2026/7/15改訂
耳鳴・耳聾
耳鳴は耳聾を伴うことがあり、耳鳴が悪化して耳聾になることがある。
耳鳴も耳聾も、その病因や病理は類似点が多く、腎と密接に関係している。
耳鳴・耳聾の主な病因はいくつかある。
原因(実証)
1,風邪外襲・・清神散・葛根湯・荊防敗毒散・荊芥連翹湯
2,肝胆火盛・・竜胆瀉肝湯・竜胆瀉肝湯合大柴胡湯・小柴胡湯加桔梗石膏
3,痰火鬱結・・もう石滾痰丸・二陳湯加黄芩・黄連・柴胡・枳殻・石菖蒲・竹瀝・姜汁・黄連温胆湯・竹筎温胆湯。
4,瘀阻宗脈・・通竅活血湯・血府逐瘀湯合六神丸・滋腎通耳湯合六神丸
原因(虚証)
5,中気不足・・補中益気湯・益気聡明湯
6,陰血虧損・・人参養栄湯・十全大補湯・八珍湯・帰脾湯
7,肝腎虧損・・杞菊地黄丸・耳聾左慈丸・海馬補腎丸・六味丸・河車大造丸
1,「霊枢れいすう・口問篇」に、「気虚(補中益気湯の適用)で、上気不足すれば、脳は満たず、耳は鳴に苦しみ、頭は傾に苦しみ、眼は眩くらく す」
斜頚やパーキンソン病での頭の前傾して不挙は、気虚?。
気虚よりも肝鬱のようだが、肝鬱気虚なのだろう。
しかし、柴胡桂枝湯の適用は、肩や背中のこり、痙攣、書痙、音楽家に多い音楽家ジストニア、ふるえなどである。
そのほか、柴胡桂枝湯は斜頚しゃけい・チック病(抑肝散加陳皮半夏の適用も)・癲癇てんかん、あるいは腰や腹が引きつって痛むものなどに応用される。
2,「霊枢・決気篇」に、「腎精が脱する者は耳聾す」
腎精から、腎陰・腎陽がもたらされる。
補腎益精の生薬と処方:続断・桑寄生・山薬(長芋:八味丸)・玄参・菟糸子・女貞子・鎖陽・巴戟天・イカリソウ(淫羊藿)・肉ジュ蓉・杜仲・桑螵蛸・鹿茸・竜骨・牡蠣・桂枝・紫河車:六味丸類・八味丸・真武湯・海馬補腎丸・参茸大補丸・河車大造丸。
河車大造丸:成薬:填精益髄:紫河車・亀板・熟地黄・人参・天門冬・麦門冬・牛膝・杜仲・黄柏。代用として紫河車しかしゃ(胎盤):日本に製薬は無いがインターネットで中国から入手可能。プラセンタエキス(日本製)は胎盤エキスである。
3,「霊枢・海論篇」に「髄海ずいかい不足する者耳聾す」
(脳は髄の海:髄海:海馬補腎丸・参茸大補丸・河車大造丸)
4,「素問そもん・至真要大論ししんようたいろん」に、
「厥陰けっちん、邪が勝れば耳鳴 掉眩とうげん す」
「少陰、邪が勝れば耳聾す」
「少陽、邪が勝れば耳聾す」
「素問・気交変大論」に、「炎暑流行し、金肺 邪を受け、耳聾す」
「燥気流行し、肝木 邪を受け、耳の聞くところなし」などである。
5,各経気の厥ケツ による耳鳴・耳聾で、「少陽の厥、則ち暴聾す」
「手の太陽経の厥逆すれば耳聾 泣出す」
「厥逆」と「厥」には三つの意味がある。
手足の厥冷・突然の意識障害・六経不和の症候。
「内経」の時代にすでに、耳鳴・耳聾の病因が、外感と内傷に区別され、
さらに虚実の違いが弁証されている。
『黄帝内経こうていだいけい』(以下、『内経』)については、それが中国の漢代(前206~ 後220年)頃に編纂と推定さ れ『素問そもん』と『霊枢れいすう』二部の合計46巻162篇か らなっている。著者は不明。
