リウマチなどの痹証の解説

2026/8/18~27

痹証

痹ヒとは、つまって通じないという意味である。

痹証とは「風寒湿熱の邪」を感受して生ずる肢体、関節の疼痛、動かし難く、しびれ、重苦しくなり、活動制限を主とする病証である。

その主な病理は、気血の流れが痹阻されて不通となり、

筋脈や関節が栄養されないために生ずる。

「素問・痹論」では

風気によって「行痹」となり、

寒気によって「痛痹」となり、

湿気によって「着痹」になるといい、

痹証とは風寒湿を重ねて感受したものである。

「素問・痹論」では、痹証の発生が、飲食や生活環境・精神生活と関係があるとしている。「飲食、居処は痹証の本である」とある。

「素問・痹論」では、「風寒湿の邪気」が筋骨に留まるので痛む。

痛みが長く続き深入すると、営衛の流れが渋滞し、皮膚の栄養が失われてしびれて感覚がなくなってしまう。

病邪が深入すると、五臓六腑に伝わり「臓腑の痹証」となる。

またもし

「脈が通じないで煩躁すると「心下に動悸」が生じ、

気が上に暴すると「喘息、げっぷやおくび」を生じ、

厥気が上ると「恐怖を生じる」ため「心痹」となる。

厥ケツ には、極まるという意味がある。

厥気けっき:一般に続発する症状の病因となるもので、

「陰陽の失調、気血逆乱、痰濁閉阻、食積停滞、暴痛」などを指し、

これらはさらに「四肢厥冷、精神失調、突然の昏倒」などを引き起こす。

「金匱要略・痙湿喝病脈証并治篇」では「湿痹」の証候と治法を示している。

「湿痹」:「太陽病で関節が疼痛し、かつ煩躁し、脈が沈かつ細(または緩)であるのを「湿痹」という。

「湿痹の症状」は、小便不利で大便は反ってよく出るので、

「小便を利すべき」であるとしている。

宋の医方では、痹証を治す薬物として多くの動物薬を用いている。

特に虫類薬で、蜈蚣ゴショウ(むかで)・烏蛇ウダ(蛇)・白花蛇・全蝎ゼンカツ(さそり)・地竜(ミミズ)・原蚕蛾ゲンサンガ・僵蚕キョウサン・蝉脱センダツ(蝉の抜け殻)の類である。

蜈蚣ごしょう:ムカデの類:熄風鎮痙・解毒・抗痙攣:内風による癲癇テンカンや有毒物質による痙攣を鎮めるなど色々な物に対する解毒作用がある。

烏稍蛇うしょうだ・烏蛇:ヘビ科烏風蛇の内臓を除いて乾燥:

甘辛:肝経:袪風湿・鎮痛:白花蛇と同じだが無毒で効果は弱い。

全蝎ぜんかつ・全蠍・全虫ぜんちゅう・蝎尾かつび:キョクトウサソリ科のキョクトウサソリの全身:辛平小毒:肝経:熄風鎮痙・袪風止痛・通絡・解毒散結:破傷風(五虎追風湯)・熱性痙攣・半身不随・顔面神経麻痺(牽正散)

原蚕蛾:原蚕蛾は、ふつう 原蚕の成虫であるガ を指す言い方です。
原蚕は、蚕種のもとになるように系統を整えて育てたカイコという意味があります。

蝉退せんたい・蝉脱せんだつ・蝉衣センイ:セミの抜け殻:鹹甘寒:肺肝経:疏散風熱・利咽喉・袪風止痒・退目翳・定驚癇:肺熱による嗄声サセイ・小児の夜泣き・角膜混濁1~5g~10g:五虎追風湯。

牽正散:「寒性の風痰」の口眼喎斜に:薬性は温に偏っているので冷えを伴う「風邪と痰飲」による顔面麻痺に使える:白附子・白僵蚕・全蝎:

気虚血瘀や肝風内動(脳卒中)の口角歪斜や半身不遂の証候にはは適応しない。効果が無い場合、むしろ半夏白朮天麻湯が適合する。

天麻鈎藤飲:平肝潜陽・平肝熄風・滌痰通絡・柔筋活絡:天麻 釣藤鈎 石決明 山梔子 黄芩 杜仲 牛膝 益母草 桑寄生 夜交藤 茯神:内傷によって生じた内風や脳卒中の薬。

