癌症 活血化瘀法

癌症 3,活血化瘀法 2024/9/20

癌証の治療の原則は次のように帰納できる。

1,清熱解毒法

2,化痰散結法

3,活血化瘀法

4,扶正培本法

3,活血化瘀法:気滞血瘀によって腫瘍が形成され、または症状にも血瘀があり、腫塊が痛み、固定痛で肌膚甲錯キフコウサクし、舌青紫または暗、舌に瘀斑や瘀点があり、脈沈細または弦細。

肌膚甲錯:慢性病で皮膚の乾燥が強く、触れるとおろし金のようにザラザラするのは「肌膚甲錯きふこうさく」で陰血不足・瘀血内結である。

「気行れば血行り、気滞すれば血瘀となる」ので、活血化瘀薬は行気薬ギョウキヤクと併用される。また、「瘀血は正虚の上で産生されるので、活血化瘀には、常に補気薬または養血薬と同時に処方される」。袪瘀血の薬には四物湯が必要とされる。

活血化瘀薬:当帰・赤芍・川芎(以上四物湯の三成分)・丹参・桃仁・紅花・生蒲黄ホオウ・五霊脂ゴレイシ・三棱・莪朮・水蛭すいてつ(ヒル)・虻虫ぼうちゅう(アブ)・血竭けっけつ・穿山甲せんざんこうのウロコ・䗪虫しゃちゅう(シナゴキブリ)。

当帰・帰身きしん・当帰尾・帰尾・全当帰:甘辛温:心肝脾経:補血・行血・潤腸通便・調経:補血の主薬:1~3~4~10g、当帰生姜羊肉湯は10g以上。血液循環には全当帰、血虚・月経には帰身、瘀血には帰尾。

赤芍せきしゃく:ボタン科シャクヤクの根:苦微寒:肝経:清熱涼血・活血袪瘀:補血養陰・鎮静鎮痛には白芍を、涼血逐瘀・活血袪瘀には赤芍を使い、赤芍と白芍を併用することもある:2~5g。

水蛭すいてつ:ウマビル:鹹苦平・有毒:肝膀胱経:破血逐瘀:煎剤は0.6~1.5g、散剤0.1~0.2g、なまぐさいので粉末をカプセルで。水蛭をけずるか炙り粉末にして黄酒か湯で服用、酒に漬けて内服。

虻虫ぼうちゅう:アブ科ウシアブ・フタスジアブ・雌の成虫の乾燥体:破血逐瘀:牛馬の血を吸う:通経、駆瘀血薬、月経閉止、胸腹中の蓄血・血脈及び九竅を通利する:妊婦には禁忌。  

血竭けっけつ・キリン血:ヤシ科キリンケツの樹脂:甘鹹平:心包肝経:止血止痛・活血生肌:辛熱で強い燥性があるので陰虚・血熱には禁忌:内服は0.3~0.5g、丸剤・散剤とし、湯剤には用いない。

全蝎・全蠍ぜんかつ・全虫・蝎尾かつび:キョクトウサソリ科のキョクトウサソリの全身:辛平小毒:肝経:熄風鎮痙・袪風止痛・解毒散結:破傷風・熱性痙攣・半身不随・顔面神経麻痺:粉末0.4~1g~2g。

穿山甲せんざんこう・炮山甲・山甲珠ざんこうじゅ・山甲片:センザンコウの甲羅片:鹹微寒:肝胃経:消腫排膿、下乳通経、袪瘀通絡:催乳、膿瘍、高血圧症、神経衰弱、腹腔内腫瘤などに他薬と配合:1~3g。

䗪虫しゃちゅう:地鱉虫ジベッチュウ・土鱉虫:シナゴキブリの雄の全虫:鹹寒:有毒:肝経:破血逐瘀・續筋骨:筋骨折傷,瘀血閉経,癥瘕痞塊。血瘀による肝腫大及腰痛、捻挫:妊婦は禁忌:2~3gを酒で。

活血化瘀薬に気滞兼挟に行気薬ぎょうきやく:鬱金うこん(ターメリック)・香附子・延胡索えんごさく・降香こうこう・乳香にゅうこう・没薬もつやく。

鬱金うこん・広鬱金・川鬱金・玉金:ショウガ科姜黄キョウオウ(広鬱金を一般に使う)、鬱金ハルウコン(川鬱金は薬性が温和・温鬱金)の塊根:疏肝理気・解鬱袪瘀・止痛・健胃・利胆:ターメリック:1~3g。

香附子こうぶし・別名(香附:莎草さそう):カヤツリグサ科浜菅ハマスゲの根:辛微苦平:肝三焦経:疏肝理気・調経止痛:生理痛など婦人薬に繁用:2~3g。

延胡索:ケシ科エゾエンゴサクの塊茎:辛苦温:活血・理気・止痛・鎮静・鎮痙:気滞血瘀に対して活血行気で血滞を除き止痛する。折衝飲・金鈴子散・芎帰調血飲第一加減に配合:1~3g。

降香こうこう・降真香:ミカン科降香の木部乾燥:辛温:肝経:理気止痛・袪瘀止血:打撲捻挫・陰虚火旺や血熱には禁忌:粉末0.8~1gを衝服、煎剤1~2g:冠心二号方に配合。

