2025/6/3~5~7
加味逍遙散の口訣集
加味逍遙散:内科摘要;肝鬱化火(軽症の肝火上炎は肝陽上亢とも言える)・脾虚・湿邪・血虚:柴胡3 芍薬3 薄荷1 当帰3 牡丹皮2 山梔子2 茯苓3 白朮4 生姜3 甘草2:丹梔が化火を担う。
加味逍遙散:疏肝解鬱・健脾補血・調経・清熱涼血。
加味逍遙散:肝気鬱結に肝血不足・脾虚・肝火を兼ねる病態。
加味逍遙散は血虚・気虚・陰虚・肝鬱にも使え、どれか一つの症状があれば色々な症状に使える。
イライラの状態では加味逍遙散や抑肝散が適応するが、長引くと心血の不足になりその症状には帰脾湯(心脾両虚・不安感のある気血両虚)や天王補心丹(心腎陰虚)を使う。
加味逍遙散には、肝胆経の湿熱を除去する作用もある:丹梔(牡丹皮・山梔子)で熱を冷まし、健脾利水の白朮+炙甘草+生姜で袪湿する。
柴胡桂枝湯は、加味逍遙散の薄荷 当帰 牡丹皮 山梔子 茯苓 白朮は無いので、発散・補血・駆瘀血・利湿・清熱の作用は加味逍遙散より弱い。
柴胡桂枝湯:柴胡5 黄芩1 半夏4 生姜1 人参1 大棗2 甘草1.5 桂枝2.5 芍薬1g。
加味逍遙散:柴胡3 芍薬3 薄荷1 当帰3 牡丹皮2 山梔子2 茯苓3 白朮4 生姜3 甘草2
加味逍遙散は、柴胡桂枝湯の桂枝・黄芩・半夏・人参・大棗・半夏は無いので利胆清熱(柴胡黄芩)・降逆(半夏生姜)・補気(人参)・滋陰(人参大棗)・温通(桂枝)の作用は弱い。
灼痛で胃がジリジリ焼けるような胸焼け(嘈雑)は加味逍遙散を1/3ほどの少量を使う。
加味逍遙散証は肝胆経に沿った部分に腫塊を生ずることがあり、脇下(胸脇苦満:乳腺のしこり)、腋下(肝の症状:肝炎)、頸部(こぶとりじいさんのこぶ)などである。
胸脇・胃部・少腹(下腹部の両側の少腹は足の厥陰肝経が通る)が脹り、少腹の脹痛、胸脇苦満・脹痛・疝気には加味逍遙散、
少腹の疝痛・刺痛(瘀血症状)は桂枝茯苓丸。
加味逍遙散証では、とくに女性では月経前に乳房が脹痛、脇痛する。
逍遙上逆で「のぼせ熱くなっても、ゾクゾク感や冷や汗」(往来寒熱)が無い場合は加味逍遙散では効かないので天王補心丹とする。
天王補心丹:心腎陰虚(心腎不交・心陰虚):酸棗仁10 生地黄20 柏子仁10 麦門冬10 五味子10 当帰6 遠志5 丹参5 玄参5 桔梗5 粉末を蜜丸とし朱砂をまぶし、1回2gずつ服用。
柏子仁は心血虚の不眠。酸棗仁は肝陽上亢の不眠。
玄参:涼血解毒・滋陰清熱。
加味逍遙散には、肝胆経の湿熱を除去する作用もある(軽症の肝経湿熱:重度の肝経湿熱は竜胆瀉肝湯):丹梔で熱を冷まし、健脾利水の白朮+炙甘草+生姜で袪湿する。
疝せん:体腔内容物が外に突出する病証:ヘルニア・外生殖器の潰腫流膿・尿道からの敗精濁物(淋病など)・睾丸や陰嚢の腫大疼痛に加味逍遙散・桂枝茯苓丸。加味逍遙散合五苓散・桂枝茯苓丸合五苓散。
睾丸や陰嚢の腫大疼痛に五苓散合加味逍遙散、五苓散合桂枝茯苓丸。
五苓散の、口渇・小便不利・水逆・自汗・陰嚢水腫は、すべて痰飲が原因である:猪苓5 茯苓5 沢瀉6 白朮5 桂枝3:風邪薬・袪痰飲薬:「心下痞、煩躁して渇し、小便不利」などの証。
