丸・八仙丸・温経湯を症状に応じて使い分ける。
麦門冬湯:話をしていて口のまわりに白い泡が溜まる人は胃の陰虚である。陰虚で水気が不足して唾液が少なく泡になる。シェーグレン症候群などで唾液や涙液の少ない人は陰虚である。胃の陰虚は糖尿病に多い。
多食善飢で体重減少する陰虚の糖尿病の人は六味丸類+十全大補湯:
食欲が有り、よく食べるが痩せる糖尿病に使う:十全大補湯だけでは陰虚を補っていないので糖尿は悪化する。
八仙丸:医級:肺腎陰虚:地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮・五味子・麦門冬(六味丸+ 五味子・麦門冬):小建中湯で代用できる。
又は六味丸合生脈散(六味丸+人参五味子麦門冬)。
肺腎陰虚:肺結核・肺癌:乾咳・血痰・骨蒸潮熱・夜間の咳・声がれ:滋陰降火湯・八仙丸・小建中湯・生脈散合六味丸・百合固金湯。
温経湯うんけいとう:下焦虚寒のため血行不良となり血瘀が発生し、虚寒と血瘀から血虚が生じ、甚だしければ陰虚火旺が生じて上部に熱証・のぼせが現れそのため唇皸裂くんれつ・手掌が乾燥(阿膠で潤す)する病態。
温経湯:温経散寒・補血調経・活血化瘀・益気和胃:半夏4 麦門冬4 呉茱萸1 乾姜1 当帰3 桂枝2 白芍2 川芎2 人参2 甘草2 阿膠2 牡丹皮2:足冷(下焦虚寒)・唇皸裂・手掌が乾燥(陰虚火旺)。
温経湯(下焦虚寒・瘀血・血虚・陰虚火旺)。
一年中鼻炎を起こす人:抑肝散加陳皮半夏を使う。普段からイライラするが発散できず、顔を洗うとこめかみがズンズンし青筋もたち、神経質で、些細なことが気になる性格で易怒で多痰である。
鼻炎の問診:寒熱や好転要因を確認する。
何年前から起きているか?
経過と再発状況は?一年中か、春や秋の季節の変わり目か?
風寒で悪化するか、風湿や寒冷で悪化するか?
疲れると悪化するか?(気虚・血虚・腎虚)
外感病か内傷病かを決める:
外感病は外邪の風邪の侵入で「悪風で自汗:桂枝湯類」、「悪寒で無汗:麻黄湯」など、
内傷病は、気虚・血虚・腎虚・痰飲・湿邪など。
悪風自汗であるか?(桂枝湯加減法)。
悪寒が強く発熱が軽いか?(人参湯・真武湯。麻黄湯はその後発熱する)。
発熱が強く悪寒がないか?(風溫:銀翹散・桑菊飲・桑杏湯)。
手足が冷えるか?(真武湯)
顔がのぼせるか?(陰虚・五積散・温経湯など)
喉が渇く(熱・虚熱)か渇かない(冷え)か?
冷たい水が飲めるか飲めないか?(熱や口渇の判定)
くしゃみが起こるまえに、ザワザワかゾクゾクするか?(風寒:悪風か悪寒か?)
くしゃみはいつ出るか?ほとんどは起床時では痰飲や冷えと関係する。
くしゃみの好転条件は?
休んだ時(気虚・血虚)、
汗が出る時(発汗剤)、
午後か(血虚・脾虚)
無風時か?
鼻炎になってから浮腫があるか?浮腫はどこにあるか?顔か手足か全身か?
鼻水はサラサラ(冷え:小青竜湯)かベタベタか、透明か黄色味(蓄膿)がかっているか?
痰が沢山でるか?(痰飲の有無)鼻水だけでなく痰があれば小青竜湯。
鼻水がなければ陰虚の可能性がある(麦門冬湯・六味丸類)
発作の時間は、朝がひどければ痰飲か冷え。
午前中がひどければ痰飲(二陳湯・平陳湯)で、
午後の鼻炎悪化は疲れ(気虚・血虚・腎虚)。
日晡所(夕方)悪化は、胃腸と関係する(脾虚:補中益気湯や六君子湯)
一日中悪化している鼻炎は、邪実で実証である(葛根湯・防風通聖散)
一日中悪化している鼻炎は、痰飲で実証(半夏白朮天麻湯)
夜中に鼻炎が酷いのは、腎陽虚(冷え・真武湯・八味丸)・瘀血である。
鼻炎の好転条件
発汗すると楽になるなら、発汗剤(葛根湯・麻黄湯)を使えば良い。
入浴して温まると楽になるなら、温める方剤を使う
(真武湯・人参湯・呉茱萸湯・温経湯)
休んだり寝ると楽になるなら、虚証なので気虚・血虚・腎虚を補えばよい。
食事をすると楽になるのは、胃腸の冷えか、胃腸の不足の脾虚を補う。
運動で汗をかくと楽になるのは実証が多く、鼻炎がストレスで生じているので歩くとよくなる。
顔を温めると楽な人は、冷えを温める処方を使う。
(真武湯・人参湯・呉茱萸湯・温経湯)
呉茱萸湯:散寒止嘔・温胃止痛・健脾益気:頭痛・胃痛に:
呉茱萸3、人参2、生姜4、大棗4g。胃虚寒の胃痛・嘔吐・吃逆(胃気上逆)、寒飲上逆の巓頂部てんちょうぶ の頭痛。
顔を冷やすと楽な人は、熱があることが判る(陰虚や上熱下冷は五積散・温経湯)
以上は、鼻炎になってからの症状を確認することが重要で、一年中の鼻炎は内傷病の症状をすべて確認する。