体のあちこちが痛くなったり、炎症がおきたりするのは、肝の昂ぶりによって、ストレスの経絡上(足の厥陰肝経の経絡・足の少陽胆経)に経絡の流れが悪くなるために炎症や腫れや痛みがあちこちに生じるからです。疏通させることが大切。
「通ぜざれば則ち痛む}という病理観が漢方にはあります。
ストレスから逃げることも必要。家庭内や職場内にストレスがあると完治は難しく、漢方薬を飲みながら症状を緩和し、軽い運動を併用して、時間が解決してくれるのを待つ、あるいは、リウマチ気質の改善という自己変革をめざすことが完治には必要。
漢方薬を飲み、軽い運動を毎日行い、時間がすぎるのを待つことが、身近にストレスがある場合の解決策です。
リウマチ気質とは、思慮過度・過緊張・不安感・焦燥感・自分の方法にこだわる、病状日誌をつけたりして、病に囚われることです。
難病の解決法は、
1.仕事を辞める(変える)
2.転地療法
3.親・夫・妻・成人した子供・親戚などの、親族と別れる。
4. 病気を忘れる(毎日 病状日誌をきっちりつけない)
・・と昔から言われている。
これを実行することは難しいので難病となる。
和解剤は、現代のストレス社会では、非常に役立つものです。
病気の発症理由と漢方の治療法を知っていると、運動によって爽快になり、心が安定し、リウマチ気質の改善を目指せば治療効果があがる。
リウマチ気質とは、思慮過度・過緊張・不安感・焦燥感・自分の方法にこだわり、また、絶えず病気に囚われることです。
難病を完治させるには、開き直りに努め、心の安定と毎日の軽い運動が必要です。
漢方薬で胃腸を建て直し、心身の怠さを軽減し、肝の昂ぶりを運動と漢方薬で軽減するために、毎日の軽い運動の継続が、完治には絶対に必要です。
単に痛みをとる療法だけでは、肝の昂ぶりはおさまらないので筋の拘縮は緩和されず、リウマチは完治しないのです。そのため生物学的製剤注射などは一生続ける必要となります。
肝の昂ぶりを鎮めずに、リウマチ気質の改善をせずに痛みの除去だけの治療していると、徐々に、全身のいたるところの筋の拘縮が続くので筋は硬くなり、もっとも負担のかかる足の筋が拘縮し偏位して足指が重なり、さまざまな病態・皮膚炎・関節の変形や筋の拘縮をもらたします。
和解剤
わかいざい
表証(発汗法で治療する病証)でもなく、裏証(吐法とほう・瀉下法での治療する病証)でもない病態は、和解剤で治療する。
つまり、半表半裏証はんぴょうはんりしょう(傷寒論の理論では少陽病しょうようびょうに相当)に対する治法を、和法わほう(和解法)とよぶ。
その他、消法もあるが、和解剤は疏肝解鬱して肝の昂ぶりを鎮める効果がある。
経絡的には、半表半裏証(傷寒論の少陽病)は、足の少陽胆経あしのしょうようたんけいの疾病である。
(足の少陽胆経:足の外側正側面を走行している経絡で、その経絡上に肝の昂ぶり(ストレス)による色々な症状が現れる。小指側の痛みや関節痛・膝痛など。
経絡:鍼灸や按摩・マッサージなどで、その経絡・臓腑の症状を治療する経穴けいけつの存在する場所を経絡けいらくという)
足の少陽胆経上には、肝胆の昂ぶりで肝胆鬱熱が生じ この経絡上に腫れや炎症や疼痛が起きる。(少陽胆経は膝痛や股関節痛にも関係する:長時間の座り仕事で寒さや疲労のストレスで股関節痛などが生じるので立ち歩きを心がけることが予防になる)
