2025/11/15
天南星
天南星は、二朮湯や清湿化痰湯・定癇丸に配合されている。
二朮湯:万病回春:袪風湿・化痰:痰迷心竅:半夏2 陳皮1.5 天南星1.5 甘草1.5 茯苓1.5 蒼朮1.5 白朮 香附子1.5 黄芩1.5 威霊仙1.5 羗活1.5 生姜3g: 経験・漢方処方分量集。
清湿化痰湯せいしつけたんとう:寿世保元:天南星3 黄芩3 生姜3 半夏4 茯苓4 蒼朮4 陳皮2.5 羗活1.5 白芷1.5 白芥子1.5 甘草1.5:背の一点が寒い・肋間神経痛。
定癇丸:滌痰熄風、開竅定癇:淡竹瀝3~5 菖蒲4 陳胆星(古い胆南星)3~4 製半夏3 天麻3 全蝎粉0.5~1(分服) 白僵蚕2~3 茯神3 遠志3g。
天南星てんなんしょう:辛温有毒:肺肝脾:散結消腫・外用は癰腫、蛇虫の咬傷。
驚気丸:蘇子 鉄粉 木香 白花蛇舌草 僵蚕 橘紅 天麻 南星 全蝎ぜんかつ 氷片(竜脳) 麝香 朱砂。
天南星:胆南星:熄風解痙・化痰:天南星を豚の胆汁で煮て修治、あるいは生姜とともに煎じて毒性を緩和する:痙攣と痰飲を治療する。
口眼喎斜に半夏白朮天麻湯・半夏白朮天麻湯加天南星白附子・牽正散。
牽正散:白附子・白僵蚕・全蝎:寒性の風痰の口眼喎斜に用いるが気虚血瘀や肝風内動(脳卒中)の口角歪斜や半身不遂の証候には牽正散は適応しない:寒性の風痰の口眼喎斜にはむしろ半夏白朮天麻湯が適応する。
半夏白朮天麻湯:化痰熄風・補気健脾・利水消食:製半夏3 天麻2 白朮3 人参2 黄耆2 茯苓3 沢瀉2 蒼朮3 陳皮3 神麹2 麦芽2 黄柏1 乾姜1:脾気虚の痰濁上擾。
寒邪が強い四肢疼痛に小活絡丹:天南星 川烏頭 草烏頭 地竜 乳香 没薬。
小活絡丹の川烏と草烏は温経散寒と除湿の力はすこぶる強く、寒湿の病に特によく効く。さらに南星(天南星)は袪風袪痰に効き、乳香・没薬は活血通絡し、地竜はもっとも血に入り通絡の良品である。
滋陰寧心湯:養血緩肝・化風痰(癲癇など):当帰・白芍・川芎・熟地黄・人参・茯神・白朮・遠志・天南星・酸棗仁・甘草・黄連・生姜:心肝血虚に適応する・血虚の癲癇。
天南星:袪風痰に用いる。風寒痰湿が経絡を阻滞し、眩暈・顔面神経麻痺(牽正散・半夏白朮天麻湯)・半身不遂・手足痙攣・牙関緊急(脳卒中・破傷風・癲癇)に用いる。脳卒中の運動麻痺には製南星がよい。
導痰湯:竹筎温胆湯加天南星(天南星は単味がある)。
風痰(癲癇発作)に導痰湯合玉屏風散:竹筎温胆湯加天南星合玉屏風散。
五生丸:天南星 川烏頭 白附子各一両 大豆(去皮)二銭五分。生を細末として水にて丸とす。毎服三丸から五丸。七丸を越えず。生姜湯で服す。
白附子は辛散、袪風化痰で、特に頭面の風を去り・顔面のひきつれ・痙攣を治すが温燥に偏っているので、寒性の風痰に適応する:白附子、天南星は生のままを用いるが毒性があり、過量をしてはいけない。
破傷風に五虎追風湯:五虎追風散:史伝恩家伝方:袪風止痙:蝉退10 製南星2 天麻2 全蝎2~3 白僵蚕2~3:袪風止痙薬のみからなり、玉真散より止痙にすぐれている。
痰飲を取る:基本処方は二陳湯、半夏5、陳皮4、茯苓5、生姜1:桂枝+茯苓+白朮、天南星。
眩暈がつよい場合には熄風化痰の白僵蚕・胆南星を加える。
神農本草経:天南星:苦温、寒熱結気(気が鬱した病態)、積聚伏梁(腹部の塊、腫れ)、傷筋萎拘緩(筋肉が萎縮、突っ張っている状態)を治す。水道を利す。
名医別録:漢代:天南星:微寒:大毒有り・陰下の湿、風眩(風邪によるめまい)を除く。
本草綱目:明:天南星:味辛にして散、故によく風を治し血を散ず。気は温燥、故によく「勝湿除涎」す。性質は緊にして毒、故によく「攻積抜腫」す。口歪舌糜を治す。
新編霊宝薬性能毒:江戸:曲直瀬玄朔:天南星:下部には黄柏を佐薬とする。雄黄、丹砂、焔消の毒を伏す。血気心痛を治す。味辛く散する故に血気聚(あつまり)痛むを治し、その性は燥す故に痰涎心痛を治す。その性質は緊(きびし)く毒ある故に積聚を攻め腫気を消す。
増補能毒:江戸:長沢道寿:天南星:苦辛平:上焦の痰を去り気を下し胸中を快くす。眩暈驚癇に。上焦の痰を去る。但し上焦の痰も燥証あらば忌むべし。風痰の本薬なり。湿痰に半夏、熱痰に黄芩などと云うがごとし。
本草辨明:江戸:林貞亮:天南星:苦温大毒:よく風を治し血を散ず。湿に勝ち痰を除く。積をぬき腫れを攻め、肝風虚を補い、肝脾肺三経の薬。湿痰驚癇風、身強ばり、口噤、喉痹舌瘡結核結気癰毒疥癬蛇虫咬毒を治す。水を利し胎を堕胎す。陰虚燥痰には用いるを禁ず。
李時珍は、「虎掌コショウとは、天南星の葉の形が虎の掌に似ているからの名である。天南星とは、根の形が丸く白く、南の空の竜骨座のカノーブス(南極老人星)の形に似たことからの名である。両者は同じ。
天南星の修治
天南星を白礬と生姜で煮つめて修治すると製南星(製天南星)。
天南星を牛の胆汁で製したものが胆南星(胆星)
修治しないものは生南星で毒性が強く、化膿症の疼痛や打撲傷に外用。
天南星の雑質を除いて洗浄し乾燥したものは生天南という。
マムシグサは天南星の基原植物の一つである。