2025/10/20
乙字湯の口訣集
勿誤薬室方函口訣:浅田宗伯:乙字湯は、諸痔疾、下血し鮮やかな出血、脱肛は痛楚甚だしく、あるいは前陰痒痛し心気定まらざる者(神経質な者)を治す。升麻は古より犀角の代用にして止血の効あり。乙字湯は甘草を多量にせざれば効なし。
乙字湯:原南陽:大腸湿熱を清熱化湿・升提活血:肛門は湿っている痔・陰部の悪臭や痒み:柴胡 升麻 炙甘草 大棗 生姜 黄芩 大黄:湿っている脱肛は乙字湯合補中益気湯・防風通聖散合補中益気湯あるいはさらに腎虚なら合真武湯。
乙字湯:「柴胡+升麻」で疏肝・升提・湿熱清解し痔核を引き上げ、
「黄芩+大黄」で瀉火燥湿し冷やし乾かす作用:肛門はしめっている。
乙字湯は必ず神経質な者の痔に使うと書いて有る。神経質なので疏肝理気の柴胡が入っている。
乙字湯は、大腸に湿熱がありそのために痔核あるいは脱肛が生じたものに適応する。乙字湯は神経質な者の軽い痔には効くが、劇的には効かない:肛門は湿っている・陰部の悪臭・掻痒症がある。槐角丸。
槐角丸:清熱止血・理気活血:槐角かいかく 地楡じゆ 当帰 防風 黄芩 枳穀。
槐角かいかく:槐(エンジュ)の果実:清熱涼血:止血作用は槐花米(花蕾)より弱いが、清熱の力は強いので痔の炎症・出血・血便に用いる:槐角丸:清熱止血・理気活血:槐角 地楡 当帰 防風 黄芩 枳穀。
地楡じゆ・ちゆ:バラ科ワレモコウの根茎と根:苦酸微寒:肝大腸経:涼血止血・清熱収斂:血便・痔出血。
湿が熱より重く、肛門がじゅくじゅくして実熱で灼熱疼痛する者に、乙字湯はすこぶる良い効果がある。
肝胆経に湿熱(肝経湿熱)があると、陰部に湿潤・糜爛・発赤・熱感、しこり、が生じる。そこで、加味逍遙散・竜胆瀉肝湯は陰部掻痒症に使用される(乙字湯の大腸湿熱も陰部の悪臭や陰部掻痒症に適応する)。
陰部掻痒症・陰部悪臭:乙字湯(大腸湿熱)・加味逍遙散(肝経湿熱)・竜胆瀉肝湯(肝経湿熱)・三黄瀉心湯(胃火・清熱瀉火)。
「柴胡+黄芩」は肝胆経の湿熱に適用する。そこで、前陰部の掻痒・陰部の悪臭に乙字湯は応用される。
竜胆瀉肝湯:肝経湿熱:疏肝解鬱・瀉火・利湿・補血:竜胆草 柴胡 黄芩 山梔子 木通 車前子 沢瀉 当帰 地黄 甘草。
麻子仁丸:腸燥便秘・切れ痔・風燥の痔:肛門はカサカサの切れ痔に適応:麻子仁5(研末) 甜杏仁2 大黄4 枳実2 厚朴2 白芍2:
肛門が湿っていれば乙字湯が適応し陰部の掻痒・悪臭を治す。
麻子仁:大麻の成熟果仁:甘平:潤腸通便・滋陰潤燥:気虚の便秘・腸燥便秘・コロコロ便・肛門が乾燥した切れ痔:炙甘草湯に配合し便通促進は瘀血を去る。乙字湯:大腸湿熱で肛門は湿っている。
乙字湯の適応する体質(痔など)は神経質が必要、
加味逍遥散はイライラで発症する症状に適応する(痔など)。
防風通聖散:口渇・便秘・肥満・食欲旺盛・蓄膿症・湿った肛門の痔:防風通聖散・乙字湯で、湿っている脱肛は乙字湯合補中益気湯・防風通聖散合補中益気湯。