肝風内動の四肢麻木・・・清肝熄風:羚羊鈎藤湯・釣藤散合平胃散:

「痰湿の肝陽化風」。

白附子・禹白附・関白附:サトイモ科禹白附の塊茎、キンポウゲ科の独角蓮・関白附・花烏頭キバナトリカブトの塊根:辛甘温:胃経:

袪風痰・燥寒湿:牽正散は上焦の寒湿を除く・風痰頭痛に適応。

半夏白朮天麻湯:化痰熄風・補気健脾・利水消食:

製半夏3 天麻2 白朮3 人参2 黄耆2 茯苓3 沢瀉2 蒼朮3 

陳皮3 神麹2シンキク 麦芽2 黄柏1 乾姜1:脾気虚の痰濁上擾。

破傷風に五虎追風湯・五虎追風散:史伝恩家伝方:袪風止痙:

蝉退10センタイ 製南星2 天麻2 全蝎2~3 白僵蚕2~3g:

袪風止痙薬のみの薬からなり、玉真散より止痙にすぐれている。

隋の巣元方の 『諸病源候論』では

「血気の虚により、風湿を受けて痹証となる」としている。

痹証の範囲

リウマチ熱・リウマチ性関節炎、リウマチ(慢性関節リウマチ)・

座骨神経痛・骨増殖性疾患(脊柱管狭窄症・増殖性脊椎症・頸椎症・

踵距 しょうきょ・カシンベック病などを含んでいる。

その他の疾病のブルセラ症・閉塞性血栓血管炎、強皮症、結節性紅斑、結節性脈管炎・全身性エリテマトーデス・多発性筋炎なども、その疾病経過中に痹証があらわれることがあり、本章を参考にして弁証論治することができる。

ブルセラ症:ブルセラ属菌の感染症。別名、波状熱、マルタ熱、地中海熱。 感染すると数週間から長いと数か月後、発熱、関節痛、倦怠感の症状がみられます。数年にわたり全身的な痛みや倦怠感。国内では年間数例。

ブルセラ症:特徴として夕方から夜に発熱し(潮熱)、朝には熱が下がる。発熱と解熱を数週間繰り返した後、1~2週間ほど症状が落ち着く期間を経て、再び発熱と解熱を繰り返すようになる(波状熱)。

ブルセラ症:病気の期間は患者によりさまざまですが、発症後、数年にわたり脱力感や疲労感が続くこともある。

痹証の病因と病理

「風寒湿熱の邪」が人体の虚に乗じて深入し、そのため気血の運行がスムーズに行かず経絡が滞る。あるいは

「痰濁・瘀血」で経脈が阻まれたために、それらが深く関節・筋脈に入るなどで「痹証」となる。

痹証の病因(1)体虚のため邪を感受する

生まれつきの体質虚弱で、気血不足で皮膚が空疏のため邪が深入し易く、邪を駆除する力がないので、「風寒湿熱の邪」が次第に深く入り、

筋骨、血脈に留まり、痹証となる。

陽虚の者は衛防衛力が低く、風寒湿邪に犯されやすいので風寒湿痹となる。

陰虚の体は、陽気が相対的に偏盛で、臓腑経絡にすでに蓄熱があるので、外邪を感受するとほとんどが風熱湿痹となる。

痹証の病因(2)外邪の侵入

「風寒湿熱の邪」が痹証をひきおこす外因である。

体質が弱いものは外邪が深入し易いが体質が良いものでも外邪が侵入する。たとえば

長く厳寒にさらされたり

防寒保温の措置を講じなかったり

野外や雪中で野営したり

湿気のある場所で寝泊まりしたり(以前田圃や川があった場所の家に居住・新しいコンクリートの家など)

