便秘薬の用法

改訂2021/8/17 2023/12/13

便秘

便秘薬一覧

麻子仁丸・潤腸湯・大黄甘草湯・防風通聖散・加味逍遙散・逍遥散・当帰芍薬散・加味逍遙散加大黄・大柴胡湯・四君子湯・六君子湯・補中益気湯・参苓白朮散・四物湯・四物湯加小建中湯・温経湯・桂枝茯苓丸加大黄・八味丸・小承気湯・調胃承気湯・大承気湯・桃核承気湯・乙字湯・大建中湯・小建中湯・六味丸類。

熱証の腸燥便秘でコロコロとした兎糞で、

お腹が脹る人の便秘は麻子仁丸。

麻子仁丸:傷寒論:腸燥便秘:麻子仁5(研末) 甜杏仁3てんきょうにん 大黄2  枳実2 厚朴1 白芍:切れ痔・風燥の痔:肛門はカサカサである。

胃熱のため食欲がある人の便秘に大黄甘草湯。

大黄甘草湯:金匱要略:大黄4 甘草2:冷やし乾かす便秘薬。

便秘は、体の痛みを悪化させるので、瘀血の痛みをとる時には、駆瘀血薬の大黄で便通させた方が瘀血がとりやすいので麻子仁丸や大黄甘草湯など、その方にあう処方を使う。

便秘を治すには大黄甘草湯(乾かす)ではなく、潤す麻子仁丸・潤腸湯を使うべき。

潤腸湯:万病回春:滋陰補血・潤腸通便・血虚陰虚を、潤しながら下す下剤:当帰3 熟地黄 生地黄(乾地黄)3 麻子仁2 桃仁2 杏仁2 枳穀2 厚朴2 黄芩2 大黄2 甘草1.5。

防風通聖散:調胃承気湯(大黄2 芒硝1 甘草1)が内包されている:口渇・便秘・肥満で、食欲旺盛の人の便秘・蓄膿症・湿熱の痔:軟便の人には不向き。

防風通聖散:疏風解表・瀉熱通便:当帰 芍薬 川芎 山梔子 連翹 薄荷 生姜 荊芥 防風 麻黄 各1.2 大黄1.5 芒硝1.5 桔梗 白朮 黄芩 石膏 甘草 各2 滑石3:口渇・便秘・肥満。

ストレス性の気滞便秘はスッキリでないので、加味逍遙散、逍遥散、当帰芍薬散などの疏肝作用のある処方を使うが、

ストレスに実熱を兼ねている場合は、加味逍遥散・当帰芍薬散などでは便秘は解消しないので大柴胡湯を使う:柴胡6 黄芩3 白芍3 半夏4 生姜4 大棗3 枳実2 大黄1。

大柴胡湯:実熱があり胃熱のため心下痞硬で、イライラして落ち着きが無く(急躁易怒)、肝火のある者の胃痛・便秘などに使う。

大柴胡湯の心下痞硬は胃熱のため生ずる。

肝火が示す症状は、頭痛昏脹こんちょう、面紅、目赤もくせき、

耳鳴、耳聾、口苦などの症状である。

当帰芍薬散:肝血虚・脾虚湿滞:当帰3、白芍4、白朮4、茯苓4、沢瀉4 川芎3:のぼせ・面紅の人には使わない。

気滞の便秘に、加味逍遙散に大黄を加える場合もある。

加味逍遙散は、気虚・血虚・陰虚でイライラのある者の便秘に使う:肝鬱化火・脾虚湿性・血虚:柴胡3 芍薬3 薄荷1 当帰3 牡丹皮2 山梔子2 茯苓3 白朮3 乾姜1 甘草2(人参・大棗はのぼせるので無い)

気虚の便秘で軟便だけなら四君子湯・六君子湯がよい。

六君子湯:補気健脾・理気化痰:人参4 白朮4 茯苓4 甘草1 乾姜0.5 大棗2 半夏4 陳皮1:病後の衰弱・むくみのある眩暈・下利。

気虚がひどい場合の気虚の便秘には補中益気湯を使う。

気虚の全身症状:倦怠無力感で鬱的・元気不足・息切れ・物を言うのがおっくう(懶言らんげん)・動きたがらない・声に力がない(語声低微)・自汗・舌質が淡色あるいは胖大はんだい・内臓下垂・脱肛・子宮脱・すべて垂れる・脈は細数で無力:補中益気湯・六君子湯。

補中益気湯:補気健脾・昇陽虚寒・甘温除熱:黄耆4、甘草1.5 人参4 当帰3 陳皮2 升麻0.5 乾姜0.5 柴胡1 白朮4 大棗2:中気下陥・脱肛に腎虚薬の真武湯を合方・疲れると発熱に適用

血虚の便秘は四物湯を使う。

四物湯:血虚の基本方剤:当帰4 白芍4 川芎4 熟地黄4。

血虚とは:皮膚につやがない・面色萎黄・目がつかれやすい・目花・頭がぼーっとする(頭昏)・四肢麻木(神応養神丹)・筋けいれんを生ずる肝血虚・浅眠・多夢・不眠・月経後期・髪枯燥・爪の 剥離・舌質淡、間歇的な動悸、怔忡せいちゅう(持続的な動悸)。

血虚の四肢麻木:養血理気:神応養神丹・疎経活血湯。

神応養神丹しんおうようしんたん:外科正宗:養血理気:当帰 芍薬 川芎 熟地黄 天麻 羗活 木瓜もっか 菟糸子としし各3g(白鮮皮はくせんぴ:ソバカスがある時加える)。

神応養神丹の天麻てんま・明天麻:ラン科オニノヤガラの塊茎:甘微温:肝経:

袪風鎮痙・通絡止痛:抗痙攣・鎮静:めまい・頭痛の主薬で、天麻は、薬全体を首から上にもっていく作用がある。

腹痛はないが疲れると腹痛になる場合の便秘には四物湯合小建中湯を使う:緩急止痛・温中補虚・除熱(疲労による発熱に適応):桂枝4 芍薬6 大棗4 生姜4 甘草2 膠飴20。

胃熱によって心下痞硬を起している人の便秘に大柴胡湯:

