2025/9/10
婦人科疾患の口訣集
婦人科疾患のすべては血を補うことが原則となる。
つまり四物湯をすべての方剤に入れる。
四物湯:血虚の基本方剤:当帰4 白芍4 川芎4 熟地黄4g。
月経の異常:月経の色・形状(血塊)・質(ベタベタかサラサラか?)・月経の量を弁別して対処する。
月経の特徴:月経先期(月経が早い)・月経後期(月経が遅れる)・月経先後無定期(月経が規則的に来ない)・月経量過多・月経量過少・閉経・月経痛のある人・月経痛のない人。
子宮:肝・脾・腎と密接な関係があり、さらに子宮に気血を流す衝任の脈がある。衝脈と任脈である。
衝脈は血海であり・任脈は胞胎を主り、ともに小腹からおこり、月経と密接な関係がある。
温清飲:虚熱証に使う。皮膚病にも使うが、元来、崩漏や帯下が止まらない場合に使っていた。
温清飲:万病回春:黄連解毒湯(黄連1.5・黄芩3・黄柏1.5・山梔子2)+四物湯(当帰4 白芍3 川芎3 熟地黄4)。黄連解毒湯はすべて苦く体を冷やし乾かす薬物で、四物湯は体を潤し補血活血する。
黒逍遥散:イライラが強い時の皮膚病薬。加味逍遙散合1/3四物湯。
気虚の婦人科疾患:月経の色は薄く、量は多くなり、早めに来る。気虚の「帯下色白」は、帯下の色は白く量は多くサラサラしている。六君子湯合四物湯(十全大補湯が近い処方)・補中益気湯を使う。
十全大補湯:気血両虚:動悸・不安感・不眠・疲れ易い・食欲不振:四君子湯+四物湯+黄耆・桂枝は腎陽虚薬:肉桂。
十全大補湯:和剤局方:人参2.5 白朮3.5 茯苓3.5 甘草1 当帰3.5 芍薬3 川芎3 熟地黄3.5 黄耆2.5 桂枝3g。経験・漢方処方分量集
帯下に補中益気湯・柴胡加竜骨牡蠣湯:生理時の帯下に六君子湯・当帰芍薬散。
独参湯:人参6~10g:中国では外科手術の前に出血過多の予防に朝鮮人参を飲ませる。
経血の質:月経の最初はベタベタし、後半にサラサラしていても、判別には月経の中間期の状態を確認する。本来はベタベタもサラサラもしない。
月経過期不止:月経がいつまでも終わらない状態。ダラダラと印程度の月経が続いている人は気虚で摂血できない状態で、経血の色は薄くなる。「血は気の母であり、気は血の帥である」ので、気虚は血虚でもある。
崩漏下血:経血の大量の出血をさし、淋瀝漏下は少量の出血である。
気虚の婦人科疾患:
「「少腹下墜」下腹部が下がるような感じで補中益気湯・補中益気湯合真武湯を使う。
「「陰挺不収いんていふしゅう」は子宮脱で、補中益気湯合真武湯・補中益気湯合八味丸。産後の子宮脱は血虚があるので当帰芍薬散合真武湯。
「妊娠転胞にんしんてんぽう」は妊娠中に尿量が止まったり、少なくて頻尿を呈することで原因は気虚である。
「産後胞衣不下ほういふげ」は胎盤残置である。
「産後小便失禁」で産後に小便が漏れてしまう人は、
補中益気湯・補中益気湯合当帰芍薬散・補中益気湯合真武湯である。
血虚の婦人科疾患:経血の色は薄く、黄色い水のようで、量少・先期・閉経で、腹痛はジワジワと綿々と続き、血の不足なので揉んだり触ったりすると楽になる喜按である。胎児が育たないで流産する傾向がある。
流産癖:当帰芍薬散を使う:妊娠するが、すぐに流産するものは血虚であり気虚ではない。血虚では産後、眩暈・痙攣・便秘を起こし易い。
つわり:ストレスがあると気滞が生じ月経がスムーズに生じない。たとえば月経があったと思ったら止まり、また始まるなどの状態で、下腹部が脹って痛む。
つわり:ストレスがあり気滞があると月経は先後無定期となり、帯下が黄白色でベタベタしている。また妊娠中は瘀阻にかかりやすく、産後は腹痛を患いやすい。
瘀血による婦人科疾患:月経前や月経開始初期に絞痛の腹痛が生じ瘀血は実証なので拒按となる。経血は青味をおびた黒塊があり、血塊が下ると痛みは軽減する。人により閉経や子宮筋腫があり、産後は眩暈や悪露下らずとなる。
婦人科疾患の処方:
婦人科疾患の処方:血虚の場合:四物湯あるいは十全大補湯。
