糖尿病

2024/11/4

糖尿病

糖尿病に使う処方:白虎加人参湯・大柴胡湯・防風通聖散・知柏地黄丸・八味丸・六味丸・麦門冬湯・沙参麦門冬湯・一貫煎・桃核承気湯・玉泉散・十全大補湯合六味丸・五苓散・加味逍遙散・六君子湯・補中益気湯・参苓白朮散・参苓白朮散合補中益気湯・参苓白朮散合杞菊地黄丸合真武湯・六君子湯合真武湯・防風通聖散合1/3量の加味逍遙散・白虎加人参湯合1/3量の加味逍遙散

弁証の要点は、口渇多飲(実熱か虚熱か?・痰飲)・多尿(腎虚)・小便不利(腎虚・肺腎陰虚・肺陰虚・肺気虚)・浮腫(脾湿や下半身の浮腫は腎虚)・体重減少(胃陰虚・腎陰虚)・多食善飢(実熱・胃熱)・食少(脾虚)・イライラ(肝鬱)・瘀血・蛔虫

糖尿病は、漢方でこれに対応する病名は「消渇しょうかち」である。

脾の気虚から生じる糖尿病には、六君子湯・補中益気湯・参苓白朮散が適用される。

唇(脾)と舌(心)の症状が、ともにある時には心脾両虚・気血両虚の帰脾湯を使う。

大煩渇・大汗・多尿には白虎加人参湯を使うが、注意点は体重減少がなく陰虚ではないことが必要。夜中に冷蔵庫から冷水を出して飲むような口渇は白虎加人参湯の目標となる。

体重減少する陰虚(虚熱・津液不足)で多飲・多尿(腎虚)の糖尿病には腎陰虚の知柏地黄丸・六味丸。

肺腎陰虚(肺結核:乾咳・血痰・骨蒸潮熱:八仙丸・百合固金湯ひゃくごうこきんとう・滋陰降火湯)

八仙長寿丸・八仙丸:医級:肺腎陰虚:地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮・五味子・麦門冬(六味丸+五味子・麦門冬):小建中湯で代用できる。又は六味丸合生脈散(六味丸+人参五味子麦門冬)。

水と火は相剋の関係にあるから、水(腎)が房事過度(セックス過度)などで衰えると陰虚となるので火(心)の働きが強くなって、臍部に動悸がたかまる。これを陰虚火動といい、滋陰降火湯など地黄剤の適応。

滋陰降火湯:肺腎陰虚に適応:乾咳(夜に咳悪化)・粘痰・咽乾・血痰・呼吸促迫(肺陰虚)・ほてり・のぼせ・ふらつき・腰膝酸軟(腎陰虚)・寝汗(陰虚)・舌紅で乾燥(陰虚)・舌苔少(陰虚)。脈細数:万病回春:滋補肺腎・清熱:当帰 白芍 生地黄 熟地黄 天門冬 麦門冬 白朮 陳皮 黄柏 知母 炙甘草 生姜 大棗:夜間の咳嗽(「衆方規矩しゅうほうきく」による)。

五苓散を使用する三原則は口渇・小便不利・水逆・自汗で、すべて痰飲が原因である。

口渇喜冷飲・小便不利で浮腫(五苓散の口渇・小便不利の要件)がある場合の糖尿病は胃苓湯(平胃散+五苓散)が適応。

口渇喜冷飲(腎の陰陽両虚)・小便不利(腎虚)で下半身だけに浮腫がある場合は八味丸・牛車腎気丸。

牛車腎気丸:温補腎陽・利水:下半身の浮腫・乏尿ぼうにょう(小便不利)。

多食善飢で体重減少の消渇には胃の陰虚の麦門冬湯や沙参麦門冬湯・一貫煎。

多食善飢たしょくぜんき:たくさん食べるが、すぐに空腹を覚える状態。

消渇:しょうかち:しょうかつ:消癉:多飲・多食・多尿の症状が特徴:糖尿病も含む。臓腑燥熱・陰虚火旺して消渇や糖尿病を生ずる。治法は滋陰・潤燥・降火の法。

多食善飢で体重減少(胃陰虚)の消渇には一貫煎。

胃陰虚の治療原則:養胃陰+清熱和胃:麦門冬・石斛せっこく・玉竹ぎょくちく・沙参・生地黄しょうじおう・天花粉:麦門冬湯・養胃湯。

麦門冬湯は胃陰による胃気上逆(しゃっくり)を鎮め、

養胃湯は甘涼滋潤により胃陰を回復する。

麦門冬湯:滋陰益気・補益肺胃(胃陰虚に適応)・降気:麦門冬10 人参2 製半夏5 炙甘草2 粳米こうべい5 大棗3:口乾の吃逆に一服で効く:消渇病で多食善飢だが体重減少がある陰虚につかう:製品有り。

