2021/1/27 改訂2021/1/29 2026/3/10改訂
清心蓮子飲 せいしんれんしいん
清心蓮子飲:和剤局方:益気滋陰・清心火・利水:
適応は陰虚火旺・気陰両虚・心火旺:蓮子(蓮肉)4 人参3 黄耆2 茯苓4 炙甘草2 麦門冬4 黄芩3 地骨皮2 車前子3g。
蓮肉レンニク・蓮子:清心益腎・健脾止瀉・益腎固渋・収斂・鎮静・軽度の滋養・清心火・清熱・心腎不交(黄連阿膠湯)。
人参:甘微苦温:脾肺経:大補元気・生津・補気固脱・養血安神。
脾気や肺気を補い、元気を補う。
津液を生成し口渇を止める(生脈散:人参・五味子・麦門冬)。
補気固脱では汗を止め(生脈散)、
突然昏倒し意識昏迷の虚脱状態を治す。
地骨皮ぢこっぴ:ナス科クコの根皮:甘淡寒:肺腎経:
清熱涼血・退虚熱:虚熱・労熱に用いる:血熱を冷ます(三黄瀉心湯)が発散しない。
血熱(妄行):血分に熱があり症状は、吐血・鼻血・喀血・便血・尿血・斑疹・午後の発熱。月経先期(月経が早く来ること)、脈弦数。または出血・貧血に伴う発熱。
三黄瀉心湯は、顔面紅潮、のぼせ、めまい、イライラ、不眠などの心火旺で便秘の傾向・みぞおちのつかえ(胃熱)に用いる。血熱妄行の諸種の出血、高血圧症、神経症、常習便秘、胃炎、胃潰瘍、脳出血などに。
車前子:オオバコ科オオバコの成熟種子:
利水(利尿剤)・通淋(尿の異常を治す)・止瀉(下利止め)・明目・袪痰止咳(痰切り咳止め薬)。
肺気陰両虚を呈する時は、
益気養陰するために四君子湯合八仙丸や補中益気湯合八仙丸とする:
代用処方は補中益気湯合小建中湯。
肺気陰両虚:無力感・元気が無い・咳嗽・息切れ・多汗・両頬部の紅潮(カン紅)舌質紅・脈虚数:治法は脈散加味(生脈散:人参・五味子・麦門冬)・四君子湯合八仙丸や補中益気湯合八仙丸・補中益気湯合小建中湯を用いる。
八仙丸(八仙長寿丸):医級:肺腎陰虚:地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮・五味子・麦門冬(六味丸+ 五味子・麦門冬):小建中湯で代用できる。又は六味丸合生脈散(六味丸+人参五味子麦門冬)。
勿誤薬室方函口訣
清心蓮子飲(太平恵民和剤局方:局方)
清心蓮子飲:蓮子(蓮肉)4 人参3 黄耆2 茯苓4 炙甘草2 麦門冬4 黄芩3 地骨皮2 車前子3g。
方函
心中煩躁し、思慮過度により、憂鬱・抑鬱で肝の疏泄が阻滞すると、
小便は血尿で赤く濁り(血淋)、あるいは沙漠あり(石淋)。
(沙漠サバク:尿に砂のような石のまじること)
夜夢で夢精(遺精・鬼交)し、尿はたらたらと漏れ(尿後余瀝)渋痛し小便は赤くなる(血淋)。
或は、酒やセックス過度により、上盛下虚(腎水が肝木を灌せずして肝風が内動し、肝陽が上亢して上盛下虚となり眩暈等を生じる)となり、心火上炎となる。
(心火上炎:心臓本経の虚火上昇をさす。心熱火旺の病変をさす:
虚火と実火にわけられる:主症状は舌瘡・心煩・不眠・怔忡不安せいちゅうふあん・狂躁譫語きょうそうせんご・喜笑して止まない)
怔忡:持続する動悸で、動悸の重症症状。
