蒿芩清胆湯

蒿芩清胆湯:少陽三焦湿熱:こうごんせいたんとう(製品無し)

蒿芩清胆湯:通俗傷寒論:清熱利胆・除湿袪痰法:胆胃湿熱・胸脇脹痛・口苦・吐酸苦水・嘔吐黄涎・乾嘔呃逆:青蒿4~10 黄芩3~5 枳実3 竹筎3~5 青黛3~5 滑石6 甘草1 陳皮3 半夏4 茯苓4g。

蒿芩清胆湯の主治:胆胃湿熱・寒熱は瘧ギャク(おこり)の如し・寒軽く熱重い・胸脇脹痛・口苦・吐酸苦水・或は嘔吐黄涎オウセン・甚だしければ乾嘔呃逆アクギャク・舌紅・苔白或は舌苔黄じ(黄色がかった厚ぼったい舌苔)・脈弦数。

呃逆あくぎゃくは、嘔だけで吐かないことを「乾嘔」あるいは「からえずき(ゲーという音)」といいます。

蒿芩清胆湯は、少陽三焦湿熱の病理である。

邪は、少陽の半表半裏にあり、正邪紛争するので往来寒熱し瘧ギャクのごとし。
半里の胆腑の熱は偏盛し、故に熱重く寒軽し。
胸脇は肝胆経脈が主り循っているので、湿熱が肝胆に壅滞すると胸脇は脹痛する。

「胃は本 嘔せず、胆木が胃を剋すので嘔する」。
胆熱が胃に乗じて、胃濁が上逆するので酸苦水を嘔吐する。
甚だしければ、胆汁が胃液と一緒に上逆して黄涎オウセンを嘔吐する。

「肝は血を蔵し、胆と表裏をなす」。

胆熱が肝に及べば、舌質は紅となり、胃濁は上蒸して舌苔じ(厚ぼったく)となる。
肝脈はもとより弦、脈弦数は肝胆に熱象がある証を示す。

蒿芩清胆湯は、温胆湯加青蒿、黄芩、滑石、青黛セイタイの組成である。

青蒿セイコウは、少陽の半表の邪を清透する。

黄芩、青黛は肝胆の裏熱を清泄する。

竹筎は胆胃を清泄し、また止嘔効果もある。

竹筎と半夏の制吐作用の比較:半夏は痰湿による嘔吐に、竹筎な熱痰(胃熱を冷ます)による嘔吐に効果がある。

枳実、半夏、陳皮は降逆止嘔し胃を和し化痰する。

茯苓、滑石、甘草は湿熱を淡滲し、湿熱を小便とともに出す。

上記の数薬を合わせ用いて、清熱し利胆し、除湿袪痰の効果から湿熱を去り、胆胃を和せば、諸症は解す。

蒿芩清胆湯:少陽三焦湿熱:青蒿4 黄芩3 枳実3 竹筎3 青黛3 滑石6 甘草1 陳皮3 半夏4 茯苓4g:青蒿は、少陽の半表の邪を清透する。

蒿芩清胆湯は、少陽三焦の湿熱や痰熱に有効な処方である。もし加減法が適当なら、五臓の湿熱あるいは痰熱の病に泛用ハンヨウする(広く用いる)ことができる。

1,少陽証で、寒熱の瘧ギャク(おこり)や胸脇脹痛で湿熱型に属する者に蒿芩清胆湯は最もよく適合する。

2,胆胃不和で胃濁上逆で嘔するものにも蒿芩清胆湯は効果がよい。

降逆作用の代赭石を蒿芩清胆湯に加えると清熱降逆作用が増強される。

蒿芩清胆湯加代赭石:清熱降逆。

3,急性黄疸に、蒿芩清胆湯に鬱金、茵蔯蒿、山梔子、大黄などを加えると利胆退黄作用が増強される。

蒿芩清胆湯:利胆退黄:青蒿4 黄芩3 枳実3 竹筎3 青黛3 滑石6 甘草1 陳皮3 半夏4 茯苓4g 鬱金、茵蔯蒿、山梔子、大黄。

茵蔯蒿湯は、茵蔯蒿+山梔子を用いて黄疸を治す:清熱利湿・退黄:

茵蔯蒿4 山梔子3 大黄1g。

肝胆湿熱:黄疸など:湿熱の邪が肝胆に蘊蒸した病変。寒熱を生じ・口苦・脇痛・腹痛・悪心嘔吐・腹脹悪食・黄疸・小便黄赤・苔舌苔黄じ(黄色がかった厚ぼったい舌苔)・脈弦数:大柴胡湯合茵蔯蒿湯。

肝胆経に湿熱(肝経湿熱:竜胆瀉肝湯)があると、陰部に湿潤・糜爛・発赤・熱感、しこり、が生じる:竜胆瀉肝湯。そこで、加味逍遙散は陰部掻痒症に使用される(乙字湯も陰部の悪臭や陰部掻痒症に適応する)。

