2023/4/26
清瀉肝火法の七処方の区別
七処方は、均しく清肝瀉火の山梔子、黄芩、黄連、竜胆草の類を
主薬にして構成されている点が似ている。
しかし、七処方はそれぞれ異なる特徴もある。
七処方の活用について、
**竜胆瀉肝湯の、応用範囲は比較的広く、一般の症状は、
肝火が上攻して、頭痛、眼疾、耳鳴、耳聾、耳腫が生じ、
肝経湿熱が下注すれば、帯下や陰部腫脹、陰部掻痒、小便淋渋して痛むなどの証には、竜胆瀉肝湯を基礎として加減して治療する。
また、陰部掻痒には乙字湯:大腸湿熱:柴胡 升麻 炙甘草 大棗 生姜 黄芩 大黄:肛門は湿っている。陰部の悪臭・掻痒症。
竜胆瀉肝湯:疏肝解鬱・瀉火・利湿・補血:竜胆草 柴胡 黄芩 山梔子 木通 車前子 沢瀉 当帰 地黄 甘草
**当帰竜薈丸は、肝火上攻の証に長じており、
石決明散は、眼疾の治療に優れていて、
清熱止帯湯、樗根皮丸、銀甲丸は、帯下に効果が高い。
**左金丸は、脇肋胃脘の疼痛などの証に常用される。
**第二に、各処方の効果については、竜胆瀉肝湯と当帰竜薈丸は共に肝火上攻の頭暈目眩、耳鳴耳聾によく、竜胆瀉肝湯は除湿の生薬が配合され、挟湿の者に頗るよい。
**当帰竜薈丸は、竜胆瀉肝湯よりさらに多くの瀉火解毒の薬物が多く、火毒が盛んな者には当帰竜薈丸がよい。
当帰竜薈丸:清肝瀉火・瀉下・解毒開竅:竜胆草10 青黛5 蘆薈5 山梔子10 黄連10 黄芩10 黄柏10 大黄5 木香2 麝香0.5 当帰10
**竜胆瀉肝湯と石決明散は、均しくよく眼疾に効くが、瀉火解毒の力は竜胆瀉肝湯の方が、石決明散より優れている。
**石決明散は平肝の石決明だけでなく、袪風の荊芥、羗活など清肝と平肝・袪風の配合形式が用いられている。
石決明散:袪風清熱・明目退翳:石決明10 草決明(決明子)10 青ソウ子5 木賊5 山梔子5 赤芍5 大黄3 羗活1 荊芥2:粉末として毎回2gを、麦門冬4gの煎じ湯で内服する。
**竜胆瀉肝湯、樗根皮丸、清熱止帯湯、銀甲丸は、みな肝経湿熱下注を治すので前陰の諸疾に効果があるが、
清熱解毒は清熱止帯湯が最強で、
除湿の力は竜胆瀉肝湯が優れ、
収斂止帯は樗根皮丸が最も適している。
清熱止帯湯:清熱解毒・調肝止帯:柴胡3 香附子3 金鈴子炭3 土茯苓10 銀花藤10 魚醒草10 蒲公英10 貫衆5かんじゅう 野菊花5 竜胆草3 蒼朮3 紅藤10:水煎服:清熱解毒作用が最強。
土茯苓どぶくりょう:ユリ科土茯苓の根茎:甘淡平:肝胃経:清熱解毒・袪湿通絡:土茯苓とバッカツ(猿捕茨サルトリイバラ別名サンキライ)は同属の植物で作用も似ているのでサルトリイバラで代用する。
忍冬ニンドウ・金銀花・銀花・双花:スイカズラ科スイカズラの花蕾:甘寒:肺胃心脾経:清熱解毒:銀翹散
貫衆かんじゅう:ウラボシ科烏毛蕨の根茎:苦渋微寒・袪瘀・止血:子宮収縮作用・抗ウイルス薬。
野菊花のぎくか・野菊:キク科野菊(シマカンギク)の頭状花:苦辛涼:肺肝経:清熱解毒:疔・癤・癰などの化膿症に野菊湯;野菊花10 金銀花30 蒲公英10 紫花地丁10 水煎服。
紅藤こうとう・血藤・山紅藤:アケビ科大血藤の藤茎:微苦渋微寒:袪風湿・清熱解毒:風熱による痺痛・虫垂炎・肺化膿症・火傷。
樗根皮丸ちょこんぴがん:摂生衆妙方:清熱燥湿・収斂止帯:良姜3 黄柏2 芍薬2 樗根皮6.5:末を面糊丸として梧桐子大を毎回10丸、空腹時に米で飲み下す、また湯剤として煎服も可:収斂止帯に最も適す。
**疏肝理気、活血通絡は、銀甲丸が勝っている。
銀甲丸ぎんこうがん:清熱解毒・疏肝通絡:金鈴子炭3 香附子4 烏薬5うやく 当帰4 川芎2 赤芍5 琥珀3こはく 甲珠4こうじゅ 鼈甲10べっこう 夏枯草5 絲瓜絡5しからく 紫花地丁 蒲公英 連翹 金銀花 紅藤各10:疏肝理気・活血通絡に勝る。
銀甲丸:の甲珠(穿山甲のウロコ)、絲瓜絡しからく は通絡:甲珠・炮甲珠・炮山甲:穿山甲せんざんこう のうろこを焙制して使用する。
銀甲丸:清熱解毒・疏肝通絡:下腹痛と 少腹塊、腰骶痛、月経不調、白帯下が多い:疏肝理気・活血通絡に勝る。
少腹塊の動悸:桂枝茯苓丸:少腹:臍から下の両脇腹・足の付け根に近い部分から脇腹までをさす:下腹部の両側は足の厥陰肝経が通る:ここの脈打つ痛みには桂枝茯苓丸・銀甲丸を使う。下腹の中央は小腹。
刺痛と治す力は、左金丸の独壇場である。
左金丸:苦寒で清熱瀉火の黄連6gと、苦温で降気止痛の呉茱萸1g:肝鬱化火の胃痛に繁用する。
これが七処方の違いである。