麦門冬ばくもんどう・麦冬ばくどう:ユリ科ジャノヒゲの塊状根:甘微苦微寒:潤燥生津・化痰止咳:性質が滋潤で、肺を滋補するが痰を生じ易いので解表(風邪の初期)には不利。

養胃湯よういとう:温病条辨:益胃生津・清虚熱:甘涼滋潤:沙参3 麦門冬5 生地黄5 玉竹2アマドコロ 氷砂糖1:胃陰虚で口渇・喉の乾燥感・乾嘔からえずき・食欲不振・舌紅乾燥・舌苔少・剥苔・または無苔・脈細数:製品無し。胃陰虚は半夏厚朴湯では乾燥させるので悪化する。

半夏厚朴湯:理気化痰:化痰の半夏が主薬:半夏6 厚朴3 茯苓5 生姜4 紫蘇葉2:肝鬱痰飲の薬:竄痛ざんつう の薬。

非常にお腹がすくが、頬に白斑があるのは蛔虫が原因の蛔虫斑であるので、烏梅丸をつかう。

烏梅丸:金匱要略:安蛔止痛アンカイシツウ:烏梅3 細辛3 乾姜2 黄連7 炮附子3 当帰2 黄柏3 桂枝3 人参3 蜀椒2gを細末とし、1回2g、1日3回服する。烏梅丸は厥陰寒熱錯雑および蛔厥ケイケツ証治療の主要方剤である。

駆虫する烏梅うばい:バラ科梅の未成熟果実を種をとり乾燥して黒っぽくなったもの:酸渋:斂肺・渋腸・生津・安蛔(駆虫)・袪痰・鎮咳・止瀉・解熱。(梅肉エキス)。

駆虫する蜀椒しょくしょう・花椒かしょう・川椒・山椒さんしょう:ミカン科カホクサンショウの果実:脾胃肺腎経:辛大熱有毒:温中・止痛・袪湿・駆回虫・明目:目に良いが多くとると鼻血が出る。

多食善飢で体重減少する陰虚の糖尿病の人は六味丸類+十全大補湯:食欲が有り、よく食べるが痩せる糖尿病に使う:十全大補湯だけでは陰虚を補っていないので糖尿は悪化する。

六味丸類:六味丸・杞菊地黄丸・知柏地黄丸・八仙丸・麦味地黄丸・都気丸(六味地黄丸+五味子2g)。

体重減少の陰虚・口渇・口臭・便秘の糖尿病:大柴胡湯合六味丸:大柴胡湯だけでは陰虚の糖尿は悪化する。

大柴胡湯は、糖尿病で多食善飢で体重減少がない人で(陰虚には大柴胡湯単独では使えない+六味丸)、イライラすると大食いになる人で、心下痞硬(大柴胡湯の胃熱の目標症状)の人に適応する。

六味丸:滋補肝腎・清虚熱・利湿:三補三瀉:八味丸から六味丸が出来た:八味丸中の桂枝・附子を除いたものである:地黄 山茱萸 山薬 沢瀉 茯苓 牡丹皮。

多食善飢で体重減少がない(陰虚ではなくイライラは無い)糖尿病には防風通聖散を使う。

防風通聖散加減。防風通聖散:疏風解表・瀉熱通便:風熱・突然生じる風湿熱の痔や耳鳴・耳聾。

防風通聖散:疏風解表(カゼ薬)・瀉熱通便:当帰 芍薬 川芎 山梔子 連翹 薄荷 生姜 荊芥 防風 麻黄各1.2 大黄1.5 芒硝1.5 桔梗 白朮 黄芩 石膏 甘草各2 滑石3:便秘・肥満・食欲旺盛でやせない糖尿病:下痢体質や軟便には使わない。

