2024/11/10 11/11 10/12
半夏白朮天麻湯:痰濁上擾の薬
半夏白朮天麻湯:脾胃論:化痰熄風・補気健脾・利水消食:製半夏3 白朮3 天麻2 人参2 黄耆2 茯苓3 沢瀉2 蒼朮3 陳皮3 神麹2 麦芽2 黄柏1 生姜0.5 乾姜0.5:脾気虚の痰濁上擾::痰飲を治療する消化剤。
半夏白朮天麻湯:医学心悟:脾気虚の痰濁上擾:陰天時は痰飲体質や湿邪のために生ずる頭痛嘔吐や眩暈や、痰飲による蓄膿や鼻炎の体質改善に使う:
製半夏4 陳皮3 茯苓5 甘草1 白朮4 天麻3 生姜一片 大棗二枚。
半夏白朮天麻湯:痰厥頭痛:痰濁の上逆による裂けるような頭痛・眩暈・身重・精神不安・言語錯乱・胸悶悪心・煩乱気促キソク・痰涎タンセン・清水の泛吐ハント・四肢厥冷・脈弦滑を呈す。
泛ハン・ホウ:うかぶ、うかびただよう、ひろい、ひろく、あまねく。π
半夏白朮天麻湯:脾気虚の痰濁上擾:陰天時の頭痛・嘔吐やめまいや蓄膿症・鼻炎の体質改善に使う。
痰濁上擾:眩暈し頭重し頭冒感(痰飲・湿邪の頭痛の特徴)があり、悪心胸悶・動悸を伴い、少食多寝で、ひどければ嘔吐し目が回る(めまい・陰天時頭痛)。舌苔が白く厚い、脈濡滑じゅかつ:半夏白朮天麻湯:化痰熄風そくふう・補気健脾・利水消食:脾虚の痰濁上擾の処方:半夏白朮天麻湯合沢瀉湯。
沢瀉湯(沢瀉5 朮2)の眩暈は、ひどい場合は吐き気がでてくる眩暈で、突然めまいが起こって、まったく起きられないし、ひどくなるとムカムカして吐いてしまう症状で、このめまい発作をよく止める:コタローに製品有り。
コタローの半夏白朮天麻湯の構成:脾胃論:半夏3 白朮3 蒼朮3 陳皮3 茯苓3 麦芽2 天麻2 生姜0.5 神麹2 黄耆1.5 人参1.5 沢瀉1.5 黄柏1 乾姜1g。
ツムラの半夏白朮天麻湯の構成:(脾胃論の処方ー蒼朮・神麹):陳皮3 半夏3 白朮3 茯苓3 天麻2 麦芽2 黄耆1.5 沢瀉1.5 人参1.5 黄柏1 乾姜1 生姜0.5g。
「脾胃論」の半夏白朮天麻湯には、神麹2(消化剤) 蒼朮(燥湿健脾・袪風湿)が入っているが、「医学心悟」の処方には入っていない。
神麹しんきく:神曲しんきく:辛甘温:消食行気・健脾止瀉・解表:消化剤。
風湿に蒼朮そうじゅつ:キク科ホソバオケラの根茎:苦辛温:燥湿健脾・袪風湿・風湿の筋肉痛や関節疾患の鎮痛薬。(白朮は補益性がありオオバナオケラの根茎)。
『脾胃論』や『内外傷弁惑論』は、補中益気湯の創方で名高い李東垣リトウエンの著作だが、彼は金元四大家の一人である。
李東垣の著作として『医学発明』『脾胃論』『内外傷辨惑論』『薬象論』『蘭室秘蔵』。
中風の後遺症のしびれや口眼喎斜(顔面神経麻痺)に、胃腸が丈夫な人には続命湯や天麻鈎藤飲や牽正散だが、胃腸が弱い人はすべて半夏白朮天麻湯を使う。
続命湯ぞくめいとう:辛温解表・清熱除煩・止咳平喘・利水・補気血・活血:
麻黄2 桂枝2 杏仁2 石膏10 炙甘草1 人参2 当帰2 川芎1 乾姜1:慢性化した関節炎で周囲の筋肉の萎縮・中風後遺症・顔面神経麻痺(口眼喎斜)。
天麻鈎藤飲てんまこうとういん:平肝潜陽・平肝熄風・滌痰通絡・柔筋活絡じゅうきんかつらく:天麻 釣藤鈎ちょうとうこう 石決明せきけつめい 山梔子 黄芩 杜仲 牛膝 益母草やくもそう 桑寄生 夜交藤 茯神:内傷によって生じた内風や脳卒中の薬。
