奔豚湯:腹痛・不安感

奔豚湯 ほんとんとう

奔豚湯:金匱要略:清熱平肝・降逆止痛:葛根5 李根白皮5 生姜4 半夏4 当帰2 芍薬2 川芎2 甘草3 黄芩2g。

奔豚湯:金匱要略:清熱平肝・降逆止痛:葛根10~20 甘李根白皮10~30 生姜7 半夏7 当帰3 白芍10~25 川芎3 甘草3 黄芩3g:水煎、分4,一日3回夜1回服用、温服する。

李根白皮りこんはくひ・甘李根白皮・李根皮・李白皮:バラ科のスモモの根皮の甘皮部分:清熱、降気:口渇・胸悶・心煩・奔豚気。

奔豚湯は、肝気上逆して奔豚を発するを治す主方である。奔豚は腹痛を主証とする。

奔豚湯証は、必ず「腹痛」と「気が少腹より発し心胸に上衝」しそれを同時に自覚することが奔豚証の弁証の要点である。もし病人に「気が胸に上衝する症状」がみられなければ腹痛はその他の原因で引き起こされていて奔豚病とは診断できない。

「肝は一身の筋膜を主り、肝の筋脈は少腹を通り胸脇に散布する」。

奔豚証の病理は、恐によって肝気上逆が引き起こされ、肝気が少腹より経を循って上衝し、奔豚を発して腹痛し、死にそうな感覚になる。

奔豚ほんとん・奔豚気:発作性、反復性に気が下腹部から心や喉に衝き上げてくる病証。ヒステリー球が衝き上げてくるヒステリー発作。豚が下腹部から心胸に駆け上がってくる感覚。

奔豚湯で、その急迫する勢いを緩める。証情は熱に偏するので清肝すべきで清熱を通じて平肝し降逆などの措置によって肝木を柔順せしめ気が上逆して生ずる疼痛を緩解する。

奔豚湯:葛根5 李根白皮5 生姜4 半夏4 当帰2 芍薬2 川芎2 甘草3 黄芩2g。

奔豚湯の李根白皮は奔豚気を治す要薬であり、古方ではいつも清熱降逆には多用している。

黄芩と葛根は、主薬の李根白皮の清熱を助け、

当帰、白芍、川芎は主薬の養血柔肝を助けている。

白芍、甘草は平肝緩急のすぐれた組合せである(芍薬甘草湯)。

半夏、生姜は佐薬として上逆の気を降ろしている。

ともに用いて、清熱平肝降逆の効果となる。

奔豚湯と苓桂甘棗湯リョウケイカンソウトウはともに奔豚を治す主方である。一方は寒で他方は熱の違いがあるので参考にすべきである。

茯苓桂枝甘草大棗湯(傷寒論):苓桂甘棗湯に同じ:茯苓6 桂枝4 大棗4 甘草2g:桂枝があるので寒証に適応する。

苓桂甘棗湯:不安感・奔豚気の薬。苓桂朮甘湯の白朮の代わりに大棗が入っているて、苓桂朮甘湯では代用できない処方:傷寒論:茯苓6 桂枝4 大棗4 甘草2。

奔豚気:もともと痰濁があると、不安感や火傷によって、下腹部からヒステリー球が上がってきて動悸が激しくなる。桂枝加桂湯は桂枝湯の桂枝を増やした「奔豚気の火傷ヤケドの薬」である。火傷でない奔豚気には苓桂甘棗湯を使う。

桂枝加桂湯:桂枝湯の桂枝は倍量。寒により奔豚(動悸・不安感・腹痛)を生じ、気は少腹より昇り心に至り腹痛する(陽虚が原因で寒が昇ってくる、裏寒の水逆もある):調和肝脾。桂枝は温中降逆の作用。

桂枝加桂湯は、火傷の時の「動悸の薬」である:桂枝湯に桂枝を足した処方。

桂枝去芍薬加蜀漆竜骨牡蠣救逆湯(重症の火傷の特効薬で、火劫による心陽虧損から生ずる心虚驚狂証に効果がある):桂枝4 生姜4 大棗4 甘草2 蜀漆4 竜骨5 牡蠣6g。

蜀漆ショクシツ:ユキノシタ科黄常山ジョウザンアジサイの苗:辛平有毒:催吐作用:化痰抗瘧・清熱利水。