糖尿病で多食善飢で体重減少が無くイライラすると大食いになる人(陰虚ではない肝鬱)は大柴胡湯である。

糖尿病で多食善飢で体重減少がない人で(陰虚ではない)、舌が紫色や瘀斑がある人は桃核承気湯(瘀血)をつかう。

桃核承気湯:傷寒論:破血下瘀:桃仁4 大黄4 桂枝2 炙甘草2 芒硝2g 蓄血証で排尿は異常がない。下腹部が硬く脹る・うわごと・夜間の発熱・狂躁状態(狂に似る):熱邪と血が小腸で結した蓄血証。

瘀血が溜まると痛みが生じる。特徴は一点だけ刺すような痛みで、夜になると悪化して、触ることができない拒按の状態に桃核承気湯を使う。しかし、大黄を増やさないと効かない、つまり下痢させないと効かない。

イライラする糖尿病患者には加味逍遙散を合方する:単独では陰虚には使えない。

加味逍遙散:肝鬱化火・脾虚湿性・血虚:柴胡3 芍薬3 薄荷1 当帰3 牡丹皮2 山梔子2 茯苓3 白朮3 乾姜1 甘草2(人参・大棗が無いのは化火を増悪させるため)。

加味逍遥散は肝胆経に沿った部分に、腫塊を生ずることがあり脇下の腫塊を目標に慢性肝炎に使用される。

柴胡桂枝湯は、加味逍遙散の薄荷 当帰 牡丹皮 山梔子 茯苓 白朮は配合が無いので、発散・補血・駆瘀血・清熱(丹梔)・利湿の作用は加味逍遙散より弱い。

腎陽虚で食少・口渇喜冷飲・小便不利・多尿小便頻数で下半身だけに浮腫がある場合は、八味丸・牛車腎気丸を糖尿病薬に合方する。八味丸は明らかな脾虚の場合は悪化させるので真武湯を使う。

腎陰虚の糖尿病患者で、食少で、腰や膝が温かく、顴紅の場合は六味丸や知柏地黄丸を糖尿病薬に合方する。

「脾は運化を主る」・・これが漢方の生理です。

夏になると、疲労や冷飲過多で、水気が溜まりやすく、膀胱炎が多くなり、下痢や気持ちが悪い、めまい、水虫などが多く出てくる。

夏になると胃の中の水気がたくさん停滞し、脾が津液を肺に上輸することができずに、下痢になったりする。

脾虚という胃腸を治すことによって夏の症状が改善される場合が多い。

夏の胃腸を治す:清暑益気湯や藿香正気散・補中益気湯・平胃散・胃苓湯・五苓散・六君子湯・参苓白朮散。

清暑益気湯:脾胃論:益気生津・清熱利湿・解暑:黄耆5 党参5 麦門冬5 白朮5 当帰4 沢瀉3 葛根3 神麹3 升麻2 陳皮3 五味子2 炙甘草1 青皮2 蒼朮2 黄柏2 生姜2 大棗3(17味):「温熱経緯」の清暑益気湯は湿気をもたらすので利湿には不適である。

小水の出が悪いのは腎臓が原因ではなく、運化を主る胃腸(脾虚)や胃腸から津液が上輸される先の肺が弱って(肺気虚・肺陰虚・肺腎陰虚)小便の出が悪くなる。

肺腎陰虚(肺結核:乾咳・血痰・骨蒸潮熱・夜間の咳・声がれ:八仙丸・百合固金湯・滋陰降火湯)。

八仙丸:六味丸+五味子・麦門冬または六味丸合生脈散。

生脈散:人参6・五味子3・麦門冬6(心不全に、生脈散合炙甘草湯・生脈散合補中益気湯・生脈散合真武湯)。

炙甘草湯:心陽虚・心血虚に適用:益気通陽・滋陰補血:炙甘草3 人参3 桂枝3 麦門冬6 麻子仁3 生地黄6 大棗3:心気陰両虚の胸痛・心不全・狭心症:生脈散や炙甘草湯の加減:不整脈・動悸・息切れ。

胃腸の働きが悪いと、「脾は運化を主る」機能が低下するので・・むくみや肥満となる。

「脾は肌肉を主る」ので、皮膚は肌肉キニクの肌に相当する。肉は筋肉である。

肥満によく使われている・・・防風通聖散ぼうふうつうしょうさん・大柴胡湯・防已黄耆湯については・・でたらめに使われている。

防風通聖散:疏風解表・瀉熱通便:体を冷まし乾かす作用があり(やせている陰虚には使えない)脾に関係する処方なので糖尿病に使われる:対象:汗っかき・食欲旺盛のカゼ・蓄膿症・食欲旺盛で痩せない糖尿病。

