2025/7/4
苓姜朮甘湯の口訣集
苓姜朮甘湯:心下悸し、小便自利し、腰中冷え、水中に坐すが如く、或は疼重して、形水状の如き者を治す。
「金匱要略」「その人身体重く腰中冷え 水中に坐するが如く」といい、「小便自利し飲食故の如し(脾虚はない)」といい、「腰以下冷痛し、腰重きこと五千銭を帯ぶるが如し」と、これらが苓姜朮甘湯の目標となっている。
苓姜朮甘湯に杏仁を加え、「腎著湯」と名づけ、妊娠浮腫し、小便自利し、腰髀ヨウヒ冷痛し、咳喘ある者を治す。
苓姜朮甘湯:袪湿散寒・止痛:寒湿の腰痛:
茯苓6 乾姜3 白朮3 甘草2g。
寒湿の足痛の治法は、温経散寒・袪湿し活血通脈する:当帰四逆加呉茱萸生姜湯:温経散寒・養血通脈、腹痛・嘔吐の強いもの:呉茱萸2 生姜4 当帰3 桂枝3 白芍3 細辛2 炙甘草2 木通3 大棗1。
腰痛とともに下肢の冷えがある場合は、苓姜朮甘湯は疎経活血湯に内包されていますが、さらに苓姜朮甘湯を合方する:疎経活血湯合苓姜朮甘湯。
「寒滞肝脈」には苓姜朮甘湯を使い、食少では人参湯、下利は真武湯、四肢痛や疝痛には当帰四逆加呉茱萸生姜湯:呉茱萸2 生姜4+当帰四逆湯:温経散寒・養血通脈、腹痛(疝痛)・四肢痛・嘔吐の強いもの。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯:温経散寒・養血通脈、腹痛嘔吐:
呉茱萸2 生姜4 当帰3 桂枝3 白芍3 細辛2 炙甘草2 木通3 大棗1g。
呉茱萸ごしゅゆ:ミカン科呉茱萸の成熟果実:辛・苦:大熱・小毒:温中散寒・散寒止痛(胃痛・頭痛)・下気止痛・止嘔:寒が中焦に凝集した症状に適応。
細辛さいしん:辛温:発散風寒・袪風止痛・温肺化飲。
温経湯の証は、衝任虚寒で瘀血阻滞の病理である:金匱要略:月経不調・逾期不至(閉経)・小腹冷痛・唇口乾燥(陰虚火旺)・手心煩熱(陰虚火旺)・久しく不孕フヨウ(不妊)。
苓姜朮甘湯・真武湯は寒湿の腹痛に使う。
苓姜朮甘湯・甘姜苓朮湯・甘草乾姜茯苓白朮湯:袪湿散寒・止痛:下焦の寒湿に適応:茯苓6 乾姜3 白朮3 甘草2:寒湿の腰痛・クーラーの冷え症(五積散も苓姜朮甘湯を含むので適用する)。
五積散:風寒湿・腰冷痛・腰腹攣急・上熱下冷(冷えのぼせ)・小腹痛。
寒湿が膝部に留まって気血を阻滞したために膝の腫脹と疼痛が発生する:苓姜朮甘湯・五積散や、腎虚があれば八味丸合苓姜朮甘湯・牛車腎気丸合苓姜朮甘湯・八味丸合五積散・牛車腎気丸合五積散合苓姜朮甘湯・疎経活血湯合五積散合苓姜朮甘湯合八味丸加附子。
五積散:太平恵民和剤局方(局方):風寒湿:半夏2 陳皮2 茯苓2 当帰2 蒼朮1 白朮2 白芍1 川芎1 白芷1 枳穀1 麻黄1 桔梗1 乾姜1 肉桂(桂枝1) 厚朴1 大棗1 炙甘草1g:構成生薬量が各々少ないので合方する:五積散合苓姜朮甘湯・五積散合芍薬甘草湯・五積散合八味丸・五積散合独活寄生湯。
苓姜朮甘湯加附子は、老人が小便失禁したり、腰腿沈重し冷痛を治す。男女とも遺尿が14,5歳まで止まない者を治す。
腰痛とともに下肢の冷えがある場合は、苓姜朮甘湯は疎経活血湯に内包されていますが、さらに苓姜朮甘湯を合方する:
疎経活血湯合苓姜朮甘湯。疝痛:当帰四逆加呉茱萸生姜湯合逍遥散。
苓姜朮甘湯の証は、腰以下が冷痛し腰重が主症で寒湿に属する証型である。「寒湿は下を傷り」腰に顕著であるので腰以下が冷痛し、冷えは水中に坐するが如きで、寒が一般に甚だしい。
575:苓姜朮甘湯:寒湿の邪の腰痛・神経痛などに使うが、食欲が無い人には使ってはいけない:「飲食故のごとし」と言っている。
583:八味丸は、陽虚で冷えがひどくなると足の裏が火照るが、疲れて陰虚になるから火照るのではない。同様の症状は、寒湿の邪の苓姜朮甘湯を使う様な時にも起こる。
