調和肝脾法(肝脾不和):芍薬甘草湯
芍薬甘草湯:傷寒論:柔肝解痙法:白芍10~20g、炙甘草3~7g。
芍薬甘草湯の主治:肝陰不足、肝木が脾に乗じて腹中が拘急して痛み、或は筋脈が養いを失い、手足の拘攣などの証を治する。
肝陰:肝陰血と肝の陰液をさす。正常時は、肝陰と肝陽が平衡を保っている。もし、肝気の過多、肝陽の偏亢があると肝陰は損傷され、肝陽上亢をひきおこす。
芍薬甘草湯の症状は、腹中拘攣して痛む、また手足が拘攣する痛みがよく見られる。
腹痛は脾病に属す。腹が痛むのは肝陰不足のためであり、肝木乗脾である。
肝木かんもく:五臓と五行を合わせたもので、肝は木に属することをさす。
脚拘急は筋病に属す。筋脈が正常に機能するには、陰津の濡養と血液の滋栄が必要である。今、肝陰不足で筋を養うことができないので手足が拘攣する。
之により腹痛と拘攣の病理は、実際は肝陰不足あるいは肝脾失和(脾胃不和)により生じていることが分かる。
芍薬甘草湯は、芍薬と甘草の二味でできている。
芍薬は平肝緩急だけでなく解痙止痛の良薬であり、また肝血を養うので、芍薬は頗る芍薬甘草湯証に合拍している。
芍薬甘草湯は潤燥養筋し緩急止痛作用があり、肝陰不足で筋脈が拘攣している症状を治療する効果が高い。
1,「内科摘要」では「小腸腑の咳は、咳を発すると矢気(放屁)する」に芍薬甘草湯を用いる。
2.「医学心悟」芍薬甘草湯は、「腹痛を止むこと神のごとし。脈遅は寒となす乾姜を芍薬甘草湯に加える。脈洪は熱となす芍薬甘草湯に黄連を加える。
3,「古今医統」芍薬甘草湯は、小児熱の腹痛、小便不通を治す。
4,「方極:吉益東洞」芍薬甘草湯は、拘攣急迫する者を治す。
5,「類聚方広義」尾台榕堂ヨウドウ、「芍薬甘草湯は、腹中攣急して痛む者を治す。小児の夜泣き止まず、腹中攣急甚だしき者にも奇効を示す。」
6,芍薬甘草湯は、胃腸の痙攣疼痛や腓腸肌(腓腹筋)の痙攣や三叉神経痛(竜胆草1~2gを加える)および気喘に用いる。
竜胆草:竜胆・胆草:リンドウ科トウリンドウの根茎と根:苦寒:清熱燥湿・瀉火定驚:肝胆実火・健胃・難聴(竜胆瀉肝湯:肝経湿熱)・排尿痛。
芍薬甘草湯と活絡効霊丹を合方は、坐骨神経痛に有効である。
芍薬甘草湯合活絡効霊丹:坐骨神経痛。
活絡効霊丹:医学衷中参西録:活血袪瘀・通絡止痛:
当帰 丹参 乳香 没薬 各5g:気血凝滞を治す。
加減活絡効霊丹かげんかつらくこうれいたん:子宮外妊娠、下腹部一側突然疼痛、絞割る痛み、出血、開始時は出血量少・紫暗つづいて大量出血:
丹参5 赤芍3 乳香3 没薬3 桃仁3g、水煎服用する。
総じてどんな部位の疼痛であろうとも、拘攣性の疼痛なら、均しく芍薬甘草湯をもちいるべきである。
不管:~であろうとも 任何:どんな~でも:不管任何:どんな~であろうとも。
加減法
1,芍薬甘草附子湯:芍薬甘草湯加附子。芍薬甘草湯証で悪寒する者にもちいる。
凡そ下部(下半身)が冷え、専ら腰が冷える者は腎著湯がよく、脚が冷える者は芍薬甘草附子湯がよい。
苓姜朮甘湯・甘姜苓朮湯・甘草乾姜茯苓白朮湯・腎著湯じんちゃくとう:袪湿散寒・止痛:下焦の寒湿に適応:茯苓6 乾姜3 白朮3 甘草2:寒湿の腰痛・クーラーの冷え症(五積散も苓姜朮甘湯を含むので適用する)。
2.芍甘止痙湯しゃくかんしけいとう:芍薬甘草湯加全蠍・蜈蚣は、脳炎で熱が下がって体が涼となり手足が拘急し、項背が強直する者を治す。
全蝎・全蠍ぜんかつ・全虫・蝎尾かつび:キョクトウサソリ科のキョクトウサソリの全身:辛平小毒:肝経:熄風鎮痙・袪風止痛・解毒散結:破傷風・熱性痙攣・半身不随・顔面神経麻痺:粉末0.4~1g~2g。
蜈蚣ごこう・ごしょう:オオムカデ科:辛温有毒:熄風鎮痙・解毒・抗痙攣。
3,加味芍甘湯:芍薬甘草湯加紫石英・大棗・炒小麦ショウバク。背中が反り返り、発作時は着席不能で、発作が止めば平常人となる者を治す。
重鎮安神剤の紫石英:肝陽上亢・陰虚火旺の動悸・煩躁に適用。
浮小麦ふしょうばく:イネ科小麦の未成熟でやせた粒で水面に浮くものを良品とする。これにだわらず一般に年月のすぎた小麦で代用する:甘淡涼:心経:止汗・養心安神:止汗には麻黄根・牡蛎・黄耆を加える。