天王補心丹の解説の改訂

2025/4/21~23 2026/5/25改訂

天王補心丹の口訣集

天王補心丹:心腎陰虚(心腎不交):酸棗仁10 生地黄20 柏子仁10 麦門冬10 五味子10 当帰6 遠志5 丹参5 玄参5 桔梗5g 粉末を蜜丸とし朱砂をまぶし、1回2gずつ服用。

心腎不交の症状:心陰虚の一種:焦躁感・不安感・睡眠時不安・不眠・動悸・手足の火照り・口乾・顔面紅潮・のぼせ・夢精・鬼交・逍遙上逆、頭暈、神経疲労・耳鳴・難聴・目花・小便黄赤で量少・排尿時に熱感。

心陰虚の症状とは、陰虚の虚熱による興奮症状から不眠・動悸・頻脈・多夢・甲状腺機能亢進症・自律神経失調症となり、消耗状態から健忘(緩やかな認知症に天王補心丹)・見当識障害が生じる。

健忘に、帰脾湯、天王補心丹、状元丸、孔子大聖枕中方:万病回春

帰脾湯:胃腸の経絡が栄養不足となり(血虚や失血)そのため不眠となり、発熱し寝汗が生じ、思慮過多で胃腸不調となり、心脾両虚で出血し易く、健忘と動悸が持続し、驚き易く動悸し、不眠となる:万病回春。

帰脾湯:心と胃腸が弱り、嗜眠で食少となり、過度な憂いは胃腸を傷めるため血虚して発熱し、或は手足体が痛み、大便は不調で、或は月経不順で、夕方に発熱し、或は瘰癧(リンパ腺炎・粉瘤など)が生じ、その解消や潰瘍が治らない:万病回春。

帰脾湯:生姜三片、大棗一枚で帰脾湯を水煎服用する。帰脾湯に柴胡と山梔子を加えると心臓神経症やパニック障害・不眠・瘰癧(リンパ腺炎・粉瘤など)などに使う加味帰脾湯となる。

柴胡+山梔子+帰脾湯=加味帰脾湯:万病回春。

天王補心丹:心を安定させ精神を健やかに保つ。体力をつけ意志を強くし、健忘を免れ、持続する動悸を除き、驚き易くて生ずる動悸を鎮め、三焦を清し、痰涎を除き、咽乾を鎮め、精神を養育する:万病回春。

天王補心丹:心腎陰虚:人参 五味子 当帰 天門冬 麦門冬 柏子仁 酸棗仁 玄参 茯神 丹参 桔梗 遠志 黄連 生地黄 石菖蒲。細末を煉蜜丸とし梧桐子大に朱砂衣。眠前毎服10丸。灯芯草竹葉の煎湯で服用:万病回春。

天王補心丹:加減法は熟地黄 百部 牛膝 杜仲 茯神 甘草を各等分、金箔の衣で煉蜜丸とし弾子大。眠前一丸を服用しかみ砕き灯芯草と紅棗の煎液で飲み下す。麦門冬と黄連と生地黄を除く:万病回春。

                           

更年期障害:五十歳前後で腎虚のため、月経が閉止するが、閉止前後に腎虚によって不安感が出る人が多いが、この不安感は「心腎不交」という症状の一つである。心腎不交で手足や顔が火照る人には天王補心丹をつかう。

状元丸:人参 白茯神 当帰 酸棗仁 麦門冬 遠志 竜眼肉 生地黄 玄参 朱砂 石菖蒲 柏子仁 金箔衣 糯米湯で送下:万病回春:健忘。

孔子大聖枕中方:亀甲 竜骨 遠志 石菖蒲 方寸ヒを酒にて調える。日に三服:万病回春:健忘。

癲狂健忘・怔忡・失志・恍惚・胸部・健忘、驚悸、不眠に、六味丸加遠志・石菖蒲・人参・白茯神・当帰・酸棗仁を丸となし服用する:万病回春:健忘。

朱砂シュサ・辰砂シンシャ:心に入って清心安神し、磁石ジセキと共同して重鎮安神して浮陽を摂納し、腎陰を補い、心腎を相交させて心陽が下通し腎精が上承できるようにして心腎不交を治す。