(「肝火上炎」は、耳鳴り、耳聾、目赤・面紅・頭痛・口苦、めまい、高血圧、ふわっとする軽いめまい。竜胆瀉肝湯・加味逍遙散・大柴胡湯)
肝火上炎の繁用処方は、竜胆瀉肝湯・大柴胡湯・加味逍遙散である。
「肝火上炎」では、肺金は傷られるので口苦咽乾となる。
(胆火上炎により、口苦・咽乾・目眩になる)
そしてだんだんと消渇となる。(糖尿病類似症状)
(消渇:しょうかち:しょうかつ:消癉しょうたん:
多飲・多食・多尿の症状が特徴。臓腑燥熱(痩せない時:白虎加人参湯)・陰虚火旺(痩せる時:知柏地黄丸)して生ずる消耗性疾患。治法は滋陰・潤燥・降火の法)。
潤燥:玉泉丸:雑病源流犀燭:天花粉45 葛根45 麦門冬30 人参30 茯苓30 烏梅30 甘草30 生炙黄耆15gを粉末として内服:糖尿病の特効薬。
烏梅:バラ科梅の未成熟果実を種をとり乾燥して黒っぽくなったもの:酸渋:斂肺・鎮咳・生津・袪痰・渋腸・止瀉・安蛔(駆虫)・解熱。(梅肉エキス)
糖尿病の虚労病:脾虚で食欲がなくて、小便が近い腎虚で多尿には、
脾気虚の薬(六君子湯・補中益気湯・参苓白朮散)に
腎虚の薬(真武湯・八味丸・六味丸・知柏地黄丸・杞菊地黄丸)を合方。
清心蓮子飲では、手足はだるくなり、男子は五淋となる。
(五淋:排尿異常の総称。気淋・石淋・膏淋・労淋・血淋をいう)
女子は帯下(おりもの)が赤白となり五心煩熱する(五心:掌心・足心は足の裏・胸の五カ所:陰虚症状)が熱苦しくなる症状を清心蓮子飲は治す。
清心蓮子飲の性質は温平で、心を清し、神(精神・意識)を養い、
精を秘す。(精液・精:生命力を漏れ出ないようにする)
清心蓮子飲の生薬:蓮肉(蓮子)・人参・黄耆・茯苓・麦門・地骨皮・車前子・黄芩・甘草 以上九味
蓮肉レンニク・蓮子:清心益腎・健脾止瀉・益腎固渋・収斂・鎮静・軽度の滋養・清心火・清熱・心腎不交(黄連阿膠湯)。
黄連阿膠湯:心腎不交:黄連3 黄芩2 白芍3 阿膠3 鶏子黄1個。
心腎不交(心腎陰虚)の症状:煩躁・睡眠時不安・動悸・煩熱・口乾・尿が濃い・夢精(黄連阿膠湯・天王補心丹・桂枝加竜骨牡蠣湯・柴胡加竜骨牡蠣湯・桑螵蛸散)
人参:大補元気・安神益智・健脾益気・生津しょうしんで潤いを生じる
黄耆:補気升陽・固表止汗・利水消腫・托毒排膿。
茯苓:利水滲湿・健脾和中・寧心安神。
麦門冬・麦門:潤燥生津・化痰止咳:ユリ科ジャノヒゲの塊状根。
地骨皮じこっぴ:ナス科クコの根皮:甘淡寒:肺腎系」:
清熱涼血・退虚熱:虚熱・労熱に用いる。
車前子:オオバコ科オオバコの成熟種子:
利水・通淋・止瀉・明目・袪痰止咳(咳止め薬)。
黄芩:清熱解毒・抗菌・解熱・消炎作用。
甘草:健脾益気(補気健脾)・緩急止痛・諸薬調和。
以上九味
口訣
清心蓮子飲は、上焦に虚火が上亢し、下元(下半身)は弱り、
気淋(排尿異常)となり尿は白濁する(膏淋)症状の者を治す。
また、遺精の症状に桂枝加龍骨牡蠣湯の類を用いて効果が無い者は、
上盛下虚に属すので清心蓮子飲がよい。
桂枝加龍骨牡蠣湯:陰陽双補・補腎安神:桂枝湯+竜骨・牡蠣、各3g
