瘀血の症状

  ©(有)文隣堂あつみ薬局 渥美光廣、2023

瘀血おけつ(血瘀)

血液が流れず停滞した病的な状態で、経脈外に瘀滞したものは悪血おけつ、経脈内や器官内に停滞したものを蓄血という。打撲・出血などによって瘀血が生じるが、瘀血の存在は血の生成を阻害し、血虚をもたらす。

瘀血とは:全身的な循環不全・局所的な血流停滞・内出血などを指す。瘀血は臓腑・組織・器官の脈絡の血行を阻害し停滞させ局所に疼痛・腫瘤・内出血、全身的には顔がどす黒い・口唇や舌辺の瘀斑・脈細や脈渋。タバコを吸っている人は唇に点々と瘀斑が生ずる。

瘀血内結の潮熱・・血府逐瘀湯加製大黄・牡丹皮:打撲・外傷・寒凝気滞・血熱妄行などによって血流が停滞して、血瘀が生じ、内欝した瘀血が化熱して潮熱となる。

瘀血内結の潮熱・・午後あるいは夜間の発熱となる。

瘀血の症状:関節痛は固定性、刺痛、圧痛、肌膚甲錯(ザラザラの皮膚)、羸痩るいそう、関節の変形や拘縮、夜間悪化、舌質暗で瘀点がある。舌苔白じ、脈細渋。

瘀血の症状の特徴は、痛み方は刺痛で、固定痛で、痛む範囲が狭く、夜間に悪化、実証なので、温めても冷やしても悪化する。舌は青紫色の斑点や舌体が青紫色。

疝痛せんつう:瘀血や肝の昂ぶり(ストレス)や肝経の冷え(寒滞肝脈)で疝が生じ腹痛して排便できず、腹痛に苦しむ:折衝飲・当帰四逆加呉茱萸生姜湯などを使う。

瘀血の症状の肌膚甲錯:慢性病で皮膚の乾燥が強く、触れるとおろし金のようにざらざらするのは「肌膚甲錯きふこうさく」で陰血不足・瘀血内結である。

瘀血が重い者には桃仁、紅花、生蒲黄しょうほおう、川芎などの活血袪瘀薬を加える。

出血が長期・慢性に続き瘀血を呈する時:適宜に活血薬を加える:田七・地竜・四物湯・血府逐瘀湯・桂枝茯苓丸・折衝飲・補陽還五湯・冠心二号方・通導散。

乳房の刺痛:乳房の1箇所だけの刺痛は瘀血である。この刺痛は乳房周辺に現れ、周辺の血管が青味を帯びている。乳房全体が青味が強いのは瘀血であるか、ひどい人は冷えがその原因である:血府逐瘀湯・桂枝茯苓丸などを使う。

大黄でお腹の中から熱をとり同時に瘀血をとるためには、一度だけ下痢をさせる3倍量の大黄の量を使う。体のどこの打撲であっても大黄を増量して下痢をさせて瘀血の痛みをとるようにする。大黄を3倍量使い一度下利させる。大黄は瘀血の薬で下剤だけではない。

夜中に痛む瘀血の刺痛には疎経活血湯を使う。

疎経活血湯:四物湯 + 蒼朮 茯苓 桃仁 牛膝 防已 威霊仙 羗活 防風 白芷 竜胆草 陳皮 生姜 甘草。

瘀血の方剤:桃紅四物湯・血府逐瘀湯・桃核承気湯・桂枝茯苓丸・折衝飲・補陽還五湯・疎経活血湯・大黄䗪虫丸・大黄牡丹皮湯・失笑散・身痛逐瘀湯・膈下逐瘀湯・冠心二号方・通導散・四物湯:妊娠には駆瘀血薬は不適。血府逐瘀湯が一般に使用する方剤。

血府逐瘀湯:活血化瘀・通絡・理気止痛・補血:生地黄4 桃仁4 紅花3 当帰3 赤芍3 牛膝3 柴胡2 枳穀2 桔梗2 甘草1:瘀血一般に繁用処方(川芎は入っていないが四物湯がある)心筋梗塞の予防(折衝飲も心筋梗塞痛に使用する)。

瘀血の心筋梗塞や腰痛に折衝飲:活血化瘀・理気止痛:心筋梗塞痛・瘀血の腰痛・足痛・膝痛:当帰5 桃仁5 牡丹皮3 川芎3 赤芍3 桂枝3 牛膝3 紅花2 延胡索3:すべて駆瘀血薬からなっている。

血瘀の薬:桃仁・紅花こうか・赤芍・当帰・川芎・牛膝・牡丹皮・桂枝・威霊仙いれいせん・丹参たんじん・地竜じりゅう・降香こうこう・益母草やくもそう・蘇木そぼく・延胡索えんごさく・䗪虫しゃちゅう・大黄・田七でんしち・蒲黄ほおう・五霊脂ごれいし・阿膠・没薬もつやく・乳香。

五労、虚極、羸痩して腹満し飲食すること能わず食傷、憂傷、飲傷、房室傷、饑傷きしょう、労傷、経絡営衛気傷、内に乾血あり肌膚甲錯、両目黯黑あんこく、中を緩め虚を補う、大黄䗪虫丸 之を主る。

没薬もつやく:カンラン科没薬樹の樹脂:肝経:活血袪瘀止痛

乳香+没薬は、心腹の血瘀疼痛に古人は効果があるとする:痛みが強い時、乳香+没薬を加える。

乳香にゅうこう:カンラン科の乳香樹の樹皮より滲出した樹脂:辛平温:心・肝・脾経:活血・止血・舒筋:鎮痛・消炎。