大柴胡湯は、脾ではなく肝に関係しているのでイライラする人の糖尿病。

大柴胡湯は、糖尿病で多食善飢で体重減少がない人で(陰虚には使えない)、イライラすると大食いになる人で心下痞硬(大柴胡湯の胃熱の目標症状)の人に適応する。

防已黄耆湯は、脾の薬であるが、「色白で汗っかき」とされているが、肥満体だけでなく痩せた年寄りの風邪で、汗が止まらない時にも使える。

防已黄耆湯:補気健脾・利水消腫・袪風止痛・虚弱者で自汗の風水:気虚の浮腫・関節痛:黄耆5~10 木防已5 白朮3 生姜3 炙甘草2 大棗3:動くとすぐに汗がでる人・全身に痛みが動く人。

風水:全身の浮腫をともなう状態:越婢加朮湯(無汗):疏風宣肺・利水・風水に適応:気虚がみられない丈夫な体質の時に使う。気虚の風水で、息切れ・元気がないなどには防已黄耆湯(自汗)を使う。

防已黄耆湯はもともと「脾気虚の薬」で、脾気虚で起きる表虚を治す処方である。

防已黄耆湯は、ちまたの解説本には「色白で汗っかき」と書かれているので、体形パターンで使い分けをしないことが大切:防已黄耆湯は動くと発汗する場合で、生脈散は、動かなくても発汗過多。

中医学の生理では「脾は四肢を主る」・・ので、胃腸は手足と密接な関係があり、手足が怠くなる人ゃ手足がかなり太い人や異常に細い人はすべて脾に関係がある。

そのほかの脾に関係する部位は、口や唇で、口中の異常・唇の異常、口内炎、口角炎は、すべて脾の症状である:舌は心の関係する部位。

しかし舌は心の症状なので、唇と舌の症状(口内炎など)は、心脾の両方に病気の原因があるので、同時に治療する帰脾湯などを使う。

帰脾湯:気血双補・補脾・養心安神・摂血:心脾両虚・気血両虚(心血虚・脾気虚):黄耆2 人参3 白朮3 当帰2 茯苓3 竜眼肉3 酸棗仁3 遠志2 炙甘草1 木香1 大棗2 生姜1g。

:脾気虚・心血虚を補う、補脾・止血作用「脾は血を統べる」という生理がある:出血傾向には帰脾湯を使う。

脾は「統血」機能があるので、「脾不統血」では血便・血尿・衄血じっけつ(鼻血)・不正性器出血・皮下出血・脳出血・眼底出血・歯茎出血などは、脾気虚のため摂血できず、出血傾向となる:帰脾湯(心脾両虚)を使う:バイアスピリンで尿血や口内に血の味が生じる者に帰脾湯を使う。

「脾は湿を悪む」にくむ・・という病理があるので、脾は湿気をひどく嫌う。しかし、脾虚や、お茶をよく飲んだりする「お茶のみ婆さん」などは、脾には水気がたまりやすい。

湿は重濁の性質があり、体を怠くするので、怠さが続くと眠くなるのは脾病であり、特に昼食後眠くなるのは、脾湿という状態である:平胃散や胃苓湯・胃腸を元気づける補中益気湯・補中益気湯合平胃散を使う。

これにさらに寒邪が侵入すると、寒湿となりさらに眠くなり冷える。

寒湿の邪には苓姜朮甘湯を使うが、寒湿による腹痛の場合は真武湯を使う。

苓姜朮甘湯・腎著湯:袪湿散寒・止腰痛:茯苓6 乾姜3 白朮3 甘草2:寒湿の腰痛・クーラーの冷え症(五積散)や冷えによる膀胱炎:真武湯は寒湿の腹痛に使う。

五積散は「風寒湿」に使う:1.腰冷痛、2.腰腹攣急(ぎっくり腰・腹痛)、3.上熱下冷、4.小腹痛の四症が目標となる:寒いと小便頻数となる人・のぼせる人の神経痛・腰痛・手の痛みに効果がある。