酸棗仁さんそうにん:クロウメモドキ科サネブトナツメの成熟種子の乾燥:養肝・寧心・安神・斂汗:帰脾湯・酸棗仁湯。

柏子仁は思慮過度による心血虚の不眠。酸棗仁はストレスや怒りなどによる肝陽上亢の不眠。

麦門冬には脈を生じる作用がある。

五味子:酸温:肺心腎経:斂肺止咳・生津・斂汗・滋腎渋精・渋腸止瀉。肺気を収斂し咳嗽を止め津液を生じ多汗を収斂する。肺気陰両虚を治す。滋腎渋精は遺精・遺尿・頻尿を治し、渋腸止瀉は久瀉を治す。

遠志:ヒメハギ科イトヒメハギの根:安神・袪痰・消癰しょうよう。

丹参:シソ科タンジンの根:苦微寒:心・心包経:活血袪瘀・涼血・養血安神:冠血管拡張(中国に注射薬有り)・鎮静・精神安定・鎮痛・肝不全 の疼痛・神経衰弱・動悸・不眠・煩躁・不安など心血虚:天王補心丹:2~5g~10~20g

玄参4gげんじん:肺胃腎経:ゴマノハグサ科玄参の根:涼血解毒・降火滋陰・滋陰清熱・瀉火解毒(滋腎陰薬の薬):

涼血・滋陰・解毒作用の要薬。皮膚・頭頸部に働く。冷やし潤す:3~4g、6~10g、10~30g。

天麻・川芎・桔梗は、薬全体を首から上にもっていく引経作用がある。

心腎陰虚の天王補心丹では 逍遙上逆はのぼせてほてるだけで、陰虚(水気不足)のため冷や汗をかかないが、加味逍遙散や逍遙散は往来寒熱(発熱と悪寒が交互に出る)のため発汗後は冷や汗で冷える。

更年期症状で逍遙上逆には、加味逍遙散や天王補心丹である。

加味逍遙散(本来は潮熱)では、カーッとのぼせた後に冷や汗でゾクゾクする往来寒熱の症状がある。

天王補心丹は手足の火照りや顔のぼせだけでゾクゾクの悪寒は無い。

心腎不交は、心陽が下らず腎精の上承と交わらない「心陽偏亢」のことで、心腎陰虚の一種。

心腎不交は、心陽偏亢・心腎陰虚の一種:心気が不足して小腸の伝送が度を失い尿が自然に出る状態(遺尿):心腎不交(桑螵蛸散・

天王補心丹・黄連阿膠湯・桂枝加竜骨牡蠣湯・柴胡加竜骨牡蠣湯)。

朝から何回ものぼせて熱くなる人は、心の症状か虚熱か肝鬱である。

心の症状の心腎陰虚(心陽偏亢)なら天王補心丹であり、

虚熱(腎陰虚)なら六味丸加減方か知柏地黄丸(心の症状は無い)。

肝鬱で冷や汗がでる寒熱往来なら加味逍遙散。

六味丸加減方:杞菊地黄丸・知柏地黄丸・味麦地黄丸・都気丸ときがん(既製品は無い:六地黄丸+五味子:滋補肝腎・斂肺平喘など)。

更年期の目の下のシミ・顴紅では、当帰芍薬散では治らない。

腎陰虚なので六味丸・杞菊地黄丸が適応する。

喘息の腎陰虚の緩解期は八仙丸で、小建中湯が腎陰虚薬の代用となる。

八仙丸の代用薬は小建中湯。

大柴胡湯や竜胆瀉肝湯:イライラして落ち着きが無く(急躁易怒)、肝火のある者の胃痛などに使う。大柴胡湯の心下痞硬は胃熱のため生ずる。易怒や肝鬱が続くと心血不足となり不安感が生じてくるので天王補心丹となる。

体全体を潤す作用の生脈散(普段は発汗過多は無い)が効かないタイプは普段から汗っかきの人で、そのような人には防已黄耆湯や天王補心丹を使う。

生脈散:脈弱・脈結代(不整脈)の動悸・息切れ、倦怠感、言語低微、不安感・恐怖感・虚煩、不眠、多夢、多汗、汗をかきやすい、寝汗、四肢のほてり、口乾、面白・顴紅、舌紅や舌尖紅、舌苔少・光剥、脈細数