内風とは、肝の昂ぶりや疲労などにより、肝陽が昇動して風フウが生じて内風となり、めまい・震顫シンセン・痙攣が生じたり、高熱から熱極生風で、意識障害・ひきつけ・四肢の痙攣などが生じる、体内から生じた風の症候を指し、脳卒中を引き起こす場合もある。
顫せん とは動揺のことで、「掉」と同じ。「掉」とは「震顫しんせん(振戦)」を指し、「内経」では「掉眩とうげん」を「顫動せんどう」「振動」ともいう。眩は、眼黒(目の前が真っ暗になる)を謂う。
牽正散けんせいさん:白附子・白僵蚕・全蝎ぜんかつ(サソリ):中風・寒性の風痰の口眼喎斜に用いるが、気虚血瘀あるいは肝風内動による口角歪斜、あるいは半身不遂の証候には牽正散は適応しないので麻鈎藤飲・大定風珠・柴胡加竜骨牡蠣湯・羚羊角湯などを使う。
白附子は辛散、袪風化痰で、特に頭面の風を去り・顔面のひきつれ・痙攣を治すが温燥に偏っているので、寒性の風痰に適応する:白附子、天南星は生のままを用いるが毒性があり、過量をしてはいけない。
熱極生風は高熱や感染による痙攣・後弓反張などを生ずるポリオや日本脳炎・肺炎の熱盛期や小児の高熱など生じる:清熱熄風で羚羊角・白僵蚕・玳瑁タイマイ・六神丸など解熱・抗痙攣作用薬を用いる。
玳瑁たいまい:ウミガメ科玳瑁の甲羅:甘寒:心肝経:潜陽熄風・清熱解毒:熱性疾患の意識障害や痙攣発作に涼血清熱解毒:犀角・羚羊角に似ている効果がある。
寒性の風痰の口眼喎斜で、脾虚の場合は半夏白朮天麻湯。
疝を帯ぶる者は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を、半夏白朮天麻湯に加ふるに宜し:当帰四逆加呉茱萸生姜湯合半夏白朮天麻湯。
疝せん:体腔内容物が外に突出する病証:ヘルニア・外生殖器の潰腫流膿・尿道からの敗精濁物・睾丸や陰嚢の腫大疼痛(陰嚢水腫)に加味逍遙散・桂枝茯苓丸に五苓散を合方。
陰嚢水腫に加味逍遙散合五苓散・桂枝茯苓丸合五苓散:五苓散だけでは効果が薄い。
半夏白朮天麻湯:「眼黒く 頭旋り 悪心煩悶。気短促、上喘し 力無くして言うを欲せず。心神顛倒し ゴツゴツとして止まず。目敢えて開かず、風雲の中に在るが如く(中略)身重きこと山の如し。四肢厥冷して、安臥するを得ず」。
気虚血瘀(補陽還五湯)あるいは肝風内動(天麻鈎藤飲・大定風珠・柴胡加竜骨牡蠣湯・羚羊角湯)による口角歪斜こうかくわいしゃ(口眼喎斜)、あるいは半身不遂ハンシンフツイ(半身不随)の証候には、半夏白朮天麻湯は適応しない。
肝風内動:頚項部の強直・眼瞼や口唇や舌や手指のふるえ・言葉がつかえる・四肢麻木・手足の痙攣・意識障害など脳卒中などの症状。:平肝熄風・育陰潜陽:柴胡加竜骨牡蠣湯・羚羊角湯・大定風珠・天麻鈎藤飲。
天麻鈎藤飲:平肝潜陽・平肝熄風・滌痰通絡・柔筋活絡:天麻 釣藤鈎 石決明 山梔子 黄芩 杜仲 牛膝 益母草 桑寄生 夜交藤やこうとう 茯神:内傷によって生じた内風や脳卒中の薬。
大定風珠だいていふうじゅ:陰虚生風(陰虚陽亢・虚熱内擾の煩躁証)に滋陰熄風:生地黄8しょうじおう 白芍8 麦門冬8 牡蛎4 鼈甲4 亀板8 炙甘草4 阿膠3 五味子2 麻子仁2 鶏子黄1個。
