温経湯:金匱要略:衝任虚寒・瘀血阻滞・月経不調・逾期不至(閉経)・小腹冷痛・唇口乾燥・手心煩熱・久しく不孕フヨウ(不妊)。
逾ユ:こえる、こす、すすむ、わたる、いよいよ:逾期。
温経湯:金匱要略:温経補虚、活血行瘀法:呉茱萸3 桂枝3 当帰4 白芍6 川芎3 丹皮2 人参3 甘草2 阿膠珠4 麦門冬3 半夏4 生姜3g。
阿膠アキョウ・阿膠珠ジュ・陳阿膠・驢皮膠ロヒキョウ:甘平:肺肝腎経:補血・止血・滋陰・潤燥・滋養・皮膚枯燥・口唇乾燥などの燥証・虚証・血証に有効:1~5gを衝服:温経湯では口唇皸裂クンレツを癒す。
月経と「衝脈・任脈」は密接な関係がある。
月経先期(早く到来する)は多くは熱に属し、月経後期は寒が多い。
今、月経後期は、これに加えて小腹冷痛があり、衝任が虚寒であることが判る。
小腹冷痛の原因に二つある。一つは子宮(胞宮)が虚寒、もう一つは瘀血阻滞が原因である。
「瘀血が去らなければ新血は生ぜず」。新血不足なら口唇は栄を失い乾燥する。血虚では熱を生ずるので陰虚であるので手心は煩熱する。陰虚の症状:五心煩熱;五心:掌心・足心の裏・胸の五カ所。
久しく不妊であるのは子宮(胞宮)の虚寒が原因である。
温経湯の証は、衝任虚寒で瘀血阻滞の病理であるので、
温経湯の治法は温経補虚、活血行瘀法である。
温経湯の衝任虚寒には、温経散寒・補陽気血すべきである。
温経湯の瘀血阻滞で月経不調には、活血行瘀すべきである。
温経袪瘀の措置により、寒が散じ瘀が去れば、経水(月経)は自ずから調う。
温経湯の呉茱萸、桂枝は温経散寒し、呉茱萸は行気止痛にすぐれ、桂枝は温通血脈に長じており、気滞血瘀、寒凝腹痛の証に共に用いれば頗る効果がある。
当帰、芍薬、阿膠は、補血調肝し、
人参、麦門冬、甘草、半夏、生姜は益気和胃して
気血の生化の源を滋補し、共同して温経補虚の効果を実現する。
川芎、丹皮は、共同して桂枝と活血行瘀し、丹皮はその虚熱を清し瘀を去り、新血が生ずれば唇口の乾燥は除かれ、虚熱による手心煩熱などの証も清を得る。
温経湯を、痛経や月経不調に用いれば、均しく有効な効果をもたらす。
温経湯の、桂枝、丹皮は比較的有効な活血行瘀作用がある。
桂枝は性質は温で寒証に適し、丹皮は寒で、熱証によいので、二薬を一緒に用いると活血の増強だけでなく偏寒偏熱の弊害とならず、相反相成の妙があるので張仲景の処方の中には、いつも多く共用されている。
温経湯で、桂枝は温でその寒を下し、丹皮はその浮熱を清し、寒熱共用しても逆とならず、此の種の用薬方法は、深く思うに値する。
加減法:和剤局方の温経湯は、桂枝 当帰 白芍 川芎 丹皮 人参 甘草 莪朮 牛膝で、治する証は同じ。温補の力は比較的弱く、活血袪瘀の力は強いので瘀滞が強いものには本方がよい。
莪朮がじゅつ:ショウガ科莪朮の根茎:苦辛温:肝脾経:行血破瘀・攻逐積滞:抗腫瘍・健胃・気滞血瘀による月経不順・腹腔内腫瘤:三棱との配合では、等量の人参か党参・黄耆で補元気する:1~3g。
温経湯:金匱要略:温経補虚、活血行瘀法:呉茱萸3 桂枝3 当帰4 白芍6 川芎3 丹皮2 人参3 甘草2 阿膠珠4 麦門冬3 半夏4 生姜3g:温補の作用は局方の温経湯より強い。