五苓散:カゼの発熱で水を欲しがるが、飲むと水を吐く症状(水逆)に五苓散を重湯オモユにとかしてひと匙ずつ与えると吐かなくなり熱も下がる。
発熱と冷や汗は、往来寒熱の症状であり、悪寒と発熱が交互に出てくる症状は、心腎陰虚(天王補心丹)の症状ではなく、肝胆に関連する症状で加味逍遙散の適応。加味逍遙散は本来、潮熱であるが往来寒熱もある。
天王補心丹:逍遙上逆で熱くなっても、加味逍遙散ではゾクゾク感や冷や汗があり、それらが無い場合は加味逍遙散は効かないので天王補心丹とする。
便秘:加味逍遙散は気虚・血虚・陰虚でイライラのある者の便秘に使う。
血虚でイライラが強い便秘には、加味逍遙散を使う。
あがり症:半夏厚朴湯はストレスによって気が停滞して起こる症状を治すので、緊張すると頭痛・声がかすれて咽痛・壇上に立つと膝や手がガタガタ震える人は半夏厚朴湯で、加味逍遙散を使うことはない。
あがり性に苓桂朮甘湯。
加味逍遙散は血虚・気滞気虚・陰虚・肝鬱気滞・肝鬱血虚にも使え、どれか一つの症状があれば便秘以外にもいろいろ使える。
痰飲(癭瘤・瘰癧(頸部リンパ腺炎)・甲状腺腫・しこりがある)を兼ねる場合には、半夏厚朴湯を合方し 加味逍遙散合半夏厚朴湯・柴胡加竜骨牡蠣湯合半夏厚朴湯とする。
半夏厚朴湯:理気化痰:化痰の半夏が主薬:
半夏6 厚朴3 茯苓5 生姜4 紫蘇葉2:
肝鬱痰飲の薬:竄痛ざんつう の薬。
柴胡加竜骨牡蠣湯:柴胡5 黄芩3 半夏4 生姜3 人参3 茯苓3 大棗3 桂枝3 竜骨3 牡蠣3 大黄1:肝陽上亢・肝風内動・のぼせ・めまい・肝気鬱結(肝腎不足で体が重だるい、不安感、動悸)。
肝腎陰虚(肝腎不足)は杞菊地黄丸。
肝腎不足の特徴は、頭暈・耳鳴り・一側性・両側性の踵の痛みや足心の痛み、局部に発赤や腫脹はなく、長く立っていられない・腰膝酸軟無力・目花・舌淡・舌紅・脈沈細無力・弦細数。
お腹の刺されるような痛みは、瘀血の痛みで、それは腸捻転の状態であり、排便できればよくなるが、胃の刺痛には加味逍遥散加田七や柴胡桂枝湯加田七とする。加味逍遙散合吉祥蘇霊廣(マツウラの商品名)。
松浦薬業の吉祥蘇霊廣の成分:田七・蘇合香・霊芝・陳皮・蛇胆(乳糖):片仔瀇の類似の処方。
蘇合香そごうこう:甘・辛・温:開竅・解鬱・化痰・中枢興奮作用:蘇合香樹の樹皮傷の芳香性樹脂。蘇合香丸。
ベトナム戦争時、片仔瀇ヘンシコウは傷薬・止血・鎮痛剤として多用されたが、肝炎の特効薬である:麝香じゃこう3% 牛黄ごおう5% 田七85% 蛇胆じゃたん7%:妊婦は禁忌(片仔瀇の廣はやまいだれ)
加味逍遙散;月経期にニキビが現れたり、加重する場合がある。この赤ニキビは赤味が強く腫れる(赤にきび:熱状・肝鬱化火):白ニキビ:当帰芍薬散:黒ニキビは桂枝茯苓丸。
ニキビや皮膚病や虫刺され:輪郭がハッキリしないものは虚証であり、輪郭や境界がハッキリするのは実証である。ニキビでも輪郭の状態がなんとなくくボテッとしているのは虚証・くっきりは実証。
青紫や黒ニキビは瘀血なので桂枝茯苓丸である。
当帰芍薬散のニキビは赤くならない小さな白ニキビ。加味逍遙散は赤く大きなニキビ。加味逍遙散は生理時のニキビ。桂枝茯苓丸は青い・青黒いニキビ。
