苓桂朮甘湯の解説

2025/2/8~9~10改訂

苓桂朮甘湯

苓桂朮甘湯:傷寒論:温陽化気・培中滲湿法:
茯苓6 桂枝5 白朮5 甘草2:
中焦陽虚、水飲内停、胸脇支満、目眩の者を治す。
心悸、気短、吐痰清稀などの証を治す。

気短・短気:呼吸が浅く速い状態・息切れ。水邪が肺を犯している症状。

苓桂朮甘湯:中焦陽虚して水飲が内停している証:脾は水湿を運化し、腎は気を生じ行水する。
今、脾虚して水を制御できず、腎虚して気を生ずることができない時、苓桂朮甘湯が適合する。

苓桂朮甘湯:脾虚と腎虚の為、水飲が内停して胸脇支満が生じ、飲邪が清陽をさまたげるので目眩を生じる。
心悸は水気凌心の症状であり、短気は、水邪が肺を犯している症状である。

苓桂朮甘湯証の水気凌心:動悸・胸が脹って苦しい(夜中に胸悶となる心不全:木防巳湯は胸水)・
頭のふらつき・めまい・尿量が少なくスムーズに出ない・舌質淡・舌苔水滑・脈沈弦。

木防巳湯:支飲(胸部の痰飲・胸水)・肺水腫の呼吸困難・尿量減少・口渇・発熱、利尿・鎮静・消炎・
軽度の強心:鬱血性心不全・肺水腫・心臓喘息:利水滲湿・益気・清熱:
木防已4 桂枝3 人参3 石膏10g。

苓桂朮甘湯:中焦陽虚・水飲内停に対して、温陽化気、培中滲湿の法を体現。
茯苓は補脾・滲湿で主薬である。
飲邪の患いは気化不行で陽気不足なので桂枝(腎陽虚薬)は温陽化気し、
茯苓とともに停飲を治す。

十全大補湯:気血双補・補腎陽・袪寒:四君子湯+四物湯+黄耆・桂枝(腎陽虚薬:肉桂):
気血両虚の症状:筋の萎縮・四肢の無力・頭暈・目花・倦怠無力感・動悸・息切れ・自汗・盗汗・舌淡・苔少・脈微細。

運動麻痺には桃仁・紅花・川芎・地竜を十全大補湯に配合:血府逐瘀湯合十全大補湯・独活寄生湯。

血府逐瘀湯:医林改錯:瘀血内阻:牛膝4 桃仁3 紅花3 当帰4 赤芍3 川芎2 生地黄4 
枳殻3 柴胡3 桔梗2 甘草1g。

枳殻、柴胡、桔梗、甘草は、調気疏肝し肝気鬱結を治す。

桔梗キキョウ:苦辛平:肺経:宣肺袪痰、排膿消腫、引経上浮:痰を除き、他薬を上部に導く作用がある:
蘇葉・白芷・桔梗は寒を散じ、膈塞かくそく(上下不通)して、通じないものを利し、表邪を発散する。

独活寄生湯:千金方:袪風湿・散寒・補気血・益肝腎・活血止痛:独活2 防風2 桑寄生4 秦艽3 杜仲3 
熟地黄5 白芍4 当帰3 牛膝3 川芎2 茯苓3 党参3 細辛1 肉桂0.5(沖服) 炙甘草1g。

苓桂朮甘湯の白朮、甘草は培中健脾バイチュウケンピし、中焦を健運せしめ自然に水湿を運化している。 

白朮・甘草の二味は、痰飲を再生させない。 

上述の四味の茯苓、桂枝、白朮、甘草は相互に配伍されると、陽気は回復し気は巡り、脾運は健やかとなり、
飲邪は去り諸症は解す。

「方極ホウキョク:吉益東洞 著」では、苓桂朮甘湯は、心下悸で上衝して起きれば頭眩ズゲンし、小便不利の者を治す。

「「類聚方広義・尾台榕堂」には、苓桂朮甘湯は、飲家、眼に雲翳を生じ、昏暗疼痛し、上衝頭眩し、瞼腫れ、目やに涙多き者、車前子を加えれば最も奇効あり。当に、心胸動悸し、胸脇支満し心下逆満などを目的とする。夜盲症にもまた奇効あり。

車前子(オオバコの種子)は、利水・通淋・止瀉・明目・袪痰止咳・利尿剤・袪痰する咳止め薬。

五淋散:清熱利水・活血止痛:茯苓6 沢瀉3 車前子3 滑石3 山梔子2 黄芩3 木通3 赤芍2 当帰3 甘草3 地黄3g。

苓桂朮甘湯の用途は比較的広く、中焦陽虚で水飲内停に生ずる耳聾、目眩、眼に雲翳が生じ、
心悸、気短、経脈跳動(不整脈)、湿滞して萎証などの証に均しく応用できる。
苓桂朮甘湯に芎黄散キュウオウサン(川芎・大黄二味)を加えると耳聾、目疾にさらに効くようになる。