真武湯:冷え・足の冷え・腹痛下痢とストレスをとるが、脾虚は補わないので、脾虚には真武湯合六君子湯とする。

真武湯:回陽救逆・温陽利水

:附子1 茯苓5 白朮3 白芍3 生姜3

寒湿の邪には苓姜朮甘湯を使うが、寒湿による腹痛の場合は真武湯を使う。

消渇病は三つに分けられるが、糖が出ているかは問わない。

1. 咽がひどく渇く「多飲つまり大煩渇」(実熱は白虎加人参湯・陰虚の虚熱による煩渇は知柏地黄丸・六味丸)

2. 非常に空腹感をおぼえる「多食善飢」(胃熱は大柴胡湯や防風通聖散・胃陰虚は麦門冬湯や一貫煎)

3. 小便の回数が非常に多い「小便頻数」(腎虚は八味丸や六味丸・当帰芍薬散加附子・当帰芍薬散合真武湯)

当帰芍薬散:小便頻数(冷え性:脾虚湿滞の為:腎虚を兼ねるなら当帰芍薬散加附子・当帰芍薬散合真武湯:頻尿でバス旅行に行けない中年女性に)

当帰芍薬散:肝血虚・脾虚湿滞・軽い肝鬱:のぼせる人には使わない。

:当帰3、白芍4、川芎3、白朮4、茯苓4、沢瀉4。

1. 咽が非常に渇く場合、通常は「喜冷飲きれいいん」であり、温かいお茶を飲む場合は別の病症となる。

咽乾の場合、多尿(小便頻数)と小便不利に分かれる。

大煩渇・大汗・多尿(小便頻数)の口渇は、実証なので白虎加人参湯を使うが、使用要点は体重減少がない、つまり陰虚ではないこと。

特徴は、夜中でも冷蔵庫から冷たい水をたくさん飲むエピソードの人は白虎加人参湯。

白虎加人参湯:陽明経証:大熱・大汗・大煩渇・脈洪大の4症が特徴:暑がりで、いつも大汗をかき、冷たい水をガブガブ飲むタイプ:夏の暑い日に大汗をかき、水をいくらのんでも口渇が収まらない状態:五苓散も発汗後の口渇止まない状態に使う。

白虎加人参湯・清熱瀉火・生津止渇・補気:「気分の熱盛」である。

:生石膏15 知母5 生甘草2 粳米8 人参3。

石膏:甘辛大寒:清熱瀉火・解渇・除煩:石膏の色は白。肺は五行色体表で白に配当され、白い色の石膏は肺熱をさます。

知母:ユリ科ハナスゲの根茎:苦寒:清熱瀉火:滋腎潤燥

粳米コウベイ(ねばりけがなくかたい米の意。うるち米の意味)

陽明病:傷寒論の六経病の一つ。

陽明経証と陽明腑証に分けられ、胃実(胃家実)であり、実熱性の病変がある。

「胃家実」は、陽明病を弁証する上で重大なポイントであり、身熱、発汗、不悪寒、反って悪熱、脈洪大などの症状は陽明病であると判定する根拠となる。

陽明経証:白虎加人参湯:大熱(悪熱)・大汗・大煩渇(多飲)・脈洪大。

悪熱おねつ⇒傷寒・表証の発熱ではなく、裏熱(臓腑熱)による熱感:煩躁・煩悶。

陽明腑証:有形の邪熱・糞便などの邪熱で燥実内結:熱に苦しむ・毎日日晡潮熱で午後4~8時発熱・手足汗出で・大便秘結・尿黄・脈沈滑で、治療は攻下燥結で三種の承気湯の適応:浣腸も同じ効果がある。

三種の承気湯:小承気湯・調胃承気湯・大承気湯

小承気湯:大黄2 枳実2 厚朴3(芒硝1~3gが無い)

調胃承気湯:大黄2 甘草1 芒硝1(大黄甘草湯+芒硝)