柴胡6 黄芩3 白芍3 半夏4 生姜4 大棗3 枳実2 大黄1。

心下痞硬:胃のあたりがすごく脹ってくるのは胃熱が原因の心下痞硬で、その時、胃を押すと苦しい場合は大柴胡湯である。

血虚で瘀血が原因の便秘は温経湯うんけいとう:

温経散寒・補血調経・活血化瘀・益気和胃:半夏4 麦門冬4 呉茱萸1 乾姜1 当帰3 桂枝2 白芍2 川芎2 人参2 甘草2 阿膠2(牛・ロバの皮の膠)牡丹皮2g。

当帰・阿膠・桃仁・紅花にて活血する。

温経湯の当帰・阿膠は、活血・補血する。

寒熱が錯雑の便秘に伸和のセンナダイオウ錠

センナ・番瀉葉ばんしゃよう・瀉葉:マメ科狭葉番瀉葉・尖葉番瀉葉の小葉:甘苦大寒:大腸経:清熱導滞:アントラキノン誘導体のセンノサイド等。

大黄:苦寒:攻積導滞・瀉火涼血・袪瘀通経:駆瘀血薬。

お腹に熱の無い場合で、体の水気が不足(陰虚)して皮膚枯燥の人にはセンナが効く。

熱証の体質で、カサカサころころ兎糞状は大黄甘草湯ではなく潤す作用のある麻子仁丸が適応:傷寒論:腸燥便秘:

麻子仁5(研末) 甜杏仁3 大黄2  枳実2 厚朴1 白芍。

高齢者の便秘には・・大柴胡湯や当帰芍薬散や逍遙散や小建中湯が適当で、麻子仁丸は強すぎる畏れがある。

老人や子供に多いが「疲れて・咽が渇いて・お腹が痛い」の便秘には小建中湯:桂枝4 芍薬6 大棗4 生姜4 甘草2 膠飴20。

下剤は入っていないが、

加味逍遙散・逍遙散や当帰芍薬散・四物湯・八味丸・六君子湯・・

・・で便秘がなおることがある。

乙字湯は、湿気がありジトジトした実熱の湿潤した便秘を乾かす下剤である:大腸湿熱で肛門は湿潤している:

柴胡 升麻 炙甘草 大棗 生姜 黄芩 大黄。

(肛門がカサカサ乾燥している切れ痔は麻子仁丸の適用)

乙字湯証の便通は、ベットリと粘り、トイレットペーパーでふき取りにくい。さらに、排水後も、便器にこびりついている。

桃核承気湯:瘀血と熱状で狂症を現しイライラや肩こりが強く普段から腹満痛の便秘:便秘してのぼせ(頭痛・頭重・肩こり・めまい・耳鳴り・面紅)の状態があれば、桃核承気湯・大承気湯などの承気湯類を使う。

小承気湯(大黄2、枳実2、厚朴3)は麻子仁丸に内包されている。

調胃承気湯:大黄2 甘草1 芒硝1:小承気湯より、芒硝があるので瀉下作用が強い。芒硝:硫酸ナトリウム:鹹苦寒:瀉熱通便。

大建中湯はお腹のひどい冷えの便秘に使う:温中散寒・解痙止痛・補気健脾・殺虫・結石痛:蜀椒2 乾姜4 人参3 膠飴20:寒実証で、冷えが体に侵入して腸がモコモコ動いたりブチブチと音をたてて動く。蜀椒は蛔虫の殺虫作用がある。

蜀椒・花椒・川椒・山椒:ミカン科カホクサンショウの果実:

辛大熱有毒:脾胃肺腎経:温中・止痛・袪湿・駆回虫・明目。

陰虚の便秘には、脾虚なら小建中湯(老人・子供に多い便秘)を使い、

それ以外の陰虚の便秘にはは六味丸・杞菊地黄丸などの六味丸加減方を使う。

杞菊地黄丸:滋補肝腎・清肝火・明目:疲労により生じる腎虚症状に適応する:運動会や遠足後・運動後のかかと痛(腎虚の痛み):枸杞子・菊花・地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮

(枸杞子・菊花+六味丸=杞菊地黄丸)

八味丸:手足の冷え、夜間排尿、小便頻数の一つでもあれば八味丸だが脾虚には使えない。地黄がもたれるので真武湯を使う。

八味丸:温補腎陽・補陰陽:熟地黄・山薬・山茱萸・沢瀉・茯苓・牡丹皮・桂枝・炮附子:腎虚の喘息・冷え症の膀胱炎。腰痛には余り効かないが、泌尿器関係には良く効く。

陰虚でイライラがある人の便秘には加味逍遙散を使う:肝鬱化火・脾虚湿性・血虚:柴胡3 芍薬3 薄荷1 当帰3 牡丹皮2 山梔子2 茯苓3 白朮3 乾姜1 甘草2(人参・大棗が無いのは化火を増悪させるため)

陰虚の症状(陰虚陽亢いんきょようこう):顔がのぼせ・目赤・イライラ・顴紅かんこう・口が乾き・手足がほてる・夜や夕方悪化・五心煩熱・寝汗・消渇の場合は、陰虚となるので痩せてくる。

五心煩熱;掌心しょうしん(手の平)・足心の裏・胸の五カ所が虚熱でほてり熱苦しい。

加味逍遙散は血虚・気滞気虚・陰虚・肝鬱気滞・肝鬱血虚にも使え、どれか一つの症状があれば便秘以外にもいろいろ使える。

・・・以上、便秘薬の早見表まとめ

便秘を治すには、原因を明らかにする。原因があきらかになると証が分かってくる。つまり冷えで便秘が起きているのか、熱でおきているのか。また、虚と実にわけて考える。

人体にとって不要な外邪が侵入する、六淫ろくいん:風・寒・暑・湿・燥・火が過剰となって内部で発生する場合は「実」である。

便秘を「実」によって生じるものに、

外部から侵入する「外因」と内部で生じる「内因」がある。

「外因」は六淫:風・寒・暑・湿・燥・火が、外部から侵入して便秘になる。

一方「内因」は、内傷七情で七気:喜・怒・憂・思・悲・驚・恐が過剰になり、たとえばイライラで熱が生じて便秘になる、あるいは思慮過度で気滞が生じて便秘になる。

上記に属さない「不内外因」という「外因」にも「内因」にも属さない原因として・・

・・過労や房労・飲食不節や外傷・毒害虫・災害などによる原因がある。

たとえば、慢性肝炎にも六淫:風・寒・暑・湿・燥・火が過剰となり生ずる「外感」があり、内傷七情による七気:喜・怒・憂・思・悲・驚・恐がすぎて慢性肝炎となる「内傷」もある。

