2024/10/15
滋陰降火湯
滋陰降火湯:万病回春:滋陰降火:肺腎陰虚火旺の乾咳・少痰・しわがれ声・盗汗(寝汗)・潮熱:炙甘草1.5 当帰4 白芍7 生地黄2.5 熟地黄3 天門冬3 麦門冬3 白朮3 陳皮2 黄柏2 知母2、生姜大棗で水煎服:中医臨証のための方剤学(神戸中医学研究会編著:東洋学術出版社)
嗄声:しわがれ声:サセイ
「漢方診療三十年」大塚敬節:232.咽が乾燥して声の出なくなった36歳の男子(麦門冬湯)。
肺陰虚(肺陰不足):乾咳・嗄声・口渇・咽乾・皮膚乾燥・泡沫状や膿性の喀痰は気管支炎・上気道炎などでみられ、生津潤肺で清熱滋潤の沙参・麦門冬・玉竹ぎょくちく・百合ひゃくごうで対処する。
沙参麦門冬湯:肺胃陰虚:口渇・口咽の乾燥感・食欲不振・乾咳・少痰・嗄声させい・吃逆しゃっくり・悪心・胸焼け・便硬・舌紅で乾燥・発熱。
「漢方診療三十年」大塚敬節:351「衆方規矩」に夜間の咳嗽には滋陰降火湯を用い、早朝の咳嗽には栝楼枳実湯を用いる、この口訣では滋陰降火湯がよいわけであるが、喘鳴と呼吸困難と胃部の振水音の有る者には、栝楼枳実湯がよい。
「漢方診療三十年」大塚敬節:357.滋陰降火湯は、痰のあまり出ない乾燥した強い咳嗽によく効く。老人で、夜間ひどく咳込むものにも、適応がある。慢性の肺結核患者で、ときどき喀血するものに用いて効果を得たことがある。
勿誤薬室方函口訣:浅田宗伯:桂枝五物湯は、東洞の経験にて、歯痛、口舌糜爛の症に効あり。一等重き者を保元柴胡清肝散とし、保元柴胡清肝散の虚候を帯びる者を滋陰降火湯とす。
勿誤薬室方函口訣:浅田宗伯:寿世保元:方函として:虚火上昇して、喉を痛め、并せて喉内に瘡を生ずるを治す。以上九味。竹瀝を入れて温服す。口訣くけつとして:此方は虚火上炎して喉瘡を生ずる者を治す。肺痿(肺結核)の末症(最後)、陰火喉癬と称するもの一旦は効果あれども全治すること能わず。又、舌疳には此方と甘露飲を服せしむより別に策はなし。
陰火喉癬:陰虚のため虚火が上昇し、咽喉部に潰瘍などが生じる状態。喉頭結核などに相当する。
勿誤薬室:寿世保元:方函:滋陰降火湯は虚火上昇して、喉を痛め、并せて喉内に瘡を生ずるを治す。竹瀝を入れて温服す。口訣:此方は虚火上炎して喉瘡を生ずる者を治す。
勿誤薬室:寿世保元:方函:滋陰降火湯は肺痿の末症、陰火喉癬と称するもの一旦は効果あれども全治すること能わず。又、舌疳ゼツカンには此方と甘露飲カンロインを服せしむより別に策はなし。
甘露飲:滋陰和胃・清熱化湿:胃陰虚・湿熱:歯齦の腫脹疼痛びらん出血・口内炎・咽痛:枇杷葉びわよう 石斛せっこく 黄芩 枳実 天門冬 麦門冬 乾地黄 熟地黄 茵蔯蒿いんちんこう 甘草 各2g。
石斛せっこく:ラン科石斛の茎:甘微寒:肺胃腎経:生津益胃・滋陰潤肺・補陰:胃陰を滋養する:養陰生津薬。
「漢方診療三十年」大塚敬節:357.声が嗄れた73歳の老人(滋陰降火湯)。
滋陰降火湯:万病回春(明の龔廷賢きょうていけん):肺腎陰虚:八仙丸・麦味地黄丸:代用小建中湯:当帰 白芍 生地黄 (熟地黄) 天門冬 麦門冬 陳皮各2.5 白朮3 知母 黄柏 炙甘草各1.5。
肺気陰両虚を呈する時は、益気養陰するために四君子湯合八仙丸や補中益気湯合八仙丸・補中益気湯合六味丸合生脈散とする(六君子湯では陰虚を助長する畏れ)。
八仙丸:喘息の腎陰虚の場合(肺腎陰虚)は、緩解期であれば八仙丸であり、普段から飲ませる。八仙丸の代用には小建中湯を使う。但し、帰耆建中湯では、薬効がすべて上の方に行き、肺に行くが腎には行かない。
肺腎陰虚の薬の八仙長寿丸・八仙丸:医級:肺腎陰虚:地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮・五味子・麦門冬(六味丸+五味子・麦門冬):小建中湯で代用できるまたは六味丸合生脈散。
滋陰降火湯:「吉益東洞の経験により、歯牙の疼痛(歯痛)、口舌糜爛、歯齦炎など」、比較的実証の歯痛・歯齦炎・口舌糜爛・歯槽膿漏・口内潰瘍に応用される:矢数道明「臨床応用漢方処方解説」。
滋陰降火湯:肺腎陰虚に適応:乾咳・粘痰・咽乾・血痰・呼吸促迫(肺陰虚)・ほてり・のぼせ・ふらつき・腰膝酸軟(腎陰虚)・寝汗(陰虚)・舌紅で乾燥・舌苔少。脈細数。
水と火は相剋の関係にあるから、水である腎が房事過度(セックス過度)などで衰えると陰虚となるので、火である心の働きが強くなって、臍部に動悸がたかまる。これを陰虚火動といい、滋陰降火湯など地黄剤(腎陰虚薬)の適応。