(遺精:遺泄・失精ともいう:夢で遺精するは夢精と言い、日中に漏らすものを滑精という:主に 心腎不交・相火熾盛・腎気不固・湿熱下注などにより起こる)
もし心火熾盛で妄夢失精する者は、竜胆瀉肝湯がよい。
(妄夢失精:男子は夢精し、女子は夢で鬼交・性交す)
竜胆瀉肝湯:疏肝解鬱・瀉火・利湿・補血:「肝経湿熱」:陰部の腫脹:竜胆草 柴胡 黄芩 山梔子 木通 車前子 沢瀉 当帰 地黄 甘草
陽明腑証:有形の邪熱・糞便などの邪熱で燥実内結:熱に苦しむ・毎日日晡潮熱で午後4~8時発熱・手足汗出で・大便秘結・尿黄・脈沈滑で、治療は攻下燥結で承気湯類・肝鬱があれば大柴胡湯・浣腸の適応。
陽明経証:無形の邪熱が経に盛んで、
大熱・大汗・口渇(大煩渇)・脈洪大が特徴。
白虎加人参湯(白虎湯)が代表方剤。
のぼせの症状:面紅、目赤、喘息の発作、肩こり、抜け毛、頭痛、頭重、眩暈、耳鳴り、眩暈、口乾、口渇。
胃内停水でのぼせには苓桂朮甘湯で
便秘とのぼせには桃核承気湯・承気湯類。
もともと清心蓮子飲は、胃腸を調和することが主である。
そのため現代医学の病名の淋病や軟性下疳などの感染症には使えない。
また、後世方の五淋湯、八正散(木通、車前子、萹蓄、瞿麦、滑石、甘草、大黄、山梔子)を用いる場合よりも虚証の者にもちいる。
萹蓄へんちく・萹蓄草:タデ科ミチヤナギの全草:苦平:膀胱経:
清熱・利水・利尿・通淋。
瞿麦くばく:ナデシコ科カワラナデシコの開花地上部:苦寒:心小腸経:清熱・利水・通淋:瞿麦散(急性尿道炎・膀胱炎)
「名医方考」には労淋にも効果があるとされている。
労淋:労動力作し、疲労して排尿異常を生ずる者。
加藤謙斎は、小便余れきの者に清心蓮子飲を用いる。
(小便余れき:排尿後もたらたらと漏れる症状:清心蓮子飲を用いる)
浅田宗伯:余が数年この方剤の使用を経験したが、労動力作して淋(労淋・排尿異常)を生ずる者と疝家(腹痛する者)などで、小便はかなり通じるが、残尿感があってすっきりしない者に清心蓮子飲は効果がある。
(疝家センカ:疝を生ずる者:水気・冷え・瘀血による痛み:腹の痛む病気:発病は肝経と密接な関係があり「諸疝 皆肝に属す」と言われる)
また、咽が乾いて小便余瀝の症状があるものはなおさら清心蓮子飲が的当である。(的当=適当、労動と労働は異なる)
「外科正宗げかせいそう」の主治の解説は的当ではない。
以上、方函口訣の解説
用語の説明
心腎不交:夢を見ていて遺精し、頭暈、心悸、神経疲労、小便黄で量は少なく排尿時に熱感がある。黄連阿膠湯:心腎不交:黄連3 黄芩2 白芍3 阿膠3 鶏子黄1個をもちいる。桑螵蛸散
相火熾盛:陰茎(陽茎)が勃起しやすく、口乾き、舌は赤く、頭昏く、目眩し、耳鳴り、腰の怠さがある。知柏地黄丸など
知柏地黄丸:滋補肝腎・清熱瀉火:知母 黄柏 地黄 山薬 山茱萸 沢瀉 茯苓 牡丹皮:陰虚火旺に適用する地黄丸
腎気不固:精液が漏れ易く(遺精)、顔色白く(高齢者に見られる妙に色白でツヤが無い皮膚)、精神疲労、頭眩、腰がだるい、脈沈弱。
腎気不固の治法:固腎渋精:金鎖固精丸・縮泉丸・桑螵蛸散
