五苓散の口訣集

2025/7/5

五苓散の口訣集

五苓散:消渇、小便不利、或は、渇して水を飲まんと欲し、水入れば則ち吐す者を治す。

五苓散:利水滲湿・通陽・解表:茯苓5 猪苓5 沢瀉6 白朮5 桂枝3:五苓散を使用する原則は、口渇・小便不利・水逆・自汗で、すべて痰飲が原因である。解表剤(桂枝)なので風邪薬でもある。

「太陽病、発汗して後、大いに汗出で、胃中乾き、煩燥(煩躁)して眠るを得ず、水を飲むことを得んと欲する者、少々与えて之を飲ましめ、胃気を和せしむれば則ち愈ゆ。」若し脈浮にして、小便不利し、微熱ありて消渇する者は、五苓散にて主治す。

「中風(カゼをひいて)。発熱六七日、解せず而して煩し、表裏の証あり、渇して水を飲まんと欲し水入れば則ち吐す者は、「名づけて水逆と曰う」五苓散にて主治する。

口渇・多汗・小便不利は、小便のかわりに汗がでると考え、糖尿病に五苓散(自汗)の適応を考える。

五苓散:腎炎、ネフローゼ、膀胱炎、腎盂炎、偏頭痛、急性胃腸炎、糖尿病などに(口渇・小便不利が必要)用いるが、脾虚には参苓白朮散・六君子湯、腎虚には真武湯などを合方する。

五苓散合参苓白朮散

五苓散合六君子湯

五苓散合真武湯

五苓散の作用は、化気行水、通利小便であるから、およそ膀胱の気化作用が失調し、水飲内停して「小便不利」の者には、情況をみながらすべて五苓散を用いてよい。表証がなくても使ってよい。

五苓散の使用目標は、口渇・小便不利・水逆・自汗が条件で、痰飲の薬ではあるが、痰飲には余り使わない:利水滲湿・通陽(桂枝)解表(桂枝):茯苓5 猪苓5 沢瀉6 白朮5 桂枝3。

五苓散を糖尿病に用いるなら、口渇・小便不利・自汗がなければならない。

五苓散は、乳幼児の嘔吐に用いる場合が多い。風邪時に葛根湯などを用いて汗がでてから(自汗)、五苓散証になることが多い。腎炎、ネフローゼ、膀胱炎、腎盂炎、偏頭痛、急性胃腸炎、糖尿病などに口渇・小便不利の場合に使う。

陰嚢水腫には五苓散だけでなく加味逍遙散を併用しないと効果が薄い:五苓散合加味逍遙散・五苓散合桂枝茯苓丸。

204.浮腫と呼吸困難の腎炎の5歳の女児(五苓散)。「漢方診療三十年」大塚敬節

203.三叉神経痛の婦人(五苓散)。「漢方診療三十年」大塚敬節

230.腹痛に五苓散や茵蔯五苓散を腹痛に用いることがある。次の例は茵蔯五苓散を月経痛に用いて奇効を得た例。「漢方診療三十年」大塚敬節

230.「金匱要略」では、霍乱(吐いたり下したりする症状)に、五苓散を用いているし、先哲も「疝」の疼痛に五苓散を用いている。「漢方診療三十年」大塚敬節

221.呉茱萸湯証には一種の煩躁状態があり、みぞおちがつかえ、膨満し、吐くので、小柴胡湯、大柴胡湯、半夏瀉心湯、五苓散、茵蔯蒿湯などの証と誤ることがる。特に五苓散証との鑑別が大切である。「漢方診療三十年」大塚敬節

220.偏頭痛の場合は、五苓散、半夏白朮天麻湯、川芎茶調散、呉茱萸湯などがある。

205五苓散証では口渇のほかに、浮腫が現れたり、嘔吐をともなったり(水逆)、下利したり、頭痛を訴えたりすることがあるが、いずれしても尿量が減少しているという点が大切である(小便不利)。「漢方診療三十年」大塚敬節

203.村井琴山は、はげしい頭痛に、五苓散が効果があることをのべている。腎炎からくる頑固な頭痛が五苓散であっさりよくなることもある。「漢方診療三十年」大塚敬節

203.口渇、頭痛、小便不利を目標にして、五苓散を与えた。二日分でほとんど三叉神経痛の痛みがとれ、四日分で全治した。「漢方診療三十年」大塚敬節

201.ひどく暑い夏にのどが渇き尿量が減って、めまいのする47歳の男子(五苓散)。「漢方診療三十年」大塚敬節

163.桂枝人参湯、人参湯などでよく浮腫のくることがある。このような場合には、五苓散や真武湯などで、わけなく浮腫はとれる。「漢方診療三十年」大塚敬節

睾丸や陰嚢の腫大疼痛に加味逍遙散・桂枝茯苓丸に五苓散を合方。

真夏に暑い所で大汗をかいて冷水を多飲しても口渇が止まない「多尿」の人に白虎加人参湯は適応する。五苓散の三原則は口渇「小便不利」・水逆・自汗で、やはり夏に汗をかいて口渇の人に使うが「小便不利」の口渇に使う

