下利の口訣集

2025/5/27~29

下利の口訣集

「下痢」は細菌性に使い、「下利」は体質が原因の場合に使う。

真武湯:回陽救逆・温陽利水:腎陽虚・寒湿

半夏瀉心湯:和胃降逆・消痞・安寧・心火や胃熱を冷ます

甘草瀉心湯:半夏瀉心湯加甘草

真武湯合半夏瀉心湯:慢性下痢

人参湯:温中散寒・補気健脾:脾陽虚・胸痞

附子理中湯(附子人参湯):腎陽虚・温中散寒・補気健脾:脾陽虚・胸痞

黄岑湯:清熱止痢・和中止痛

葛根黄芩黄連湯:清熱化湿・解肌透表・止痢:湿熱感冒下利

参苓白朮散:補気健脾・理気化湿・止瀉

補中益気湯:中気下陥:脾胃気虚:補気健脾・昇陽虚寒・甘温除熱

真武湯合補中益気湯:食欲不振と下利

当帰芍薬散:肝血虚・脾虚湿滞

旋覆花代赭石湯:降逆化痰・益気和胃

大柴胡湯:胃熱・食欲旺盛・食熱毒を瀉下

桂枝加龍骨牡蠣湯:陰陽双補・補腎安神:軟便下利

柴平湯:下痢や嘔気・腰痛に発熱を伴うカゼ

加味逍遙散・逍遥散:ストレス性の下利

小青竜湯:無汗・辛温解表・温肺化痰・平喘止咳・利水:下利

ストレスによっておこる下利には、大柴胡湯・味逍遥散・逍遙散・当帰芍薬散・真武湯・半夏瀉心湯を使う。

(重要)真武湯:回陽救逆・温陽利水:

附子1 茯苓5 白朮3 白芍3 生姜3:

冷えとストレスをとるが脾虚は補わない:足冷の下利。

真武湯:腎陽虚・寒湿に適応:ストレスがあり、下半身の冷えが目標・寒湿の痔・地面に吸い込まれるような倦怠感。

甘草瀉心湯:138.乳児の消化不良、生後三週間目から消化不良をおこし、八ヶ月もかかってやっと治した治験例。「漢方診療三十年」大塚敬節

附子理中湯(人参湯加附子):193、夜間多尿と下利の68歳の男子。「漢方診療三十年」大塚敬節。

人参湯:188.別の患者で、十数年前にも、下利と頑固な神経痛に人参湯を用いて一ヶ月ほどで全治せしめたことがある。この患者は平素胃がわるく血色のよくない冷え症の婦人であった。「漢方診療三十年」大塚敬節。

少陰病:人参湯加附子(人参3 白朮3 乾姜3 甘草3 附子1g)。

少陰病、清穀を下利し、裏寒外熱し、手足厥逆し、脈微にして絶えんと欲す。「傷寒論」:少陰病は概括していうと、陰陽偏衰の病変に属しているが陽虚の証候が主となっている。

理中湯去白朮加附子:185.腹満して下利で冷え症の36歳の婦人。「漢方診療三十年」大塚敬節

人参湯:184.多尿・口渇・浮腫と下痢の4歳の幼児。「漢方診療三十年」大塚敬節

人参湯:187.乳児の消化不良症生後八ヶ月の母乳栄養の女児。「漢方診療三十年」大塚敬節

人参湯(理中湯):金匱要略:温中散寒・補気健脾:脾陽虚・胸痞:人参3 乾姜3 白朮3 甘草3。

胸痞:1,胸がつかえふさがることで結胸証とは異なる。湿濁の邪が胸中に塞がり清陽が伸びずに起こる。2.心下硬・乾嘔・噯気などの症状を指す。

結胸証:邪気が胸中に結し、心下が痛み、按ずると硬満する病証。

胸痹:胸部のふさがりや疼痛する病証をさす。心臓病・肺気腫・胸膜炎・胃病などにみられる。陽気が正常に運行できなくなり、水飲や痰濁が胸中に閉塞して起こる。喘息咳唾・胸背痛・短気・心痛背に徹す。栝楼薤白半夏湯などを使う。

甘草瀉心湯:137.十年続く一日二、三回下利する27歳婦人(甘草瀉心湯)。下利の時は腹痛をともない、月経時に特に増悪する。朝、眼がさめると必ず腹痛し(痛瀉要方)、ガスが溜まる。下利しても口渇がなく尿量は少ない。「漢方診療三十年」大塚敬節

甘草瀉心湯は半夏瀉心湯に甘草のエキス(クラシエ甘草湯:甘草一味)を加えるか、芍薬甘草湯を合方してもよい。不眠症や狐とかにとりつかれた場合に使うが、これは夢遊病や精神疾患が重篤など特殊な場合である。

