リウマチなどの痹証の要約

2026/3/9

痹証の要約

痹証:リウマチ・シェーグレン症候群・座骨神経痛・脊柱管狭窄症・頸椎症・カシンベック病。

その他、プルセラ症、閉塞性血栓血管炎、強皮症、結節性紅斑、結節性脈管炎、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎なども、その疾病経過中に痹証のような症状が現れることがあり、この場合も、痹証の内容を参考にして弁証論治することができる。

「痹:ヒ」とは、つまって通じないという意味。

痹証とは、風寒湿熱の邪が、人体の虚に乗じて人体に侵入し、そのため気血の運行がスムーズに行かず、経絡が滞る。あるいは、経脈が阻まれるために、痰濁や瘀血が関節や筋脈に深く入ることで生ずる。いずれの原因でも痹証は生じる。

肢体や関節の疼痛、重苦しさ、しびれや麻痺による運動障害を主症状とする病証が痹証である。臨床では漸進性あるいは反復発作の特徴をもっている。

痹証は、四肢、躯体、関節、筋肉の疼痛を主とするが、
発病は四肢だけでなく、肩、背中、脊椎、腰などの体幹部分も含む。

治療原則

1,寒ならば温め、熱ならば清熱する。

2,留滞(湿、痰、瘀血)があればこれを去る。

3,虚ならば補す。

新・旧・虚・実を見分ける。

1,病の始めや、それほど長くないとき、または全身の状態がよい場合は・・温薬を用いて、温散(麻黄剤・麻黄剤細辛など)、温通(桂枝・桂枝湯・当帰四逆加呉茱萸生姜湯・温経湯)を主とする。

2,病が久しくなり、虚が深まり邪が強くなっていれば、

その証は多くは虚寒に属するので、温補(真武湯・烏頭・附子・乾姜)を主とする。

3,実熱ならば、甘寒(生地黄)、苦寒(黄連解毒湯・三黄瀉心湯)の方剤をもちいて清熱する。

4,湿熱なら清熱に袪湿(三妙散蒼朮)を兼用する。

5,虚熱ならば滋陰し、清熱(六味丸・知柏地黄丸)する。

注意点は、

実邪を去るには正気の盛衰を考慮すべきで、虚を更に虚させるようにしてはならない。

補虚の場合は、邪があるときは、邪実を誤ってさらに実させるようなことをしてはならない。

痹証は、疼痛が主な症状である。その病理は、「気血の阻閉不通」で、通じないために痛みが生ずる。

したがって、「宣通」が痹証の共通した治法である。

気血が流通し、営衛が正常に戻ると痹痛も快方に向かう。

なお、虚証で、久しく痹証を患う場合には、陽虚では温補薬(附子・乾姜・細辛)を用い、この処方に温通(桂枝)、温散薬(麻黄・生姜・細辛)を加え、陰虚では補陰剤(六味丸・阿膠・地黄)を用い、その中に宣通薬(桂枝・地竜)を加えなければならない。

痹証は、往々にして不規則な発作性を呈するので、発作期には袪邪を主とし、静止期には営衛を養い肝腎を補う(杞菊地黄丸・独活寄生湯)ことを主とする。

『「素問・痺論」では、痹証の発生が飲食や生活環境と関係があると認めていて、「飲食、居処は痹証の本である」としている。

生活環境の中には、精神生活も含まれている・・というのは、肝は筋を主るので、ストレスは肝気を昂ぶらせ筋の拘縮を招き、関節や筋肉・筋を拘縮させるからである。

「素問・痺論」では、「風寒湿の邪気が筋骨に留まり、痛くてたまらない。長く痹証が続くと、営衛(栄養物質)の流れが渋滞し、皮膚の栄養が不足し、しびれ・感覚がなくなってくる。さらに病邪が深入すると、五臓六腑に伝わり、臓腑の痹証となり、複雑になり治り難くなる」

張仲景の金匱要略では、湿痹の症状は、小便不利で大便は反ってよく出るから、小便を利すべきである」としている。

「「外台秘要・巻十三」には、痹証、歴節病のほかに、白虎病という病名がある。「近効論:白虎病は風寒暑湿の毒で体虚のために侵襲され、風邪フウジャをうけて経脈が結滞し、血気がめぐらず、骨節の間・四肢に滞り、肉色は普通で、夜になると発作する。発作すれば虎にかまれたような激痛があるので、白虎の病と名づける」という。

宋の人の痹証の処方には、先人より更に多くの動物薬を使っている。

特に、虫類薬物で、蜈蚣ゴショウむかで・烏蛇ウダへび・白花蛇へび・全蠍さそり・地竜みみずの類で、代表方剤は、「聖惠方・巻十」の原蚕蛾散げんさんがさん(原蚕蛾・僵蚕キョウサン・蝉脱センダツ蝉の抜け殻・地竜みみず)。