白虎加人参湯・石膏知母加人参湯:清熱瀉火・生津止渇・補気:気分熱盛(陽明病経証):生石膏15 知母5 生甘草2 粳米8 人参3:

日射病・熱射病:熱感・口渇・多汗・多尿・息切れ・無力感。

生脈散:脈弱・脈結代の動悸・息切れ・汗をかいての夏バテ・倦怠感・不安感・恐怖感・虚煩、不眠、多夢、多汗、汗をかきやすい、寝汗、四肢のほてり、口乾、面白・顴紅、舌紅や舌尖紅、舌苔少苔光剥、脈細数。

胃中に水音(胃内停水)がある場合には平胃散に五苓散を併用する:胃苓湯。

疝せん:体腔内容物が外に突出する病証:ヘルニア・外生殖器の潰腫流膿・尿道からの敗精濁物・睾丸や陰嚢の腫大疼痛に加味逍遙散・桂枝茯苓丸に五苓散を合方。肝鬱の脹痛と痰飲による腫れ。

桂枝茯苓丸:活血化瘀:桂枝4、茯苓4、桃仁4、赤芍4、牡丹皮4。

補中益気湯加スイカが使えない夏バテ:汗がダラダラでていない、寝汗もかかない、下利もあまりひどくない時は五苓散や胃苓湯を使う。

夏バテ防止に平胃散合五苓散(胃苓湯):食欲不振・咽乾・怠い:五苓散も夏バテに使う:水飲の証に適応:口渇、小便不利、身体の沈重感、眩暈・浮腫・動悸・嘔吐・水を飲めば吐く水逆。

実際は浮腫に五苓散や胃苓湯を使うことは少ない。

浮腫は圧倒的に脾虚や腎虚が多いからである。

五苓散:口渇・小便不利・水逆・自汗・多汗:口の乾きのある蕁麻疹に茵蔯五苓散。

原末散を使う:かなりひどい発熱・口渇・水逆の症状には五苓散の原末散を重湯に溶かして一匙ずつ飲ませる。重症の場合は原末散を使う。

カゼの熱で水を欲しがるが飲むと水を吐く症状(水逆)に五苓散を重湯にとかしてひと匙ずつ与えると吐かなくなり熱も下がる。

消渇病に五苓散:口渇喜冷飲・「小便不利」・多汗。

大熱・大汗・大煩渇(口渇)・「多尿」で、痩せない糖尿病に白虎加人参湯。

消渇しょうかち・しょうかつ:多飲・多食・多尿を特徴とする病証。美味多食など飲食に節度がなく、或は感情の失調・労苦と安逸の節度がなく、臓腑燥熱・陰虚火旺をひきおこし、治療は滋陰・潤燥・降火の法。

糖尿病などを引き起こす。

五苓散:利水滲湿・通陽・解表・風邪薬でもある:

茯苓5 猪苓5 沢瀉6 白朮5 桂枝3g。

浮腫(肥満)と咽の渇き(口渇)があれば肥満には五苓散でよい。

口渇の肥満に五苓散。

月経時浮腫:当帰芍薬散に五苓散を合方する;加味逍遙散合五苓散も適応:当帰芍薬散合五苓散・加味逍遙散合五苓散・柴胡桂枝湯合五苓散。

月経前後の浮腫:加味逍遙散合五苓散。

肥満・下肢の浮腫:平胃散合二陳湯(平陳湯)・平胃散合小半夏加茯苓湯。苓姜朮甘湯・口渇の肥満に五苓散。

五苓散は小便を出そうと使っても反ってむくんでしまい、慢性腎炎につかうとほとんど悪化する。五苓散の使い方は、口渇があり、小便の出が悪い場合に適応。

慢性腎炎(小柴胡湯合五苓散・柴苓湯・参苓白朮散合真武湯が効く)は、五苓散だけでは治らない・悪化しやすい。脾虚や腎虚が背景にあるため。

五苓散は、効く時は劇的に効くが、効かなければまったく効かないしむしろ悪化し浮腫がひどくなる。慢性腎炎では尿蛋白は悪化し、発汗するので皮膚病がでる。発汗剤は皮膚病は悪化する。

五苓散:風邪薬でもある。使用目標:口渇・水逆(口渇して水を飲めば吐く)・小便不利:暑熱発汗の口渇に特効する。