眩暈や頭痛の原因は頗すこぶ る多いが半夏白朮天麻湯の証には蒙閉もうへい がみられ、胸悶嘔悪きょうもんおうお や舌苔白じぜったいはくじ などの湿痰の症状があるので、風痰の病理に属することがわかる。
風痰の特徴:手の振戦にしびれや脹った感じを伴う、肥満・顔面浮腫・指先麻木・四肢が脹る・鼻腔や咽頭不快閉塞・胸脇脹満痛・乾嘔からえずき・悪心・口粘・舌苔白じ・易怒:風痰阻絡の四肢麻木・・・袪風化痰:導痰湯合玉屏風散。
導痰湯:竹筎温胆湯加天南星(天南星は単味の販売が有る):済生方:痰迷心竅:製半夏3 陳皮2 製南星3 枳実2 茯苓2 炙甘草1 大棗1 乾生姜1:
痰迷心竅で熱証のみられない舌苔白じ・脈弦滑の時に使用:温胆湯の竹筎を製南星に替えた処方。
温胆湯うんたんとう:半夏4 陳皮3 竹筎3ちくじょ(胃熱を冷ます)枳実2 茯苓4 甘草1 大棗1 乾生姜1g:温胆湯の竹筎を天南星に替えると導痰湯(温胆湯加天南星):天南星は単味有り:風痰に導痰湯合玉屏風散。
蓄膿で、脾虚が強い場合は、脾虚の薬を一緒につかわないとなおらないし、慢性病化した時は、瘀血と腎虚を伴う。苓桂朮甘湯・半夏白朮天麻湯や六君子湯や参苓白朮散と袪瘀薬と腎虚薬。
前額部に頭重痛を訴える疾患に、蓄膿症がある。そこで、苓桂朮甘湯・半夏白朮天麻湯・六君子湯は、蓄膿症に応用され、慢性では袪瘀薬と補腎薬を加える。
血瘀の薬:桃仁・紅花・赤芍・当帰・丹参・川芎・牛膝・牡丹皮・益母草・桂枝・威霊仙・地竜・降香・沢蘭・田三七。
補腎益精の生薬と処方:続断・桑寄生・山薬(長芋)・玄参・菟糸子トシシ・女貞子・鎖陽サヨウ・巴戟天・肉ジュ蓉・杜仲・桑螵蛸ソウヒョウショウ・鹿茸ロクジョウ・紫河車:六味丸類・八味丸・真武湯・海馬補腎丸。
海馬補腎丸:八ツ目製薬:人参 黄耆 地黄 竜骨 山茱萸 桃仁 茯苓 丁字ちょうじ 枸杞子 海馬 蛤蚧ごうかい(オオトカゲ) たいか 鹿茸 海狗腎かいくじん 当帰 鹿腎ろくじん 鹿筋ろっきん 補骨脂 驢腎ろじん。
海狗腎・鹿腎・驢腎の腎とはオットセイ・鹿・ロバの睾丸、鹿筋の筋とは鹿の陰茎(陽茎)。
桑螵蛸そうひょうしょう:カマキリ科ハラビロカマキリの巣を炙る:甘鹹平:肝・腎経:補腎・固精・縮尿:桑螵蛸散は 夜尿症・頻尿・遺尿・尿失禁・遺精・滑精・頭昏・健忘を治す、製品無し。
湿痰壅遏ヨウアツのものあり、書に云う、「頭旋眼花は、天麻・半夏にあらざれば除かず」これなり、半夏白朮天麻湯これを主る。
半夏白朮天麻湯は老人・虚人の眩暈に用ふ。但し足冷を目的とするなり。
半夏白朮天麻湯は胃腸の薬ではあるが、首から上の疾患に使える。従って鼻汁・喉の痰・耳・目・頭の疾患で、蓄膿症や汚い目やに・黄色い耳だれ・めまい・頭痛に使いる。
半夏白朮天麻湯は、上部に作用する処方なので喘息には使わず、鼻・耳・目の薬で、蓄膿症・汚いジメジメした目やに・黄色い耳だれに使う。
子供の蓄膿のほとんどが六君子湯や半夏白朮天麻湯である。
中高生で鼻がつまって(鼻閉)勉強ができない人は、90%は六君子湯や半夏白朮天麻湯である。