足の少陽胆経の症状:往来寒熱・瘧疾・口苦・脇痛・嘆息・偏頭痛・外眼角痛・側頭部痛・頸部や腋下のリンパ節腫脹(こぶとりじいさんのコブ:和解剤+半夏厚朴湯)・股関節や膝や下腿の外側の疼痛や運動障害・第四趾の疼痛と運動障害
別のストレスの経絡は足の厥陰肝経けっちんかんけい。
足の厥陰肝経は、足の内側正側面の経絡で、同様にストレス・肝鬱(肝の昂ぶりで流れが悪くなる)で、この経絡上に症状を呈する。親指の付け根の側面痛や発赤・外反母趾や陥入爪なども生ずる。
足の厥陰肝経の症状:胸脇の脹痛・悪心・嘔吐・咽乾・下利・腹瀉・疝気・疝痛・遺尿(尿失禁)・尿閉・婦人の少腹痛・腰痛・親指の付け根の側面痛と発赤や外反母趾や陥入爪などを生ずる。
疝気せんき:疝せん:水気・瘀血による痛み:腹の痛む病気:発病は肝経と密接な関係があり「諸疝 皆肝に属す」と言われる。瘀血なら桂枝茯苓丸、肝鬱脹痛なら加味逍遙散が適応する。
この二つの経絡の末端部分にある、足の親指(厥陰肝経)や足の小指(少陽胆経)の付け根の側面に、肝の昂ぶり・ストレスによって、赤く炎症・痛みがおきやすい。
外反母趾・外反小趾も、足の爪の鷲爪、陥入爪も、肝の昂ぶりによる足指の尖端の筋の拘縮によって生じている。
つまり、外反母趾や陥入爪は、「肝は筋を主どる」ので、肝の昂ぶりによる筋の拘縮が原因である。
膝痛も股関節痛も、もっぱらこの経絡上の症状である。
なぜなら肝は筋を主どるので、筋の塊である膝痛(外側の腫れは少陽胆経・内側の腫れは厥陰肝経)と関係がある。
(「腰は腎の府である」ので、腎は膝や腰を支える力を発揮している:そのため、腎虚となると腎虚腰痛や腎虚膝痛が生ずる)
高齢者の膝痛は、加齢による腎虚膝痛・腰痛もあるが、加齢でなくても
肝が昂ぶる背景があり、膝痛は、たとえば、孤独などの生病老死の不安や悲しみ・不満や不仲のストレス・肝の昂ぶりの現れであることが多い。
肝の昂ぶりから。足の厥陰肝と少陽胆経の経絡上に炎症が起きて、足の内側の筋(厥陰肝経)と、外側側面(少陽胆経)の筋がアンバランスに拘縮して、膝を曲げる歩き方になる。
歩くために、かかとのやや外側側面寄りから着地し、てから、親指の付け根で地面を蹴ってつま先の小指側を内側にひっかくように蹴り出し歩きます。
外側側面の小指側の筋はその動作で徐々に伸びる・或は拘縮するが、内側側面の拘縮は伸ばされない・或は延びる傾向が強くなり、足の形状がO脚状に湾曲し、チンパンジーのように、膝を動かさない左右にゆれる振り子歩きになる。少数者は、X脚になりペンギンのような振り子歩きになります。
最初は、膝の痛みは無く、ストレスの二つの経絡の拘縮から膝のどちらかの横に負担がかかり、膝痛が生じるので、膝に負担がかからないような変形のくせのつく歩き方で、極端なO脚になったりX脚になる。
肝と胆は表裏であり、
中医学基礎理論から、肝胆は同時に発病しやすい。
足の厥陰肝経と少陽胆経の筋の拘縮のアンバランスで膝蓋骨のゆがみによる膝痛や股関節などの関節周囲の筋の拘縮による影響で、引っ張られて股関節痛・膝痛が起きる。日頃から予防のさまざまなストレッチが効果があるが、ウオーキングも効果がある。
悲しみや怒りや不安感・精神的なストレス・慢性疲労による冷え症のストレスから生ずる膝痛や腰痛もある。
痛みの原因としては、肝の昂ぶるストレスは精神的なものだけでなく、
風寒湿邪によるストレスからの寒冷腰痛(苓姜朮甘湯などが適応)や、
慢性疲労による腎虚腰痛(海馬補腎丸などが適応)や打撲・ぎっくり腰などの瘀血腰痛(桂枝茯苓丸・血府逐瘀湯・身痛逐瘀湯)もある。