胃腸病も「外感」もあり「内傷」もある。

たとえば「外感」では、元来 胃腸は湿気を嫌い不調となるので、梅雨時は、体が怠くなり食欲もおちて、下痢し易くなるのは外邪の湿気が侵入したものである。

「内傷」では、胃腸は、思慮過度・過緊張・几帳面・不安感・焦燥感で悪化する。

便秘については、旅行に行くと便秘になる人もいるし、寝不足でも便秘になる。

寝不足になると一時的な陰虚になり、体の中の津液・血が不足して腸の内部の潤いも失われて便が固くなり便秘することがある。

便秘は腸の状態で生ずる。

腸の中の水気が不足すると便秘になる。また蠕動運動が気虚・気滞により低下すると便秘になる。つまり、気血が不足すると便秘になる。

気血は腸に栄養や水分を与え、蠕動運動を支えている。

また冷え症によって便秘になる。

冷えると、停滞や収斂が生じて腸の動きが停滞し便秘を生ずる。

つまり温める力が不足して陽虚となって便秘になる:八味丸

その他、瘀血によって便秘が生ずるが、便が黒くなる:

温経湯・桂枝茯苓丸加大黄。

疲労によって便秘になることも多々ある:小建中湯・補中益気湯。

体の中の余計な熱によって、水気が不足すると便秘になる:防風通聖散・六味丸類。

たとえば汗がでて必要な水分が不足してくると便秘となる:麻子仁丸・潤腸湯・小建中湯。

漢方では、胃の熱が大腸に移り乾かして便秘になるとしている:大柴胡湯(胃熱で心下痞硬がある)。

これはたとえば、胃熱によって心下痞硬を起す大柴胡湯の適応であり瀉下熱結で便秘や心下痞硬を解消する。

下剤が習慣になる人がいるが、下剤の量が増えるという。

漢方では下剤は大黄甘草湯が有名だが、センナもある。

センナや大黄甘草湯で腹痛が起きると言う人がいる。

また伸和製薬のセンナダイオウ錠などがよく売れているが、これは寒熱が錯雑している状態に適合するので適当に使っても効果がある。

大黄甘草湯は、お腹に熱がある人に使い、お腹が冷える人には使えない。

お腹に熱があり胃熱で食欲がある便秘の人に大黄甘草湯を使う。

センナは、体が不足し、お腹に熱の無い場合に使うが、強い冷え症では使えない。体の水気が不足していて、皮膚枯燥の人にはセンナが効く。

胃がポチャポチャいう胃内停水の人(脾虚の症状)にセンナを使うと酷い腹痛となる。

センナ・番瀉葉ばんしゃよう・瀉葉:マメ科狭葉番瀉葉・尖葉番瀉葉の小葉の乾燥物:甘苦大寒:大腸経:清熱導滞:アントラキノン誘導体のセンノサイド等

熱証の便秘は、大黄甘草湯ではなく、潤す作用のある麻子仁丸・潤腸湯を使う。

麻子仁丸は老人の便秘に使うと成書に書いてあるが、強い下剤なので老人に使うべきではない。

熱証の便秘でコロコロとした兎糞で、お腹が脹って苦しい人は麻子仁丸を使う。これに大黄甘草湯を使うと最初少し便がでるが、すっきり出ないので麻子仁丸を使う。

大黄:苦寒:攻積導滞・瀉火涼血・袪瘀通経(駆瘀血薬)

麻子仁丸の麻子仁はアサ科大麻たいま(アサ)の成熟果仁で甘平

:潤腸通便・滋陰潤燥

:腸燥便秘につかうが、アサ種子の油であるので丸剤がよく、

エキス剤では油が無いので効果が落ちる。

麻子仁丸:腸燥便秘・肛門がカサついた切れ痔・風燥の痔

:麻子仁5(研末) 甜杏仁2 大黄4 枳実2 厚朴2 白芍2

:枳実+厚朴で気滞の便秘に効果がある。脾虚には腹痛強い。

小承気湯(傷寒論):大黄2 枳実2 厚朴3が麻子仁丸にある

麻子仁丸の中には、小承気湯が入っており、さらに麻子仁の油が入っているが、大黄甘草湯は油が入っていないので、スムーズに便がでないので、量を使うことになるが、いつまでも便秘体質が治らない。

