苓甘姜味辛夏仁湯の解説

2026/12/28

苓甘姜味辛夏仁湯の口訣集

苓甘姜味辛夏仁湯:温肺化痰・平喘止咳・利水:
茯苓4 製半夏4 杏仁4 五味子3 細辛2 乾姜2 炙甘草2g。

「乾姜・細辛・五味子の三薬」の配合は肺の水飲を温散し、サラサラした鼻水を止め、止咳平喘の効果がある。

苓甘姜味辛夏仁黄湯:茯苓・甘草・乾姜・五味子・細辛・半夏・杏仁:浮腫があり、体が怠く、いつも眠い人。

浮腫があり、体が怠く、いつも眠い人は、苓甘姜味辛夏仁黄湯(支飲の胃熱上衝)を使うが、これは風邪が裏に侵入して胃腸症状に胃熱が生じて空腹感で食欲亢進する場合である。

支飲:水液が胸部から心下部にかけて停滞し、支飲の咳嗽や呼吸困難や「めまい」を生じる病証:肺水腫・胸水による咳嗽・呼吸困難・うすい泡状の血痰:木防巳湯・沢瀉湯・苓甘姜味辛夏仁湯:うすい多量の鼻水。

木防巳湯:支飲(胸部の痰飲・胸水)・肺水腫の呼吸困難・尿量減少・口渇・発熱、利尿・鎮静・消炎・軽度の強心:鬱血性心不全・肺水腫・心臓喘息:利水滲湿・益気・清熱:木防已4 桂枝3 人参3 石膏10g。

木防已:ウマノスズクサ科広防已の根:苦辛寒:膀胱肺経:袪風利湿・清熱:鎮痛・口渇・胸悶舌苔黄じ:表虚や裏虚に使用。利水消腫(肺水腫・胸水の利水)・袪風止痛(風邪薬・鎮痛剤)。

胃熱の処方:大柴胡湯(心下痞硬)・防風通聖散・黄連解毒湯・三黄瀉心湯・半夏瀉心湯(心下痞)・苓甘姜味辛夏仁黄湯・調胃承気湯・大承気湯・小承気湯・温胆湯・涼膈散・竹筎・大黄・センブリ。

苓甘姜味辛夏仁湯:サラサラした鼻水の鼻炎に使う・花粉症のアレルギー性鼻炎。

「勿誤薬室方函口訣」浅田宗伯 口授、浅田惟學これのり 筆記・神林寛ひろし校訂、1878年(明治11年)

苓甘姜味辛夏仁湯:金匱要略:この方は小青竜湯の心下水気有りという処より変方したるものにて、支飲(胸部の痰飲・胸水)の咳嗽に用いる。

もし胃熱ありて上逆する者は、苓甘姜味辛夏仁黄湯を用うべし。

苓甘姜味辛夏仁湯(別名:苓甘五味加姜辛半夏杏仁湯)

「水去り嘔止み、その人のからだ腫るるは、杏仁を加えこれを主る。

その証まさに麻黄を入るるべきも、その人は遂に痹するをもって、故にこれをいれず、もしさからいてこれを入れれば必ず厥す、然るゆえんは、その人血虚するをもって、麻黄はその陽を発するが故なり」

苓甘姜味辛夏湯を服用し(苓甘姜味辛夏仁湯ではない)、胃内の水飲が除去されて嘔は止んだが、肺中に水飲が残り水気が皮毛に溢れて浮腫が生じている。水気が皮毛に溢れているときには麻黄で発散するのが通常であるが、血虚で手足のしびれがあるときに、陽気を発越する麻黄を用いると発汗過多になり、亡陽のショックをひきおこす可能性があるために、麻黄を使用してはならない、宣肺降気の杏仁で水道を通暢すれば浮腫は消退する。

苓甘姜味辛夏仁湯:温肺化痰・平喘止咳・利水:寒痰の咳嗽で、咳嗽・呼吸困難・白色でうすい多量の痰・喘鳴・くしゃみ・サラサラした鼻水・冷え:胃内停水もあることが多い、舌苔は白滑・脈滑。

苓甘姜味辛夏仁湯:小青竜湯から麻黄・桂枝・白芍をのぞき、利水の茯苓と止咳平喘の杏仁を加えたもので小青竜湯の適応で表証の無いものに用いる。急慢性気管支炎・気管支拡張症・肺気腫など寒痰に使う。

寒痰阻肺証:温肺化痰:苓甘姜味辛夏仁湯・小青竜湯・射干麻黄湯・真武湯。

射干麻黄湯:金匱要略:平喘止咳・温肺化痰:寒痰による喘咳・呼吸困難:射干2 麻黄1 生姜1 細辛0.5 五味子0.5 紫苑3 款冬花2 製半夏3 大棗2g。

射干やかん:アヤメ科ヒオウギの根茎:苦寒:肺肝経:清熱瀉肺・利咽:消炎・利尿・袪痰:感冒による咳嗽で痰が多い時にもちいる・咽喉の腫脹疼痛:2~3g:射干麻黄湯。

紫苑シオン:辛苦温・辛燥:慢性咳嗽多痰に止咳化痰:老人の乾咳など肺陰虚の乾咳・口乾には乾かす作用があり禁忌:止嗽散は間質性肺炎には禁忌。

痰湿咳嗽を温肺し乾かす款冬花カントウカ・款冬・冬花:キク科款冬ふきのとうの花蕾:辛温:肺経:鎮咳(温肺する咳止め薬)

小青竜湯:寒がりで背中がゾクゾクし・四肢冷・小便不利・溢飲イツインの浮腫・四肢や顔のむくみ・下腹部の腹満・くしゃみ・呼吸困難・泡沫状の白色痰・喘鳴・下痢・嘔気・顔色蒼白。

小青竜湯:無汗・辛温解表・温肺化痰・平喘止咳・利水:
麻黄 乾姜 細辛 五味子 桂枝 白芍 甘草 各3g 半夏6g:
「乾姜・細辛・五味子の三薬」の配合は、肺の水飲を温散し、止咳平喘の効果がある。

風寒犯肺証の主症状:咳嗽・喘鳴・稀薄で白色痰・鼻づまり・清涕サラサラした鼻水・噴嚔フンテイくしゃみ・悪寒発熱:麻黄湯・三拗湯さんおうとう・止嗽散・参蘇飲・荊防敗毒散・小青竜湯。

小青竜湯は、気管支炎、気管支喘息、喘息性気管支炎ばかりでなく、
湿性肋膜炎にも用いる。
肋膜炎は小柴胡湯が適用する場合がおおいが、肋膜の水が多くてとれない場合に、小青竜湯でとれることがある。