半夏白朮天麻湯は、食後の胸中熱悶、手足倦怠、頭痛、睡眠せんと欲する者に効あり。(昼食後のだるさによる嗜眠には補中益気湯も適用する)。
湿困脾胃の症状(食べすぎ・食べ放題の翌日の朝に生ずる)で、起床時天井がぐるぐる回る眩暈めまいには半夏白朮天麻湯(合 沢瀉湯)や苓桂朮甘湯。
沢瀉湯(沢瀉5 朮2)の眩暈は、ひどい場合は吐き気がでてくる眩暈で、突然めまいが起こって、まったく起きられないし、ひどくなるとムカムカして吐いてしまう症状で、このめまい発作をよく止める。
半夏白朮天麻湯は前額部の頭痛・頭重で、釣藤散は後頭部の頭痛である。
共に痰飲が原因だが頭痛の場所が異なる。
肺気虚は脾気虚と同じ症状で、息切れ・汗がジワジワでやすい(自汗・表虚不固)、顔面蒼白で食欲不振なので、脾肺気虚の蓄膿に六君子湯では効かないので半夏白朮天麻湯を使う。
嘔吐し痰涎タンセンを吐する者は胆南星3g、白附子2gを半夏白朮天麻湯に加える。
白附子は辛散、袪風化痰で、特に頭面の風を去り・顔面のひきつれ・痙攣を治すが温燥に偏っているので、寒性の風痰に適応する:白附子、天南星は生のままを用いるが毒性があり、過量をしてはいけない。
耳鳴りがひどい者には石菖蒲1.5g、磁石10g(先煎)を半夏白朮天麻湯に加える。
安神薬の石菖蒲・菖蒲・菖蒲根:サトイモ科ショウブの根茎:辛・温:芳香開竅・逐痰袪濁:痰濁蒙閉心竅:菖蒲鬱金湯:少量に制限すべきで1.5g以下。
当帰芍薬散:天気の悪い時に悪化するものに使う(陰天時悪化:湿邪・湿滞・痰飲:通常は半夏白朮天麻湯)。
半夏白朮天麻湯の天麻は、薬全体を首から上にもっていく作用がある。
痰濁上擾の目まいの者には半夏白朮天麻湯合沢瀉湯加減。
黄色い鼻水や濁った鼻水は、漢方ではアレルギー性鼻炎ではなく、蓄膿症であり、くしゃみ鼻水がでても、漢方では蓄膿症なので脾虚なら半夏白朮天麻湯、食欲があれば防風通聖散や平胃散などが適応。
痰飲と脾虚を兼ねている時には必ず半夏白朮天麻湯を使う。
脾虚だけだったら、補中益気湯や六君子湯(脾虚痰飲)を使う。
首から上の症状には六君子湯ではなく半夏白朮天麻湯を使う。
半夏白朮天麻湯と六君子湯との違いは、喘息の緩解期の予防薬は六君子湯がよい。喘息は胃腸と肺の疾患で、半夏白朮天麻湯も胃腸の薬だが首から上にひっぱる処方で鼻・耳・目の薬である。
半夏白朮天麻湯を使う脾虚は、蓄膿症や鼻汁がでて、食少で、ムラ食いで、好き嫌いがあり、食事に時間がかかる。顔色がやや悪く面色萎黄や白っぽい人に使う。
「漢方診療三十年」大塚敬節の223.疲労感、めまい、食後嗜眠の低血圧58歳の婦人(半夏白朮天麻湯)。
「漢方診療三十年」大塚敬節の225.メニエール氏症候群・耳鳴りの57歳の婦人(半夏白朮天麻湯)。
「漢方診療三十年」大塚敬節の220.偏頭痛の場合は、五苓散、半夏白朮天麻湯、川芎茶調散、呉茱萸湯などがある。
半夏白朮天麻湯は、耳だれ・蓄膿・めまい・頭痛に使うが頭重が主で、前額部痛だけで後頭部痛には効かない。前額部は胃腸の経絡(足の陽明胃経:頭維ズイを通る):半夏白朮天麻湯は前額部の頭痛・頭重で、釣藤散は後頭部の頭痛である。
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