就寝時に風にあたったり

風に吹かれ続けたり

雨に濡れたり

水中作業に従事したり

疲労時に寒湿の邪を受けたり

発汗時に水に入ったり

・・日が経つにつれて積もり積もって痹証となる。

あるいは体の防衛力が低下しているときに「風寒湿の邪」を受けたり

あるいは風寒湿の邪が長く鬱積して熱に転化して痹証を発症する。

「寒 極まれば熱となる。」

痹証の病因(3)痰(痰飲)と瘀血

長く病んで気血の流れが悪くなると、

「血が滞ると瘀血となり、湿が凝集して痰が生じる。」

痰と瘀血は結合し、またその「痰瘀」は外邪とも結合する。

そのため経絡を阻み閉じて、深く関節と関節の接合部に入るので除くことが困難になる。

痹証の晩期の関節の腫脹や奇形は「痰瘀」が骨節の間で互いに阻害して生じる。痰はとれにくい性質があるので治療が長引く。

痰飲の基本的な症状:むくみ・めまい・多痰・嗜眠。

痹証の発生:一般にはほとんどが

「生まれつきの陽気不足や陰精の不足」が内因となり、

「風寒湿熱の邪」が外因となって生じる。

痹証の経過:

初めは「邪実が主」で、病位は肢体、皮肉、経絡にある。

病が長くなると、虚実夾雑となり病位は深く筋骨あるいは臓腑に及ぶ。

痹証の発病:一般には比較的緩徐である。

一部の患者は、初め発熱し、汗出で、口渇し、のどが赤く痛み、

全身倦怠感があり、続いて関節の痛みが生じて痹証となる。

しかし、多くはしばしば発病期がはっきりせず疼痛があちこちに移って生じたり(風痹・行痹)、固定痛であったり、刺痛、しびれ、腫脹を示す。

痹証は、しばしば漸進性や不規則な発作性を呈す。

発作を反復する期間に一部の患者には

「大きさが麻豆のような堅硬で消散しにくく触痛のない症状」と

「癮疹インシン(蕁麻疹)」がみられる。

癮疹(蕁麻疹):もし長く治らなかったり、繰り返す場合は「気血虚」が考えられる。

「蕁麻疹や梅雨期のカユミ」は、四肢の内側と体幹部に発生し、淡紅色の環状の輪を形作り、隠れたり現れたりする。両者の「数量の多少」と「存在時間の長短」は痹証の病状の軽重、進退と関係する。

痹証の臨床の特徴:四肢、躯体、関節、筋肉の疼痛を主症状とする。

発病は四肢だけでなく、肩、背、背骨、腰などの躯幹部分にも生ずる。

痹証の病理は、邪気が経絡の流通を阻んで気血の運行が阻害されることで「痹して通ぜず」がポイントである。

痹ヒとは、「つまって通じない」という意味である。

弁証の要点

1、痹証の初期:初めは「風寒湿熱の邪」が人体の虚に乗じて侵入して経絡の気血の流れを閉阻する。この場合の治法は、邪実なので「袪邪」するのがよい。

もし、発作が反復し、次第に発展すれば経絡は長く邪気によって阻滞され、営衛(栄養)はめぐらず、やがて「湿があつまって痰」となり、

「経絡が瘀滞して瘀血」が生じ痰と瘀血が結びつき「痰瘀互結」となる。

病が深入すれば気血は損傷するだけでなく

「肝腎虚損」し筋骨はやしないを失う。この場合は正虚が主である。

疲労後に痛みが増悪する場合は、肝腎虚、腎陽虚なので

疎経活血湯に八味丸や参茸大補丸錠ジンジョウダイホガンを合方する。

肝腎虚、腎陽虚の痹証:疎経活血湯合八味丸

肝腎虚、腎陽虚の痹証:疎経活血湯合参茸大補丸

「新病は実、久病は虚が多い」が、

しかし「肝腎の気血」が先ず損耗して外邪が侵入すれば最初から虚である。あるいは本虚標実を示すこともある。

また疾病が数ヶ月・数年にわたっても

「寒湿」「湿熱留駐」「痰瘀硬結」など「邪実」を主とすることもある。

2、患者の体質は:発症にしばしば重要な地位を占める。

「陽虚体質の患者」は:多くは水太りの体型で、顔色皓白コウハク又は面色萎黄イオウで、汗が多く、悪風し、動作は乏力で疲れ易い。

大便は溏薄あるいは回数が多い(脾陽虚)。

舌は胖大(気虚)を示し、舌質は淡、脈は虚。

この場合、痹証のタイプは多くは「風寒湿痺」となる。

「陰血不足の患者」は:多くは痩せ型で、顔色が蒼黒ソウコク、または黄色で顴紅カンコウとなり、潮熱・盗汗、不眠・多夢、大便乾結で、

舌は痩せ、舌は赤く、脈細数。

陰血不足の痹証のタイプは、陰虚では以前より蓄熱があるため

多くは「風熱湿痹」になる。

陰虚の症状:手足の平がほてる、夕方から顴紅が生じる。疲れたり、発汗し過ぎや寝不足で水気不足となり陰虚が生ずる。更年期障害が長く続いた人の目の下のシミの顴紅は腎陰虚症状で六味丸・杞菊地黄丸が適応。