「傷寒論」は:西暦200年頃 張仲景ちょう ちゅうけい(張機ちょうき)によるとされている。
漢の張仲景「傷寒論・弁少陽病脉証併治べんしょうようびょうみゃくしょうへいぢ」の中で「少陽 中風、両耳聞くところなし」は、少陽病・柴胡証の七症:往来寒熱・胸脇苦満・口苦・咽乾・目眩・黙黙不欲飲食もくもくとしていんしょくをほっせず・心煩喜嘔のどれか一症あれば、柴胡剤の使用可となるが、一症あれば、傷寒の耳鳴・耳聾に、柴胡剤を使えることを示唆している。たとえば、カゼ後の難聴に柴蘇散さいそさん(小柴胡湯合香蘇散)。
「諸病源候論・耳病諸侯」
「耳鳴・耳聾には、外感と内傷の区別があり、さらに虚実の区別があるが、いずれも腎虚と関係がある。」
「腎気は耳に通ず。耳は宗脈そうきの聚あつま る所」
宗脈:宗は総合の意味。
1.宗脈:多くの経脈の総合する場所。
「霊枢・口問篇:目は宗脈の聚る所なり」
五臓六腑の精気は宗脈を通じて目に注ぎ、目はその機能を発揮する。
2.宗脈:肺に集中する経脈をさす。
「精気調和すれば、腎臓は強盛して、耳は五音を聞く」
「労して血気を傷り、さらに風邪を受ければ、腎臓を損して腎精は脱し、精脱すれば耳聾す」
「五臓六腑、十二経脈の病変のすべてが、耳鳴・耳聾を起こし得るのは、
いずれの臓腑経絡も耳を絡っているためである」
「「外台秘要げだいひょう」では、
腎虚し風邪が絡に入るものを風聾フウロウと称する。
「千金要方せんきんようほう・耳」は、
耳聾を分類して、労聾、風聾、虚聾、毒聾、久聾。
「済生方さいせいほう・耳論治」は、疲労過度、精気の内虚に乗じて、
風寒暑湿の邪が虚に乗じて侵入し、あるいは喜怒憂思の七情が鬱結して内傷となり、耳鳴・耳聾を引き起こすことを論じている。
朱丹渓しゅたんけい の「丹渓心法たんけいしんぽう・耳聾」では、
「耳聾は皆 熱に属す」とし、少陽病、厥陰の病で耳聾するものは熱が多い。
また、陰虚火動の耳聾(知柏地黄丸)や外邪の化火による耳聾の多くは、大病の後にみられ、降火すべきである。
滋陰降火湯:万病回春:肺腎陰虚を滋補肺腎・清熱:当帰 白芍 生地黄 熟地黄 天門冬 麦門冬 白朮 陳皮 黄柏 知母 炙甘草 生姜 大棗。
肺陰虚証の主症状:乾咳・無痰・血痰・嗄声・口乾・五心煩熱・皮膚乾燥:麦門冬湯・滋陰降火湯(肺腎陰虚)・養陰清肺湯・沙参麦冬湯。
陰虚火旺:内傷七情で肝鬱化火したり、房室不節で腎陰が消耗し陰虚火旺となる(知柏地黄丸):五心煩熱・顴紅・口渇・冷飲を好む・舌質紅・脈数など熱証を呈する:保陰煎:滋陰降火・固胎。
保陰煎:景岳全書:滋陰降火・固胎し滑胎を予防:
生地黄 熟地黄 白芍 山薬 続断 黄芩 黄柏 甘草。
続断:マツムシソウ科川続断の根:苦辛微温:肝・腎経:補肝腎・続筋骨(筋骨を修復する)・活血・安胎(滑胎に):打撲・捻挫・骨折・腰や下肢の疼痛。
明代みんだい の「明医雑著みんいざつちょ・巻三」では、「世人は多くは耳鳴・耳聾を腎虚となして治すも効かず。殊に、痰火上昇し、耳中に鬱して耳鳴をなし、鬱 甚だしければ壅閉ヨウヘイするを知らず。
もし耳鳴・耳聾に遇えば、飲食厚味いんしょくこうみ、上焦にもともと痰火のあるを審らかにし、清痰降火により之れを治す」。
