耳鳴りと耳塞感の相談例

この10月から耳鳴りと左耳の閉塞感を訴え、多夢や動悸もあり、面色萎黄の強い疲れ切った女性からの漢方相談への対処方法です。

耳鳴りには、通常は竜胆瀉肝湯合大柴胡湯だが、胃が弱ければ竜胆瀉肝湯合小柴胡湯で、長引いていれば瘀血や腎虚が考えられるので、竜胆瀉肝湯合大柴胡湯合真武湯、竜胆瀉肝湯合小柴胡湯合真武湯とする。

耳は肝とも腎と関係があるので、耳の症状には小柴胡湯を使う。肝腎陰虚なら杞菊地黄丸。小柴胡湯合八味丸・小柴胡湯合六味丸・小柴胡湯合杞菊地黄丸だが、胃腸虚弱に八味丸をつかうとてきめんに悪化するので真武湯とする。ジーという耳鳴りは腎虚も影響していると思われる。

何より、こんなにストレスと脾虚が強い女性は最近みたことがない。

日本の教育は間違っている。勉強さえできれば健康や体力がどうでもよいというのが日本の教育現場である。もっと運動習慣と運動の気持ちよさを身に付けさせるべきで、競争やタイムを競う体育教育は間違っている。中年になって成人病やこのまざる病気にかかるのは学校教育の欠点である。

貴女は血虚や痰飲も酷そうなので、四物湯は血虚の基本方剤:当帰4 白芍4 川芎4 熟地黄4:肝の薬でもあるので四物湯は駆瘀血薬であるが、少量加えるが多すぎると胃腸虚弱・脾虚なので少量とする。

胃痛などが生じる胃腸虚弱は、肝胃横逆:肝気ストレスが胃を犯した状態で、ストレスや過緊張が胃腸の機能低下を招いているため生じたものです。

そのため、消化吸収力が低下し漢方的な栄養失調である血虚が生じます。

舌に苔が白い粗造の苔が一面についているのは、胃腸の疲労があり食欲がなくても一生懸命食べていると、痰飲という食毒を体にためる体質になっていることを示しています。

痰飲とは、痰飲の基本症状は、眩暈、多痰、浮腫、嗜眠、小便不利、しこり、朝の起床時の顔のむくみ、疲労時の顔のむくみや手足のむくみ、咳払いで簡単に痰がでる、閑な時すぐ眠くなる。また、食事をすると怠くなり眠くなる症状もでてきます。精神的な影響も生じ、甲状腺腫も痰飲の症状で、漢方薬でも改善します。今回は、それに対する処方はしてありませんが幾分効果はあります。

職場のストレスや家庭での教育にたいするストレスによる胃腸症状は、胸脇脹痛・胃痛・疼痛・食欲減少・噫気・呑酸・嘔吐などです。今は極端な体力不足でも頑張っている状態でヘトヘトな様です。

消化力低下による血虚の症状は、血虚の症状:面色淡白でつやがない、面色萎黄、頭暈、目のかすみ(目花もっか)、舌質淡、脈細、間歇的な動悸(心悸)、持続性の動悸(怔忡せいちゅう)、不眠、手足のしびれ(手足麻木)などです。このなかで、面色萎黄・動悸・多夢などが強く症状としてでています。

貴女の場合、面色萎黄がとても強く、長期に渡り胃腸不調が続いて血虚が全身に影響を与えています。疲労しても頑張っている状態は、とてもストレスを生じます。ストレスとは体内の流れが阻滞されている症状で耳鳴りもその症状の一つです。また一晩中夢をみて寝た気がしないなど、多夢は血虚・疲労の症状です。

貧血と甲状腺腫が中学生時代から続いているとのこと。頑張り屋だったのでしょう。勉強が苦にならず、進学校に進むのが当たり前だったとのこと。現在の50歳まで頑張ることで、体の変調・生理不順にも重なり耳鳴り・耳塞感だけでなく、色々な症状がでたようです。また、お子様二人を育て、家計の負担を一身に背負っている今の仕事のストレスも強いとのこと。

肉体・精神は極限の状態ですが、漢方薬が助けになればと思います。

動悸も不眠も、漢方では血虚の症状なので、胃腸の建て直しが必要です。今回は、動悸や不眠・多夢・胃腸虚弱にも効果がある耳鳴りの薬になっています。

胃腸の建て直しには、精神生活も密接に関係するので1年半以上かかりますが、胃腸の不調自体は早期に改善されます。

お子様の教育でストレスが強いとのこと。ご自身とお子様の勉強に対する姿勢が違うのは普通のことです。受験のストレスは時間が解決してくれます。親の価値観で子供をつぶさないことが重要です。

今まで運動習慣が無かったとのこと。運動習慣があれば、爽やかな軽い運動を朝夕15分できればよいのですが。帰宅時の15分のウオーキングはその日の精神的な疲れを発散してくれますが、帰宅すると疲労で倒れ込むとのこと。

漢方薬でもう少し体力を回復させてから運動を実行してみてください。それがストレス発散と体力回復になります。

まず、ストレスを軽減する漢方薬になっています。胃腸を補い、血虚を改善し、動悸・不眠・多夢・低いジーという耳鳴りを改善する処方にもなっています。すべて血虚と関係のある症状です。

ご質問があれば、帰宅時の来局やメールでの問い合わせも受けています。

漢方薬が必ず助けになります。耳鳴り・耳塞感が緩和したら、体力をつけ疲労を軽減する漢方薬が必要です。

どうぞ おだいじに

(有)文隣堂あつみ薬局 渥美光廣