2025/6/14~15
痔の口訣集
槐角丸:清熱止血・理気活血・風邪による痔は突然に出血や疼痛となる。
槐角:清熱涼血・止血:炎症・出血・血便。
防風通聖散:疏風解表・瀉熱通便:突然のジメジメした風湿熱の痔。
防風:袪風解表・袪湿解痙・止瀉止血:風邪の痔は突然に出血や疼痛。
乙字湯:大腸湿熱を清熱化湿・升提活血・神経質でジメジメした痔。
大柴胡湯::肝火上炎・心下痞硬・ジメジメしイライラした痔。
麻子仁丸:風燥の痔・カサカサした肛門の切れ痔:体を潤す下剤。
加味逍遙散:痙攣性の痔核・湿熱の痔:痙攣性の痔に乙字湯は不適。
通導散:理気活血・破血逐瘀・瀉下・瘀血の痔。
真武湯:肛門部がジメジメして寒いと悪化する痔。
当帰芍薬散:肛門部がジメジメして血虚で寒いと悪化する痔。
補中益気湯合真武湯・六君子湯合真武湯・人参湯合真武湯・参苓白朮散合真武湯:脾虚の脱肛で久病の腎虚には真武湯。
竜胆瀉肝湯・折衝飲・桂枝茯苓丸は:瘀血の痔(刺痛)に効果は薄い。
血府逐瘀湯:活血化瘀・通絡・理気止痛・補血:瘀血の痔。
大柴胡湯合桂枝茯苓丸:イライラした刺痛(瘀血)の痔。
大柴胡湯合血府逐瘀湯:イライラした刺痛(瘀血)の痔。
乙字湯合補中益気湯:「湿っている痔の脱肛」に乾かす作用がある。
帰脾湯:補脾・養心安神・摂血(痔の出血で食欲不振の時)
芎帰膠艾湯:血虚の痔の出血。
黄連解毒湯や三黄瀉心湯:「熱」「湿」の熱状が強い痔。
十全大補湯:痛みの無い、なかなか治らない痔・経前の外痔核。
平胃散:ジメジメした「湿邪」の痔は胃腸(大腸)から湿気を取り除く
風や風邪による痔は、突然に出血や疼痛が起きるが一般的には槐角丸や防風通聖散を使う。風によって起こったので防風を使う。
防風:セリ科防風の根:辛甘微温:膀胱肝脾経:袪風解表・袪湿解痙・止瀉止血:発汗・解熱・鎮痛:袪風の主薬で突然に生じる症状に使う:和食のつまに使用し突然の食中毒を防ぐ。
槐角丸:清熱止血・理気活血:槐角かいかく 地楡じゆ 当帰 防風 黄芩 枳穀:製品あり。
槐角かいかく:槐(エンジュ)の果実:清熱涼血:止血作用は槐花米(花蕾)より弱いが、清熱の力は強いので痔の炎症・出血・血便に用いる:槐角丸:清熱止血・理気活血:槐角 地楡 当帰 防風 黄芩 枳穀。
地楡じゆ:バラ科ワレモコウの根茎と根:苦酸微寒:肝大腸経:涼血止血・清熱収斂:血便・痔出血。
麻子仁丸:腸燥便秘・切れ痔・風燥の痔:肛門はカサカサの切れ痔に適応:麻子仁5(研末) 甜杏仁2 大黄4 枳実2 厚朴2 白芍2:肛門が湿っていれば乙字湯が適応し陰部の掻痒・悪臭を治す。
麻子仁丸は体を潤す下剤なので、(肛門がカサカサの切れ痔に適用)同じく大黄の入っている防風通聖散や大柴胡湯を切れ痔に代用すると、大黄の乾かす作用のために反って痔は悪化する。
「風燥」の痔は、風に関わるので突然発症するが、湿が無いので患部はあまり腫れず、風燥では肛門裂創(切れ痔)が起きるか皮膚皸裂が生ずる。大便は乾燥しコロコロには潤す麻子仁丸が適応する。
燥熱の便秘(切れ痔)にはうるおす麻子仁丸で1~2服で治るが、
燥熱や血虚の肛門裂創(切れ痔)に乙字湯を使うと、さらに水気をとって痔は悪化する。
便秘を伴う痹証:独活寄生湯合麻子仁丸又は蜂蜜を加える(潤腸通便・補中)。
