六淫の解説

2023/12/30

六淫ろくいん:風・寒・暑・湿・燥・火

黄帝内経「喜は心(精神)を傷り、怒は肝を傷り、思は脾(胃腸)を傷り、憂は肺を傷り、恐は腎(生命力)を傷り」

風邪の症状:発熱悪風、頭重・頭痛、鼻塞、音声重く、流涙、喉頭発痒、軽微な咳、脈浮緩、舌苔薄白、風邪は神経が侵されたために起こる疾病だという説がある。

寒邪の症状:悪寒発熱、頭項部痛、腰脊強直、全身疼痛、肌膚キフの粟立ち、無汗、脈浮緊、舌苔薄潤:身体冷え、喜熱、排泄物清冷で澄み、喀痰清稀、水様便、きれいな水液を嘔吐する。寒邪が深部に入ると吐き気、腹痛を生ずる。

寒邪が体内に侵入するツボは風門フウモンといわれている。

暑邪ショジャの症状:暑熱と暑湿に分けられる。

暑熱の症状:高熱、口渇、心煩、無汗あるいは大汗出、脈洪大(白虎加人参湯の適応)、高熱では気虚・傷津となり、無力、呼吸短促、舌苔乾燥し、激しいものは中暑という。

暑湿の症状:身熱起伏、四肢倦怠、食欲不振、胸悶、悪心嘔吐、大便異常、小便赤短、脈濡みゃくじゅ、舌苔厚じ:湿邪による胃腸機能の低下を伴う。

湿邪の症状:湿は重濁粘稠で除去しにくく経過は長い。肢体困倦沈重、関節痛、運動障害、食欲不振、消化不良、胸悶、悪心、腹脹、舌苔厚じ、脈濡緩みゃくじゅかん、水腫、白帯下、湿疹。

燥邪の症状:鼻孔乾燥、鼻出血、口乾、口唇乾燥し割れる、咽乾、咽痛、乾咳、皮膚乾燥、舌乾少津、燥邪は体内の水分不足の状態を指す(陰虚も体内の水分・栄養不足)。

燥邪は、「涼燥」と「温燥」に分かれる。

涼燥の症状:悪感・咳・鼻閉、軽い頭痛:涼燥を温めて治す杏蘇散きょうそさん:西からのからっ風邪で生ずる。

温燥の症状:激しい咳、口渇、舌尖紅、咽痛、胸痛し痰に血がまじる:温燥を冷やして潤す桑杏湯・清燥救肺湯。

杏蘇散:涼燥・風寒を温め・宣肺化痰:蘇葉1 半夏1.5 茯苓2 炙甘草0.5 前胡2 桔梗1 枳殻1.5 生姜1.5 橘皮1 大棗2個 杏仁2。

杏蘇散の温薬の蘇葉そよう:紫蘇葉:辛温:発汗解表・行気寛中・安胎・魚毒の解毒。

杏蘇散の寒薬の前胡;苦辛微寒:セリ科白花前胡の根:苦辛微寒:

下気化痰・疏散風熱:風熱が原因の咳・痰を止める。

杏蘇散の桔梗:辛平:肺経:宣肺袪痰・排膿消腫・引経上浮:桔梗石膏。

杏蘇散の杏仁は苦温で肺を利し、麻黄の宣肺平喘作用を助ける。

温燥を治す清燥救肺湯:温燥・燥熱の邪による乾咳・無痰に:桑葉3 石膏5 人参1 胡麻仁 阿膠2 麦門冬3 杏仁2 枇杷葉3 炙甘草1。

清燥救肺湯の桑葉:袪痰・鎮咳・抗菌:肺熱を冷やし・肺を潤し・風熱を冷まし、清肝する:夏の暑気払いのお茶でイライラも清肝する。

清燥救肺湯の生石膏:含水硫酸カルシウム:石膏:甘辛大寒:肺胃経:清熱瀉火・解渇・除煩。

清燥救肺湯の胡麻仁ごまにん・胡麻・黒芝麻・黒脂麻・巨勝子:甘平:肺・脾・肝・腎経:潤燥滑腸・滋養肝腎。

清燥救肺湯の阿膠:滋潤・滋養・止血・皮膚枯燥・口唇乾燥などの燥証・虚証・血証に有効。

清燥救肺湯の燥熱乾咳の 枇杷葉:苦平:化痰止咳・和胃止嘔・清熱:上焦の熱を冷ます。肺熱を冷まし肺炎に。石膏も肺熱をさます。夏によく飲まれる枇杷葉茶。

桑杏湯:温病条辨:潤肺止咳・解表宣肺:温燥・燥熱の 表証(乾咳・少痰の風邪薬)に使用する:桑葉3 杏仁3 沙参4 浙貝母3せつばいも 淡豆鼓3 山梔子2 梨皮10。

桑杏湯の桑葉:袪痰・鎮咳・抗菌:肺熱を冷やし・肺を潤し・風熱を冷まし、清肝する。

桑杏湯の沙参:滋陰潤肺の沙参しゃじん:南沙参のキキョウ科ツリガネニンジン:甘苦微寒:肺・腎経:養陰清肺・清虚熱・潤燥止咳:袪痰作用。

桑杏湯の潤燥化痰薬で冷やし潤す川貝母・浙貝母・象貝母:苦甘微寒:潤燥化痰。

桑杏湯の豆鼓とうし・ずし・淡豆鼓・香鼓こうし:マメ科大豆の種子を加工したもの:苦寒:肺胃経:解表・除煩:軽度の発汗・健胃・消化の補助:乳汁分泌抑制作用:無汗で上腹部膨満感のある感冒に葱白と葱鼓湯とする:陰虚の感冒に使える。

桑杏湯の梨皮りひ:清心潤肺、降火生津、滋腎益陰、生津止渇、除煩祛湿、清熱潤燥、止咳化痰:バラ科ナシ属ナシあるいはホクシヤマナシの成熟果実の皮:ナシの皮は生津するも除湿する。

火邪の症状:熱邪である。高熱、喜冷飲、顔面紅潮、目赤、舌紅、尿赤、舌苔黄、脈数、できものが赤く腫れて熱をもち、痛みがある全身や局所の著明な熱の状態をあらわす。排泄物は粘稠で灼熱感、病勢は急激。

火邪の症状:濃い鼻汁、喀痰黄濃、小便混濁、急性の熱瀉、舌乾少津、口渇冷飲、大便硬、火邪は脈絡を焼灼し出血傾向、神明を擾乱し意識障害、狂躁状態になる。火は虚火(陰虚内熱)と実火、外火と内火(肝火上昇)がある。

癘レイ・ライ:らいびょう・レプラ・えやみ・流行病・はげむ

癘気れいき:六淫とは異なる外因の一つ。戻気れいきともいう流行病の原因で、口鼻から感染。外感病は六淫によるものより多いと言われている。丹毒、コレラ、マラリア、疫痢、ジフテリア等等の原因とされた。