癌証の治療:清熱解毒法

癌証の治療の原則は次のように帰納できる。

1,清熱解毒法

2,化痰散結法

3,活血化瘀法

4,扶正培本法

1,清熱解毒法:鬱熱化火、毒火内盛し、症状悪化や感染症の併発時や、癌証末期に用いる。煩躁高熱、口乾喜冷飲、大便乾燥、小便黄赤、頭痛、膿血の鼻汁、痰に膿血、黄疸、癌腫局部に紅腫熱痛、発熱便秘、舌苔黄、脈数。

化火は陰を虧損キソンするので、「清熱解毒法には養陰生津薬を併用」する・・・養陰生津薬よういんしょうしんやく:生地黄しょうじおう・天門冬・麦門冬・玄参・石斛セッコク・天花粉テンカフン(括婁根カロコン)・沙参シャジン。

生地黄しょうじおう:3~10g:消炎・解熱・鎮静・滋養強壮・強心作用。

天門冬3~5g:滋陰潤燥・清熱化痰・肺陰虚の虚熱の咳嗽:清熱滋陰潤燥化痰。

麦門冬3g:潤燥生津・化痰止咳:性質が滋潤で、肺を滋補するが痰を生じ易いので解表には不利。

陰虚甚だしい者には、当帰3.5g 白芍4g 玄参4g 夜交藤10g 炒酸棗仁3g。

玄参4gげんじん:涼血解毒・降火滋陰:涼血・滋陰しまた解毒作用を示す要薬。皮膚・頭頸部に働く。冷やし潤す:滋腎陰薬:肺胃腎経:滋陰清熱・瀉火解毒(腎陰虚の薬)。

陰虚が明らかなら玄参3.5g 石斛3g 鼈甲4g(先煎) 白芍4g 当帰3g。

石斛3gせっこく:生津益胃・滋陰潤肺・補陰:胃陰を滋養する:養陰生津薬。

天花粉3~5g・花粉・括楼根:清熱潤燥・排膿消腫・生津止渇・抗腫瘍作用・糖尿病の胃熱による傷陰に対して寒凉で滋潤作用を用いる。

北沙参3g:南沙参3~6:肺陰虚(肺陰不足):乾咳・嗄声・口渇・咽乾・皮膚乾燥・泡沫状や膿性の喀痰は気管支炎・上気道炎などでみられ、生津潤肺で清熱滋潤の沙参・麦門冬・玉竹・百合で対処する。

清熱解毒法に熱毒入血の症状:出血、瘀斑オハン、口渇不欲飲、舌絳無苔ぜつこうむたい。

絳コウ:あか、深紅しんく・こい赤色。

清熱解毒法に湿熱兼挟の症状:胸腹痞満、嘔悪納呆オウオノウホウ、舌苔黄じ(黄色がかった厚ぼったい舌苔)。

清熱解毒法に陰虚兼挟の症状:唇乾歯燥、舌光無津ゼッコウムシン。

清熱解毒薬:金銀花・蒲公英ほこうえい・紫花地丁しかじちょう・天葵子テンキシ・野菊花のぎくか・連翹・敗醤草ハイショウソウ・草河車ソウカシャ(拳参ケンジン)・山豆根サンズコン・板藍根・黄連・黄芩・黄柏・山梔子・土茯苓ドブクリョウ(サンキライ)・白花蛇舌草びゃっかじゃぜっそう・半枝蓮はんしれん・半辺蓮はんぺんれん・山慈姑さんじこ。

熱毒入血には清熱涼血薬を加える:犀角サイカク(クロサイの角)・牡丹皮・紫草シソウ(紫根しこん)・生地黄しょうじおう。

清熱解毒法に湿滞兼挟には化湿滲利薬カシツシンリヤクを加える:藿香カッコウ・佩蘭ハイラン・白豆蔲ビャクズク・薏苡仁・茯苓・沢瀉・猪苓・通草ツウソウ(木通)・滑石。

金銀花3~6g・忍冬ニンドウ:清熱解毒・芳香化濁:皮膚や頭頸部、肺の熱毒を除き、湿濁を化す。

三金湯:金銀花(スイカズラの花蕾)・菊花・蒲公英(タンポポの根)。

宣肺には風寒では、麻黄(宣肺平喘)・杏仁(温肺薬)・前胡(疏散風熱)・桔梗・象貝母(潤燥化痰)などだが、風熱にはさらに清熱解毒の金銀花・連翹・蒲公英・板藍根・大青葉などが必要。

蒲公英5~10~30g(タンポポの根):清熱解毒・健胃。

紫花地丁3~5g、単味10~20gシカジュチョウ・紫地丁・地丁:清熱解毒・消腫:消炎・抗菌:五味消毒飲。

野菊花3~6g・新鮮品10gのぎくか・野菊:清熱解毒:疔・癤・癰などの化膿症に野菊湯;野菊花10 金銀花30 蒲公英10 紫花地丁10 水煎服。

発熱するものには金銀花3~6g・連翹4g・大青葉3~5g、10~20g・板藍根3~10~20gを加える。

連翹4g:清熱解毒・疎風清熱・消腫排膿:目耳鼻皮膚の薬。

敗醤草はいしょうそう・敗醤3~10g:清熱解毒・消癰排膿・活血袪瘀:抗菌・肝庇護・急性虫垂炎。

拳参ケンジン2~5g、癌5~10g・草河車2~5g・七葉一枝花:清熱解毒・化痰散結:毒蛇の咬傷に:喘息・肝炎:肺癌に七夏豆根湯効果は未確認。

山豆根2~5gさんずこん:清熱利咽:消炎・抗腫瘍:咽喉や歯齦の実熱の腫脹疼痛、肺癌・喉頭癌の初期に、白花蛇舌草10g・魚醒草10gなどと配合して用いる。効果は未確認。