大承気湯:峻下熱結:大黄2 芒硝3 厚朴5 枳実3

大黄:苦寒:攻積導滞・瀉火涼血・袪瘀通経(駆瘀血薬)。

枳実・枳穀:行気消積・理気化湿・行気寛中(気の流れを良くする理気剤):胃腸の蠕動を促進し他薬の消化吸収を補助する。

枳実キジツ:ミカン科ダイダイ・夏みかんの未熟果実:苦辛微寒:破気消積しょうしゃく・化痰散痞・理気寛胸:2~3g:気滞便秘・肝鬱気滞の腹痛・消化運動排ガス促進。

枳実(強い作用)・枳穀(弱い作用):行気消積・行気寛中する)。

厚朴:苦辛温:燥湿除煩・行気降逆。

芒硝・元明粉、玄明粉:硫酸ナトリウム:鹹苦寒:瀉熱通便

糖尿病で体重減少があるのは陰虚で、多飲・多尿には虚熱証で腎陰虚には知柏地黄丸である。虚熱で口乾があり飲水する。陰虚では津液不足となり体重減少が生じる。

口渇・小便不利・自汗・水逆には、五苓散。

五苓散:利水滲湿・通陽・解表:風邪薬でもある

・・口渇多飲・小便不利・水逆・自汗のカゼに

:茯苓5 白朮5 猪苓5 沢瀉6 桂枝3g。

五苓散:カゼの発熱で水を欲しがるが、飲むと水を吐く症状(水逆)に五苓散を重湯にとかしてひと匙ずつ与えると吐かなくなり熱も下がる。

五苓散の痰飲の症状は、咽が乾く人で、五苓散を使用する三原則は口渇・小便不利・水逆・自汗で、すべて痰飲が原因である。

猪苓湯は汗が出ない無汗に使う(桂枝が無い)、五苓散は自汗に使う。

猪苓湯は湿熱であるので、人によっては出血(血尿・血淋)する場合に用いる。

猪苓湯:清熱利水・滋陰止血:無汗・口渇喜冷飲

:猪苓 茯苓 沢瀉 滑石 阿膠(白朮・桂枝が無い)

猪苓:サルノコシカケ科チョレイマイタケの菌核:甘淡平:腎・膀胱経:利水滲湿・清熱:利尿。

沢瀉:サジオモダカの塊茎:甘・寒:利水・滲湿・清熱。

滑石:含水ケイ酸マグネシウム・石灰・粘土:甘寒:利水滲湿・清熱・小便赤。滑石3~5g,8~10g。

阿膠アキョウ・阿膠珠ジュ・陳阿膠・驢皮膠ロヒキョウ:甘平:肺肝腎経:補血・止血・滋陰・潤燥・滋養・皮膚枯燥・口唇乾燥などの燥証・虚証・血証に有効:1~5gを衝服。

出血がつづき血虚には:生地黄・阿膠(芎帰膠艾湯・帰脾湯など)を配合することが多い。

口渇喜冷飲・小便不利で浮腫がある場合の糖尿病は、胃苓湯が適応。

胃苓湯:平胃散合五苓散:口渇喜冷飲・小便不利・浮腫の糖尿病。

平胃散:理気化湿・和胃(蒼朮が主薬である)

:蒼朮4 厚朴3 陳皮3 大棗2 生姜1 甘草1:体全体の湿気を除く

蒼朮:苦辛温:袪風除湿・燥湿健脾・散寒解表:風湿の筋肉痛の鎮痛薬。

口渇喜冷飲(腎の陰陽両虚)・小便不利(腎虚)で下半身だけに浮腫がある場合は八味丸・牛車腎気丸が適応。

糖尿病で多食善飢は、二つに分けられる。

1. 多食善飢で体重減少がある(陰虚である):麦門冬湯や沙参麦門冬湯・一貫煎・六味丸を糖尿病薬に合方。

2. 多食善飢で体重減少が無い:防風通聖散・大柴胡湯・桃核承気湯・防風通聖散合加味逍遙散・白虎加人参湯合加味逍遙散

1. 多食善飢で体重減少がある場合は、陰虚である。

体の中の水気(津液)が不足すると体重が急激に減少する。

きっかけは過労や心労が多いが寝不足が続いたなどで陰虚となり体重が急減する。陰虚の原因は脾虚:これらが糖尿病の原因になる。

多食善飢で体重減少がある消渇には胃の陰虚につかう麦門冬湯や沙参麦門冬湯・一貫煎などを使う。

一貫煎:柳州医話:滋養肝腎・疏肝理気:肝腎陰虚・肝気停滞化熱:沙参3 麦門冬3 当帰3 生地黄10 枸杞子4 川楝子2:肝腎陰虚で肝腎の精血が不足したために肝気の疏泄が失調した病態。