苓姜朮甘湯:袪湿散寒・止痛:下焦の寒湿に適応
桂枝茯苓丸:活血化瘀:消癥瘕チョウカ:桂枝4、茯苓4、桃仁4、牡丹皮4、赤芍4:腹部の塊を消す作用、10cm以下の子宮筋腫などを消す。ぎっくり腰には、3時間おきに1日4回服用:本来は血府逐瘀湯を使うべきである。
血府逐瘀湯:瘀血一般:生地黄4 桃仁4 紅花3 当帰3 赤芍3 牛膝3 柴胡2 枳穀2 桔梗2 甘草1
血瘀の薬:桃仁・紅花・赤芍・当帰・川芎・牛膝・牡丹皮・桂枝・威霊仙・地竜・降香
肝胆病かんたんびょうでは、ストレスによってしばしば疾病が脾胃ひいにおよび、脾胃(胃腸)の機能を失調させ胃痛や嘔気を生ずる。
これを、肝胃横逆かんいおうぎゃくという。
ストレス性の嘔気・会議中など緊張する場面などで、あとからあとから出るゲップやシャックリ・胃炎・胃潰瘍・逆流性食道炎・通勤時下痢症・登校時腹痛下痢症が生ずる:半夏瀉心湯や柴胡桂枝湯
子供では、登校前腹痛を訴える時は小建中湯・真武湯・当帰芍薬散なども使う:お腹を建て治す:建中:中とは胃腸のこと:胸焼けがある者には小建中湯は不適)
当帰芍薬散の白朮+白芍の組合せはお腹の痛みを止めるので、当帰芍薬散は過敏性大腸炎に使える。
真武湯の白朮+白芍の組合せはお腹の痛みを止める薬であるので、真武湯は寒湿性の下半身の冷える過敏性大腸炎(登校時・通勤時の腹痛下痢)に使える。
とくに肝気鬱結証かんきうっけつしょうでは、肝胆病なので疾病が脾胃におよぶ傾向が強い。これを肝脾不和 かんぴふわとよぶ。(肝脾不和:肝の昂ぶりで生ずる、胃腸の機能の失調現象:小柴胡湯・柴胡桂枝湯・大柴胡湯・逍遥散)
肝胃横逆:肝気が胃を犯した状態:胸脇脹痛・胃痛・疼痛・食欲減少・噫気アイキ・呑酸ドンサン・嘔吐:治療には柴胡・白芍・枳穀・甘草・呉茱萸・半夏・黄連・香附子などを用いる:左金丸・柴胡疏肝湯
肝気横逆(肝胃横逆)では、肝気犯胃に和胃法で:左金丸(胃痛薬):清肝瀉火・和胃降逆:左金丸(黄連6 呉茱萸1)など。
黄連:清熱燥湿・瀉心火・解毒:冷やし乾かし解毒安神作用
柴胡疏肝湯:医学統旨:柴胡6 芍薬3 香附子3 川芎3 枳実2 甘草2 青皮2
逍遙散:肝気鬱結・血虚・脾虚・湿邪:衝任不調:柴胡3 白芍3 当帰2 白朮3 茯苓3 生姜3 炙甘草2 薄荷1:月経病には衝任不調が関係するので逍遥散は必須:痰飲はとれない。気鬱が強ければ香蘇散を合方する。
香蘇散:理気和胃・理気解表 :香附子4、紫蘇葉1、陳皮2、甘草1、生姜3
そこで肝気鬱結を解消しながら、この肝脾不和・肝胃横逆を調理する治法も、和解法とよばれるようになる。
また、脾胃あるいは胃腸に虚実・寒熱が錯雑さくざつすることがある:半夏瀉心湯
これを
脾胃不和ひいふわあるいは
腸胃不和ちょういふわ とよぶ。
胃腸の寒熱錯雑の治療に半夏瀉心湯はんげしゃしんとうなど胃熱腸冷を治す方剤を用いる。寒熱錯雑の症状は、腸鳴・嘔気・臭いのあるゲップ・面紅・胃不和・食欲不振・消化不良・下利・軟便。
半夏瀉心湯:胃がスッキリせずそのため不安感や食欲不振で下痢し易く(過敏性大腸炎)顔がのぼせやすく赤く(面紅)、腸鳴(寒熱錯雑)臭いのあるゲップ(食傷)などの症状(甘草瀉心湯証)
胃熱腸冷とは、胃熱があるので食欲はあるので食べ過ぎる傾向があり腸冷のために消化不良となり下痢や軟便となりやすい状態をもたらす食習慣や体質の問題症状。
半夏瀉心湯:和胃降逆・消痞:上腹部のつかえ・止瀉・清熱・調和腸胃:半夏5 黄芩3 黄連1 乾姜3 人参3 炙甘草3 大棗3:
半夏瀉心湯の半夏・乾姜は、吐き気・つわり・乗り物酔いを止める
半夏瀉心湯の半夏は、上腹部のつかえをとる(消痞)
半夏瀉心湯の人参・炙甘草・大棗は、脾虚を補い下痢・軟便・食少改善
半夏瀉心湯の黄芩・黄連は、心火・酒熱・胃熱(胃火)をさます
緊張時や通勤時の腹痛下痢(肝鬱・心火による下痢)は、前もって、半夏瀉心湯を服用すれば予防できるが腹痛下痢の体質は改善しない。便秘体質には、半夏瀉心湯は腸に熱を移し強い便秘になるので注意)
半夏瀉心湯の半夏:辛温有毒:和胃止嘔・燥湿袪痰・散結消腫
この脾胃不和・腸胃不和・寒熱錯雑・を調整(調和肝脾)する治法も、和解法とよばれる。
そこで、和解剤は、
和解少陽
(小柴胡湯/柴胡桂枝湯/大柴胡湯など)
調和肝脾
(芍薬甘草湯/四逆散/逍遥散など)
調和腸胃(寒熱虚実錯雑)
(半夏瀉心湯を使用)の
3種に分けられる。
和解少陽の代表は、
小柴胡湯しょうさいことうである。
小柴胡湯:肝鬱胆熱・脾虚・嘔気:柴胡7、黄芩3、半夏5、生姜4、人参3、大棗3、甘草2
小柴胡湯の柴胡・黄芩:肝胆鬱熱を治す。
小柴胡湯の半夏、生姜:嘔気・嘔逆を治す。
小柴胡湯の人参・大棗・甘草:脾虚を補う。
したがって、小柴胡湯の類方である
柴胡桂枝湯さいこけいしとう
大柴胡湯 だいさいことう
柴胡桂枝乾姜湯さいこけいしかんきょうとう なども、
和解少陽作用を有する。
柴胡桂枝乾姜湯:和解半表半裏・温裏袪寒・生津止汗・疏肝解鬱・安神・潤燥・温裏:柴胡6 黄芩3 桂枝3 乾姜2 天花粉3 牡蠣3 炙甘草2
柴胡桂枝乾姜湯の天花粉・花粉・括楼根カロコン:シナカラスウリの塊根:甘酸寒:肺胃経:清熱潤燥・排膿消腫・生津止渇・抗腫瘍作用・糖尿病の胃熱による傷陰に対して寒凉で滋潤作用を用いる。
調和肝脾の最も基本となる方剤は:芍薬甘草湯(芍薬・甘草:急激な痙攣疼痛・足のつりに効く)
芍薬甘草湯の芍薬:酸苦微寒:補血・緩急止痛
四逆散:芍薬・甘草・柴胡・枳実
芍薬甘草湯(芍薬・甘草)に、柴胡・枳実きじつを加え、疏肝作用を加えると四逆散しぎゃくさんになる。
四逆散:疏肝解鬱・理気止痛・透熱:芍薬 甘草・柴胡・枳実
柴胡・芍薬の組合せは:肝鬱・イライラの基本生薬構成である。
四逆散の枳実(強い作用)・枳穀(弱い作用):行気消積・行気寛中する。
柴胡・黄芩の組合せは:肝胆鬱熱を疏肝し、鬱熱を冷まして治療する基本生薬構成:小柴胡湯・大柴胡湯・柴胡桂枝湯など)
(四逆散と四逆湯との違いは、四逆湯は:回陽救逆・温中散寒:附子1、乾姜1、炙甘草3。
四逆散と四逆湯、は全く別の構成で、四逆湯は附子・乾姜を用い、心不全や冷えによるショック状態などを強力に温め救命する)
この四逆散の類方に(調和肝脾作用の処方)たとえば逍遥散しょうようさん
逍遙散は、加味逍遥散より頻繁に使用する処方。
加味逍遙散の加味の部分の牡丹皮・山梔子が冷やしすぎて、
瀉すぎて、逆に不安感が生じたり、薬量が多いと痒み等が出る人がいる。
逍遥散:疏肝解鬱でストレスを緩和・健脾・・補血し胃腸を助け血を生ずる・調経:月経を調える:肝鬱血虚:痰飲は除かない。
柴胡3・白芍3・当帰2・白朮3・茯苓3・生姜3・甘草2・薄荷1:胆熱を冷ます黄芩が無いが補血の当帰が入っている。
逍遙散は、月経関係にはよく配合する処方。
柴胡桂枝湯も肝鬱による月経症状と、特に脾虚や胆熱・胃痛によいが、補血の当帰が無いので、肝鬱血虚には逍遙散が幅広く使える。「古方」では柴胡桂枝湯を使い、中医学では逍遥散を使っている。