板藍根3~10~20g:涼血解毒・清利咽喉:中国では風邪やインフルエンザの時の民間で抗菌・抗ウイルス薬として常用。

黄連0.5~3g:苦寒:心胃経:清熱燥湿(冷まし乾かす作用)・瀉火解毒・涼血止血:清熱解毒の作用、気分・血分の熱を冷ます。

黄芩3~5g、2歳以下は0.5~1.5g:清熱燥湿、清熱瀉火、解毒涼血(血熱を清熱する)、清熱安胎:寒で凝固作用。

黄柏1~4g・黄檗おうばく:キハダのこと:清熱燥湿・瀉火解毒・清虚熱:ベルベリンが主成分。

山梔子3~4g、5~8g:瀉火除煩・清熱化湿・降火通淋・解毒・涼血止血:化湿解毒し尿より出す・三焦の熱を冷ます。

土茯苓どぶくりょう10~20g、癌160~250g:清熱解毒・袪湿通絡:土茯苓とバッカツ:バク葜。

白花蛇舌草5~20g。癌25~50g:アカネ科フタバムグラの全草:甘淡涼:胃大腸小腸経:清熱袪瘀・消癰解毒:急性虫垂炎。小児腎炎に白車湯:白花蛇舌草5・車前草5・山梔子3・茅根10g・紫蘇子2g。

半枝蓮10gはんしれん

半辺蓮5~12gはんぺんれん:キキョウ科半辺蓮の寝付き全草:甘辛平:心小腸肺経:利水消腫・解毒・腫脹消退:毒蛇・サソリ・蜂の刺傷・胃癌直腸癌肝癌に白花蛇舌草などと配合して用いる。

山慈姑さんじこ3~5g:ラン科サイハイラン・ユリ科アマナの鱗茎:甘微辛・寒・小毒:清熱解毒散・強心・抗がん・抗インフルエンザ・乳癌:乳癌方。

紫金錠(玉枢丹):陳実功:外科正宗:山慈姑さんじこ 紅芽大戟 五倍子 麝香じゃこう 千金子を糯米で錠剤とし外用。

乳癌方:安徽省人民医院方:紫金錠4錠・竜脳0.6g 金銀花10 王不留行10 猫目草10 後の3薬でエキス末をつくり、紫金錠と竜脳の2薬を加えて粉末にし、1日4回0.5~1gずつ服用する。

王不留行おおふるぎょう:ナデシコ科ドウカンソウの成熟種子、クワ科オオイタビの成熟果殻:甘苦平:肝胃経:催乳・痛経・消腫・止痛:乳汁分泌不足・排乳困難:乳腺炎に王不留行5,蒲公英10,白芷2g:妊婦には禁忌。

升麻0.6~3g、は古より犀角の代用にして止血の効あり::甘辛微寒:発表透疹・清熱解毒・升挙。

犀角は清熱解毒作用が羚羊角より強いが、羚羊角は鎮痙熄風作用が強く、高熱・意識障害・痙攣がひどい時は両者を併用する。升麻は古より犀角の代用にして止血の効あり。

犀角0.5~3g:サイ科クロサイ角:苦酸鹹寒:心肝胃経:清熱定驚・涼血解毒・強心・解熱・鎮静:・止血:ヤスリですった粉末を衝服か、すりつぶした汁を衝服。犀角は効果なため牛角10~40gで代用する。

牡丹皮2~3g:牡丹の根の皮:苦辛微寒:清熱涼血・活血袪瘀・清肝瀉火:清熱袪瘀薬:冷やし活血して瘀血を去る。

紫草・紫根:麻疹の予防:紫根3g、甘草1gを煎じて隔日に1度ずつ3回服用

血熱の生薬の紫根1~3g・紫草・紫草根・紅条紫草:ムラサキ科ムラサキの根:甘鹹寒:心肝経:涼血解毒・透疹:水痘・麻疹の主薬:はしかの初期で色が赤くて発疹しそうで発疹せず便秘に使用で、下痢・泥状便や鮮紅色に発疹したものには使用しない。

藿香2~5g・広藿香:化湿和中・解暑・解表・健胃・解熱:辛散により風寒を除き、芳香化濁によっし湿濁を化湿、醒脾和中にも働く。

佩蘭ハイラン1.5~3g・省頭草:キク科フジバカマの全草:辛平:脾胃経:化湿和中・解暑:暑湿に対する常用薬である。

白豆蔲びゃくずく1.5~3g:・白豆仁・白叩仁・蔲仁:ショウガ科白豆蔲の果実中の種子:辛温:肺脾胃経:化湿和胃・行気寛中:草豆蔲・草果と似ている。

清熱解毒の方剤:五味消毒飲・黄連解毒湯・犀角地黄湯・清営湯・化斑湯・梔子金花湯。