便秘を治すのだったら大黄甘草湯ではなく麻子仁丸を使うべき。

麻子仁丸:腸燥便秘・肛門がかさついた切れ痔・風燥の痔

:麻子仁5(研末) 甜杏仁2 大黄4 枳実2 厚朴2 白芍2

:枳実+厚朴で気滞の便秘に効果がある。脾虚に使うと腹痛が強い:脾虚には小建中湯・補中益気湯・四君子湯・六君子湯を使う。

杏仁:潤肺止咳・潤腸通便・下気止咳:咳止めのアミグダリン・便秘薬。

枳実・枳穀:行気消積・理気化湿・行気寛中(気の流れを良くする理気剤):胃腸の蠕動を促進し、他薬の消化吸収を補助し気滞を除く。枳実(強い作用)・枳穀(弱い作用)。

厚朴:苦辛温:燥湿除煩・行気降逆:気滞・気逆の治療原則は 

理気・行気・降気であり、厚朴で気滞を解消して便秘を治す。

白芍は斂陰緩急し、便秘薬による腹痛を緩和する。

便秘薬の小承気湯は、枳実2・厚朴3gの行気薬が入っているので大黄甘草湯より強い。

小承気湯(傷寒論):大黄2 枳実2 厚朴3:麻子仁丸に内包されている。

大黄甘草湯(金匱要略):大黄4 甘草2。

桃核承気湯:清熱瀉下・活血逐瘀:調胃承気湯+桃仁・桂枝

:桃仁5 桂枝4 大黄3 甘草2 芒硝2

:瘀血と熱状で狂症を現す時に適応。

調胃承気湯:大黄2 甘草1 芒硝1:小承気湯(大黄2 枳実2 厚朴3)より強い。

芒硝:硫酸ナトリウム:下剤

下剤を使うと体の中から水気と熱が失われて、長期に使うと徐々に衰弱が生じ、腸内も乾燥してくるので下剤の量が増える。

嘔吐したり瀉下させると、体の必要な気血を出すので衰弱が激しくなるので、特に高齢者では下剤はできるだけ強いものは避ける方がよい。

極端に言うと、嘔吐は吐血、瀉下は下血・・と同じと考えるほど衰弱する。

高齢者は下痢がとまらなくなってショック状態になりやすいので弱い下剤・・大柴胡湯や当帰芍薬散や逍遙散(気鬱便秘)や小建中湯(冷えると便秘)を証を考慮して選択する。

潤腸湯(万病回春):滋陰補血・潤腸通便・血虚陰虚の便秘:潤しながら下す下剤

:当帰3 熟地黄 生地黄(乾地黄)3 麻子仁(亜麻仁)2 桃仁2 杏仁2 枳穀2 厚朴2 黄芩2 大黄2 甘草1.5

・・・熟地黄・桃仁・杏仁・麻子仁・当帰・・潤腸に働く。

潤腸丸(沈氏尊生書):滋陰補血・潤腸通便・陰虚の便秘

:当帰3 生地黄10 麻子仁5 枳穀3 蜜丸として1回5g

下剤は入っていないが、加味逍遙散・逍遙散や当帰芍薬散・四物湯・八味丸・六君子湯で便秘が治ることがある。

その処方の証にあう人の便秘の情況で使えば便秘が治るのである。

便秘が外感から起きることはあまりないが、冷えがひどくなって便秘する人がかなり多い:小建中湯・当帰芍薬散。

当帰芍薬散:肝血虚・脾虚湿滞:

当帰3、白芍4、白朮4、茯苓4、沢瀉4 川芎3。

しかし、一般的には秋風による「燥」によって便秘する人がいる。

乾燥した秋風が立つと全身が乾燥するが、お腹の中も乾燥し、便がコロコロになるので、季節によって下剤の量が異なる。

便秘はほとんど内傷病に属すが、一般的なのは大腸の燥熱による実証から生ずる。体の中の余計な実熱によって乾燥する。

実熱証では、実証なのでお腹が脹り拒按である:大柴胡湯。

便秘してお腹が脹る人と張らない人がいる:心下痞硬の大柴胡湯と気滞だけの加味逍遙散・逍遥散・当帰芍薬散。

二週間便秘してもお腹が脹らない人がいる。

下剤は毎日飲ませることが原則である。

便秘がひどくなってから下剤を使うと薬が効かないので、腹痛だけで排便できないという苦しい情況になり、大容量の浣腸や摘便に頼ることになる。

腸に熱があると膀胱にも影響して小便が熱で黄色くなるし、すっきりでない。これは大腸の乾燥であるが、胃の乾燥と同じで、口渇して冷飲を好む。胃熱(大柴胡湯)が大腸に及び便を乾燥させ便秘になる。

口渇喜冷飲・小便不利で下半身だけに浮腫がある場合は八味丸が適応。

真夏に暑い所で大汗をかいて冷水を多飲しても口渇が止まない多尿の人に白虎加人参湯は適応する。

五苓散の三原則は、口渇・小便不利・水逆・自汗で、やはり夏に汗をかいて口渇の人に使うが、小便不利の口渇に使う。

この燥熱の便秘(風燥)には麻子仁丸を使う。

お腹が脹って(実熱証)、便がコロコロの兎糞状なら麻子仁丸でよい。

通常は、腹痛で拒按では実証であり、腹痛やお腹が脹ったときにお腹を押さえると楽(喜按)かどうかを聞けば実証(拒按)か虚証(喜按)か分かる。

虚証ではいつもお腹をさすっているか、お腹を押さえている。

燥熱の便秘ではなく、老人性便秘は加齢により栄養失調状態になり(陰虚)肌はかさつき(血虚・陰虚)、少し体重が減って便秘した場合は下剤は使わない方がよい。ピーナッツや種々なナッツ類を多く食べれば良い。

麻子仁丸は、風燥の痔の時にも使う。

肛門がかさついていて肛門裂傷・切れ痔は燥熱(風燥)によるので麻子仁丸が良く効く。肛門裂創には二つに分類できる。

一つ目は燥熱によるもので、もう一つには血虚による肛門裂創があり、血虚の場合は体の栄養失調なので温めれば切れ痔は楽になる。

血虚の時の痔には、当帰芍薬散をつかう。

当帰芍薬散:当帰3、白芍4、川芎3、白朮4、茯苓4、沢瀉4。

燥熱の便秘には麻子仁丸で1~2服で治ってしますが、燥熱や血虚の肛門裂創に「大腸湿熱に適用の乙字湯」を使うと、さらに水気をとって(柴胡+黄芩は乾かし冷やす)悪化する。

湿が熱より重く、肛門がじゅくじゅくして、実熱で灼熱疼痛する者に、乙字湯はすこぶる良い効果がある

乙字湯は、湿気のある実熱(湿熱)の便秘痔に使う薬であるので、燥熱や血虚による肛門裂創(切れ痔)に使うことはほとんどなく

潤す作用の麻子仁丸を使うと簡単に治る。

麻子仁丸:腸燥便秘・切れ痔・風燥の痔:肛門はカサカサに使う

:麻子仁5(研末) 甜杏仁2 大黄4 枳実2 厚朴2 白芍2

乙字湯:大腸湿熱を清熱化湿・升提活血:肛門は湿っている:柴胡 升麻 炙甘草 大棗 生姜 黄芩 大黄

黄芩:苦寒:清熱燥湿・瀉火解毒・安胎:乾かし冷やす作用

:柴胡+黄芩で肝胆湿熱をとりイライラをとる

ともに実熱であるが、

実熱で湿気の便秘(大腸湿熱の乙字湯証)は、

燥熱の便秘(麻子仁丸)とは違い、

乾燥状態がないから乙字湯証は兎糞状にはならず、咽乾もないという二点で異なる。

また、実熱便秘の人は、食欲旺盛であり、食事をすると顔だけタラタラと汗をかく。

乙字湯証は、燥熱便秘と違って乾燥状態がないので、兎糞状にはならないし口渇もない。

小便の色は実熱も燥熱も黄褐色である。

燥熱便秘では舌体黄色く乾燥しているが、実熱便秘の舌はわずかに黄色く、べたっと明らかに黄色い舌苔がある人は熱状が強いので、強い下剤を使っても大丈夫である。しかし、厚い黄苔の無い人は、下剤は少量ずつ使わないと必ず腹痛を生ずるので注意する。