頭痛:苓桂朮甘湯は痰飲による包裹痛・包まれるような頭痛がでるが、加味逍遙散はストレスによる脹痛・脹ってくる痛みである。
月経先期(月経が早く来る)や月経先後無定期のもの、加味逍遙散。
月経先後無定期:ストレスがある人は月経の周期が定まらない。帯下が黄白色で、ベタベタしている。妊娠時は悪阻にかかり易く、産後は腹痛を患い易い。
気滞の一般症状:胸脇が脹って苦しい・イライラし顔が赤くぼせる・頭痛・眩暈・嘔気・胸焼・腹満して便秘・ゲップ・放屁・ため息がよくでる・脹痛が特徴・頭脹痛・胃腸脹痛・腹満痛・経前乳脹痛(生理の前に乳房が脹って痛むはストレスの症状):加味逍遙散・四逆散。
四逆散:柴胡5 白芍4 枳実2 甘草1.5:肝鬱の基本処方。
加味逍遙散は人参・大棗が無いので、のぼせを防ぐ処方である。
人参:甘微苦・微温:肺脾経:補気固脱、補脾気、生津止渇、安神益智:人参は炎症を悪化させ痰の量を増加させるので、咳嗽のあるときはのぞくのが定石である。
大棗タイソウ:甘微温:脾胃心肝経:補脾和胃、養営安神、緩和薬性。
咽中炙臠(のどの異物感、ヒステリー球、別名:梅核気)は、半夏厚朴湯の専売特許のようにいわれるむきもあるが、加味逍遙散の肝鬱化火・脾虚湿性・血虚に咽中炙臠が加わることもある。
肝鬱化火:憂鬱感・イライラ・易怒・口苦・胸脇苦満・寝付きが悪い:加味逍遙散。
加味逍遙散:イライラが続くと体内に熱が生じて発熱する、あるいは午後になると熱が出るなどである。(日晡所潮熱:加味逍遙散・大柴胡湯)。
陽明腑実の潮熱・・承気湯類・大柴胡湯:表邪が裏に入り化熱し、熱邪が腸内の不消化物と結合した「胃家実」:腹が硬く脹って痛む、便秘又は熱結旁流:陽明の気は申酉サルトリ(午後4時~8時)に旺盛で「日晡潮熱」となる。
熱結旁流ねっけつぼうりゅう:証の名称。熱病を外感して陽明腑実証をあらわし、腸内に燥糞が結し、また臭水を下痢するもの。大承気湯・小承気湯で実熱を下すとよい。子供には浣腸で対応。
大柴胡湯証の熱型は:少陽病の往来寒熱を原則とするが、陽明病の潮熱もある。少陽病に陽明病をかねているので、小柴胡湯証に較べ、熱状は強い。
加味逍遙散は、バセドウ病などの癭瘤えいりゅうにも有効である。やはり、痰もしこりとなるので、痰飲を兼ねる場合には半夏厚朴湯を合方する:加味逍遙散合半夏厚朴湯。
大柴胡湯合半夏厚朴湯・加味逍遙散合半夏厚朴湯:頚部の腫脹(瘰癧るいれき)・こぶとりじいさんのコブ・甲状腺腫(癭瘤えいりゅう)。
半夏厚朴湯:理気化痰:化痰の半夏が主薬:半夏6 厚朴3 茯苓5 生姜4 紫蘇葉2:肝鬱痰飲の薬:竄痛ざんつうの薬。
竄痛ざんつう:痛む場所が移動する:ネズミのように、痛みが、こそこそと逃げ隠れするという意味。
加味逍遙散:胸脇・胃部・少腹脹痛(下腹部の両側は足の厥陰肝経が通る)が脹り、あるいは脹って痛む。(胸脇苦満・脹満)。
少腹の脹痛・疝気は加味逍遙散、少腹の疝痛・刺痛に桂枝茯苓丸
加味逍遙散:痰飲症状は無い。イライラで体の熱症が強く、ストレスで体に熱が出てくる。その熱によって頭痛・のぼせが出てくる。