「陰虚による虚火上炎」:午後の潮熱、顔ののぼせ・目赤・イライラ・頬部の紅潮(顴紅かんこう)、五心煩熱・手足がほてる、盗汗(寝汗)、口乾(口渇ではない)・舌質紅、脈細数・夕方や夜に悪化:知柏地黄丸。

3、病邪の特徴

「風邪の性質は、軽く、よく動く」ので、痛む箇所は固定せず、肩、肘、上肢、下肢などに移動する。舌苔は薄白で、脈浮。「脈浮は表証」である。

「霊枢」では、「身体の半分から上の部分には風邪が中る」とある。

これは風邪の病は一般に上肢、肩背に見られる。

寒邪ならば、性質は凝滞し、固定痛で、拘引し痛みは激しく、

刀で切られたような痛みで、刺痛で、寒さで悪化し、暖めると減ずる。

舌苔白、脈緊であり、「脈緊は寒邪」である。

湿邪は粘滞が続き、痛みが強いものは湿が関節に留まり浮腫状となる。舌苔は苔が白く厚い、脈は濡脉なんみゃく:軟脈のこと。

「霊枢」には「身体の半ばから下の部分には、湿邪これに中る」とある。

湿邪の痹証は下肢腰膝に見られる。「湿は重濁」で下にたまるため。

熱邪は、急迫し、最も津液を薫灼し易く、一カ所に集まって邪を形成すると津液が停滞し、筋脈がやしないを失って拘攣する。

熱邪では、関節は赤く腫れて熱痛し、疼痛は劇しく手も触れられない痛風発作のようで(痛風様)、多くは高熱、口渇し、舌は赤く、舌苔黄乾、脈滑数である。

上述の病邪はしばしば「相前後して混じってやってくる」、

また「合して痹となる」もので、弁証では「主と次」をはっきり区別し、

治療の重点をはっきりとする。

4、痰瘀の特徴

痹証を患い経脈の気血が長く停滞すると、

病因の作用でしばしば瘀血と痰(痰濁)が生じる。

痰が関節に留まり瘀血が経脈を阻み「痰瘀互結」では痹阻がひどくなる。

すると気血による栄を失い、疼痛、しびれ、腫脹し、ひどければ骨節が変形・固着する。

病邪が深入すると「一般の袪風散寒除湿の剤」はあまり効かなくなる。

痰瘀になった場合の判断:

1、長く痹証を患うと、瘀血が多くなり痰(痰飲・痰濁)も多くなる。

それゆえ日がたって常法では止痛効果が十分でないときは、

それが「痰瘀」と関係するかを考える。

2、「関節の腫痛」は、多くは「痰瘀交阻」の病変である。

「関節腫大」は湿がまだ痰にならないで起こるもので漫腫がみられ、

これに触ると柔軟で疼痛は劇しくない。

「痰瘀交阻」では触れるとすこし硬く、肢体はしびれ、疼痛が激しい。

3、瘀血証は脈細渋で、舌色は青紫で、

   痰濁証は脈濡緩ナンカンで、舌苔は苔が白く厚い(白じ苔)。

痹証の証候の違い:

痹証には、虚実の違いがある。

本編では痹証を「実痹」と「虚痹」に分けている。

実痹は、行痹、痛痹、着痹、熱痺、頑痹ガンピ。

虚痹は、気血虚痹、陰虚痹、陽虚痹としている。

1、実痹の行痹(風痹)