572:痰の症状も患部は重苦しくなるが、その場合は「朝起きた時がひどい」ので去痰剤を使う:二陳湯・平陳湯・苓桂朮甘湯・半夏厚朴湯・釣藤散・六君子湯・半夏白朮天麻湯・抑肝散加陳皮半夏・温胆湯・竹筎温胆湯・二朮湯。
竹筎温胆湯:清化熱痰・和胃降逆・清熱解欝・滋陰益気:温胆湯(製半夏6 陳皮3 茯苓6 炙甘草1 枳実1 竹筎2 乾生姜1g)+(柴胡2 黄連1 香附子2 桔梗2 麦門冬3 人参1):胆熱上擾。
「古今医統ここんいとう」は、気虚(補中益気湯)からも耳鳴・耳聾が起こることに重点をおいている。
気虚の全身症状:倦怠無力感(鬱的)・元気不足・息切れ・物を言うのがおっくう・動きたがらない・声に力がない・自汗・舌質が淡色あるいは胖大で締まりがなくフニャフニャ・脈は細数で無力:補中益気湯・六君子湯。
張景岳ちょうけいがく の「景岳全書」は、「閉」として分析し、
耳聾を、火閉、気閉、邪閉、竅閉、虚閉の五種にわけ、さらにそれぞれの虚実を弁じている:六神丸・牛黄清心丸など開竅剤を併用する。
「寓意草ぐういそう」では、耳鳴・耳聾は「痰より治し」、
「医林改錯いりんかいさく」は「瘀より治す」など独自の内容をもっていた。
王清任おうせいにん著『医林改錯』。
病因と病理
耳鳴・耳聾は、歴代の論述から、虚、風、火、痰、瘀の五つに分けることができる。
1,体虚腎虧 たいきょ じんき
2,外邪侵襲
3,肝火上擾 かんか じょうじょう
4,痰濁が清竅を阻む たんだくが せいきょうをはばむ
5,宗脈の瘀阻 そうみゃくの おそ
1,,体虚腎虧
身体虚弱、病後の精血の衰え、情欲のままに腎精を傷耗して、耳鳴・耳聾を起す。
「耳は腎の外竅がいきょう」であり、
「耳は十二経や宗脈の灌注カンチュウするところで、脳に内通している」。
「腎は精を蔵して骨髄を主り、脳は髄海である」ので、腎精が充実すれば髄海は濡じゅ(潤沢な様態)を得て、聴覚は正常に働く。
腎精が虚すれば髄海は空虚となり耳鳴・耳聾を起す。
耳鳴・耳聾は、脾虚により気血生化の源が不足し、陽気が振るわず、清気が昇らないことによるものである:
補中益気湯や六君子湯・参苓白朮散・小建中湯が適用である。
「古今医統大全・耳聾」は、「大病の後にして耳聾する者は、多くは気虚なり。もし老人の耳聾、漸漸重きは、また気虚である」と強調している。
補中益気湯や六君子湯が適用である。
2,外邪侵襲
風邪や風熱を感受し、清竅を壅閉すると耳鳴・耳聾となる。
耳だれが塞ぎさらに風熱を感じても発病する。
荊芥連翹湯は、食欲がある人の耳だれ・難聴・耳鳴り・中耳炎・蓄膿症に使うが、肝胆経に異常があり(柴胡+黄芩)、食欲があるが何を食べてもおいしいという味音痴に使う。
外邪の侵襲は、腎虚によるのが普通である。
外邪が太陽膀胱経を侵襲すると「腎と膀胱は表裏をなしている」ので、
腎に裏伝し、腎の竅に影響すると耳鳴・耳聾となる。
沈金鰲(ちんきんごう)の「雑病源流犀燭ざつびょうげんりゅうさいしょく・耳病源流」は、「腎虚があり、風邪が経絡を伝い、耳に入ることにより卒聾そつろう、暴聾となる」。また、正気不足、気血虧損によって邪を感受した際、外へ駆邪できず、邪が耳に停滞して耳鳴・耳聾となるものもある。