喩嘉言の「医門法律・中風門」では「痹証の日が経って関節が変形し、硬くこわばったものは、痹を治療するに先立って気血を養うべき」としている。

小児鶴膝風は、風寒湿の膝を痹するものなり。もし膝骨 日に大し、上下の肌肉は日に枯細し、治すこと可ならざるは、まず血気を養い、肌肉を漸栄せしめ、のちその膝を治せば可なり。「医門法律・風門雑法」。

しかし、小児鶴膝風は、「必ずしも風寒湿によって痹証になるのではなく、多くは生まれつき腎気が弱く、陰寒が腰や膝に凝聚ギョウジュして解しないで起こる」と指摘している。

「張氏錦嚢」にも、鶴膝風は、ほとんど腎虚に属し、腎は骨を司り、腎気が衰弱すると、それに乗じて侵すとある。

李士材の「医宗必読」では、

行痹ギョウヒ(風痹)は、散風を主とし、袪風利湿を佐とする。風を治すには先ず血をなおす。血がめぐると風は自然に消滅する。さらに補血剤を与えるとよい。

葉天士は、痹になって久しいものには、「久病入絡」という説を出し、活血化瘀および虫類の薬物を用いて、絡脈を宣通するとよいとしている。また「新邪は速散すべきで、宿邪は緩攻すべきだ」という。

痹証(リウマチなど)の病因のまとめ

1,正気の不足からの痹証

体質が虚弱で、気血不足があり、皮膚の防衛力が低く、外邪が侵入しやすい。駆邪する力がないので、風寒湿熱の邪が次第に深く入り、筋骨、血脈に留まり痹証となる。

陽虚のものは、防衛力がないので風寒湿邪に侵されやすい。

陰虚の体は、陽気が相対的に強くなっていて、すでに臓腑経絡には蓄熱があるので、外邪を感受すると、陽気の偏盛のためほとんど風熱湿痹の熱状を呈する。

2,外邪の侵入による痹証

正虚の者が風寒湿熱の邪によって痹証が引き起こされるが、体質が強い者でも外邪の影響を受ける。

(1)長く厳寒の土地に住んでいる。日本海側の冬や埼玉や栃木・群馬の冬の厳しさは腎陽虚を招きやすい。

(2)必要な防寒・保温の措置を講じなかった。

(3)野外や雪中で野宿した。

(4)以前水田などの上に建てた家で過ごし、川のそばの家で湿っぽかった。コンクリートの家は、三年は湿気が籠もり神経痛を招きやすい。

(5)寝る時に風にあたっていた。水を利用した冷風機は湿邪をもたらし、神経痛やリウマチを生ずる。

(6)風にふかれたり、雨に降られたり、水中で作業していた。

(7)疲れたところで寒湿をうけた。

(8)汗がでているときに水に入った。

・・すると風寒湿の邪が長く鬱積して熱と化して痹証となる。

3.血流が滞ると、「血が留まって瘀血となり、湿が凝集して痰となる。痰と瘀は互結したり、また外邪と合する。

初めは邪実が主であり、病位は、肢体、皮肉ひにく、経絡にあるが、長くつづくと正虚となり、邪が深まり、虚実挟雑となり、病位は深く、筋骨・臓腑に及び、治り難くなる。

痹証は、躯体、関節、筋肉の疼痛を臨床症状の主とするが、四肢だけでなく、肩、背中、脊柱、腰などの躯幹部分にも生ずる。

痹証の初期、風寒湿の邪が表にあり、無汗で表実ならば、麻黄加朮湯を用いて少し発汗させる。あるいは、五積散を煎服する。

麻黄加朮湯も関節痛や関節の水腫によく使う。無ければ麻黄湯に苓桂朮甘湯を合方します。茯苓が多くなるだけなので代用できる。

麻黄加朮湯:金匱要略:散寒袪湿・湿家の身疼痛:麻黄湯+白朮3g:有汗には不適・寒湿を除く。

五積散ごしゃくさん:半夏2 陳皮2 茯苓2 当帰2 蒼朮2 白朮2 白芍1 川芎1 白芷1 枳穀1 麻黄1 桔梗1 乾姜1 肉桂(桂枝1) 厚朴1 大棗1 炙甘草1。

五積散は「風寒湿」に使う:1.腰冷痛、2.腰腹攣急、3.上熱下冷、4.小腹痛の四症が目標となる:寒いと小便頻数となる人・のぼせる人の神経痛・腰痛・手の痛みに効果がある。

痹証の初期で、有汗表虚の場合は桂枝附子湯を用いる。

桂枝附子湯:傷寒論:桂枝4 附子1 生姜2 大棗3 甘草2g:桂枝湯から芍薬を除き、附子1gを加える。風湿に犯され身体煩疼し、不嘔不渇で、脈浮で虚にして渋の者を治す。