一貫煎:肝気が停滞化熱するので肝の経脈に横竄するので胸脇脹満痛し、胃に嘔逆するので腹満・呑酸・吐苦する。津液不足と胃熱により口咽の乾燥・舌の乾燥がみられる。

食欲が旺盛にもかかわらず、体重が減ると、口はいつも渇くが、沢山は飲まない。

麦門冬湯:滋陰益気・補益肺胃(胃陰虚に適応)・降気は、しゃっくりを止める

:麦門冬10 人参2 製半夏5 炙甘草2 粳米こうべい5 大棗3

:口乾・胃陰虚の吃逆きつぎゃくには麦門冬湯一服で効く:黄連解毒湯では乾かすので胃陰虚は悪化する。

飲酒家の胃熱・痰飲による吃逆シャックリには黄連解毒湯で冷やして乾かす作用を用いる。

胃の陰虚の症状は、乾嘔からえずき・吃逆・口渇・口唇や口内の乾燥・尿量が少ない・便が硬い・舌の色が紅色で乾燥し、舌の苔が剥苔で地図状舌:麦門冬湯・沙参麦門冬湯。

沙参しゃじん:セリ科浜防風の根:甘苦微寒:肺・腎経:養陰清肺・清虚熱・潤燥止咳:肺を潤す生薬

一貫煎いっかんせん:多食善飢で体重減少がある消渇につかう:沙参 麦門冬 生地黄 枸杞子 当帰 川楝子センレンシ。

多食善飢で体重減少する人は、減少するにしたがって体が動けないようになり、疲れがひどいので十全大補湯を使うと血糖値が上がってしまう。十全大補湯で気血両虚を補っても陰虚を補っていないためである。六味丸類を十全大補湯に合方する。

麦門冬湯とそっくりな症状で非常にお腹がすくが、頬に白い斑点がある人は白斑(しらくも)である。この場合も多食善飢だが蛔虫が原因の蛔虫斑であるので、烏梅丸を使う。

烏梅丸(傷寒論):安蛔止痛

:烏梅 細辛 乾姜 黄連 附子 当帰 黄柏 桂枝 人参 蜀椒。

烏梅うばい:バラ科梅の未成熟果実を種をとり乾燥したもの:酸渋

:斂肺・渋腸・生津・安蛔・袪痰・鎮咳・止瀉・解熱

蜀椒しょくしょうは蛔虫の殺傷作用があるので蛔虫による腹痛によい

蜀椒・花椒かしょう・川椒せんしょう・山椒さんしょう

:ミカン科カホクサンショウの果実:辛大熱有毒:脾胃肺腎経

:温中・止痛・袪湿・駆回虫・明目

大建中湯の蜀椒は蛔虫の殺傷作用があるので蛔虫による腹痛によい。

大建中湯:温中散寒・解痙止痛・補気健脾・殺虫・結石痛

:蜀椒2 乾姜4 人参3 膠飴20

膠飴は補脾胃虚の作用:餅米・粳米・小麦粉の三種類の穀物を麦芽で加工した飴(一種類の穀物で作った膠飴もある)

2. 多食善飢で体重減少がないのは、実熱証で、胃熱があり、食欲旺盛である。肥満していくわけではないが、この場合の糖尿病には防風通聖散を使う。

糖尿病で多食善飢で体重減少がない人(陰虚ではない)で、イライラすると大食いになる人は大柴胡湯である。

糖尿病で多食善飢で体重減少がない人で(陰虚ではない)、舌が紫色や瘀斑がある人は桃核承気湯をつかう。

大柴胡湯は胃実熱なので心下痞硬の胃の重痛・食欲旺盛・イライラ・のぼせの糖尿病につかうが、食毒熱滞留なので食欲不振の場合もある。長期使用では陰虚を補う四物湯や六味丸を少量加える。

大柴胡湯:肝火上炎・肝気鬱結・胃実熱・心下痞硬(胃の重痛)に適応する

:柴胡6 黄芩3 白芍3 半夏4 生姜4 大棗3 枳実2 大黄1

:肝鬱・胃実熱の熱結による皮膚症状(蕁麻疹)・糖尿病にも使用:陰虚には使わない。

補中益気湯は慢性的に発作を繰り返す蕁麻疹。秋冬に発症しやすく、疲労や寒冷で膨疹が出現するもの。

大柴胡湯:和解半表半裏・瀉下熱結・疏肝解鬱・理気止嘔・清熱瀉下:健啖家・胃熱・心下痞硬・便秘・嘔気・イライラ・健啖家の蕁麻疹・癰疽・脾胃湿熱の痔。

生理前になるとかなりイライラして多食善飢で体重減少がない人は、病態がかなりひどい人も、軽い人も、瘀血が原因の狂症という精神異常であり、瘀血が原因なので桃核承気湯を使う。