婦人科疾患の処方:気鬱の場合:加味逍遙散・黒逍遥散・当帰芍薬散。
婦人科疾患の処方:イライラが強い場合:竜胆瀉肝湯(肝経湿熱)は黄色い帯下・陰部掻痒証(乙字湯も)・陰部のしこり。
婦人科疾患の処方:瘀血の場合:桂枝茯苓丸・桃核承気湯・血府逐瘀湯・折衝飲・温経湯・少腹逐瘀湯・下瘀血湯。
折衝飲:活血化瘀・理気止痛:桃仁5 紅花2 丹皮3 当帰5 赤芍3 川芎3 桂枝3 牛膝3 延胡索3:心筋梗塞痛・瘀血の腰痛・足痛・夜中の腹痛や心臓痛・月経痛。
温経湯:下焦虚寒・血行不利・血瘀・血虚・酷ければ陰虚火旺の唇焦:温経補虚、活血行瘀法:呉茱萸3 桂枝3 当帰4 白芍6 川芎3 丹皮2 人参3 甘草2 阿膠珠4 麦門冬3 半夏4 生姜3g。
桂枝茯苓丸は、子宮筋腫のときだけ適用するが劇的には効かない。長く飲むと少しずつ効く程度で、子宮筋腫には少腹逐瘀湯や下瘀血湯が必要となる。
少腹逐瘀湯:医林改錯:肝寒凝滞、気滞血瘀、子宮筋腫、疼痛或は不痛、疼痛も積塊無し或は少腹脹満、腰酸少腹脹:小茴香3 炮姜2 肉桂2 当帰3 川芎2 赤芍3 五霊脂3 蒲黄3 没薬2 延胡索2g。製品無し。
下瘀血湯:金匱要略:破血逐瘀:陳旧性の血瘀を去る:大黄9 桃仁6 䗪虫9gの粉末を丸とし、1日1回1gずつ服用:補益性は無い。製品無し。
䗪虫しゃちゅう・土鱉虫どべっちゅう:ゴキブリ科シナゴキブリの雄の乾燥成虫:鹹寒有毒:肝経:破血逐瘀・行血・和血。
当帰芍薬散には、瘀血を治す作用はほとんどない。
月経の血塊:「血瘀の血塊」は色が青味を帯びた、紫がかった塊で足に青い筋の静脈瘤が出てくる。「気鬱の血塊」では、気滞が生じ塊ができやすくなり色が暗紅色となり紫ではない。冷えでも暗黒色の血塊ができる。
気鬱のあざ:気鬱では、ぶつけた憶えが無いのに腕・足にあざができるのはすべて気鬱であり半夏厚朴湯・逍遥散・当帰芍薬散を使う。
帰脾湯のあざは、心脾両虚が原因で気鬱ではない。
「痰湿」の不妊症:一般には二陳湯・平陳湯。食少で嘔気など胃症状には苓桂朮甘湯合半夏厚朴湯。痰湿の不妊症:胃症状がなく下半身の怠さだけなら当帰芍薬散を使うが気鬱や痰湿・血虚にもつかえる。
二陳湯:燥湿化痰:半夏5、陳皮4、茯苓5、生姜1、甘草1:痰飲の基本処方。
当帰芍薬散:肝血虚・脾虚湿滞:「冷え」と「湿気」と「ストレス」に対応:当帰3 白芍4 白朮4 茯苓4 沢瀉4 川芎3:過敏性大腸炎(真武湯も適用):川芎・当帰がもたれる脾虚の人もいる。
「虚寒証」の婦人科疾患:経血は黒っぽくサラサラ(熱はベタベタ)・下腹は冷痛し喜暖喜按・月経後期気味で下腹部や陰部は冷感・帯下は白くサラサラし生臭くで不妊症になりやすい:八味丸・真武湯・人参湯合四物湯・小建中湯合四物湯。
「実寒証」の婦人科疾患:寒帯肝脈と同じ当帰四逆加呉茱萸生姜湯を使う・経血は暗黒色でべたつき塊になり下腹部が冷痛で拒按で喜暖。月経閉止か子宮筋腫になり易く術後は癒着し易い。大建中湯・当帰四逆加呉茱萸生姜湯。
「虚熱証」の婦人科疾患:疲労でのぼせ手足はほてり・経血は赤く少量でベタベタし臭いは無く下腹部は熱痛・月経先期か印程度が止まらない。吐血・鼻血・便血になり易く帯下は黄色くベタベタ:温清飲・加味逍遙散。
不正出血で真っ赤な出血があるときは、血熱なので温清飲を使う。
温清飲:月経異常や帯下に使うが、その外は疲れると精神不安が出る場合、月経異常では手足が火照る場合や顴紅が生ずる人に使う。
「実熱証」の婦人科疾患:月経色は濃いか赤紫色でやや青味。量多でべたつく。周期が異常に早く、期間が異常に短い。月経量は多く大量の不正出血も起こる:三黄瀉心湯・黄連解毒湯で四物湯は加えない。
「湿熱証」の婦人科疾患:月経が極めて早く量多。経血はべたつき黄色い滓が混じる。帯下は黄白色で臭穢シュウエ。外陰部(陰戸)に灼熱感や痒み。妊娠中は少量出血(胎漏)や流産し易い:湿熱は竜胆瀉肝湯を使う。
不妊症や流産癖:流産癖は湿熱か血虚で、不妊症は痰湿か虚寒証や腎虚で生じる。