冠心二号方(北京地区防治冠心病協作組)降香5 丹参10 赤芍5 川芎5 紅花5g、毎日1剤を3回に分けて沖服する。4週間を1クールとし、連続3クル服用する。

衝服しょうふく(沖服ちゅうふく):少量の散剤をもつ薬湯を服用するとき、湯や酒に入れて攪拌して服用すること。琥珀・朱砂は浮きやすく沈みやすいので衝服するときは蜜で調えてから服用する。

沖服ちゅうふく:(を湯・酒で溶いて服用する)。

乳香:カンラン科の乳香樹の樹皮より滲出した樹脂:辛苦温:心肝脾経:活血・止血・舒筋:瘀血による疼痛の鎮痛・消炎:1~3~5g。

没薬もつやく:カンラン科没薬樹から産出する樹脂:苦平:肝経:活血袪瘀止痛。乳香と没薬はよく一緒に痛み止めに用いられる:1~4~5g:妊婦や月経過多には禁忌。

活血化瘀薬に気虚兼挟に補気薬:人参・党参・黄耆・太子参。

活血化瘀薬に血虚兼挟に養血薬:当帰・川芎・赤芍・熟地黄・何首烏かしゅう・阿膠アキョウ。

熟地黄・熟地じゅくじ:ゴマノハグサ科カイケイジオウの塊状根:酒にて蒸す:血虚に適す:滋陰・補血:4~10g~15~20g~30g。

補血薬で滋腎陰薬の何首烏かしゅう:タデ科ツルドクダミの塊状根:苦甘渋温:肝腎経:滋陰・強壮・益精補血・緩下・養血熄風:3~5g。:制首烏は補益肝腎、生首烏は潤腸・瀉下・消炎が強い:夜交藤はタデ科何首烏ツルドクダミの蔓茎:安神・養血活絡)。

阿膠あきょう:滋潤・滋養・止血・皮膚枯燥・口唇乾燥などの燥証・虚証・血証に有効:炙甘草湯の生地黄、麦門冬、阿膠、麻子仁、大棗は、心血を補い、心陰を滋潤して血脈に栄養を与える。

活血化瘀処方:大黄䗪虫丸だいおうしゃちゅうがん・犀黄丸さいおうがん、小金丹しょうきんたん・血府逐瘀湯・桂枝茯苓丸・桃核承気湯・田七(田三七)・折衝飲・抵当湯・温経湯ウンケイトウ・失笑散シッショウサン・通竅活血湯ツウキョウカッケツトウ・復元活血湯。

血府逐瘀湯:活血化瘀行気止痛:胸中血瘀・血行不暢:脹痛・頭痛が慢性的。吃逆・活血化瘀に行気解鬱。吃逆・呃逆・熱感・怒りっぽい・動悸・不眠・口唇や目の周囲がどす黒い、舌質暗、瘀点や瘀斑。脈渋・弦。

暢チョウ:のびる、長くなる、のびのびする、やわらぐ、ゆきわたる、とおる:流暢りゅうちょう。

阿仙薬アセンヤク・児茶ジチャ・孩児茶ガイジチャ・鉄児茶・珠児茶:マメ科孩児茶の樹枝を乾燥し、水煎液を濃縮乾燥:苦渋平:肺経:収湿・収斂・斂瘡・消炎・止血作用。

阿仙薬の外用は適量:児軽散:阿仙薬(児茶)3g 軽粉2g 竜脳0.3g 竜骨3g細末を水で練って塗布する。

軽粉けいふん・水銀粉:水銀から昇華法で生成した塩化第一水銀(甘汞かんしょう)の白色結晶性粉末で非常に軽いので軽粉という:辛寒・有毒:殺虫・逐水:舟車丸しゅうしゃがん に使用。

桂枝茯苓丸:金匱要略:活血化瘀・緩消癥塊:桂枝 茯苓 牡丹皮 桃仁 赤芍各3g:下腹部の腫瘤・圧痛・腹のひきつり・不正性器出血・月経痛・無月経・胎盤残留・死胎の残留・悪露停滞。

桂枝茯苓丸加薏苡仁:薏苡仁のもつ清熱解毒・排膿・利水・滲湿・治疣贅の作用が加わっている。

桃核承気湯:傷寒論:破血下瘀:桃仁4 大黄4 桂枝2 炙甘草2 芒硝2g 蓄血証で排尿は異常がない。下腹部が硬く脹る・うわごと・夜間の発熱・狂躁状態:熱邪と血が小腸で結した蓄血証:血分の熱は夜間発熱し、瘀熱が心神上擾でうわごと・狂躁状態:熱膀胱に厥し、その人狂のごとく。血自ずと下るものは愈ゆ。

田七・田三七・三七・参三七:ウコギ科人参三七の根:チクセツニンジン竹節三七の根茎:甘微苦温:肝胃経:止血・袪瘀・消腫・止痛:止血と袪瘀の主薬である。内出血・外傷の出血に袪瘀止血・消腫止痛粉末1gを重湯・あたためた黄酒・白酒30mlで服用。沖服してもよい。

折衝飲:活血化瘀・理気止痛:当帰5 桃仁5 牡丹皮3 川芎3 赤芍3 桂枝3 牛膝3 紅花2 延胡索3(すべて袪瘀作用がある生薬):心陽虚・瘀血による鎮痛効果が血府逐瘀湯より高い。

温経湯:温経散寒・補血調経・活血化瘀・益気和胃: 半夏4 麦門冬4 呉茱萸1 乾姜1 当帰3 桂枝2 白芍2 川芎2 人参2 甘草2 阿膠2(皮の膠)牡丹皮2:太陽と少陰が同時に病む両感証に使用。