乙字湯:大腸湿熱を清熱化湿・升提活血(脱肛):肛門は湿っている痔・陰部の悪臭や痒み:柴胡 升麻 炙甘草 大棗 生姜 黄芩 大黄:湿っている脱肛は乙字湯合補中益気湯・防風通聖散合補中益気湯。
乙字湯の適応する体質(痔など)は神経質が必要とされる、
加味逍遥散はイライラで発症する症状に適応する(痔など)。
乙字湯は必ず神経質な者の痔に使うと古典に書いてある。
神経質なので疏肝理気の柴胡が入っている。
乙字湯証は、大腸に湿熱があり、そのために痔核あるいは脱肛が生じたものに適応する。
乙字湯は神経質な者の軽い痔には効くが、劇的には効かない。
大腸の湿熱による場合には、乙字湯の適応であるが、
加味逍遙散のような痙攣性の痔核には乙字湯は不適である。
加味逍遙散:腸管の痙攣は、痔核の原因ともなる。精神的なストレスが加わると、痔核が脱出し、痙攣性の疼痛を訴える:加味逍遙散:ゴルフで緊張し疲労すると痔核が脱出する。
湿熱:粘稠で黄色い帯下も、肝胆経の湿熱の下注によるので、これにも加味逍遙散は使用される。
加味逍遙散は湿熱を冷やす作用がある。
粘稠で黄色い帯下も、肝胆経の湿熱の下注によるので、
これにも加味逍遙散は使用される。
血府逐瘀湯:活血化瘀・通絡・理気止痛・補血:生地黄4 桃仁4 紅花3 当帰3 赤芍3 牛膝3 柴胡2 枳穀2 桔梗2 甘草1:瘀血一般に繁用処方:瘀血の痔(通導散も)。
通導散:万病回春:理気活血・破血逐瘀・瀉下:当帰3 紅花3 蘇木2そぼく 木通3 大黄3 芒硝3 枳実3 厚朴2 陳皮3 甘草3:打撲・瘀血の腰痛・瘀血の痔・通導散:肝鬱で多食の肥満に効果がある。
実証の痔は「風熱」「風湿熱」によるものが多い。風邪フウジャなので突然発症し、患部が少し腫れ真っ赤で痛くて円座を使う拒按で、患部が湿潤し便秘気味には防風通聖散が適応。
「湿っている痔の脱肛」には乾かす作用がある乙字湯合補中益気湯を使う。
防風通聖散:疏風解表・瀉熱通便:体を冷まし体を乾かす作用があるので風湿熱の痔の炎症の熱を冷まし、湿った肛門を乾かす作用がある。
防風通聖散:疏風解表(カゼ薬)・瀉熱通便:風熱・突然生じる風湿熱の痔。
痔で注意すべき点は、防風通聖散を使って風湿熱を冷まさねばならない時に、温める作用の真武湯や人参湯を使うと一気に悪化する。
竜胆瀉肝湯は肝経湿熱に使うが、湿熱の痔にはあまり使わず、防風通聖散を使う。
痔で、体に冷えと湿気(寒湿)がある場合は、肛門部が少しジメジメして寒いと痔が悪化する場合は、真武湯を使う。
真武湯:温陽利水・回陽救逆:寒湿:附子1 茯苓5 白朮3 白芍3 生姜3g。
脾虚の脱肛は気虚であるが、一年以上続いた症状は久病となり気虚と腎虚となっているので、真武湯を合方する。補中益気湯合真武湯・六君子湯合真武湯・人参湯合真武湯・参苓白朮散合真武湯。
脾虚の腎虚に八味丸を使うと悪化するので、真武湯とする。
「寒湿」の痔は、寒さで悪化し、寒邪も湿邪も実証なので拒按で円座を使う。肛門周囲に湿り気があるので寒湿をとる真武湯をつかい、血虚があれば当帰芍薬散を使い、食欲不振の者には人参湯を使う。
当帰芍薬散:肝血虚・脾虚湿滞:当帰3 白芍4 白朮4 茯苓4 沢瀉4 川芎3:過敏性大腸炎・血虚の「寒湿の痔」:真武湯も適用:当帰がもたれる脾虚の人もいる。