防已黄耆湯:金匱要略:木防巳4 黄耆4 白朮2 生姜3 大棗2g:膝痛などの患部は熱感がなく皮膚の色は正常で、風湿の神経痛やリウマチに使い、風邪薬・胃腸の薬でもある。

進行性でない痴呆症であれば予防や治療に天王補心丹がつかえる:健忘・見当識障碍・幻視・幻覚・恐怖感・物盗られ妄想・パニック障碍。

抑肝散加陳皮半夏:電車の中で心悸亢進(パニック障碍)や脳貧血を起すことが恐ろしく、同伴者がなければ外出できない。「漢方診療三十年」大塚敬節

柴胡加竜骨牡蠣湯:自律神経失調症・神経症・心臓神経症・パニック障碍・発作性頻脈・高血圧症・甲状腺機能亢進症・不眠症で心肝火旺・脾気虚・痰湿を呈するものに適応。

パニック障碍:天王補心丹・抑肝散加陳皮半夏・柴胡加竜骨牡蠣湯:加味帰脾湯。

心腎陰虚の天王補心丹は心身の疲労状態に使える: 疲れると落ち着かなくなる状態を改善する:温清飲も疲れると不安感が出てくるが天王補心丹が基本である。

のぼせ(虚熱)だけで冷や汗がない時(陰虚)には天王補心丹(心腎陰虚)を使う。

心腎陰虚(天王補心丹)は、疲労や慢性病などが原因の水気不足による虚熱発生による虚煩の状態。心を遣いすぎて生じた心陰虚は心腎陰虚(天王補心丹)になりやすい:仕事や勉強に集中して疲れると易驚や虚煩となりやすい。

天王補心丹:心腎両虚という腎虚によって不安感が出てくる人に使う:年寄りの物とられ妄想・泥棒妄想で怖がりとなり心配性や不眠・何度も確認行動をとる・・などに3ヶ月以上の服用で効果がある。

天王補心丹(心腎陰虚)と同じくらいの頻度で不安感に帰脾湯(心脾両虚・気血不足)をよく使うが帰脾湯は脾虚が顕著である。

月経に関係する衝任の脈に異常が出てくると腎気不足になり、衝任は心とも関係があるため、心腎の異常がでてくる(天王補心丹:心腎陰虚)。

月経時のイライラ:逍遥散合当帰芍薬散・柴胡桂枝湯合当帰芍薬散。

天王補心丹:心陰虚(心陰虚も心腎不交も心腎陰虚の一種)では、

動悸・のぼせて面紅、疲れると症状悪化し、疲れやすく、顴紅カンコウ、手足の火照り・・が適用に絶対に必要な症状(肝腎陰虚に似た症状)。

肝腎陰虚:肝腎虧損キソン:陰虚内熱の症状を呈し、眩暈・頭脹・はっきり物が見えない、耳鳴・耳聾ジロウ・咽乾口燥・五心煩熱・遺精・不眠・腰膝酸疼・舌絳乾燥ゼツコウカンソウ・脈弦細無力:杞菊地黄丸。

杞菊地黄丸:滋補肝腎・清肝火・明目:疲労により生じる腎虚症状に適応する:運動会や遠足後のかかと痛(腫痛シュツウ):枸杞子・菊花・沢瀉・茯苓・牡丹皮・地黄・山茱萸・山薬(六味丸+枸杞子と菊花)。

補血(貧血にも)の方剤:四物湯・天王補心丹・不安感がある時は帰脾湯・十全大補湯・人参養栄湯。。

人参養栄湯:和剤局方:気血双補・安神・袪寒・止咳・腎虚・血虚:

黄耆2 桂枝2.5 人参3 白朮4 茯苓4 甘草1 当帰4 芍薬2 地黄4 遠志2 陳皮2 五味子1g。(川芎は無い)。

人参3 白朮4 茯苓4 甘草1は脾虚の基本処方。

当帰4 芍薬2 地黄4は、四物湯。

人参養栄湯:和剤局方:気血双補・安神(人参と茯苓と遠志)・袪寒(桂枝)・止咳(人参と五味子と地黄)・腎虚(桂枝・地黄)・脾虚(人参 白朮 茯苓 甘草)・血虚(当帰 芍薬 地黄)。

イライラの状態では加味逍遙散・柴胡桂枝湯や抑肝散が適応するが、長引くと心血の栄養不足になりその症状には帰脾湯(心脾両虚・脾虚の顕著な気血両虚)や天王補心丹(陰虚症状の明らかな心腎陰虚)を使う。

