肝脾不和の処方

調和肝脾法・(肝脾不和)

肝胆の病変は、脾胃に最も影響を与える。

また、脾胃虚弱は、最も肝胆が虚に乗じやすく、肝脾不和をもたらす。

これらの証状は、部位について言えば脾胃の病変であり、病理について言えば皆肝胆の影響が脾胃に至ったもので、治法に従って言えばみな疏肝理気の柴胡、木香、鬱金、枳殻、玄胡(延胡索)、金鈴子(川楝子)を用い、清肝薬の黄芩、黄連を用い、平肝薬の芍薬と健脾和中の茯苓、半夏、白朮、甘草の類を組合せて処方としているので、合わせて一法として論じる。

胆気犯胃で胃気上逆して嘔吐や口苦,脇肋脹満して疼痛などの肝胆証状や嘔吐や悪心や脘悶食少などの脾胃証状がある。

嘔吐は、この現象を引き起こす原因は、肝胆の病が脾胃に影響していて肝胆に主要な原因がある。それゆえ肝気犯胃の嘔吐を治療し、主要な原因は肝胆にあるので肝胆の治療を前提として降逆止嘔の薬物を配伍する。例えば小柴胡湯や蒿芩清胆湯、はこの種の配伍形式である。

小柴胡湯:肝鬱胆熱・脾虚・嘔気・往来寒熱・胸脇苦満:少陽証の七症を示す:柴胡7、黄芩3、半夏5、生姜4、人参3、大棗3、甘草2g。

根拠は「胃は本モト 嘔せず、胆木之(胃)を剋すれば嘔吐す」の理論で、一般の嘔吐はまた適量の平肝(芍薬)、清肝(黄芩、黄連)の薬物を配伍すべきで、それによって止嘔の効果を増強する。漢代の張仲景は桂枝湯で妊娠嘔吐を治したが、これは我々が提示した嘔吐を治するにまさに和肝すべきという範例である。

肝脾不和の腹痛は、虚実を論治すべきである。

脾虚は肝脾不和を引き起こすが、腹部拘攣作痛が特徴である。

脾虚により養肝できないと、肝は脾胃の虚に乗じて脾胃を侵犯し、腹部は攣急し痛を生じる。この証の治療には、一方では補気健脾して肝気の侵犯を防ぎ、一方では、養血平肝して肝木の横暴を弱めるべきである。

この種の肝脾同治の配伍形式は、これを称して抑木培土の法であり、上述の腹痛に確実な治療効果となる。たとえば小建中湯、柴芍六君子湯、芍薬甘草湯、当帰芍薬散、逍遥散など、当帰、白芍の類の養血調肝薬と白朮、甘草、膠飴などの補気健脾薬を組合せになれば上述を根拠とした構造の配伍となる。

本類の処方は、肝脾両臓の具体的な情況を根拠として、突出した重点に対して配伍されている。

たとえば小建中湯や柴芍六君子湯は、脾虚を主として補脾に重点があり、兼治はその肝で、故に培土栄木の法と称するべきである。

芍薬甘草湯と四逆散は肝気横逆が主で、柔肝に重点があり兼治はその脾であり、これを称して抑木培土の法である。

当帰芍薬散と逍遥散は、肝脾はともに重く、故に益木培土の法である。

このほか、両臓の生理特徴を考慮して、

気鬱を兼ねれば疏肝理気薬を配合し、

血瘀を兼ねれば活血行瘀薬を配合し、

湿滞を兼ねれば燥湿、芳化、淡滲の薬物を配合すれば

さらに良効な治療効果をもたらす。

このほか、肝脾気鬱して胸脇痞悶し、飲食減少し、或は月経不調、脘腹疼痛の者には、舒肝理脾ジョカンリヒを同時に処方する。たとえば越鞠丸エツギクガンは肝脾同治の例である。

総じて、肝脾不和の臨床表現では、寒証や熱証があり、虚証や実証がある。

このために少数の方剤がある。これを除き外に、

肝気犯胃で嘔吐が寒に属するものに呉茱萸湯があり、

肝木乗脾してストレス性の腹痛には桂枝加芍薬湯がある。

胆気犯胃して嘔吐が熱に属するものには小柴胡湯(柴胡証の七症)。

肝木乗脾の腹痛で虚証に属するものに小建中湯、柴芍六君子湯、逍遥散。

肝木乗脾のストレスで実証に属するものは大柴胡湯(心下痞硬)。

これらの方剤は各法の中に散見され、参考にすれば肝脾の病変の治療に対して全面的な理解が可能となる。

脾陽虚(脾失健運):疲労感・無力感・舌質淡・顔色が淡白・元気が無い・腹痛は喜温や喜按・不消化下利・脈沈:温陽助運:理中丸・附子理中丸・安中散・呉茱萸湯(胃寒で胃気上逆で嘔気・胃痛)。

呉茱萸湯:散寒止嘔・温胃止痛・健脾益気:頭痛・胃痛に:呉茱萸3、人参2、生姜4、大棗4。胃虚寒の嘔吐・吃逆(胃気上逆)、寒飲上逆の巓頂部の頭痛