風痹では、肢体関節や筋肉の疼痛や重苦しさが生ずる。

その痛みは遊走性で、固定せず、関節の屈伸が不自由で、

風邪は上部を侵し、多くは身体上部の上肢、肩、背中に痛みが生ずる。

行痹(風痹)の初期は、多くは悪風・発熱などの表証を示し舌苔薄白で脈浮緊である。これは正気と邪気が衛分で抗争する表れである。

「風邪は剽悍滑利」ひょうかんかつり:すばやく、滑らかに作用するので、痛みはよく移動する遊走性で「行痹」という。

風は陽邪で「病が上に位置し、陽(風)がここに中る」。

「上肢・手臂は手の六経の交わるところ」で、風邪の侵入で血脈・経絡に流れ込むと絡道が不通となり、気血の運行が阻まれ疼痛が生じる。

「脈浮緩は、風邪が表にある」ことを示し、「舌苔薄白も表証」を表している。

2、実痹の痛痹(寒痹)

痛痹(寒痹)は、肢体の関節や筋肉の疼痛が劇しく、

ひどければ刀で切られ、針で刺されるようである。

痛痹は、冷えると悪化し、温めると痛みは緩やかになる。

比較的「痛痹(寒痹)は固定痛」で、昼は軽く夜は酷くなる。

痛痹(寒痹)は、関節の屈伸ができず、

痛む場所は赤くなく、熱もなく、常に冷たい。舌苔白で脈弦緊である。

痛痹の特徴は、痛みが激しく「性が凝結」なので「固定痛」である。

これは「寒邪は陰邪」であり、性質が留滞で「劇痛」のため屈伸できなくなる。

熱にあうと痛みは軽減し、寒にあうと、気血はますます凝渋し痛みは強くなる。

寒邪は、最も人の陽気を傷つけ、気血を凝滞させる。

その結果、瘀血と痰湿が生じて症状がはげしくなる。

痛痹(寒痹)は、多くは血瘀を兼ね、肢節が「刺痛」し、しびれ、

固着して動かないなどの症状が現れる。

またしばしば「寒と湿が合体」し「寒湿」となるが、この場合は痛みが「寒冷感と湿の沈重感」を伴ったり「関節に湿の浮腫」が現れたりする。

「寒湿合邪」は、多くは「腰と下肢」に生じ真武湯や苓姜朮甘湯の主治。

もし寒邪が四肢に入ると痛みは固定せず、痛む所には沈重感がある。

3、実痹の着痹(湿痹)