半夏瀉心湯:1.精神不安 2.落ち着きがなく(煩躁:なんとなく目立つ動き) 3.胃もたれ(納呆のうほう・胃中不和)の他に:悪心・下利しやすい・顔が赤い・腸鳴・食臭のあるゲップ。

半夏瀉心湯:白朮+白芍がないので急迫する腹痛には効かないが急迫する下利の予防・治療には効く。

半夏瀉心湯:和胃降逆・消痞・安寧・心火や胃熱を冷ます精神安定剤:半夏5 乾姜3 黄芩3 黄連1 人参3 炙甘草3 大棗3:下利・軟便・嘔気・胃不和・二日酔・乗り物酔い・食べすぎ・食欲不振につかう

人参湯:180.そこで心下痞硬(みぞおちがつかえた硬いこと)、腹中雷鳴、下利という症状を目標として、甘草瀉心湯を与えたところ、かえって下利がひどくなった。そこで、人参湯に転方すると下利が止んだ。「漢方診療三十年」大塚敬節

甘草瀉心湯:136.二十年来の患者で、甘草瀉心湯でなければ、どうしても下痢の止まらない婦人。体格はよく、どんなことをしても1カ年近く1日一~二回の下痢がとまらない。「漢方診療三十年」大塚敬節

真武湯:176.下利を伴う虫垂炎の16歳の少女。「漢方診療三十年」大塚敬節

甘草瀉心湯:136.慢性下痢の38歳の男子。数日前より下痢がある。腸鳴と裏急後重で1日数回下痢する。心下痞硬で夜よく夢をみる。甘草瀉心湯2日分で完治。「漢方診療三十年」大塚敬節

大黄の瀉下作用で積滞を去れば伝導は正常になり下利は止む。

黄芩湯は、熱痢(熱性下利・裏急後重や粘血便)の治療に非常に効果がある:傷寒論:清熱止痢・和中止痛:黄芩3 白芍2 甘草2 大棗2:腹痛・下利・嘔逆:大腸湿熱で急性腸炎・細菌性下痢・赤痢・腹痛の強い場合。

真武湯合半夏瀉心湯:159.慢性下痢の15歳の男子。「漢方診療三十年」大塚敬節

竜骨・牡蠣があれば、多汗・小便頻数・失禁・軟便下利・帯下の人に適応。桂枝加龍骨牡蠣湯・柴胡加竜骨牡蠣湯。

参苓白朮散は、婦人の脾虚して湿の甚しく、帯下の色白く、面色皓白こうはく、身体肥満で大便溏薄し、あるいは両足の浮腫し、あるいは月経時に下痢する者(六君子湯も)にも また宜し。

参苓白朮散:補気健脾・理気化湿・止瀉:党参 白朮 茯苓 炒白扁豆 炒山薬 薏苡仁 蓮子 陳皮 縮砂 桔梗 炙甘草:消化不良・泥状便・水様便・カゼ時の嘔吐・ノロウイルスの嘔気や嘔吐。

人参湯:184.多尿・口渇・浮腫と下痢の4歳の幼児。

旋覆花代赭石湯は、「「傷寒論」の中では、発汗し若しくは吐し、若しくは下し、解して後、心下痞硬し、噫気アイキ除かざる者を治す。

旋覆花代赭石湯・旋覆代赭湯:傷寒論:降逆化痰・益気和胃:旋覆花2 代赭石3 法半夏5 生姜4 炙甘草2 大棗3:痰飲による胃気上逆の症状:上腹部のつかえと苦悶感。痰湿による肺気逆。

旋覆花センプクカ:上逆した肝気を正常にめぐらす:キク科旋覆花の頭状花序を包煎(全草は金沸草きんふつそう):苦辛微温:肺脾胃大腸経:止嘔逆・軟堅痰:制吐・袪痰作用。

真武湯:寒滞肝脈の人の特徴3-3:手より下半身の方が冷え、全身の倦怠感で、小便は量多。面色萎黄で、温めても温まらないで冷え易く体が怠い:苓姜朮甘湯を使い食少では人参湯、下利は真武湯。

大黄の瀉下作用で積滞を去れば伝導は正常になり下利は止む。

芍薬:滋潤・裏の攣急を治すので、腹痛・下利を治す。

月経での動きは、脾血はまず血海(衝脈)に注ぎ、しかる後、下に流れて月経となる。脾血がそこなわれると、脾はその湿を運行することができないので、必ず月経前に下利となる:補中益気湯加炮姜。