実熱便秘には大黄甘草湯でよい。あるいは承気湯類を使う。

大承気湯・小承気湯・調胃承気湯・桃核承気湯である。

大承気湯:峻下熱結:大黄2 芒硝3 厚朴5 枳実3

小承気湯(傷寒論):大黄2 枳実2 厚朴3:麻子仁丸に内包

調胃承気湯:大黄2 甘草1 芒硝1:小承気湯より強い

桃核承気湯:清熱瀉下・活血逐瘀

:調胃承気湯(大黄2 甘草1 芒硝1)+桃仁・桂枝

:桃仁5 桂枝4 大黄3 甘草2 芒硝2

:瘀血と熱状で狂症を現す時に適応する。精神症状がある肩こり。

「承気」とは「気をうける」という意味で、熱によって気がすべて上部に上がっているから、それを下して便で出てしまおうという意味である。

承気湯類の系統には大柴胡湯や防風通聖散・乙字湯が入る。

大柴胡湯:和解半表半裏・瀉下熱結・疏肝解鬱・理気止嘔

:柴胡6 黄芩3 白芍3 半夏4 生姜4 大棗3 枳実2 大黄1

防風通聖散:疏風解表・瀉熱通便

:当帰 芍薬 川芎 山梔子 連翹 薄荷 生姜 荊芥 防風 麻黄 各1.2 大黄1.5 芒硝1.5 桔梗 白朮 黄芩 石膏 甘草 各2 滑石3(調胃承気湯が入っている)

:口渇・便秘・肥満で食欲旺盛

調胃承気湯:大黄2 甘草1 芒硝1:小承気湯(大黄2、枳実2、厚朴3)より強い。

乙字湯:大腸湿熱を清熱化湿・升提活血:肛門は湿っている:柴胡 升麻 炙甘草 大棗 生姜 黄芩 大黄:

食欲があり「古典の記載では神経質な人の痔」や

実熱の便秘薬(大黄甘草湯も)

燥熱便秘(肛門がカサカサ兎糞状:潤す麻子仁丸)と

実熱便秘(肛門が湿って食欲旺盛:冷やし乾かす大黄甘草湯・乙字湯)

が一般的で約8割を占める。

実証の便秘のなかで、気滞による便秘がある。

気滞便秘はストレスで生じ、実証なのでお腹に腹満症状があり矢気が多いが、あまり臭いは無い。臭いが強い場合は実熱便秘である。

気滞便秘では、女性では月経が始まると気滞が解消され便秘が治る。普段は固くて便秘するが、月経になると気が血液と一緒に流れ出すので便秘薬がいらなくなる。月経時の下利は脾虚の症状なので六君子湯を用いる。

より強いストレスがかかると気滞便秘だけでなく、肝炎にかかることがあるが、これは女性が圧倒的に多い。

それは女性のほうがストレスがかかっているためであるが、月経がある若い間は、経血によって気が流れ出るので肝炎にかかりにくい。

男性の場合は、月経と同様に気が流れ出してストレスがとれるのは射精である。便秘していて射精すると気滞が解消されて便通がよくなることがある。

ストレスによる気滞便秘の特徴は、月経や射精やその他何かがきっかけで便通がよくなったり、腹満や矢気しき が多いということである。

気滞便秘には、加味逍遙散、逍遥散、当帰芍薬散などを使うが、

ストレスに実熱を兼ねている場合は、便秘は解消しないので大柴胡湯を使う。

気滞便秘に加味逍遙散に大黄を加える場合もある。

大柴胡湯:和解半表半裏・瀉下熱結・疏肝解鬱・理気止嘔

:柴胡6 黄芩3 白芍3 半夏4 生姜4 大棗3 枳実2 大黄1

加味逍遙散加大黄;肝鬱化火・脾虚・湿邪・血虚

:柴胡 3 芍薬3 薄荷1 当帰3 牡丹皮2 山梔子2 茯苓3 白朮3 乾生姜1 甘草2 大黄1:痰飲はとれない・気滞便秘に適応する。

実証の便秘で冷えが極端に強くて起こる便秘がある。

陽虚便秘ではなく、冷えがひどい場合は腹満痛が起こり、実証だが脹りがなくて、腹満となる。

便秘で冷えが極端に強く実証なので拒按でお腹を押さえることができない。

便秘で冷えが極端に強い実証なので排便時には腹痛が起きる。

大腸の蠕動運動を自覚する。口渇は無く、手足はとても冷える。

これには大建中湯を使うが、これはお腹から冷えを取る薬で、手術後のお腹の冷えから生ずる癒着を防ぐ目的で西洋医学では処方されている。

大建中湯はお腹のひどい冷えの便秘に使う。

大建中湯:温中散寒・解痙止痛・補気健脾・殺虫・尿管結石痛

:蜀椒2 乾姜4 人参3 膠飴20

:脾胃虚寒・脾胃実寒の疝痛・尿管結石痛・お腹のひどい冷えの便秘:利水の白朮の配合が無いので止瀉作用は弱い

大建中湯の蜀椒は蛔虫の殺傷作用があるので蛔虫による腹痛によい

蜀椒しょくしょう(山椒)はウナギの生臭さを取るために使うが、生臭いものは原則 体を冷やすので、温中作用の山椒を使う。

蜀椒・山椒:ミカン科カホクサンショウの果実:辛大熱有毒:

脾胃肺腎経:温中・止痛・袪湿・駆回虫・明目

腐りやすい貝類や刺身には香辛料を使うのが原則。

ショウガで食べるものの刺身の方が生臭い。

鰹のたたきは生臭いのでショウガで食べる。

まぐろやイカはわさびで食べた方が美味しい。

わさびは殺菌作用があり、ショウガは発散作用がある。

生姜:散寒解表・温胃止嘔・化痰行水:風邪薬・吐き気止め・痰飲の薬。

魚介類・蟹・海老などによって起こる蕁麻疹や食あたりには防風よりも紫蘇葉を使う。

菊花も魚毒の清熱解毒作用がある

防風:袪風散寒解表・勝湿止痛・袪風止痙・止瀉止血:解熱・鎮痛:袪風の主薬・和食の食あたりに使う。

実証である瘀血の便秘は多いが、なかなか治らない。

舌はわずかに紫色。便秘の状態は便秘していてもあまり腹満がないがすっきり排便できない。ときどき冷食冷飲すると瘀血症状が悪化して、特に夜中に(瘀血は夜に悪化)お腹が刺されるような痛みが生ずる。

瘀血の便秘は腹痛時に排便できれば瘀血が軽減し、その刺痛の腹痛は治るが、便秘のためなかなか排便できずに長時間トイレで腹痛に苦しむ。苦しんでやっと排便すると腹痛は治まるという発作を毎回ではなく時々起こす:折衝飲を使う。

折衝飲:活血化瘀・理気止痛:当帰5 桃仁5 牡丹皮3 川芎3 赤芍3 桂枝3 牛膝3 紅花2 延胡索3(すべて袪瘀作用がある生薬):心陽虚・瘀血による鎮痛効果が血府逐瘀湯より強い。

瘀血の便秘は腹痛時だけ便が黒くなる。

瘀血の便秘では舌がわずかに紫色になる。はっきりとした青色ではひどく瘀血があり、心臓に疾患が疑われる。心臓発作が起きそうな人は舌が真っ青であるからすぐに分かる。ウシの舌は青黑色だがそれに似ている。

瘀血の便秘の特徴は以上で、分かりずらいが瘀血の薬を使うと便秘が治る。瘀血の便秘の鎮痛薬は折衝飲である。

折衝飲:活血化瘀・理気止痛

:当帰5 桃仁5 牡丹皮3 川芎3 赤芍3 桂枝3 牛膝3 紅花2 延胡索3(赤字は桂枝茯苓丸)

折衝飲:心陽虚による鎮痛効果が血府逐瘀湯より強い:陽虚が極まる午前2~4時に心筋梗塞が起きやすく瘀血の便秘による腹痛もこの時間に生ずる。一点が痛み、夜間悪化する痛みたとえば五十肩・腰痛・腹痛にも効く。

折衝飲は、四物湯(当帰+白芍+川芎は四物湯)と

桂枝茯苓丸(桂枝4、茯苓4、桃仁4、牡丹皮4、赤芍4)の合方のような処方で、さらにそれに牛膝・紅花・延胡索などの駆瘀血薬が加わっている。

折衝飲の牛膝ごしつ:活血袪瘀・袪瘀止痛・活血通経・舒筋利痹・補益肝腎・強筋骨・薬を下行させる引経薬:袪瘀血・筋骨の鎮痛剤・補肝腎

折衝飲の紅花:破瘀活血・通経:妊婦には不可。昔は口紅に入っていて婦人病に効果があった?

折衝飲の延胡索:活血・理気・止痛・鎮静・鎮痙:頭痛・胸部痛・腹痛・脇痛・月経痛・関節痛・打撲損傷痛・気滞血瘀の痛み。

折衝飲に大黄・芒硝などの下剤は入っていないが、お腹の中にある瘀血で血液の流れがひどく悪くなって瘀血便秘になるが、折衝飲で血流が回復すると腸の動きもよくなり下剤を入れなくても便秘が治る。

しかし、瘀血便秘でも普段から腹満痛があり(折衝飲には普段は腹痛は無く夜中に腹痛)、あるいはイライラが強い場合は、下剤の入っている桃核承気湯を使う。

桃核承気湯:清熱瀉下・活血逐瘀:(調胃承気湯+桃仁・桂枝)

:桃仁5 桂枝4 大黄3 甘草2 芒硝2

桃核承気湯:瘀血と熱状で狂症を現す時に適応・イライラが強く・普段から腹満痛。(狂状:生理時に一心不乱に掃除をしたり、バタバタする。万引きをする)

瘀血便秘で、食少の者には、温経湯を使う。

温経湯:血虚と瘀血と食少を治し、体を温める薬。

温経湯:温経散寒・補血調経・活血化瘀・益気和胃

:呉茱萸1 当帰3 白芍2 川芎2 人参2 桂枝2 阿膠2 牡丹皮2 半夏4 麦門冬4 生姜1 甘草2

:踵の割れ:温経湯:血虚で瘀血便秘で食少。

瘀血の症状:癥瘕ちょうかは腹部の腫塊・蓄血して発狂・面色暗・皮膚青紫色で鱗状に乾枯・鮫肌・夜間悪化・固定痛・刺痛・拒按・紫色の血塊・小腹硬満・胸脇痛・閉経・不孕ふよう・大便黒色・舌紫暗瘀点。

以上が実証の便秘で、これ以後は虚証の便秘について述べる。

人体にとって必要なものが不足しているのが病気の原因なら「虚」によって病気が生じている。

気虚の便秘には下剤を使わないことである。

便秘はしていても普段の便は軟便であるので、下剤を使うと始終腹痛が生じて軟便が何回も出るようになってしまう。

気虚の便秘では、排便しにくいが初硬後溏(脾虚の症状)となり、初めは硬い便だがその後軟便がでてくる。

あるいは、1回目は便意を催してもほとんど出なくて、あるいは少量の普通便だが、間もなく2回目に便意を催していくと、今度は軟便・下痢便がでるのが気虚の便秘である:補中益気湯・参苓白朮散が適応。