「聖済総録 せいさいそうろく・耳門」に、
「久聾きゅうろうは、腎虚し血気不足して、風邪停滞するためである」。
2,肝火上炎
ストレスとなる七気:喜・怒・憂・思・悲・驚・恐の過多により、情志が抑鬱し、肝気が疏泄を失い、肝気が鬱して火と化し、清竅が蒙閉もうへい されると往々にして耳鳴・耳聾を起す。大柴胡湯合竜胆瀉肝湯。
少陽胆経は、上って耳に入り、下って肝を絡い、胆に属するので、肝胆の火(イライラして生ずる熱)が循経して耳に上壅じょうよう すれば、耳鳴・耳聾を生じる。女性は加味逍遙散が多い。竜胆瀉肝湯・荊芥連翹湯。
「雑病源流犀燭・耳病源流」に
「肝胆の火が盛んとなり、耳内に「蝉鳴」し、徐々に耳聾に至る者あり」とある。
大柴胡湯合竜胆瀉肝湯。
肝火上炎の繁用処方は、竜胆瀉肝湯・大柴胡湯・加味逍遙散である。
肝火の上擾は、普通は腎虚によるもので、腎水の不足により水(腎)が木(肝)を涵さなくなり、肝火が偏亢し、肝胆経を循って上擾する。
また、腎水不足は、火の偏亢を起こし、上に妄動して耳鳴・耳聾となる。
4,痰濁が上に、耳の清竅を阻む
もともと肥満体で、厚味を多食し、痰濁が内盛して、上の清竅を阻塞すると耳鳴・耳聾になる。
痰濁の症候:頭が重く痛み、めまいをともなう。
胸や腹の膨満感や苦悶感・水様物の嘔吐・舌苔がじ苔:半夏白朮天麻湯。
痰濁擾心が長期に停滞:鬱して化熱したり内傷七情で化火して痰火となり神明を擾乱すると:健忘・イライラ・めまい・頭痛・耳鳴・顔面紅潮・咽の乾燥感・胸悶・呼吸促迫・咳嗽・黄痰・舌苔黄じ・脈滑数:黄連温胆湯。
痰飲の処方:平陳湯・二陳湯・六君子湯・半夏厚朴湯・二朮湯・温胆湯・導痰湯・竹筎温胆湯。
あるいは、素より湿熱が内盛しており、蘊聚ウンジュして痰となり、久鬱して火を生じ、痰火が上昇して清竅を阻み耳鳴・耳聾となる。
ほかには、痰火が胃熱と関係し、膏梁こうりょう厚味の食物摂取の過多により、胃熱が上昇して痰火となり上に清竅を阻み耳鳴・耳聾となる場合である。
5,宗脈そうみゃく の瘀阻
「耳は宗脈の聚る所」で、十二経脈が瘀阻して絡気ラクキが耳に通じないと、耳は経気の滋養を失って耳鳴・耳聾を起す。または血が耳道を瘀阻しても生じる。
以上の1~5を総合すると、耳鳴・耳聾は、腎虚(腎水が肝木を灌せずして肝風が内動)、風邪、肝火、痰火、瘀阻を原因とする。
発病病理は、腎虚が本であり、風火痰瘀は標である。
腎が本であるが、肝脾とも密接な関係がある。
耳鳴の症状は、常時あるいは間歇的に「蝉が鳴くような」、あるいは「潮が押し寄せるような」、「雷のような音」がして、耐えがたいものである。
耳聾の症状は、聴力の減退、ひどいときは聴力が完全に消失する。
このほか、耳道の閉塞感、耳道疼痛、耳道の痒み、耳殻ジカクの疼痛、耳道流膿などがあらわれる。
耳殻ジカク:外耳の一部で,外耳道の入り口(外耳孔)のまわりをかこむ皮膚のひだ。集音器の役割をし,空気中をつたわってきた音波をとらえ,外耳をへて鼓膜に送る。耳介じかい・耳翼じよくともいう。