防風通聖散:疏風解表・瀉熱通便:当帰 芍薬 川芎 山梔子 連翹 薄荷 生姜 荊芥 防風 麻黄各1.2 大黄1.5 芒硝1.5 甘草 桔梗 白朮 黄芩 石膏各2 滑石3:便秘・肥満・糖尿病・蓄膿症・中耳炎。
調胃承気湯:熱結腸道の但熱不寒:大黄2 芒硝1 甘草1g。
湿った肛門の痔:乙字湯・防風通聖散。
湿っている「脱肛」は乙字湯合補中益気湯・防風通聖散合補中益気湯・乙字湯合補中益気湯合真武湯・防風通聖散合補中益気湯合真武湯。
大腸湿熱:口乾・口苦、食欲不振、胸脘痞悶、悪心嘔吐、食少で腹が脹る、排便はスッキリしない。便臭は穢臭えしゅう。肛門は腫れて硬く疼痛がある。小便短赤または混濁:乙字湯・防風通聖散。
加味逍遙散のようなイライラによる「痙攣性の痔核」には乙字湯は不適である。
加味逍遙散:肝鬱化火(丹梔)・血虚・脾虚・湿邪:柴胡3 芍薬3 当帰3 白朮3 茯苓3 牡丹皮2 山梔子2 乾姜1 甘草2 薄荷1(人参・大棗が無いのは化火を増悪させるため)。
逍遙散:肝気鬱結・血虚・脾虚・湿邪:衝任不調:人参と大棗は無い。柴胡3 白芍3 当帰2 白朮3 茯苓3 生姜3 炙甘草2 薄荷1g。
当帰芍薬散の病態は、肝血虚・肝気鬱結・脾虚湿滞などからなり、意外に複雑である。したがって本証の患者の訴えも一様でない:当帰3、白芍4 白朮4、茯苓4、沢瀉4、川芎3g:「当帰+芍薬」で痛みやイライラをとる。
苦参:マメ科クララの根:苦寒:心・肝・小腸・大腸・胃経:清熱燥湿・袪風殺虫・利尿:陰部掻痒症(乙字湯)に洗浄用(苦参は猛烈に苦い・蛇床子煎剤の外用も)。
蛇床子じゃしょうし・蛇床:セリ科オカゼリの成熟果実を乾燥したもの:辛苦温:腎経:温腎補陽・燥湿殺虫:抗真菌・EDには巴戟天・淫羊藿・菟糸子などの温腎補陽薬を配合する:1~3g。
乙字湯証の便はベットリと粘り、トイレットペーパーでふき取りにくい。さらに、排水後も、便器にこびりついている。
乙字湯は湿気がありジトジトした実熱の便秘を乾かす薬である。
三物黄芩湯:金匱要略:黄芩3 苦参3 干地黄6:陰虚火旺:手掌・足心の四肢煩熱、アトピーの乾燥・掻痒・紅潮、乾癬、白癬、トリコモナス陰部の掻痒(乙字湯)、心煩、不眠、頭痛、ほてり、寝汗。
乙字湯は陰部の悪臭やひどい痒みにも適応。
乙字湯:大腸湿熱を清熱化湿・升提活血:神経質な人の痔や実熱の便秘薬:肛門の乾燥した切れ痔にはさらに乾かすので不適。
燥熱の便秘には麻子仁丸で1~2服で潤せば治ってしますが、燥熱や血虚の肛門裂創に乙字湯を使うと、さらに水気をとって悪化する。
乙字湯は、柴胡も升麻も黄芩も入っているので、イライラも取り、痔を上に引き上げる作用(柴胡+升麻)も多少あるので、神経質でひどくない内痔核程度で、突然起こったものでもないのが原則。
実熱の便秘(乙字湯証)は、燥熱の便秘(麻子仁丸)とは違い、乾燥状態がないから兎糞状にはならずベタベタし、咽乾もないという二点で異なる。
女性の陰部の悪臭や陰部の掻痒に乙字湯・三黄瀉心湯が適応。