当帰芍薬散:痔核・脱肛、痙攣性の痛み・淡紅の出血があり(色がポイント)(肛門)周囲に水のようなものが出る。(脾虚湿滞が原因:陰部症状は腎虚なので真武湯を合方:当帰芍薬散合真武湯)。
血虚の症状:面色淡白でつやがない、面色萎黄、頭暈、目花・目渋、舌質淡、脈細、口唇や爪が淡白、心悸、易驚、怔忡、不眠、手足のしびれ(麻木)・手足のつりや痛み:痔の出血色は淡い。
痔で、体全体に栄養失調状態の血虚症状のある時には、当帰芍薬散である。
麻子仁丸:腸燥便秘・切れ痔・風燥の痔:肛門はカサカサの切れ痔に適応:麻子仁5(研末) 甜杏仁2 大黄4 枳実2 厚朴2 白芍2:肛門が湿っていれば乙字湯が適応し陰部の掻痒・悪臭を治す。
帰脾湯は、機能性子宮出血、痔出血、血小板減少性紫斑病、過敏性紫斑症、血友病・白血病などの症状の者に用いる。また白血球減少や全血成分の低下に用いることができる。
「血虚のカサカサの痔」で食欲がなければ帰脾湯を使う。帰脾湯は気血双補・摂血の作用がある。
帰脾湯:補脾・養心安神・摂血:心脾両虚・心血虚・不安感・動悸・不眠・気血両虚を気血双補:黄耆2 人参3 白朮3 当帰2 茯苓3 竜眼肉3 酸棗仁3 遠志2 炙甘草1 木香1 大棗2 生姜1g。
補益心気(心気虚)の生薬:炙甘草・黄耆・党参・人参・桂枝。
竜眼肉:補心安神・補脾養血:心血虚の動悸。
酸棗仁:養肝・寧心・安神・斂汗・動悸。
遠志:安神・袪痰・消癰。
安神薬:竜眼肉・酸棗仁・遠志・人参・竜骨・牡蠣・茯苓・茯神・柏子仁・夜交藤・合歓皮・磁石ジセキ・朱砂・真珠・真珠母シンジュモ・紫石英・琥珀コハク・代赭石・浮小麦・石菖蒲・大棗・百合・桑螵蛸。
夜交藤(タデ科何首烏ツルドクダミの蔓茎:安神・養血活絡)。
養心安神薬の合歓皮:マメ科ネムノキの樹皮:甘平:心脾肺経:解鬱・活血・消腫・止痛:強壮・興奮・利尿・鎮痛作用:不眠・抑鬱・胸苦・食少など神経衰弱:合歓湯。
真珠・真珠末・珍珠・真珠層粉・珍珠層粉:ウグイスガイ科ままぐり類やアコヤ貝の病理産物の核の真珠。真珠層粉(貝殻の内側の薄層の真珠質):甘鹹寒:肝心経:安神定驚・清熱解毒・収斂生肌:精神安定・鎮痙:収斂生肌で、化粧クリームに配合される。
大柴胡湯や防風通聖散は、体の中から水気をとる作用があるので血虚や燥邪の切れ痔には逆に悪化する。切れ痔には潤す作用の麻子仁丸を使う
大柴胡湯はイライラした痔に応用される。(大腸湿熱も痔疾の原因)。
大柴胡湯では大便は秘結するが、やや粘性を帯び便器に便がこびりつく。
大柴胡湯:肝火上炎・肝気鬱結・胃実熱・心下痞硬に適応する:柴胡6 黄芩3 白芍3 半夏4 生姜4 大棗3 枳実2 大黄1(上腹部の脹り・苦満)。
痔の刺痛:大柴胡湯合桂枝茯苓丸:イライラが強く便秘気味で瘀血の刺痛の痔。
大柴胡湯:和解半表半裏・瀉下熱結・疏肝解鬱・理気止嘔・清熱瀉下:柴胡6 黄芩3 白芍3 半夏4 生姜4 大棗3 枳実2 大黄1g。
麻杏甘石湯:肺熱を冷まし清肺平喘・止咳(肺と大腸は表裏の関係で痔に適応する場合がある):麻黄4 杏仁4 生石膏10 生甘草2g。
麻杏甘石湯で痔が治る例がある。
熱状が強い痔で「風」「熱」「湿」の三つがあれば、防風通聖散だが、黄連解毒湯や三黄瀉心湯を使う場合もある。