顔のシミの加味逍遙散と当帰芍薬散の使い分けは、逍遙上逆で、のぼせが有る時は加味逍遙散で、のぼせが無い時に当帰芍薬散(川芎の活血作用は強く薬を上に引き上げる作用があるのでのぼせるので面紅には不適)。
乙字湯の体質は神経質、加味逍遥散はイライラで発症する症状に適応する(痔など):
乙字湯:腸燥便秘・切れ痔・風燥の痔:肛門はカサカサの切れ痔に適応:麻子仁5(研末) 甜杏仁2 大黄4 枳実2 厚朴2 白芍2:
肛門が湿っていれば乙字湯が適応し陰部の掻痒・悪臭を治す。
乙字湯の適応する体質(痔など)は「神経質」が必要、加味逍遥散はイライラで発症する症状に適応する(痔など)。
加味逍遥散は肝胆経に沿った部分に、腫塊を生ずることがあり脇下の腫塊を目標に慢性肝炎に使用される。
逍遙散は、のぼせにも冷え症気味にも使える。
軽い肝火上炎は加味逍遙散を使うが強い冷え症には使わない。
強い肝火上炎に竜胆瀉肝湯:肝火の病証中に上部にあらわれた熱象。頭痛眩暈・耳聾耳鳴・眼紅痛・煩躁して怒りっぽい・不眠・嘔吐・吐血・鼻血・舌黄苔・脈弦数:更年期障害などで、軽症には加味逍遙散。
加味逍遙散には、月経を調整する作用のあることから、不妊症にも応用される。
加味逍遙散・当帰芍薬散の淋証の場合はストレスによる膀胱の疏泄失調で炎症が生じる膀胱炎や尿道炎にあたる。(尿中は無菌性が多い)。
淋証:膀胱炎の症状:気淋(気鬱)・血淋(血尿)・膏淋(にごり)・労淋(疲労で痛む)・石淋(尿結石)など五淋。
当帰芍薬散はもともと「冷えと湿気とストレスをとる薬」なので、寒湿と肝鬱の症状を同時に取る薬なので、寒湿下痢に使う。
寒湿の処方:平胃散・胃苓湯・胃苓湯合桂枝加朮附湯・当帰芍薬散・真武湯・苓姜朮甘湯・八味丸合苓姜朮甘湯・五積散・五積散合平胃散・釣藤散合平胃散・蠲痺湯・当帰四逆加呉茱萸生姜湯・鶏鳴散・独活寄生湯。
加味逍遙散:腸管の痙攣は痔核の原因ともなる。精神的なストレスが加わると痔核が脱出し、痙攣性の疼痛を訴える:加味逍遙散:ゴルフで緊張し疲労すると痔核が脱出する。
加味逍遙散では、精神的なストレスが亢じてくると口内や舌に糜爛を生ずる。なおりにくい歯齦炎・口内炎・舌炎など口腔内炎症などに。舌は心の症状なので、加味逍遙散合帰脾湯・加味逍遙散合天王補心丹。
帰脾湯:気血双補・補脾・養心安神・摂血:黄耆2 人参3 白朮3 当帰2 茯苓3 竜眼肉3 酸棗仁3 遠志2 炙甘草1 木香1 大棗2 生姜1g:不安感のある気血両虚・心脾両虚。
ストレスによっておこる肝鬱下利には、大柴胡湯・加味逍遥散・逍遙散・当帰芍薬散・真武湯を使う。
肝炎の留守番処方:加味逍遙散加田七(怠ければ補中益気湯・食少なら六君子湯・心下痞硬なら大柴胡湯・黄疸で尿黄なら茵蔯蒿湯)
茵蔯蒿湯は、「茵蔯蒿+山梔子」を用いて黄疸を治す:清熱利湿・退黄:
茵蔯蒿4 山梔子3 大黄1g。
加味逍遙散は気滞が生じても小便は近くならないが、イライラで冷えると小便が近くなる人は当帰芍薬散を使う。頻尿でバス旅行が出来ない人には当帰芍薬散合真武湯・当帰芍薬散加附子・当帰芍薬散合補中益気湯