耳鳴・耳聾の全身症状:面色萎黄、唇爪シンソウの蒼白、両頬リョウキョウの 紅潮、頭目眩痛、嘔吐、腰酸腰痛、陽萎早泄、四肢無力、頭痛、半身不随、歩行困難などがみられる。
弁証
1,暴聾と久聾を区別する
「新聾は多くは、多くは外感や痰熱・熱に属し、少陽陽明の火の多きが原因である」:竜胆瀉肝湯合大柴胡湯・加味逍遙散。
「久聾キュウロウは、聴覚が次第に減退し、或は耳鳴が転化して起こり、
多くは腎虚に属する:耳聾左慈丸・海馬補腎丸・真武湯・桂枝加龍骨牡蠣湯・河車大造丸などを使う」。
河車大造丸:中国成薬:填精益髄:紫河車・亀板・熟地黄・人参・天門冬・麦門冬・牛膝・杜仲・黄柏。代用として紫河車(胎盤):日本に製薬は無いがインターネットで入手可能。プラセンタは胎盤エキスである。
2,症状の虚実を弁別する
一般に、突然に、耳鳴・耳聾が起こるものは実であり、次第に起こるものは虚である。
実証は、風、火、痰、瘀に分けられる。
風:耳の中が痒いもの。
火:心煩易怒でひどくなる:肝火・心火。
痰:肥満で耳鳴が重濁で塞がったようで舌苔じ(厚ぼったい舌苔)。
瘀:面色黧黒レイコク、舌暗色・紫暗。
虚証は、気虚、血虚、肝虚、腎虚に分けられる。
気虚:倦怠無力、顔面淡で白っぽい:補中益気湯・黄耆。
血虚:皮膚甲錯でザラザラ、唇白い:四物湯加味・十全大補湯。
甲錯コウサクは、皮膚の艶がなくなる甚だしいもので、肌膚甲錯キフコウソクは、皮膚が乾し肉のようになり、触った感覚は、おろし金のようになる。
肝:脇痛をともなう耳鳴・耳聾:柴胡剤。
腎虚:腰酸をともなう耳鳴・耳聾:補腎剤。
「耳鳴・耳聾は、痰あり、気虚あり、陰虚あり、肝火あり。
若い者では多くは痰火が原因で、中年は必ず陰虚である」
標本緩急に注意する。
耳鳴・耳聾は、腎が本であり、風火痰瘀が標であるが、
臨床上では標本が互いに見られる。
肝腎不足では、肝火が偏亢し、顔面昇火、心煩易怒、腰膝酸軟などがあるが、弁証時には、肝火・痰火を兼有するか標症をよく観察し、同時に、肝虚、腎虚、肝腎両虚を区別する。
一般に、耳鳴・耳聾の暴発は標症が主であり、長く続き癒えないものは本虚が主である。久聾久鳴キュウロウキュウメイし、突然ひどくなるものは、本虚標実に属する。正虚は本を治すが、それは腎を治すことが主である。
原因(実証)
1,風邪外襲・・清神散・葛根湯・荊防敗毒散・荊芥連翹湯
2,肝胆火盛・・竜胆瀉肝湯・竜胆瀉肝湯合大柴胡湯・小柴胡湯加桔梗石膏
3,痰火鬱結・・もう石滾痰丸・二陳湯加黄芩・黄連・柴胡・枳殻・石菖蒲・竹瀝・姜汁・黄連温胆湯。
4,瘀阻宗脈・・通竅活血湯・血府逐瘀湯合六神丸
原因(虚証)
5,中気不足・・補中益気湯・益気聡明湯
6,陰血虧損・・人参養栄湯・十全大補湯・八珍湯
7,肝腎虧損・・杞菊地黄丸・耳聾左慈丸・海馬補腎丸・六味丸
1,風邪外襲
暴鳴・暴聾し、頭痛悪風、発熱、体痛、耳内掻痒、舌苔薄白、耳の奥が腫痛し歯齦も腫痛する、耳中疼痛・突然激痛、出血、流膿。
風邪外襲の治法:袪風解表:清神散:世医得効方:袪風解表:菊花・羗活・僵蚕各五分、木通・川芎・防風・荊芥・木香・甘草・石菖蒲各四分:耳鳴・耳聾。荊防敗毒散合六神丸。