温陽薬の炮姜(乾姜)・肉桂・附子。

衝脈は血海であり・任脈は胞胎を主り、ともに小腹からおこり、月経と密接な関係がある。

血海:1,衝脈を指す。十二経脈の集まるところなのでこの名がある。2,肝臓を指す。肝の血液を貯蔵し調節する機能による。3,経穴名。足の太陰脾経に属する。

補中益気湯:中気下陥:脾胃気虚の症状に、あるいは脱肛 あるいは子宮脱あるいは胃下垂 あるいは久瀉きゅうしゃ・慢性げり、あるいは久痢きゅうりなど。

補中益気湯:補気健脾・昇陽虚寒・甘温除熱(疲労時発熱):黄耆4、甘草1.5 人参4 当帰3 陳皮2 升麻0.5 乾姜0.5 柴胡1 白朮4 大棗2:中気下陥を昇陽挙陥するので、怠さの強い肝炎に。

当帰芍薬散は男女の膀胱炎や神経性の下痢、過敏性大腸炎にも使える。久病では当帰芍薬散合真武湯。白朮+白芍の組合せはお腹の痛みを止める薬であるので、過敏性大腸炎に使える。

当帰芍薬散:肝血虚・脾虚湿滞:当帰3 白芍4 白朮4 茯苓4 沢瀉4 川芎3:過敏性大腸炎は真武湯も適用:当帰がもたれる脾虚の人もいる。

当帰芍薬散はもともと「冷えと湿気とストレスをとる薬」で、寒湿と肝鬱の症状を同時に取る薬なので、寒湿下痢に使う。

大柴胡湯は急性の便臭の有る下痢に使う:下利(胃熱・食欲旺盛・食熱毒を瀉下陽明する。

桂枝加龍骨牡蠣湯:不安感・神経症・陰痿・冷え症・多汗・小便頻数・軟便下利・帯下の人に適応。

桂枝加龍骨牡蠣湯:陰陽双補・補腎安神:桂枝4・芍薬4・大棗4・生姜4・甘草2+竜骨3・牡蠣3:精力減退・疲労・夜尿症・遺精・神経症・自慰過多・多夢・不眠・過労で悪化・動悸・面紅・顴紅・手はほてり足冷える。

食欲不振と下利の二つが長期化した場合は真武湯合補中益気湯・桂枝加朮附湯合補中益気湯・苓桂朮甘湯・当帰芍薬散・当帰芍薬散合補中益気湯など。

甲状腺機能亢進の症状:過剰な発汗で乾燥肌で皮膚が熱い・暑がり・心拍数と血圧の上昇・動悸・不整脈・神経質や不安感でイライラしけんかっ早い・軟便下利・眼球突出・代謝亢進で活動的、不眠、体重減少。

柴平湯:下痢や嘔気に発熱を伴うカゼの場合には、平胃散に小柴胡湯を併用する。

真武湯:冷え症でめまいや下利をともなう人は疲労しても疲労感を訴えない。陽虚(冷え症)の人は疲労感を訴えないが長時間寝ないと持たない人でめまい・下利を訴える人は真武湯である。

逍遥散の白朮+白芍の組合せはお腹の痛みを止める薬で過敏性大腸炎に使える(逍遥散は肝脾不和の下利:痛瀉要方に適応)。

痛瀉要方:景岳全書:防風3 白朮3 白芍4 陳皮2:腹鳴・腹痛して下痢。製品無し。

葱白そうはく:ユリ科ネギの白い部分:辛温:肺胃経:発汗解表・通陽:下利・腹痛・腹部膨満・排尿困難:発汗の補助:葱鼓湯そうしとう:葱白3 淡豆鼓5gたんとうし:感冒初期の発熱・頭痛・鼻づまり。

人参湯:温中散寒・補気健脾:脾陽虚:人参3 白朮3 乾姜2~3 甘草3:中焦の冷えによる下痢・小便頻数・腹痛(食欲不振が必要)。

人参湯:冷え症の人がカゼを引くと胃痛となることがある。面色蒼白・寒がり・小便頻数または下利となる。

腎虚の下痢は最初は腹痛は無いが、徐々に腹痛が生じ最後は水のような下利が沢山でて治まる。このようは人は本当は体が冷えているが口が乾いて水分を沢山のんでいる。真武湯の適応。

湿熱感冒下利というパターンがある。発熱・口渇があるが不欲飲で、湿邪のため体は重だるく、湿熱があるため便が臭く小便黄で有るときは、葛根黄芩黄連湯を使う。

葛根黄芩黄連湯:傷寒論:清熱化湿・解肌透表・止痢:湿熱感冒下利:葛根3 黄芩3 黄連2 甘草1 :大腸湿熱:急性腸炎・細菌性下痢・赤痢・腸チフス。

気化機能の失調(慢性腎炎・慢性の下痢)

