天王補心丹

2022/10/19作成

天王補心丹・・心機能と精神の症状・腎虚による疲労の症状・更年期症状・自律神経失調症

天王補心丹:心腎陰虚:酸棗仁 生地黄 柏子仁 麦門冬 五味子 当帰 遠志 丹参 玄参 桔梗 朱砂:滋陰・安神の効能も兼ねているので補心血に用いる。

天王補心丹の症状:心腎陰虚:眩暈・耳鳴・口乾・体の熱感・腰重・遺精・盗汗・舌紅無苔の腎陰虚症状に、不眠・動悸・頻脈・健忘(緩やかな認知症)・多夢・甲状腺機能亢進症・自律神経失調症などの心陰虚症状。

天王補心丹の五味子:斂肺滋腎・生津斂汗・渋精止瀉:咳・鼻水・汗止め薬:生脈散(人参6 五味子3 麦門冬6)

心腎陰虚薬の天王補心丹の酸棗仁さんそうにん:クロウメモドキ科サネブトナツメの成熟種子の乾燥:養肝・寧心・安神・斂汗

天王補心丹の玄参げんじん:元参:ゴマノハグサの玄参の根:滋陰清熱・瀉火解毒:滋腎陰薬

天王補心丹の腎陰虚の症状は、腎虚の症状で虚熱症状を呈す:足が火照る・面紅・口乾・頭暈・眩暈・耳鳴り・難聴・腰膝酸軟無力(腰重)・盗汗・尿後余瀝・失禁・遺尿・尿閉・性機能過亢進・踵痛・舌紅無苔。

天王補心丹の心陰虚の症状とは、陰虚の虚熱による興奮症状から不眠・動悸・頻脈・多夢・甲状腺機能亢進症・自律神経失調症となり、消耗状態から健忘(緩やかな認知症に天王補心丹)・見当識障害が生じる。

心腎陰虚(天王補心丹)は、疲労や慢性病などが原因の、水気不足による虚熱発生の状態(陰虚)である。

逍遙上逆で熱くなっても、ゾクゾク感や冷や汗が無い場合は加味逍遙散(往来寒熱は加味逍遙散)では効かないので天王補心丹(心腎陰虚の天王補心丹)とする。

女性では40代くらいから、経断前後諸症で健忘がでてくる。健忘という症状を目標に天王補心丹を少量(1回10丸のところを4丸に減らす)使うと良い。進行性でない痴呆症でれば予防や治療につかえる。

心腎陰虚薬の天王補心丹では のぼせだけで、陰虚(津液不足)のため冷や汗をかかないが、加味逍遙散や逍遙散は往来寒熱の機序のため発汗後に冷や汗で冷える。

生脈散(人参・五味子・麦門冬)が効かない人は、普段から汗っかきの人に用いる防已黄耆湯や天王補心丹を使う。生脈散は体を動かして汗が出た人に効くのであって、普段からダラダラ汗がでる人(防已黄耆湯・天王補心丹の人)には効かない。

夏バテの発汗後や窯業や中華料理店など暑い職場で働いている人には生脈散は効いて元気になる。

出血で動悸・不眠などが生じた心神不寧には:遠志・酸棗仁・丹参・竜眼肉・茯神・朱砂・磁石・夜交藤などの養血安神薬(帰脾湯・酸棗仁湯・天王補心丹)などを配合する。

養心安神薬の遠志:安神・袪痰・消癰。

養心安神薬の丹参:シソ科タンジンの根:活血袪瘀・涼血・養血安神。

養心安神薬の竜眼肉:甘温:補心安神・補脾養血・鎮静・健胃・滋養

安神薬の茯神:茯苓が松の根の周りを包む部分で鎮静作用が茯苓よりやや強い。茯苓は松の根などに寄生する菌核。

安神薬の朱砂しゅしゃ:辰砂しんしゃ・丹砂HgS・硫化水銀:安神・定驚・解毒:日本では配合は禁止:辰砂のような水に難溶な化合物は毒性が低いと考えられているが加熱すると有毒となるので丸薬にまぶす。

安神薬の 磁石;天然磁鉄鉱・霊磁石・活磁石:重鎮安神・納気平喘・益腎潜陽

安神薬の夜交藤やこうとう:タデ科何首烏かしゅう(ツルドクダミの蔓茎)安神・養血活絡

養血安神薬:遠志・酸棗仁・丹参・竜眼肉・茯神・朱砂・磁石・夜交藤:帰脾湯・酸棗仁湯・天王補心丹

天王補心丹:更年期障害の、のぼせ・面紅は、陰虚による虚熱上逆症状なので、のぼせはあるが津液不足のため、冷や汗やゾクゾク感は無い時に天王補心丹を使用。

イライラの状態では加味逍遙散や抑肝散が適応するが、イライラが長引くと心血の栄養失調になり、心血不足の症状には帰脾湯(心脾両虚・気血両虚)や 天王補心丹(心腎陰虚)・酸棗仁湯(養心安神・清熱除煩)を使う。