黄連解毒湯や三黄瀉心湯は、「熱」「湿」の熱状が強い痔である。
通導散:打撲・腰痛・痔痛の通導散:理気活血・破血逐瘀・瀉下:当帰3 紅花3 蘇木2 木通3 大黄3 芒硝3 枳実3 厚朴2 陳皮3 甘草3:瘀血による腰痛・刺痛を呈する瘀血の痔。
通導散:万病回春:理気活血・破血逐瘀・瀉下:当帰3 紅花3 蘇木2そぼく 木通3 大黄3 芒硝3 枳実3 厚朴2 陳皮3 甘草3:打撲・瘀血の腰痛・瘀血の痔・肝鬱多食肥満:小承気湯と調胃承気湯を内包。
小承気湯:大黄2 枳実2 厚朴3(芒硝が無い)
調胃承気湯:熱結腸道の但熱不寒:大黄2 芒硝1 甘草1g。
気虚の痔核脱出には補中益気湯または補中益気湯合真武湯。
「湿熱」の痔は防風通聖散を使う。
防風通聖散:竜胆瀉肝湯は肝経湿熱に使うが、湿熱の痔にはあまり使わず、防風通聖散を使う。
食欲旺盛で食べすぎや辛い物・厚味の多食で肛門に熱をもちジクジクする痔に適用。
防風通聖散:脾虚気味で大黄で下利しやすい人は服用すると軟便が日に何度も生じる下利となる。量を少なめに調節する。
血虚の時の痔・冷えて痔になった時には、当帰芍薬散をつかう。
当帰芍薬散:肝血虚・脾虚湿滞:当帰3 白芍4 白朮4 茯苓4 沢瀉4 川芎3:過敏性大腸炎:真武湯も適用:当帰がもたれる脾虚の人もいる。
血虚の症状:面色淡白でつやがない、面色萎黄、頭暈、目花・目渋、舌質淡、脈細、口唇や爪が淡白、心悸、易驚、怔忡せいちゅう、不眠、手足のしびれ(麻木)・手足のつりや痛み:当帰芍薬散・四物湯。
折衝飲も瘀血の痔には効果が悪い。
瘀血の痔は桂枝茯苓丸では治らない。
桂枝茯苓丸は下腹部の瘀血・子宮の瘀血に使うがそれ以外ではあまり瘀血がとれないので血府逐瘀湯を使う。
脾虚の脱肛:真武湯:附子1 茯苓5 白朮3 白芍3 生姜3g。
血虚の痔の止血:芎帰膠艾湯で、食欲不振なら帰脾湯を使う。
血虚の痔:十全大補湯
特に女性に多い血虚の痔で、十全大補湯を使う場合は、食欲不振ではないが、生理前になると肝鬱血虚で外痔核が出てきて生理が終わると引っ込み、疲れると痛みがでてくる場合に十全大補湯を適用。
十全大補湯:気血両虚:動悸・不安感・不眠・疲れ易い・食欲不振。
577:虚証の痹証:気血両虚は、疲れると神経症やリウマチが悪化する。気血両虚は十全大補湯だがこれだけでは寒湿の邪に対応していないので効かない。十全大補湯合苓姜朮甘湯・独活寄生湯が虚証の神経痛に効く。
十全大補湯:気血双補・補腎陽・袪寒:四君子湯+四物湯+黄耆+桂枝(腎陽虚薬:肉桂):気血両虚の症状:筋の萎縮・四肢の無力・頭暈・目花・倦怠無力感・動悸・息切れ・自汗・盗汗・舌淡・苔少・脈微細。
血虚の外痔核で痛みがない場合に、肛門部にぽつんとできてなかなか治らない痔の場合は十全大補湯を使う。傷がなかなか治らない場合に十全大補湯を使うことと同様である。
血府逐瘀湯:活血化瘀・通絡・理気止痛・補血:生地黄4 桃仁4 紅花3 当帰3 赤芍3 牛膝3 柴胡2 枳穀2 桔梗2 甘草1:瘀血一般に繁用処方:瘀血の痔(通導散も)。
血虚のカサカサの痔で食欲がなければ帰脾湯を使う。帰脾湯は気血双補・摂血の作用がある。
ジメジメした「湿邪」の痔は、胃腸(大腸)から湿気を取り除く平胃散を使う。