これは腸の働きが悪いことによって起こる便秘である。

この気虚の便秘は大黄や防風通聖散を使うといつも軟便・下痢となり便秘症状は悪化するのでほとんどの人はセンナ(番瀉葉ばんしゃよう)を使っている。

しかし気虚の便秘にセンナを使うと、排便時に虚脱状態になりぐったりしたり、トイレで気を失って倒れたりする。つまり気虚の人は排便に力を入れると脱力感から虚脱状態になるからである。補中益気湯を使う。

便秘の女子大生が大学のトイレで便秘で息張ったが、気を失って倒れたという話。

これはひどい気虚の便秘の例で、普通は、

便秘だが出ると軟便である人か、

初硬後溏

の二つのパターンに分けられる。

気虚の便秘には、四君子湯や参苓白朮散を使う。

しかし、六君子湯は中に二陳湯が入っているので体から水気をとる作用があり便秘にはむかない。

四君子湯:人参4、白朮4、茯苓4、甘草1(大棗1・生姜1):脾虚に対する基本処方。

参苓白朮散:補気健脾・理気化湿・止瀉

:党参 白朮 茯苓 炒白扁豆 炒山薬 薏苡仁 蓮子 陳皮 縮砂 桔梗 炙甘草。

参苓白朮散の白扁豆はくへんず・扁豆:マメ科フジマメの種子:甘微温:脾・胃経

:消暑化湿・和中健脾:夏季の胃腸型感冒(藿香正気散)や胃腸炎

参苓白朮散の山薬さんやく・薯蕷しょよ・長芋ながいも:補脾胃・益肺腎・袪痰

参苓白朮散の薏苡仁:甘淡微寒:利水滲湿・清熱・排膿・除痺・健脾止瀉:胃薬。

参苓白朮散の蓮肉・蓮子:スイレン科ハスの種子の仁:甘淡平:清心益腎・健脾止瀉・益腎固渋・収斂・鎮静・清心火・清熱・心腎不交:ノイローゼに中国で民間薬として用いる。

参苓白朮散の縮砂しゅくしゃ・砂仁さじん:ショウガ科縮砂の成熟果実:理気寛胸:健胃

参苓白朮散の桔梗:苦辛平:清肺提気・袪痰排膿:化膿・咽の痛みに適応。

六君子湯:補気健脾・理気化痰

:人参4 白朮4 茯苓4 甘草1 乾姜0.5 大棗2 半夏4 陳皮1

:脾虚・食少でむくみのある眩暈

二陳湯:燥湿化痰:半夏5、陳皮4、茯苓5、生姜1、甘草1:痰飲の基本処方。

しかし、気虚の便秘で初硬後溏で最初は硬いが、その後は水のような軟便なら六君子湯でもよい。

気虚の便秘で、軟便だけなら四君子湯がよい。

気虚がひどい場合の便秘には補中益気湯を使う。

六君子湯と同じく、補中益気湯は、便秘にも下痢にも効く。

気虚の便秘はかなり多いが、イライラが強い肝鬱なら気虚の便秘に加味逍遙散をつかう。冷え症があれば逍遥散にする。

加味逍遙散;肝鬱化火・脾気虚・湿邪・血虚

:柴胡 芍薬 薄荷 当帰 牡丹皮 山梔子 茯苓 白朮 生姜 甘草

:気虚の便秘でイライラのある者

気虚の症状:気虚の便秘以外に、普段から疲れやすく、ひどければ動いたり階段ですぐに息切れし(貧血は気虚の症状である)、深呼吸がしずらく(気短)、汗かきで(自汗)、少し動くと動悸がして、顔色は蒼白い(面色萎白)あるいは、くすんだ黄色(面色萎黄)、息切れしてしゃべりたくない(気短懶言)、声が小さい(語声低微)、眩暈などがある。

気虚の症状:易疲、気短懶言らんげん、自汗、動悸、面色萎白、面色萎黄、語声低微、眩暈、気虚の便秘で軟便か初硬後溏。

気虚の症状は、疲れるとどうなるか?を患者に聞く。

聞いて上記の症状がでてきたら気虚を判断する。

さらに疲れがひどくなると夕方に手足が火照ったり、顔がのぼせでイライラするという全体にのぼせがでてくると陰虚である。これは疲れるとどうなるかを聞いて初めて陰虚がわかってくる。

気虚の便秘では、太った人の便秘がかなり多く、すべてが熱によるものではない。

太った人の多くは、色白で汗っかきであるので気虚である。

食欲が旺盛なら気虚ではないが、あまり食べないと言い、食少で水やお茶で太っている人は気虚が原因で太っている。

虚証の人がすべて痩せているとは限らないが、陰虚の人はあまり太ることができない:陰虚は、血虚と津液不足が両方存在する。

陰虚の人はひどく手足が痩せていて手足が黒光りしている人もいて、緊迫した皮膚で手足が異常に痩せている。手足は胃腸の表れである。

気虚で、かなり太っている人は、面色萎白か面色萎黄のどちらかである。

その肥満は補気するだけで痩せるので六君子湯を使う。

六君子湯を肥満に使うのは処方中の二陳湯(燥湿化痰:半夏5、陳皮4、茯苓5、生姜1、甘草1)で浮腫がとれるので痩せる。

夕方になると足が腫れるたり指がすこし膨れると言う人は、

すべて浮腫であるので下剤を使わない。

便秘して色白で汗かきで太っていると防風通聖散を使ってしまう人が多いが、具合が悪くなりかえって太ってしまう。つまり脾虚なので下剤はいらない。

下剤をつかうと体から熱を奪うので、体の働きが低下するのでそれを浮腫で補おうとして逆に太ってしまう。防風通聖散をまちがって使うと体重が増える。

血虚の便秘の特徴:腹満があまり無い・血虚・気虚ではお腹をさわると妙に軟らかく、兎糞となる。お腹をさすると気持ちが良い喜按なので虚証(血虚)であり、皮膚がわずかに乾燥し、唇や爪の色が淡白。

血虚の便秘は四物湯を使う。

腹痛はないが疲れると腹痛になる場合の便秘には四物湯合小建中湯を使う:小建中湯は疲れ易く、腹痛、成長痛となる。

老人や子供に多いが「疲れて・咽が渇いて・お腹が痛い」の便秘には小建中湯:桂枝4 芍薬6 大棗4 生姜4 甘草2 膠飴20。

小建中湯:腎虚・肝血虚・脾虚の同時存在時に適応(桂枝湯+芍薬2+膠飴20)