当帰芍薬散:肝血虚・脾虚湿滞:当帰3 白芍4 白朮4 茯苓4 沢瀉4 川芎3:過敏性大腸炎:真武湯も適用:当帰がもたれる脾虚の人もいる。
鼻血(衄血じっけつ)の中には、イライラとのぼせを訴えるものがある。加味逍遥散の適応である。
加味逍遙散は、のぼせがある人の褐色斑・黒斑にも有効である。そこで、加味逍遙散はリール黒皮症などにも応用される。
肝陽上亢:天麻鈎藤飲・加味逍遙散・柴胡加竜骨牡蠣湯・抑肝散。
肝経湿熱には竜胆瀉肝湯で、軽症には加味逍遙散を使う。
若い女性の原因不明の潮熱:加味逍遙散・柴胡桂枝湯が適応する。
気虚発熱には補中益気湯・疲労発熱には小建中湯。
小建中湯:肝胃陰虚の者が寒邪の侵襲を受けると(カゼをひくと)お腹が痛くなり動悸がする時には小建中湯を使い、それで治らない人は小柴胡湯を使う(傷寒論)。
加味逍遙散、大柴胡湯を使う時の両者の鑑別は、みぞおちを抑えるとつかえた感じの心下痞硬がある時は大柴胡湯を使う。加味逍遙散には心下痞硬は無い。
加味逍遙散には心下痞硬は無いが、大柴胡湯には心下痞硬が有る。
月経の血塊は瘀血だけの症状ではなく加味逍遥散の熱状でも生ずる。
産後に乳汁が出ていたのに、精神的なトラブルから急に出なくなることがある。これも、肝気鬱結による、疏泄失調であるので加味逍遙散の適応。
月経時浮腫:当帰芍薬散に五苓散を合方する;加味逍遙散合五苓散も適応。五苓散だけでは、肝鬱のからむ浮腫に対処できない。
五苓散の、口渇・小便不利・水逆・自汗は、すべて痰飲が原因である:利水滲湿・通陽・解表:解表剤なので風邪薬でもある。
乳汁が漏れて困るということもある。これも、疏泄失調で加味逍遙散の適応である。(或は、気虚で乳汁が漏れる場合は補中益気湯)。
大黄剤(大黄甘草湯など)などを加味逍遥散証の痙攣性の便秘に服用すると、かえって便秘したり、下利が止まらなくなり、お腹が痛くなる。
大腸の湿熱による痔の場合には、乙字湯の適応であるが、加味逍遙散のような痙攣性の痔核には乙字湯は不適である。
淋証:加味逍遙散証・当帰芍薬散証の膀胱炎などは、精神的なストレスで熱を生じて淋証を発症しあるいは加重する神経性膀胱炎である(尿中に細菌が検出されない)。
膀胱炎・淋証の常用方剤は・・猪苓湯・当帰芍薬散・苓姜朮甘湯・五淋散・八正散・補中益気湯・加味逍遙散・八味丸・知柏地黄丸・牛車腎気丸・清心蓮子飲など。
八正散はっしょうさん(木通、車前子、萹蓄へんちく、瞿麦くばく、滑石、甘草、大黄、山梔子)。
気滞による肥満は脇腹を中心に肉がついていてバンドから肉がはみでる。臍を中心に太るのは脾胃が関係しているが、脇腹は肝に関係しストレスで太る。ストレス(気滞)で太る人は気滞を取り除くために、加味逍遙散、大柴胡湯を使う。
加味逍遙散は、牡丹皮+山梔子があるので熱状の強いものにつかうので、顔がのぼせ、面紅、目赤、易怒、手足の平が火照り、尿黄となる。熱状がなければ当帰芍薬散である。
気滞の一般症状:胸脇が脹って苦しい・イライラし顔が赤くぼせる・頭痛・眩暈・嘔気・胸焼・腹満して便秘・ゲップや放屁やため息がよくでる・脹痛が特徴・頭脹痛・胃脹痛・腹満痛・経前乳脹痛:加味逍遙散・四逆散。
四逆散:柴胡5 白芍4 枳実2 甘草1.5:肝鬱(ストレス)の基本処方。