柴胡桂枝湯:柴胡7 黄芩3、白芍3 半夏5 生姜4 人参3 大棗3 甘草2 桂枝3:柴胡+白芍の作用で強い肝鬱には小柴胡湯より強く効き、桂枝があるので表寒虚証にも効果がある。
加味逍遥散 かみしょうようさん(冷え性・不安強い人には牡丹皮・山梔子は不適なので強い不安感・強い冷え症があれば逍遥散にする。ヒステリーの火の対処には加味は有効)
加味逍遥散は、逍遥散に:牡丹皮ぼたんぴ・山梔子さんししを加味した処方。
加味逍遥散の牡丹皮は袪瘀(瘀血を除く)・冷やす清熱作用。牡丹の根の皮。
加味逍遥散の山梔子はクチナシの実、解毒作用・三焦の熱を冷ます:栗きんとんの黄色の色素はお節料理の防腐・解毒作用:清熱作用は解毒作用を兼ねる場合が多い。
牡丹皮と山梔子の二味は、共に冷やす作用がある。
牡丹皮は袪瘀(瘀血を除く)・冷やす清熱作用。牡丹の根の皮。
お節料理の黒豆は解毒作用がある。
加味逍遙散の別名:丹梔逍遥散 たんししょうようさん)
柴胡桂枝湯さいこけいしとう:傷寒論の太陽病と少陽病の合病:
小柴胡湯合桂枝湯、半量ずつ加えた処方である。
柴胡桂枝湯は表寒虚証とストレス・ストレス性胃痛・
長引いた風邪:往来寒熱:七症中の一症があれば柴胡剤適用。
(七症:往来寒熱・胸脇苦満・口苦・咽乾・目眩・黙黙不欲飲食・心煩喜嘔)
(表証:悪寒・発熱・頭痛・身体痛・鼻水・クシャミ等)
大柴胡湯だいさいことう(肝陽上亢:のぼせ・眼の赤み・イライラが強い人。胃の上部が固くつかえる人に使う:下痢体質にはやや注意だが、逆に、下利が治る場合もある)などがある。
柴胡加竜骨牡蠣湯も肝陽上亢・肝風内動・のぼせ・イライラ・めまい:心腎不足の不安・動悸に適応
大柴胡湯:傷寒論の少陽病と陽明病の合病に適応:少陽病の七大症を示し解鬱化火を治す・止嘔・熱を大黄・枳実で瀉下する:柴胡6、黄芩3、白芍3、枳実2、半夏4、生姜4、大黄1~2、大棗3
柴胡加竜骨牡蠣湯さいこかりゅうこつぼれいとう:清熱安神・補気健脾・化痰止嘔:柴胡5 黄芩3 半夏4 生姜3 桂枝3 人参3 茯苓3 大棗3 竜骨3 牡蠣3 大黄1
竜骨りゅうこつ:古代の大型脊椎動物の骨の化石:炭酸カルシウム・リン酸カルシウム:鎮静安神・固精・平肝潜陽
牡蠣ぼれい:牡蠣カキの貝殻:鉱物など重い生薬:重鎮。重鎮安神・平肝潜陽・収斂固渋・軟堅散結・制酸止痛
小柴胡湯の七症:往来寒熱おうらいかんねつ・胸脇苦満きょうきょうくまん・口苦こうく・咽乾いんかん・目眩もくげん・黙黙不欲飲食もくもくとしていんしょくをほっせず・心煩喜嘔しんぱんきおう
また、芍薬甘草湯の発展(調和肝脾作用あり)には、
小建中湯 しょうけんちゅうとう
黄耆建中湯 おうぎけんちゅうとう(黄耆+小建中湯)
当帰建中湯 とうきけんちゅうとう(当帰+小建中湯)
当帰芍薬散とうきしゃくやくさんなどがある。
いずれも調和肝脾ちょうわかんぴ(芍薬+甘草)に作用する。
(芍薬:酸苦微寒:補血・緩急止痛)
(甘草:健脾益気 緩急止痛 諸薬調和)
小建中湯:温中補虚・温中止痛:老人の虚寒の胃痛・便秘・冷え症の胃痛。小児の虚弱体質・登校前腹痛・過敏性大腸炎:桂枝4、白芍9、大棗4、生姜4、甘草2、膠飴20g
(大棗+生姜+甘草:補脾の組合せ)
(白芍+甘草:腹痛・痙攣の組合せ:芍薬甘草湯)
(桂枝湯:桂枝4 白芍6 大棗4 生姜4 甘草2)
(小建中湯:桂枝湯+膠飴20g:白芍は増量して9g)