:桂枝4 芍薬6 大棗4 生姜4 炙甘草2 膠飴20

便秘で、血虚に瘀血をともなう時には、温経湯を使う。

瘀血の症状の特徴:刺痛で固定痛で痛む範囲が狭く、拒按で、夜間に悪化し、瘀血では温めても冷やしても悪化する。舌は青紫色の斑点や舌体が青紫色で赤い。

温経湯うんけいとう:温経散寒おんけいさんかん・補血調経・活血化瘀・益気和胃

:呉茱萸1 当帰3 白芍2 川芎2 人参2 桂枝2 阿膠2 牡丹皮2 半夏4 麦門冬4 生姜1 甘草2

:踵の割れ:血虚で瘀血の便秘。

温経湯の駆瘀血薬:当帰・阿膠・牡丹皮・川芎。

(温経湯:血虚と瘀血を治し温める薬)

温経湯の 呉茱萸:辛・苦:大熱・小毒:温中散寒・散寒止痛(胃痛・頭痛)・下気止痛・止嘔:寒が中焦に凝集に適応:お腹を温める薬は安中散だが、食欲がない時は人参湯や呉茱萸湯をつかう

温経湯の当帰:補血・行血・活血袪瘀・潤腸・調経

温経湯の川芎:辛温:活血行気・袪瘀・袪風止痛(頭痛薬に配合)

:薬を頭部に運び、補血し瘀血を去り鎮痛する

温経湯の牡丹皮:苦辛微寒:清熱涼血・活血袪瘀・清肝瀉火(袪瘀し冷やす生薬)

血虚でイライラが強い便秘には、加味逍遙散を使う。

加味逍遙散は血虚・気虚・脾虚・陰虚(手足のほてり・のぼせ)・肝鬱(逍遙上逆)にも使えるが、どれか一つの症状があれば使える:肝鬱化火・脾虚湿性・血虚:柴胡3 芍薬3 薄荷1 当帰3 牡丹皮2 山梔子2 茯苓3 白朮3 乾姜1 甘草2。

肝炎の留守番処方:加味逍遙散加田七(怠ければ補中益気湯・食少なら六君子湯・心下痞硬なら大柴胡湯・少陽病の七症なら小柴胡湯)

少陽病の七症:往来寒熱・胸脇苦満・口苦・咽乾・目眩・黙黙不欲飲食・心煩喜嘔の一証があれば少陽病なので半表半裏証を和解して治療する。

陰虚の症状:顔がのぼせ・目赤・イライラ・顴紅かんこう・口が乾き・手足がほてる・夕方悪化・五心煩熱ごしんはんねつ。

加味逍遙散;肝鬱化火・脾虚・湿邪・血虚・陰虚

:柴胡 芍薬 薄荷 当帰 牡丹皮 山梔子 茯苓 白朮 生姜 甘草

:夕方になってのぼせる人(潮熱)に使う・更年期障害の逍遙上逆に冷や汗。

日に繰り返す周期的な、のぼせと冷や汗は、往来寒熱の症状だが、加味逍遙散を使うが、加味逍遙散は本来、夕方になってのぼせる人に使い、発熱の型は潮熱であり1日1回である。

当帰芍薬散は気滞(肝鬱)・血虚・気虚(脾気虚)・痰飲にそこそこ使え、痰飲には使えるが陰虚には使えない。陰虚でのぼせる人には使えない。

のぼせる人に当帰芍薬散が使えない理由は、川芎が薬を頭部に運ぶので、さらにのぼせるため。

当帰芍薬散:肝血虚による肝鬱・脾虚湿滞

:当帰3、白芍4、川芎3、白朮4、茯苓4、沢瀉4

:脾虚が強いと当帰がもたれるのでその胃痛には脾虚湿滞の六君子湯を合方:当帰芍薬散合六君子湯。

陰虚の便秘は、血虚に似ているが、大便が硬く(津液・血の不足に虚熱のため)、小便不利・口乾・舌苔は無苔・舌質紅でテカテカしてツルッとしている。剥苔の人もいるが舌体は赤く無苔でテカテカしている。

陰虚は、疲れると悪化し、夕方に悪化し、手足が火照り(五心煩熱)、口が乾き(口乾)、顔がのぼせ(加味逍遙散・知柏地黄丸)、顴紅かんこう、舌苔が無苔となるのが陰虚である。

六味丸:目の下のシミは顴紅であり、これに当帰芍薬散をつかっても治らないのは、これは腎の陰虚であるから六味丸を使って治す。

舌質は、陰虚では舌は無苔でテカテカして赤みを帯び舌は痩せている、他の虚証の気虚・血虚・陽虚は舌質淡で舌色が薄くなるのが特徴。

気虚の症状:倦怠無力感・気短懶言らんげん・動きたがらない・声に力が無い・自汗・慢性病・老化・先天不足・胃腸虚弱で栄養不良・過労・経血は淡紅色で量多サラサラ・舌質痰~胖・脈細軟無力

血虚の便秘の特徴:腹満があまり無い・お腹をさわると軟らかく兎糞となる。お腹をさすると気持ちが良い喜按なので虚証(血虚)。血虚:皮膚がわずかに乾燥し、唇や爪の色が淡白で剥がれ易く、面色萎白または面色萎黄。

陰虚の便秘には、脾虚なら小建中湯(老人に多い便秘)を使い、

それ以外は六味丸・六味丸加減方を使う。

陰虚の便秘の小建中湯:腎虚・肝血虚・脾虚の同時存在時に適応

:桂枝4 芍薬6 大棗4 生姜4 炙甘草2 膠飴20。

陰虚の便秘の六味丸:滋補肝腎・清虚熱・利湿

:三補三瀉:八味丸から六味丸が出来た

脾虚では、食欲不振・胃もたれ・胃内停水・食後嗜眠・面色蒼白・面色萎黄となる。

陰虚でイライラがある人の便秘には加味逍遙散を使う。

加味逍遙散は血虚・気虚(脾気虚)・陰虚・肝鬱にも使えるが、どれか一つの症状があれば使える。