581:腎陽虚と寒湿の神経痛:八味丸は附子の量が足らないので増量するが、腎陽虚に寒湿の邪が同時にある場合は、八味丸合苓姜朮甘湯としなければ片方だけではまったく効かない。
577:虚証の痹証:気血両虚は、疲れると神経症やリウマチが悪化する。気血両虚は十全大補湯だがこれだけでは寒湿の邪に対応していないので効かない。十全大補湯合苓姜朮甘湯或は独活寄生湯が虚証の神経痛に効く。
寒痰:苓姜朮甘湯:患部が重苦しく、取り除きたい感じで、起床時悪化する。痰飲があると起床時に悪化する。
苓姜朮甘湯・真武湯は寒湿の腹痛に使う。
574:寒湿の邪の処方:苓姜朮甘湯(真武湯は代用)は、朝晩ひえる季節に風呂上がりで汗ばんでいて肩を出して寝て、肩や首に風邪や冷えが入ると、寝違えや四十肩や五十肩や肘だけ重苦しくなる。
576:寒痰:苓姜朮甘湯:患部が重苦しく、取り除きたい感じで、起床時悪化する。八味丸は、下半身に効くが、胸から上の症状の五十肩などはほとんどとれないので、苓姜朮甘湯を使う(真武湯も使える)。
寝違え:疎経活血湯合桂枝加朮附湯(風寒湿邪)・疎経活血湯合桂枝湯(風寒)・疎経活血湯合葛根湯(風寒)・疎経活血湯合独活葛根湯(風寒湿邪)・苓姜朮甘湯(風湿)。
独活寄生湯:腎虚では寒湿邪が侵入しやすくこれにより疼痛が発症・悪化する。冬季の寒冷・エアコンの冷え(苓姜朮甘湯や五積散も)・寒冷環境の職場・水中作業・雨天時の労働・釣り・陰天時など。
独活寄生湯:千金方:袪風湿・散寒・補気血・益肝腎・活血止痛:独活2 防風2 桑寄生4 秦艽3 杜仲3 熟地黄5 白芍4 当帰3 牛膝3 川芎2 茯苓3 党参3 細辛1 肉桂0.5(沖服) 炙甘草1g。
寒湿の股陰痛:大腿内側に腫瘤・しびれ・疼痛・長引くと足甲部の浮腫や両下肢の脱力:
胃苓湯加桂枝附子地竜・苓姜朮甘湯・胃苓湯合桂枝加朮附湯。
寒滞肝脈の人の特徴3-3:手より下半身の方が冷え、全身の倦怠感で、小便は量多。面色萎黄で、温めても温まらないで冷え易く体が怠い:
苓姜朮甘湯を使い食少では人参湯、下利は真武湯。
下半身の冷え、痛みがひどい場合は疎経活血湯に芍薬甘草湯とともに苓姜朮甘湯を合方すればさらに効くようになります。疎経活血湯合芍薬甘草湯合苓姜朮甘湯。
苓姜朮甘湯:袪湿散寒・止痛:寒湿の腰痛:茯苓6 乾姜3 白朮3 甘草2:冷えは下半身にある:人参は無く、茯苓は小便を出して腰下半身を温める。
下肢の沈重感や水腫は寒湿の邪:疎経活血湯合苓姜朮甘湯で関節のむくみには疎経活血湯加薏苡仁・疎経活血湯合麻杏薏甘湯。
下肢の沈重感や水腫は寒湿の邪ですから、疎経活血湯に苓姜朮甘湯を合方します。特に関節のむくみには薏苡仁を加える。
クーラーにあたった時のだるさは苓姜朮甘湯・五積散を使う。
苓姜朮甘湯:寒湿の腰痛・クーラーの冷え・冷房病や冷えによる膀胱炎。
足が太くて冷える人には苓姜朮甘湯を使う。
痛み止めの使い分けは、五積散は「風寒湿」、麻杏薏甘湯は「風湿」、二朮湯は「痰湿」、三妙散は「湿熱」、独活寄生湯は「寒湿・気血両虚・腎虚」、苓姜朮甘湯は「寒湿」、桂枝人参湯は「風寒」。
寒湿の邪には苓姜朮甘湯を使うが、寒湿の腹痛の場合は真武湯を使う。
寒湿の腰痛には苓姜朮甘湯を使う。顔がのぼせる人の寒湿の腰痛は五積散を使う
五積散:風寒湿・腰冷痛・腰腹攣急・上熱下冷(のぼせ足冷)・小腹痛。
寒湿阻絡は湿熱の逆で、冷たい湿邪が体に特に下半身にたまる状態。主症状は腰、膝、足が冷えて重だるく痛む、膝や下肢の水腫となる。苓姜朮甘湯が適応する。
人参湯と苓姜朮甘湯は、人参と茯苓が入れ替わった構成になっている。
苓姜朮甘湯は基本は脾に作用するが、冷えは下半身・下焦にあり、下半身が冷えるだけで、下半身が水に浸かっているよう覚える。
膝痛の処方:八味丸・牛車腎気丸・真武湯・六君子湯・補中益気湯・桂芍知母湯・麻杏薏甘湯・防已黄耆湯・苓姜朮甘湯・独活寄生湯・苓姜朮甘湯合十全大補湯。