当帰芍薬散:活血利水止痛:妊娠時腹痛のために創設された・守備範囲が広い:当帰3、白芍4、白朮4、茯苓4、沢瀉4、川芎3:当帰はもたれやすいので胃痛になることがある・便秘に当帰の潤腸作用
(当帰・補血・行血・活血・潤腸・調経)
(芍薬:補血・緩急止痛)
(川芎:活血行気・袪風止痛・頭痛薬・薬を頭部に運ぶ作用)
(白朮:補脾益気・燥湿利水・健脾薬)
(茯苓:利水滲湿・健脾和中・寧心安神)
(沢瀉::利水・滲湿・清熱・冷やす作用)
滲湿しんしつ:滲とは濾過するの意味。滲利、滲泄、滲透などはすべて滲出・濾過させ、湿気等が停まらないようにすること
当帰芍薬散:妊娠時の腹痛・むくみ・血虚・妊娠中毒症;妊娠高血圧症候群の予防。
脾胃・腸胃の寒熱虚実錯雑さくざつに対応する代表方剤は、
半夏瀉心湯はんげしゃしんとう である。
半夏瀉心湯:胃熱腸冷:胃熱があるので食欲はあるが、食べ過ぎ飲み過ぎして胃腸に負担をかけやすく、腸冷のため下利・軟便になり易い人に適用する。さらに食欲が増すので食べすぎに注意。
神経質(肝鬱)で通勤時・登校時下痢・腹痛・胃が重い・食欲不振・胃不和の陰鬱感等の治療予防に。
開き直りがなければ肝鬱の気質による体質は変えられない。子供時代の母親の過剰なしつけが原因にもなる。
半夏瀉心湯は、黄連・黄芩で、心火(不安感)・胃火(胃熱)・胆熱を冷やし、乾姜(大熱性)で、腸を温め:冷やし+温める:寒熱錯雑:人参・甘草・大棗は胃腸・心を補い安定させ、食欲を増す。
(半夏瀉心湯:半夏5、乾姜3、黄連1、黄芩3、人参3、大棗3、甘草3)
半夏瀉心湯:二日酔防止・嘔吐・つわり・下痢・消化促進、食思不振、車酔い・胃のつかえ・心火や胃火をさますので不安感に効果がある・拒食症(小柴胡湯も適応する)。
半夏瀉心湯は、胃腸が丈夫な人や便秘気味の人には、乾姜の大熱が腸を温めるので、便秘が悪化する:下利・軟便気味に適応する。
胃熱があり食べ過ぎや緊張(心火)での軟便・下痢が生ずる体質にはよく適応する。半夏瀉心湯はなるべく温かいもので服用する)
半夏瀉心湯:半夏5、乾姜3、黄連1 黄芩3、人参3、甘草3、大棗3)の黄連・黄芩は、胃火を冷ますので胃の不快感を治し、心火をさますので安定剤の作用がある。
漢方の病理は「脾は思を主る」ので、脾を調える半夏瀉心湯は心火を瀉し、心下痞を鎮めるので心(精神・思)が落ちつく。つまり半夏瀉心湯は胃熱・胃不和で落ち着かない時の精神安定剤でもある。
半夏瀉心湯は、食欲不振・食べ過ぎ・飲み過ぎに適応。緊張時・受験生の腹痛下痢には、面接・試験等の朝に服用する:平時は軽い毎日の運動とともに抑肝散・逍遙散を常服させ、気づきを生じさせる。
半夏瀉心湯の類方には、甘草瀉心湯 (甘草を多くすれば不眠に適応)かんぞうしゃしんとう(甘草湯を使用+半夏瀉心湯:甘草湯は甘草単味の処方)
半夏瀉心湯の類方には生姜瀉心湯しょうきょうしゃしんとう(ショウガ汁で代用+半夏瀉心湯:冷飲による嘔気や、単に嘔気が強い時の嘔逆を治す。半夏+生姜は嘔逆を治す)
半夏瀉心湯の類方には黄連湯おうれんとう。
黄連湯:胃痛・嘔気:傷寒(桂枝)、胸中熱有り(心火:黄連)胃中邪気あり(胃火:黄連)、腹中痛み(胃火:黄連)、嘔吐せん(半夏・乾姜)と欲するものに黄連湯:黄連3、半夏6、乾姜3、桂枝3、人参3、大棗3、甘草3:胸中熱有り、胃中邪気あり、腹中痛み、嘔吐せんと欲するものに黄連湯
半夏瀉心湯:半夏5、乾姜3、黄連1、黄芩3、人参3、大棗3、甘草3