清神散の防風・荊芥・羗活・菊花は疏風解表する。石菖蒲・木通は通竅開閉する。
荊防敗毒散:無汗・辛温解表・袪風邪・袪湿邪・止咳化痰・止痛:
荊芥3 防風3 羗活2 独活2 柴胡3 前胡2 川芎2 桔梗1 枳穀2 茯苓3 炙甘草1 生姜1 薄荷1:無汗で疲れ易い体力の無い人の風邪。
風熱上擾するものには、防風通聖散加減。防風通聖散:疏風解表・瀉熱通便:風熱・突然生じる風湿熱の痔や耳鳴・耳聾。
耳鳴・耳聾に、発熱するものには金銀花・連翹・大青葉タイセイヨウ・板藍根バンランコンを加える。項背強急するものには葛根などの解肌薬ゲキヤクを加える。
2,肝胆火盛
暴鳴・暴聾し、頭痛・顔面紅、口苦咽乾、心煩易怒、夜寝不安、大便秘結、舌紅苔黄、脈弦数。暴怒して肝を傷り、肝胆の火が上逆した症。憂鬱気結して耳聾する気聾である。気鬱が火を生じて本症となる。
肝胆火盛の治法:清肝泄熱:竜胆瀉肝湯・当帰竜薈丸・大柴胡湯:木通・車前子・沢瀉で、導熱下行し肝胆の火を鎮静する。
柴胡+黄芩は、肝胆湿熱・肝胆の邪熱冷まし乾かし、疏肝する組合せ。竜胆草・山梔子・黄連・大黄・芦根などの苦寒で瀉火する。
3,痰火鬱結:痰火鬱結と肝胆火盛は相互に転化し、相互に兼挟する。
蝉鳴センメイし、時に閉塞し聾となり、胸悶、痰多、口苦、大便小便不爽、舌苔黄薄で厚ぼったい苔、脈滑数。
痰火鬱結の症状:舌苔黄薄で厚ぼったい苔、脈滑数。
痰火鬱結の治法:化痰清火・和胃降逆:もう石滾痰丸:二陳湯合黄連解毒湯
あるいは二陳湯加黄芩・黄連・柴胡・枳殻・石菖蒲・竹瀝・姜汁など。
もう石滾痰丸の、大黄・黄芩・沈香は清火下気セイカゲキし、もう石(もう は、石偏に蒙)は、重墜下痰ゲタンし、体が丈夫で邪実に適用される。
化痰作用の二陳湯に、黄芩・竹瀝・黄連・枳殻・石菖蒲などを加えて、
瀉火行気しゃかぎょうき・化痰開閉し、痰火の症に用いる。
4,瘀阻宗脈おそそうみゃく
顔は黒ずみ、耳から陳血が流れ、膠結する。舌質は紫暗・瘀斑があり舌苔薄。
十二経脈はみな耳に上絡し、耳は宗脈のかかわる所である。痰瘀が互結したものも臨床上よくみられる。
瘀阻宗脈の治法:通竅活血:通竅活血湯。方中の、赤芍・桃仁、紅花・当帰・丹参で活血袪瘀し、老葱ろうそう・麝香で通竅している。臨床上は、瘀痰互結がみられるので、活血化瘀通竅の処方に、浙貝母せつばいも・海藻・昆布などの化痰軟堅薬を加える必要がある。
貝母ばいも:浙貝母(象貝母ショウバイモ)と川貝母の区別があり、浙貝母を実証に、後者を虚証に用います。また、価格的にも川貝母の方がかなり高価。
象しょう:漢音はショウ、呉音はゾウ:漢方では漢音を使い、仏教では呉音を使う。
5,虚証:中気不足
中気不足の症状:面色萎黄、倦怠乏力、精神疲労して食少、大便溏、脈細弱あるいは大で無力、舌苔薄、舌淡で歯痕あり。脾虚で中気不足により気血生化の源が虧損し経脈は空虚となり、耳に上奉できなくなり耳鳴・耳聾。あるいは脾虚で陽気不振で清気が上昇できず耳鳴・耳聾する。
中気不足の治法:益気聡明湯・補中益気湯。処方中の黄耆・人参・升麻は、益気昇提し、葛根・蔓荊子は薬を引いて耳部に到達させる。