「手足のほてり」「口乾」「顔がのぼせる」の三つの症状が同時にある場合は陰虚である。

585:陰虚と痰:陰虚は不眠の傾向で焦躁感やイライラし易く、疲れると陰虚症状が悪化し不眠が強まる。飲酒などで眠れれば陰虚はよくなるが、飲酒や睡眠薬では痰が生じ、痰と陰虚が酷くなると必ず中風になる。

イライラの処方:加味逍遙散・逍遥散・柴胡桂枝湯・小柴胡湯・逍遙散合当帰芍薬散・柴胡桂枝湯合当帰芍薬散:竜胆瀉肝湯・大柴胡湯・三黄瀉心湯・杞菊地黄丸・酸棗仁湯・柴胡加竜骨牡蠣湯・温清飲。

養血安神薬 :  遠志・酸棗仁・丹参・竜眼肉・茯神・朱砂・磁石・夜交藤:帰脾湯・酸棗仁湯・天王補心丹・人参養栄湯。

夜交藤(タデ科何首烏かしゅうツルドクダミの蔓茎:安神・養血活絡)

出血で動悸・不眠など心神不寧には:遠志・酸棗仁・丹参・竜眼肉・茯神・朱砂・磁石・夜交藤などの養血安神薬(帰脾湯・酸棗仁湯・天王補心丹・人参養栄湯・独参湯)などを配合する。

健忘症は男より女の方が多く、月経が終わった途端に物忘れが多くなる。しかし、しばらくすると回復するが、このとき腎虚を天王補心丹などで補えば早く回復することになる。

発熱と冷や汗は、往来寒熱の症状であり、悪寒と発熱が交互に出てくる症状は、心腎陰虚の天王補心丹の症状ではなく、肝胆に関連する症状で加味逍遙散の適応。

加味逍遙散の証は本来は「潮熱」であるが往来寒熱もある。

心腎両虚という腎虚によって、不安感が出てくる人には、天王補心丹(心腎陰虚の薬)を使う。

腎虚の症状:冷え症・寒がり・足冷・面色蒼白・面色晦暗。顔色淡白又どす黒い・怖がり・不安感・頭暈・眩暈・耳鳴・難聴・腰膝酸軟無力・驚くと腰を抜かす・尿量増多・尿後余瀝・遺尿・尿閉・性機能減退・不妊・腫痛。

七情鬱結:喜・怒・憂・思・悲・驚・恐の七情が過ぎて瘀血が生じる。

不安感:帰脾湯・天王補心丹・人参養栄湯・桂枝加龍骨牡蠣湯・柴胡加竜骨牡蠣湯・苓桂朮甘湯・苓桂甘棗湯・半夏厚朴湯・半夏瀉心湯・酸棗仁湯・黄連阿膠湯・十全大補湯・抑肝散加陳皮半夏・生脈散。

生脈散が効かない人は普段から汗っかきの人で、それには防已黄耆湯や天王補心丹を使う。

生脈散は体を動かして汗が出た人に効くのであって、普段からダラダラ汗がでる人には効かない。

生脈散は夏バテに効く。

生脈散:脈弱・脈結代の動悸・不整脈・息切れ・夏バテ・倦怠感・不安感・恐怖感・虚煩、不眠、多夢、汗をかきやすい、寝汗、四肢のほてり、口乾、面白・顴紅、舌紅や舌尖紅、舌苔少苔光剥、脈細数。

心腎不交:天王補心丹(心腎陰虚)・黄連阿膠湯(心腎不交)・桂枝加竜骨牡蠣湯・柴胡加竜骨牡蠣湯・桑螵蛸散。

黄連阿膠湯:心腎不交:黄連3 黄芩2 白芍3 阿膠3 鶏子黄1個:動悸・胸悶し煩躁・熱感やのぼせで不眠・各種出血:鼻衄・不眠症・かさかさ皮膚炎・皮膚の痒み:心腎不交:胸悶し居ても立ってもいられない状態。

出血に使う処方:芎帰膠艾湯・帰脾湯・黄連阿膠湯・三黄瀉心湯・黄連解毒湯・鹿角膠・阿膠・独参湯・生地黄。