一日に何度も周期的なのぼせと冷や汗は往来寒熱の症状だが加味逍遙散を使う。本来加味逍遙散は夕方になってのぼせる人に使い、発熱の型は潮熱であり1日1回である。
頭痛:苓桂朮甘湯は痰飲による包裹痛・包まれるような頭痛がでるが、加味逍遙散はストレスによる脹痛・脹ってくる痛みである。
骨折の刺痛:治打撲骨折方・温清飲合加味逍遙散、温清飲合少量の理気剤。
温清飲:万病回春:黄連解毒湯(黄連1.5・黄芩3・黄柏1.5・山梔子2)+四物湯(当帰4 白芍3 川芎3 熟地黄4)。黄連解毒湯の構成はすべて苦く体を冷やし乾かす薬物で、四物湯は体を潤し補血活血する。
温清飲:清熱瀉火・補血活血:虚熱証に使う処方で、最近は皮膚病にも使う。元来は崩漏や帯下がとまらない時使ってた:血虚・面色萎黄・皮膚乾燥・皮膚黄褐色で渋紙様・月経過多・崩漏・帯下が多い。
逍遥散や加味逍遙散は、肝鬱はあるが寒湿の症状はなく、寒湿の症状が入ってくると逍遥散・加味逍遙散では取れない」。
寒湿の処方:平胃散・胃苓湯・胃苓湯合桂枝加朮附湯・真武湯・苓姜朮甘湯・八味丸合苓姜朮甘湯・五積散・五積散合平胃散・釣藤散合平胃散・蠲痺湯・烏頭湯・当帰四逆加呉茱萸生姜湯・宣散寒湿・鶏鳴散・独活寄生湯。
月経不順に血虚があれば、加味逍遙散合四物湯。
胃腸が弱い場合は、加味逍遙散の量を少なくする必要がある。少なければ胃腸を丈夫にしてイライラもとれ、耳鳴りも治る。
イライラする人の耳鳴り・耳聾(難聴)は、竜胆瀉肝湯合大柴胡湯・竜胆瀉肝湯合小柴胡湯、女性は加味逍遙散、大柴胡湯、肝腎陰虚は杞菊地黄丸・滋腎通耳湯。
滋腎通耳湯:万病回春:明、龔廷賢きょうていけん、1587年:効能:補血、補腎陰(補腎精)、虚熱を清熱、通耳(耳の機能を改善)して肝血虚、腎陰虚(腎精不足)、肝腎陰虚による耳鳴・難聴・めまいを治す。
滋腎通耳湯:万病回春:龔廷賢:当帰、川芎、白芍、生地黄、知母酒炒、黄柏酒炒、黄芩酒炒、柴胡、白芷、香附子各等分。胸膈快ろしからざる(気滞による胸部不快感)には青皮、枳殻少し加える。
耳鳴り・耳聾:イライラする人の肝火上炎による耳鳴り・耳聾に竜胆瀉肝湯合大柴胡湯で代用処方が荊芥連翹湯女性は加味逍遙散か大柴胡湯。
肝腎陰虚:肝腎虧損:陰虚内熱の症状を呈し眩暈・頭脹・はっきり物が見えない、耳鳴・咽乾口燥・五心煩熱・遺精・不眠・腰膝酸疼・舌絳乾燥・脈弦細無力。
飲み過ぎて足のつる人、手足がつる人、どこかつって痛み体が怠くなる時は肝臓の症状である。軽い時は加味逍遙散で、熱状が強く出てくると大柴胡湯や竜胆瀉肝湯を使う。
進行性手掌角化症など(主婦湿疹、美容師の手荒れ)各種の慢性湿疹に加味逍遙散が適応する。
冷えを生じる気滞は肝に関係する(逍遥散で対処)が、飲食の不摂生で冷える物を摂りすぎる食生活で起こった冷え症の人は加味逍遙散では治らない。人参湯などを使う。
人参湯(理中湯):金匱要略:温中散寒・補気健脾:脾陽虚・胸痞:
人参3 乾姜3 白朮3 甘草3。
中風の原因となる肝陽上亢には加味逍遙散や逍遥散や当帰芍薬散・抑肝散加陳皮半夏を使う。