竜胆瀉肝湯は苦寒によって肝経実熱を直折し、肝火を瀉し、下焦の肝経湿熱を清利する処方である:陰部に湿潤・糜爛・発赤・熱感、しこり。

4,眩暈の症状は「内経」に早くも出ており「諸風掉眩トウゲンは、みな肝に属す」。

歴代の医家も提唱するのは「火(肝火)なくば眩をなさず」「痰なくば眩をなさず」。

故に、眩暈の実証は、多くは痰熱が少陽経脈を循り上攻し、清空を蒙擾モウジョウ(暗くみだす)して生ずる。蒿芩清胆湯は、少陽痰熱を治する処方で、眩暈実証の病理に適合する。

もし蒿芩清胆湯に鎮逆作用の代赭石や平肝薬の芍薬、袪風の蔓荊子を加えれば、更に眩暈への効果が高まる。

蒿芩清胆湯:眩暈:蒿芩清胆湯加代赭石、芍薬、蔓荊子。

肝火上炎:肝火の病証中に上部にあらわれた熱象。頭痛眩暈・難聴・耳鳴・眼紅痛・煩躁して怒りっぽい・睡眠不足・嘔吐・吐血・鼻血・舌黄苔・脈弦数:更年期障害(加味逍遙散)など:竜胆瀉肝湯・大柴胡湯。

大柴胡湯:肝胆の火が上攻した頭痛、肩こり、耳鳴、耳聾(難聴)、眼目の雲翳・赤眼疼痛、発狂、脳卒中の肝火上炎の肩こり易怒、動悸、及び胆胃不和による嘔吐不止、心下急痛(心下痞硬)、胸脇痞硬痛などの証で、口苦、舌紅、舌苔黄。

5,盗汗の症状は、多くは陰虚型から生ずるが、ただし肝胆湿熱からも盗汗は生じる。蒿芩清胆湯を盗汗に用いることができるが、さらに涼血の牡丹皮、斂汗作用の牡蛎を加えれば清熱利湿し斂肝潜陽作用となる。

清熱涼血 の法:三黄瀉心湯(心火旺・血熱妄行・肝胆湿熱・脾胃湿熱・熱盛・盗汗。

6,蒿芩清胆湯に、開竅剤の菖蒲根、清熱薬の釣藤、菊花、利湿薬の沢瀉、通草(木通)を加えれば、湿熱が少陽を壅阻ヨウソして生じた耳鳴り・耳聾に有効となる。

蒿芩清胆湯:耳鳴り耳聾:青蒿4 黄芩3 枳実3 竹筎3 青黛3 滑石6 甘草1 陳皮3 半夏4 茯苓4g 菖蒲根、釣藤、菊花 沢瀉、木通。

7,蒿芩清胆湯を基礎に、菖蒲10g、連翹4gを加えれば日本脳炎で高熱が治まって後、湿熱が清竅を廠阻ショウソ(閉阻)し、意識不清の者に清熱除湿して滌痰開竅する効果があり長く服用すれば効果がある。

連翹:苦寒:心肺経:清熱解毒・清心熱・消瘡:皮膚や頭頸部の風熱を散じ、熱毒による発疹(頭部の腫瘍の角)を消す。連翹は心熱を冷まし、金銀花は解表する:風熱に荊芥連翹湯。清上防風湯は袪風清熱・解毒排膿。

8,心悸(動悸)、不眠が、痰熱によって生じた者には、蒿芩清胆湯加琥珀、瓜殻カコク(栝楼殻?)、黄連、沢瀉の類で清熱滌痰すれば心は安定する。

9,痰熱が壅肺して咳嗽、胸痛の者には、蒿芩清胆湯に魚醒草(どくだみ)、芦根ロコン、冬瓜仁トウカニン(冬瓜トウガンの種)などを加えれば清熱化痰される。もし気粗喘息する者には、麻黄、杏仁、石膏を加えれば宣肺降逆できる。

蒿芩清胆湯:宣肺降逆:青蒿4 黄芩3 枳実3 竹筎3 青黛3 滑石6 甘草1 陳皮3 半夏4 茯苓4g 麻黄、杏仁、石膏。

宣肺せんぱい:肺の宣発・粛降作用を調える。

10,肝火犯肺して咳血する者には、蒿芩清胆湯に山梔子、瓜殻カコクを加えれば、清肝寧肺の効果がある。

11,少陽三焦湿熱により下注すれば淋証が生じ、腰痛、頻尿、尿急、尿痛する者には、蒿芩清胆湯に木通、山梔子、柴胡を加えれば瀉火通淋となる。

蒿芩清胆湯:瀉火通淋:青蒿4 黄芩3 枳実3 竹筎3 青黛3 滑石6 甘草1 陳皮3 半夏4 茯苓4g 木通、山梔子、柴胡。