酸棗仁湯(心血虚・心肝火旺に養心安神・清熱除煩:酸棗仁5 茯苓5 知母3 川芎3 炙甘草1):思慮過度から生ずる、のぼせ・イライラや不安感・不眠を鎮める。

酸棗仁さんそうにん:クロウメモドキ科サネブトナツメの成熟種子の乾燥:養肝・寧心・安神・斂汗:帰脾湯・酸棗仁湯

天王補心丹の遠志:安神・袪痰・消癰(安神薬)

天王補心丹:心腎両虚という腎虚によって不安感が出てくる人にを使う:年寄りの物とられ妄想・泥棒妄想による心配や不眠などに効果がある。

天王補心丹と柏子養心丸の二処方:当帰 地黄 柏子仁 玄参 麦門冬が共通。

安神薬の柏子仁はくしにん(ヒノキ科コノテガシワの成熟種子を乾燥:寧心安神・潤腸通便・止汗:柏子養心丸)

柏子養心丸:養心安神・滋陰:柏子仁5 枸杞子5 麦門冬4 当帰4 石菖蒲3 茯神4 玄参3 熟地黄5 炙甘草1

滋養心陰の生薬:浮小麦・柏子仁・百合・生地黄・麦門冬。

滋養心陰の麦門冬:甘微苦微寒:補陰・滋養心陰・潤燥生津・化痰止咳:ユリ科ジャノヒゲの塊状根。

逍遙上逆で朝から何回ものぼせて熱くなる人(冷や汗は出ない人)は、心の症状か虚熱である。心の症状の心腎陰虚なら天王補心丹であり、虚熱(腎陰虚)なら六味丸加減方か知柏地黄丸(心の症状が無い場合)

補血の方剤:四物湯・天王補心丹・帰脾湯・十全大補湯。

天王補心丹:心陰虚(心腎不交も心陰虚の一種)では、動悸・のぼせて面紅、疲れると症状悪化し、疲れやすく、顴紅、手足の火照りが天王補心丹の適用に絶対に必要な症状。

帰脾湯:気血双補・健脾益気・養心安神・脾不統血を摂血:白朮3 茯神3 黄耆2 竜眼肉3 酸棗仁3 人参3 木香1 炙甘草1 当帰2 遠志1.5 乾生姜1 大棗1.5:青あざの多発や不正性器出血・潜血尿

月経に関係する衝任の脈に異常が出てくると腎気不足になり、衝任は心とも関係があるため、心腎の異常がでてくる(天王補心丹)。腎気不足のため月経を止めようとするのでバランスが崩れ、月経断前後諸症である健忘がでてくる。

陰虚火旺の症状(五心煩熱、口乾少津、舌紅、脈細数など)がなければ、心陰虚の症状には天王補心丹がよいが、もし、陰虚火旺の症状があったら、治法に滋陰降火を加え、黄連阿膠湯か朱砂安神丸がよい。

天王補心丹(心腎陰虚)と同じくらいの頻度で不安感に帰脾湯(心脾両虚・気血不足)をよく使うが帰脾湯は脾虚が顕著である。

陰虚火旺の症状:手の平のほてりなどの五心煩熱・夕方に微熱が出る:顴紅・口渇少津・冷飲を好む・舌質紅・脈数など熱証を呈する。

陰虚火旺:内傷七情で肝鬱化火したり、房室不節で腎陰が消耗し陰虚火旺となる:五心煩熱・夕方に微熱が出る・顴紅・口渇少津・冷飲を好む・舌質紅・脈数など熱証を呈する:知柏地黄丸:滑胎に保陰煎:滋陰降火・固胎

保陰煎:景岳全書:滋陰降火・固胎し滑胎予防:生地黄 熟地黄 白芍 山薬 続断 黄芩 黄柏 甘草:製品は無い。

補肝腎安胎薬の続断:マツムシソウ科川続断の根:苦辛微温:肝・腎経:補肝腎・続筋骨(筋骨を修復する)・活血・安胎(滑胎に):打撲・捻挫・骨折・腰や下肢の疼痛

黄連阿膠湯:心腎不交(心陰虚の一種):黄連3 黄芩2 白芍3 阿膠3 鶏子黄1個(小太郎製薬に製品あり。年一回注文受け付け)。

半夏瀉心湯は、黄連1・黄芩3gで、心火(不安感を治し)・胃火(胃熱の食べすぎを解消)・胆熱を冷やし(イライラを鎮め)、乾姜(大熱性)で腸を温める。

黄連+黄芩は、心火・胃火を冷ますので、胃のチリチリした不快感を治し、心火をさまし精神を安定させる(半夏瀉心湯)。

心腎不交の症状:心陰虚の一種:焦躁感・睡眠時不安・不眠・動悸・手足の火照り・口乾・顔面紅潮・のぼせ・夢精・鬼交、頭暈、神経疲労・耳鳴・難聴・目花・小便黄赤で量少・排尿時に熱感:黄連阿膠湯

朱砂安神丸:心火旺に清熱安神・滋陰補血:滋陰降火:黄連 朱砂 生地黄 当帰 炙甘草。