肥満に適応する加味逍遙散も大柴胡湯も肝臓の薬と脾の薬である。両者とも肝炎にも使用する。(肝炎の留守番処方:加味逍遙散加田七など)
逍遙上逆の往来寒熱は肝に関係するので加味逍遙散が適応。
ストレスによる痛みは噯気 げっぷや矢気オナラで一過性に軽減する。イライラが無い場合の腹痛もあるが、イライラしている腹痛は逍遥散や加味逍遙散で精神的な刺激で悪化する。
天王補心丹では のぼせだけで、陰虚のため冷や汗をかかないが、加味逍遙散や逍遙散は往来寒熱のため発汗後冷える。
少陽病の場合、邪気と正気の勢力は拮抗しているので、患者は発熱したり悪寒が交互に繰り返し生じたりする。このような状態を往来寒熱という。
乾燥性でかゆみが強い、かゆいからイライラするのか、イライラするからかゆいのか、といった状態に加味逍遙散が適応。加味逍遙散合四物湯
円形脱毛症:柴胡加竜骨牡蛎湯:疏肝清熱・潜陽安神:円形脱毛症に応用される:円形脱毛症;肝鬱が脱毛の原因なら加味逍遙散・大柴胡湯・柴胡加竜骨牡蠣湯・桂枝加龍骨牡蠣湯合四物湯。
粘稠で黄色い帯下も、肝胆経の湿熱の下注によるので、これにも加味逍遙散は使用される。柴胡加竜骨牡蛎湯:帯下にも応用される。
帯下:補中益気湯(脾気虚)、生理時の帯下に(痰飲)六君子湯や当帰芍薬散・参苓白朮散・柴胡加竜骨牡蠣湯(肝鬱・脾虚・固渋作用)・温清飲(血虚と全身・心身の化熱)・加味逍遙散・小柴胡湯合六君子湯・半夏厚朴湯・竜胆瀉肝湯・蓮鬚・龍骨+牡蠣・桂枝茯苓丸・小柴胡湯合六君子湯。
帯下:補中益気湯・六君子湯や当帰芍薬散・参苓白朮散・加味逍遙散・柴胡加竜骨牡蠣湯・温清飲・小柴胡湯合六君子湯・半夏厚朴湯・竜胆瀉肝湯・蓮鬚・龍骨+牡蠣・桂枝茯苓丸。
加味逍遙散の牡丹皮:苦辛微寒:清熱涼血・活血袪瘀・清肝瀉火。
加味逍遙散;白芍+白朮は腹痛の薬。柴胡+白芍は肝鬱の薬。芍薬甘草湯は急痛をとる。
肝気鬱結+梅核気:抑鬱感・胸脇苦満・脈弦+喉の梗塞感・咽中炙臠:降気化痰:半夏厚朴湯(理気化痰:半夏6 厚朴3 茯苓5 生姜4 紫蘇葉2)・加味逍遙散(疏肝解鬱・健脾補血・調経・清熱涼血)。
加味逍遙散は肝鬱イライラ感を疏肝補血し瀉火清熱する。
腋下は肝の症状の現れる場所である。
食欲が旺盛でない人の肥満はストレス(気滞)による肥満である:
加味逍遙散・大柴胡湯が適応する。
加味逍遥散:ヒステリーの火の対処に丹梔の加味は清熱袪瘀するので有効。
肥満に適応する加味逍遙散も大柴胡湯も肝臓の薬と脾の薬である。両者とも肝炎にも使用する。(肝炎の留守番処方:加味逍遙散加田七など)
肝陽上亢には加味逍遙散を使うが、実証にも虚証にも使える。つまりイライラが強い人の実証にも虚証にも使え、イライラして悪化する実証や疲れると悪化する虚証にも適応する。
肝気鬱結で、顔が赤く、目が充血し、逍遙上逆で顔がのぼせ、手足がほてる(手足が冷えない)は、加味逍遙散をつかう。
加味逍遙散は、脾虚があるため、食欲がなく、食後にお腹が脹り、疲れやすく、少し食べるとすぐに満腹になり、下痢しやすい。
加味逍遙散は、夕方になってのぼせる人(潮熱)に使う。
加味逍遙散:疏肝解鬱・健脾補血・調経・清熱涼血:気血両虚で肝鬱化火に適応・慢性の微熱。