当帰芍薬散はむくんだり、下痢傾向がでてくる:夕方の足のむくみ。

脾気虚は脾腎陽虚になりやすいので羸痩(るい痩)・無力感・腹部の下墜感・食べると腹が張る・食べると下利する・または慢性の下痢・脱肛・子宮脱などには真武湯合補中益気湯の適用が多い。

脾腎陽虚では、気が血を統摂できずに、大便が固まらず滑脱して膿血便となるのは、高齢者などの虚血性大腸炎として発症することが多い。

脾腎陽虚:附子理中湯(人参3 白朮3 乾姜2~3 甘草3 附子1)。

五更瀉:毎日早朝か夜明け前に下痢をする五更瀉は脾腎陽虚(痛瀉要方・真武湯・附子理中湯)である。五更瀉・五更泄瀉・鶏鳴下痢。

痛瀉要方:景岳全書:防風3 白朮3 白芍4 陳皮2:腹鳴・腹痛して下痢。

真武湯:回陽救逆・温陽利水:寒湿の腹痛・登校時腹痛や下痢の子供:附子1 茯苓5 白朮3 白芍3 生姜3:寒滞肝脈の症状の人で冷え症で下利を訴える人。

真武湯を寒湿感冒に使うパターンは、熱感が無く、寒気と手足が冷えて下利する場合である。発汗剤で発汗過多後の下利。

カゼをひいて下利をしたら発汗させてはいけない。発熱後の下利に発汗剤の葛根湯や総合風邪薬で発汗すると必ず症状は悪化して真武湯の状態に陥る。

葛根湯の適応:下痢する急性大腸炎などの発熱性疾患:悪寒・発熱・しぶり腹の下痢:太陽陽明合病:腹痛は無いかあっても軽度。

葛根は消炎・収斂により止瀉に働く。

腎虚では排便時に、便が周りに散ってしまうようになる。この状態では真武湯や四逆湯を使う。

四逆湯:回陽救逆・温中散寒:附子1、乾姜2、炙甘草3g。

人参湯を寒湿感冒に使うパターンは、食欲不振となり下利が止まらず、足が冷える場合である。

大柴胡湯:和解半表半裏・瀉下熱結・疏肝解鬱・理気止嘔:柴胡6 黄芩3 白芍3 半夏4 生姜4 大棗3 枳実2 大黄1:ストレス性の下利にもつかう。

戊己丸ぼきがん:左金丸(黄連・呉茱萸)に白芍を加え、痢疾あるいは湿熱下痢で、腹痛が激しい者を治す。

小柴胡湯は泄瀉をともなう場合があり、七症を呈している時は、平胃散を合方する:柴平湯。

加味逍遙散;肝鬱化火・脾虚湿性・血虚:柴胡 芍薬 薄荷 当帰 牡丹皮 山梔子 茯苓 白朮 生姜 甘草(人参・大棗が無い):ストレス性の下利にもつかう。

参苓白朮散:食欲がなくて下痢する人。

参苓白朮散:補気健脾・理気化湿・止瀉:党参 白朮 茯苓 炒白扁豆 炒山薬 薏苡仁 蓮子 陳皮 縮砂 桔梗 炙甘草:消化不良・泥状便・水様便・カゼ時の嘔吐・ノロウイルスの嘔気や嘔吐。

脾虚の下痢に瘀血がある場合は、参苓白朮散、六君子湯、補中益気湯、人参湯などを証にあわせて選択して、補陽還五湯(瘀血の薬)と合方する。

補陽還五湯:気虚・血虚・瘀血の脳卒中後遺症・心筋梗塞・高次脳機能障害:代用処方は十全大補湯合血府逐瘀湯:益気活血・和営通絡:黄耆40 当帰3 赤芍3 川芎3 桃仁2 紅花3 地竜3:適用には気虚が必ず必要。

小青竜湯の寒飲の症状:四肢冷・小便不利・溢飲の浮腫・四肢や顔のむくみ・下腹部の腹満・呼吸困難・喘鳴・泡沫状の白色痰・下痢・嘔気・不渇(口渇)。

小青竜湯:無汗・辛温解表・温肺化痰・平喘止咳・利水:麻黄 乾姜 細辛 五味子 桂枝 白芍 甘草 各3g 半夏6g:「乾姜・細辛・五味子の三薬」の配合は、肺の水飲を温散し、止咳平喘の効果がある。