芎帰膠艾湯の解説

2025/11/5  2026/10/14改訂

芎帰膠艾湯と医案

芎帰膠艾湯:補血止血・調経安胎:阿膠3・艾葉3・炙甘草3+当帰4・芍薬4・川芎3・干地黄6(阿膠3・艾葉3+四物湯)。

以上六味に日本酒60mlを加え煎じ、滓を去り、阿膠3g、を加え、再び火にのせ溶解して温服する。前後に酒を加えてもよい。酒をきらう者は水煎してもよい。一般には水煎する。

芎帰膠艾湯は、諸出血が続いて貧血するものに用いる。

熱状のないものに用いる。

「目標」

妊娠時の子宮出血、子宮内膜炎による赤白帯下、痔出血。血尿、外傷後の内出血、紫斑病(帰脾湯・帰脾湯合甘麦大棗湯・逍遙散・半夏厚朴湯・当帰芍薬散など)、貧血(当帰芍薬散・帰脾湯・十全大補湯)、流産癖(当帰芍薬散)、子宮癌などの虚寒性出血、吐血・喀血・口内出血・眼科出血(血府逐瘀湯)で顔面蒼白者、下焦虚寒、肛門出血、腎結石や腎結核や膀胱結核などの血尿。

気鬱のあざ:ぶつけた憶えが無いのに腕・足にあざができるのはすべて気鬱が原因であり半夏厚朴湯・逍遥散・当帰芍薬散を使う。帰脾湯のあざは心脾両虚が原因で気鬱ではない。疎経活血湯(瘀血と血虚が原因のあざ)。

心脾両虚の症状:眩暈・動悸・健忘・不眠・多夢・面色不華・食欲不振。

「類聚方広義」吉益東洞原著、尾台榕堂校註

186,芎帰膠艾湯

「漏下ロウゲ、腹中痛、及び 吐血下血する者を芎帰膠艾湯は治す」

此の条文は、漏下ろうか・ろうげ、流産後、下血して絶えず(痔の下血も)、妊婦下血、妊婦腹中痛を指している。

「類聚方広義」「妊婦顛躓テンチ(つまずき倒れる)して胎動心に沖チュウし、腹痛腰股ヨウコに引き、或は胎萎縮状を覚え、或は下血止まざる者には此方を用ゆべし、胎殞タイイン(落下し流産する)せざるものはすなわち安し、若し胎殞するものは則ち産す」また「腸痔、下血綿々として止まず、身体萎黄、起きれば則ち眩暈、四肢力なく、少腹刺痛(桂枝茯苓丸)する者を治す。若し胸中煩悸ハンキ、心悸鬱結して、大便燥結する者には瀉心湯(三黄瀉心湯)、黄連解毒湯を兼用す」「血痢止まずして腹満、熱実症なく、唯腹中攣痛、唇舌乾燥する者には此方 間々効あり。婦人妊娠毎に堕胎する者(当帰芍薬散)あり、産する毎に育たざる者あり。この症の人は始終此方を服し、五月以後は厳に枕席(性交)を慎み、以って不育の患いを免れるべし、若し浮腫小便不利する者は当帰芍薬散に宜し」

三黄瀉心湯:大黄3 黄連3 黄芩3g:清熱瀉火・解毒・化湿・瀉下・

止血には冷服する「黄連+黄芩」で心火(不安感)胃火・胆熱を冷ます。

黄連解毒湯は顔が赤くのぼせ、落ち着きがなく精神状態が興奮性を呈する神経症に適応する。高血圧症・更年期障害・神経症に応用:消炎・鎮静・燥湿:

黄連1.5g 黄芩3g 黄柏1.5g 山梔子2g。

・妊婦が転倒し、胎動は心に上衝し、腹中腰股に引き、或は胎児が萎縮する様におぼえ、或は下血のやまない者は芎帰膠艾湯を用いる。

胎児が下らないものは安胎し、落ちたものは流産する。

・痔の下血が続いて止まらず、身体萎黄して、立てば眩暈し、手足に力無く、少腹刺痛する者を芎帰膠艾湯は治す。

・もし胸中煩悸し、心気鬱塞し、大便秘結する者は、

芎帰膠艾湯に黄連解毒湯や三黄瀉心湯を兼用する。

(心気鬱塞する者は芎帰膠艾湯合黄連解毒湯)

(大便秘結する者は芎帰膠艾湯合三黄瀉心湯)。

(黄連解毒湯は、脾も含めて三焦の熱を冷ます)。

(三黄瀉心湯:大黄3 黄連3 黄芩3g)。

(大黄:苦寒:攻積導滞・瀉火涼血・袪瘀通経:駆瘀血薬)

・血便が止まないが、腹満熱実症ではなく、ただ腹中攣痛して唇舌乾燥する者に、

芎帰膠艾湯は時には効果がある。

婦人にして妊娠するごとに堕胎する者あり。毎回育たない者あり(当帰芍薬散)。このような人は、終始 芎帰膠艾湯を服し、五ヶ月以降は、厳に枕席チンセキ(性交)を慎めば、不育の患いを免れるべし。

若し浮腫し、小便不利となれば当帰芍薬散がよい。

・・・以上、「類聚方広義」の解説。

「勿誤薬室方函口訣」浅田宗伯(明治11年)

「芎帰膠艾湯は「止血の主薬(三黄瀉心湯)とす。故に漏下胞阻に用いるのみならず、千金外台(「千金要方」「外台秘要」)には妊娠失仆傷産及び打撲傷損、諸失血に用ゆ。(仆:フ・ホク:倒れる・死ぬ)。千金の芎帰湯、局方(太平恵民和剤局方)の四物湯は皆此方を祖とすれども、阿膠の滋血、艾葉の調経之に加えるに甘草の和中を以てして其の効妙とす」

胞阻ほうそ:妊娠中に下腹部が痛み、ときに性器出血のあるもの。切迫流産などに相当する。