益気聡明湯:東垣試効方・眼門:金の時代、李杲りこう(李東垣)1266年:黄耆、甘草、人参、升麻、葛根、蔓荊子、芍薬、黄柏:
白内障で気虚による者、脾胃不足、内障、耳鳴、昏暗、視物不能:
滋腎明目湯合補中益気湯。
滋腎明目湯:当帰3 芍薬3 川芎3 熟地黄3 生地黄3 桔梗1.2 人参1.2 山梔子1.2 黄連1.2 白芷1.2 蔓荊子1.2 菊花1.2 甘草1.2 細茶1.2 灯心草1.2:白内障で血虚による。
腎気不足を兼ねている者には、熟地黄・山薬・菟糸子・杜仲などを加える。
心気不足には、五味子・遠志おんじ・酸棗仁・柏子仁などを加える。
肝胆の火を兼有するものは、山梔子・牡丹皮・車前子などを加える。
6,陰血虧損
陰血虧損の症状:顔色につやがない、唇爪は蒼白い、脈細無力、舌苔薄、
舌質淡は、皆 陰血虧損の症状である。
陰血虧損の治法:気血の補益:八珍湯・人参養栄湯・十全大補湯・帰脾湯。
処方中の
健脾益気の人参・黄耆・白朮・茯苓・甘草。
養血補血の当帰・熟地黄。芍薬・川芎。
あるいは血肉を充養する鹿角ろっかく・亀板きばんなどの補陽益陰・血液滋生の薬を加える:参茸大補丸。
心血不足には、竜眼肉りゅうがんにく・益智仁やくちにん・酸棗仁・麦門冬などを加える:天王補心丹・酸棗仁湯。
天王補心丹:人参 五味子 当帰 天門冬 麦門冬(心血不足) 柏子仁(心気不足) 酸棗仁(心気不足) 玄参 茯神 丹参 桔梗 遠志 黄連 生地黄 石菖蒲。細末を煉蜜丸とし梧桐子大に朱砂衣。眠前毎服10丸。灯芯草や竹葉の煎湯で:万病回春。
帰脾湯:補脾・養心安神・摂血:心脾両虚・心血虚:不安感・動悸・不眠・不安感のある気血両虚に:黄耆2 人参3 白朮3 当帰2 茯苓3 竜眼肉3(心血不足) 酸棗仁3(心気不足) 遠志2(心気不足) 炙甘草1 木香1 大棗2 生姜1g。
肝血不足には、木瓜もっか・女貞子じょていし・旱蓮草かんれんそうを加える。
血虚有熱のものには、柴胡・山梔子などを加える。
7,肝腎虧損
肝腎虧損の症状:耳鳴・耳聾に頭暈目眩、腰酸遺精、脈弦細か細弱、舌質偏紅。あるいは、肢軟腰冷、陽萎早泄、脈沈細、舌苔薄偏淡。肝腎不足で清血が虚衰、あるいは情欲過多で腎精を傷耗して清竅を滋養できない。
肝腎虧損の治法:肝腎の補益:耳聾左慈丸・補腎丸。補腎の六味丸、疏肝鎮肝の柴胡・磁石じせき。
肝陰の虧損が顕著なものには、枸杞子、女貞子、墨旱蓮草を加える:杞菊地黄丸。
枸杞子クコシ:ナス科クコの成熟果実:甘平:肝腎経:滋補肝腎・生精血・清肝火(肝鬱化火を冷ます)・明目:肝庇護作用・腎虚・眼科に杞菊地黄丸:2~6g。
杞菊地黄丸:肝腎陰虚:滋補肝腎・清肝火・明目:枸杞子・菊花・沢瀉・茯苓・牡丹皮・地黄・山茱萸・山薬:(枸杞子+菊花+六味丸)。
補腎丸は、肉ジュ蓉・菟糸子・巴戟肉(巴戟天)・羊腎で補腎し、
当帰・芍薬で補血し、
人参・黄耆で益気し、
乾地黄・石斛せきこくで益陰し、
附子・肉桂で補陽している。
邪実を兼ねるものは袪風の、防風・細辛を加える。
細辛さいしん:辛温:発散風寒・温経散寒・袪風止痛・温肺化飲(小青竜湯)。
瀉火には黄連・黄柏を加える。