金鎖固精丸(医方集解):蓮鬢レンシュ3 潼蒺蔾トウシツリ3 芡実4 竜骨6 牡蠣5 蓮子3
蓮鬚レンシュ:ハスの花芯:甘平渋:遺精・白色帯下・頻尿:金鎖固精丸
潼蒺蔾トウシツリ:マメ科の扁茎黄芪の成熟種子:甘温:肝・腎経:
腎固精・養肝明目:菟糸子とほぼ同じ:遺精・早漏・神経衰弱・
肝腎不足による視力障害:白内障初期に補腎明目散
潼蒺蔾とうしつり・白蒺藜・沙苑蒺藜は現在の沙苑子であるマメ科の 成熟種子:マメ科:甘温:肝・腎経:補腎固精・養肝明目:遺精・早漏・神経衰弱:補腎明目散
蒺蔾子しつりし・白蒺蔾・刺蒺蔾:ハマビシ科ハマビシの果実:辛苦微温:肝経:疏肝熄風・行瘀袪滞・解鬱・明目・止痒:降圧・鎮静・眼科の常用薬。
補腎明目散:潼蒺蔾とうしつり 石菖蒲 女貞子 生地黄 菟糸子 夜明砂を細末とし毎回4gを水煎服用;白内障初期。
芡実けんじつ:スイレン科芡の成熟種子の仁:甘渋平:脾・腎経:
健脾止瀉・補腎固精・袪湿止瀉:金鎖固精丸
縮泉丸:婦人良方:烏薬 益智仁 山薬
天台烏薬散の烏薬うやく:クスノキ科テンダイウヤクの根:辛温:
行気止痛・散寒温腎
桑螵蛸散:調補心腎(心腎不交)・固精止遺・固脬縮尿コホウシュクニョウ:下元虚冷・腎虚不摂:頻尿・遺尿・尿失禁・遺精・滑精・頭昏・健忘・舌淡・脈細無力
脬ホウ:膀胱・ゆばりぶくろ:固脬コホウ:膀胱を固める
湿熱:口苦、小便赤、舌苔黄じ(黄色がかった厚ぼったい舌苔)などをともなう。竜胆瀉肝湯:肝経湿熱の薬
桑螵蛸散:桑螵蛸・遠志・菖蒲・竜骨・人参・茯神・当帰・醋炙亀板粉末にし1日3回2gを人参湯で服用する:固腎渋精止遺し補腎・益気安神し心腎不交の心腎を交通させる。
人参湯:温中散寒・補気健脾:人参 白朮 乾姜 甘草
桑螵蛸そうひょうしょう:カマキリ科ハラビロカマキリの巣を炙る:甘鹹平:肝・腎経:補腎・固精・縮尿:桑螵蛸散は夜尿症・頻尿・遺尿・尿失禁・遺精・滑精・頭昏・健忘を治す。
遠志:安神・袪痰・消癰(遠志は安神薬)
菖蒲しょうぶ:サトイモ科ショウブの根茎:芳香開竅・逐痰袪濁・鎮静:心竅を開き、人参・当帰の補を得受せしむ
茯神:茯苓が松の根の周りを包む部分で鎮静作用が茯苓よりやや強い。茯苓は松の根などに寄生する菌核
亀板:ツチガメ科クサガメの腹部甲羅・背部甲羅:
滋陰潜陽・強筋骨・涼血補血・止血
竜胆瀉肝湯:疏肝解鬱・瀉火・利湿・補血:肝経湿熱:陰部の腫脹:
竜胆草 柴胡 黄芩 山梔子 木通 車前子 沢瀉 当帰 地黄 甘草
竜胆・胆草:リンドウ科トウリンドウの根茎と根:苦寒:
清熱燥湿・瀉火定驚:肝胆実火・健胃・難聴・排尿痛
木通モクツウ:アケビなどの木質茎:苦寒:降火利水・通乳:木通(通草):降火利水し、心火による心不全や浮腫に用いる:九竅や血脈や関節を通利し人をして痛みを忘れる。
車前子:オオバコ科オオバコの成熟種子:利水・通淋・止瀉・明目・袪痰止咳:牛車腎気丸
沢瀉:サジオモダカの塊茎:甘・寒:利水・滲湿・清熱。
滲湿しんしつ:滲とは濾過するの意味。滲利、滲泄、滲透などはすべて滲出濾過させ、湿気等が停まらないようにすること