桃核承気湯:清熱瀉下・活血逐瘀:調胃承気湯+桃仁・桂枝

:桃仁5 桂枝4 大黄3 甘草2 芒硝2

:瘀血と熱状で狂症様・経前に酷いイライラ多食善飢で体重減少がない糖尿病。

狂症には抵当丸を使う。抵当丸(傷寒論):水蛭すいてつ(ヒル)、虻虫ぼうちゅう(アブ)、大黄、桃仁:子宮筋腫や狂人に使うが、トイレから出られなくなるほど出血する。

糖尿病患者で、腰や膝が温かく、顴骨がかなり紅色(顴紅)な場合は六味丸や知柏地黄丸を使う。

葛根湯の葛くずは咽の渇きを止める作用があり、葛根湯で糖尿病を治した人がいる。葛根の量を増やせばそれだけで糖尿病が治るという人がいる。

糖尿病の原因は、食生活が正しくないので胃腸に異常が起きて、脱力感や異常な空腹感が生じる脾虚により発症する場合や、過労・働き過ぎで陰虚になって発症する。

陰虚では体重が減少するが、働き過ぎや睡眠不足で胃腸が弱り陰虚となり体重が減少すると糖尿病になると考える。

糖尿病は腎不全が多く発症するが、その時に漢方薬で治すことが大切。

しかし、糖尿病の人はせっかちな人が多く、食事が速く、せっかちで早飯の人は胃腸に負担をかけて糖尿病になりやすい。脾虚や痰飲・肝鬱・肝火上炎から陰虚なども生じて糖尿病の原因となる

イライラする糖尿病患者には加味逍遙散を合方する。イライラすると胃腸に影響をあたえて糖尿病が悪化するので加味逍遙散を少量合方する。

糖尿病に防風通聖散合加味逍遙散や白虎加人参湯合加味逍遙散を使うことが多い。

加味逍遙散は、一日で一包とか二日で一包でよい。

その量はどの状態が強いのか判断して強い方を多くして弱い症状の方を少なく合方する。この量を調節することが失敗を防ぐ。

糖尿病の症状として疲労倦怠をともなう虚労病がある。

糖尿病に関連する虚労病は二つに分けられる。

1. 胃腸の働きが悪くなる脾虚の人

2. 腎虚となり食欲がなく小便が近くなる人

1. 胃腸の働きが低下する胃陰虚があり体重が減少する。

この時に脾の気虚となって胃腸の働きが悪くなり、食欲不振で顔色が悪く面色蒼白、下痢し易い、顔がむくみやすい脾の気虚には、六君子湯・補中益気湯・参苓白朮散で糖尿病に対応する。

脾気虚の症状:食少・面色蒼白・下痢・面浮腫が重要で、その他あってもなくてもよい症状として、食後嗜眠・食べると直ぐに満腹になる・舌の横に歯形(歯痕)・手足がすぐ怠くなる

2. 食欲がなくて小便頻数では腎虚の薬(真武湯)を合方すればよい。

腎虚による多尿である。

腎陽虚では八味丸で食少・口渇喜冷飲・小便不利・小便頻数の多尿で下半身だけに浮腫がある場合は糖尿病薬に合方する。

八味丸:温補腎陽・補陰陽

:熟地黄・山薬・山茱萸・沢瀉・茯苓・牡丹皮・桂枝・炮附子

:腎虚の喘息・冷え症の膀胱炎・食少・口渇喜冷飲・小便不利・多尿で下半身だけに浮腫。

腎陰虚の糖尿病患者で、食少で、腰や膝が温かく、顴骨がかなり紅色(顴紅)な場合は六味丸や知柏地黄丸を合方する。

知柏地黄丸:滋補肝腎・清熱瀉火

:知母 黄柏 地黄   山薬 山茱萸   沢瀉 茯苓 牡丹皮

:陰虚火旺の虚熱証に適用する:食少・多飲・多尿の糖尿病

知母:ユリ科ハナスゲ(花菅)の根茎:苦寒:清熱瀉火:滋腎潤燥。

黄柏オウバク:黄蘗キハダ:清熱燥湿・瀉火解毒・清虚熱。

牡丹皮、知母、黄柏の類を以って虚火を瀉す。