化痰には半夏・陳皮を加える。
化瘀には桃仁・紅花を加える。
通竅には、石菖蒲・木通を加える。
耳鳴・耳聾の予後と予防
耳鳴は進行すると耳聾となる。風熱耳聾は耳内に膿を流す。
暴聾の主要原因は、外邪の侵襲、厥気ケッキの上逆である。
厥気けっき:一般に続発する病因となるもので、陰陽の失調、気血逆乱、痰濁閉阻、食積停滞、暴痛などを指し、これらはさらに四肢厥冷、精神失調、突然の昏倒などを引き起こす。
このため、寒暖に注意し、体質を強化し、風邪の侵襲を予防し、穏やかな心を養い、怒りを少なくして気持ちを和らげ、経気を上逆させないようにすることはいずれも暴聾の予防に役立つ。
痰火がもともと盛んなものは、化痰清火の薬を常服すべきである:
半夏瀉心湯・柴芍六君子湯・知柏地黄丸・釣藤散など。
半夏瀉心湯は、半夏・乾姜で胃気上逆をしずめる、黄連・黄芩で、心火を冷ます(不安感・落ち着かない)・胃熱・胆熱を冷やす、乾姜(大熱性)で、腸を温める、人参・甘草・大棗は胃腸・心を補い安定させ、食欲を増す。
黄連+黄芩で、心火(不安感)・胃火・胆熱を冷ます。
柴芍六君子湯:日常のストレスに弱く、腹痛・腹満などをすぐ訴える体質。胃弱の神経症・胃弱の更年期障害・自律神経失調症で主体は胃腸よりも、イライラなど肝鬱による耳聾である。
肝胆の火が偏盛のものは、いつも清肝明目の薬を服用すべきである。耳聾左慈丸や釣藤散・杞菊地黄丸など。
肝気上逆の釣藤散:平肝潜陽・明目・補気健脾・化痰(痰飲):
脾胃気虚・痰湿の肝陽化風に:釣藤鈎 菊花 防風 石膏 麦門冬 半夏 陳皮 人参 茯苓 生姜 甘草:(釣藤鈎+菊花で肝鬱に適応)。
慢性耳聾の原因は、腎虚・気血不足である。このため疲労を避け、セックスを節制することは、耳鳴・耳聾を予防に重要な意味を持つ:
杞菊地黄丸・十全大補湯・海馬補腎丸・小建中湯。
小建中湯証:(腎虚・肝血虚・脾虚)の三点セットに適応する。
耳鳴・耳聾の看護は、耳をほることを禁じ、耳道を清潔にすることである。
まとめ
耳鳴・耳聾は、腎虚が本で、風、火、淡、瘀が標である。病の本質は腎にあるが、肝脾とも密接な関係がある。
治療は、
風邪には疏風解表する:葛根湯・荊防敗毒散・荊芥連翹湯。
肝火が盛んなものは清肝泄熱する:竜胆瀉肝湯・竜胆瀉肝湯合大柴胡湯・小柴胡湯加桔梗石膏・柴芍六君子湯・釣藤散。。
痰火鬱結には化痰清火する:二陳湯加減・半夏瀉心湯・釣藤散。
宗脈を瘀阻したものは活血化瘀する:通竅活血湯・血府逐瘀湯。
陰血虧損には気血を補益する:人参養栄湯・十全大補湯・八珍湯。
肝腎虧損には肝腎補益する:杞菊地黄丸・耳聾左慈丸・海馬補腎丸・河車大造丸、
原則は、胃腸を丈夫にする処方と、上記の処方を組み合わせてる。
めまいがあれば杞菊地黄丸を半量常用し、心血と胃腸を養う処方として人参養栄湯や、肝鬱があり、鬱々として楽しまないなら柴芍六君子湯とする。
柴芍六君子湯:日常のストレスに弱く、腹痛・腹満し便不爽などをすぐ訴える。胃弱の神経症・胃弱の更年期障害・自律神経失調症で主体は胃腸よりも、イライラなど肝鬱である。
胃腸が弱ければそれを第一に考える。胃腸は気血生化の源である。