湿痹は、肢体、関節、筋肉の疼痛で、比較的「湿痹は固定痛」で、

かつ「著しい重着感:おもぐるしさ」がある。

肌膚がしびれて感覚がなくなりあるいは「患部が腫脹して動きにくく」なり、温めたり押さえると、痛みはやや緩やかになる。

湿痹は、舌淡、舌苔が白く厚い、脈濡緩である。

「湿は陰邪」である。その性質は「重濁で粘滞」で故に「着痹」という。

着痹(湿痹)の痛みは固定痛である。

湿邪が停留すると気血の流れが悪くなり疼痛、「しびれ」が生じる。

着痹の痛みはそれほど激烈ではないが、連綿として治らず、

「重着としびれが続く」のが特徴で肢体、関節が重くて、動かしにくい。

湿邪は、腠理が空疏のため「外湿を感受」したり「津液が貯留」して生ずる。

つまり外邪を感受したり、湿が内部から生じるのだが、

これらはみな「脾の運化機能」が失われることと関係がある。

脾の運化機能がうしなわれると、胸悶、食少、胃もたれ、腹脹、大便稀溏、舌淡で舌苔は苔が白く厚い、脈濡緩などの「脾虚湿困の症状」が現れたりする。

「湿の陰邪」が盛んであれば陽が少なくなり、そのため暖かいものを好み、寒を畏れる。

患部に熱いものをあてたり、マッサージすると陽気が一時的に通じ、

疼痛やしびれはやや軽減するが、やめれば湿邪が集まり元に戻ってしまう。

4、実痹の熱痺

熱痺では、肢体、関節が疼痛し、痛所は赤く灼熱し、

腫脹、疼痛が激烈で、筋脈が拘急し、手を近づけることもできない。

熱痺では、痛みは昼は軽く、夜は重い。

熱痺の多くは「発熱、口渇、心煩、喜冷、悪熱、脈数」などの症状があり、舌質は赤く、舌苔は黄色く黄燥、脈滑数である。

熱痺では、「熱は陽邪」であり「熱の性質は急迫」であるので、経絡や関節に侵入すると、気血が相搏ち、筋脈が拘急し、経絡が瘀阻されて劇痛が生ずる。

熱痺の特徴は火熱の性質があり、その薫灼が最も津液を傷つけ易くなるのが特徴である。

5、実痹の頑痹

頑痹は痹証の経過が長く、発作を繰り返し、「骨節が硬く」、あるいは変形し、関節附近が暗黒色を呈し、疼痛がはげしく、「関節は固着」して動かず屈伸することができない。

あるいは、頑痹は、疼痛し、しびれが生じる。

または関節が赤く腫れて痛み、発熱、口渇、尿短赤を示す。

あるいは関節が氷のように冷えて、季節の変わり目や寒冷の季節に痛みが激しくなり、温めれば軽くなる。

頑痹の、舌は多くは紫色の瘀斑がみられ、脈細渋である。

頑痹は、痹証が長く続き、経絡の気血の流れが悪くなると、瘀血や痰濁が発生し、関節などに停留すると深く固結して除きがたくなり、痹阻がひどくなる。すると刺痛、掣痛、疼痛が激烈になる。しびれも生ずる。

「掣痛」せいつうは「牽引痛」とも呼ばれ、足がつった時の痛みは、

グッとつるような痛みで、「引っ張られるような痛み」である。

頑痹では、関節の周囲は紫暗色を呈し、舌は瘀斑がみられ、脈細渋となる。

頑痹で、湿熱が経絡に留着し、瘀血と互結した場合は、関節が赤く腫れ、発熱、口渇、尿赤、舌苔は苔が白く厚い、脈細となる。

風寒湿の邪が筋骨に深入し「瘀血と痰が挟雑」すると、冷痛し、寒冷で劇しく痛み、温めるとしばらくは軽くなり、舌苔白、脈遅となる。

1、虚痹の気血虚痹

気血虚痹では、痹証が長く治らず、骨節がシクシクと痛み、

痛みが軽い時、重い時があり、屈伸は時に劇しく痛む。

あるいは気血虚痹では、筋惕肉瞤キンテキニクジュンし、面色萎黄で、心臓の拍動に力なく、短気、自汗し、筋肉は痩削し、食少、便溏、舌淡、苔白あるいは無苔、脈濡弱あるいは脈細微である。

気血虚痹では、疼痛はそれほど劇しくはないが、

シクシクとする痛みはいつまでも治り難い。

気血虚では、防衛力が低下していて外邪が侵入しやすく、

風に吹かれたり雨に降られると容易に風寒湿邪を感受する。

気血虚痹は、

「生まれつきの気血不足」や、

「大失血後」や

「脾腎の陽気の生来からの虧損」や

「久病後」や、

あるいは実痹が長期化して転化して気血虚痹になる。

2、虚痹の陽虚痹

陽虚痹は、痹証が長く治らず、骨節が痛み、関節が硬くなって変形し、冷感が著明で、筋肉は萎縮してくる。

陽虚痹は、顔色は白く生彩がなく、寒々として脚が冷たく、腰が曲がり、猫背となり、腰膝は力無くシクシクと痛み、

尿は多く、便溏や「五更瀉」となる。舌淡白で、脈沈弱である。

五更瀉ごこうしゃ:毎日早朝か夜明け前に下痢をする五更瀉は脾腎陽虚(痛瀉要方・真武湯・附子理中湯・四神丸)である。五更泄瀉・鶏鳴下痢。

陽虚痹は、病が長くなると陽気不足となり、表衛不固で、外邪が侵入し易い。骨節の痛みは軽かったり激しかったりする。

陽虚痹は、気血の養いが失われ屈伸ができず、関節は硬くなって変形し、筋肉は萎縮する。

「腰は腎の府」である「膝は筋の府」である。

陽虚痹では、腰膝酸軟無力で、ひどければ腰が曲がり猫背になる。

これは肝腎に影響が及んだ「肝腎虧虚の症状」である。

食少で便溏、乏力で短気となるが、

これも脾陽虚で「生化の源が不足」している症状である。

陽虚痹は、形寒肢冷で、関節も冷感があり、悪風などは皆、陽虚、外寒の症状である。

2、虚痹の陰虚痹

陰虚痹は、痹証が長く治らず、骨節が痛み、筋脈が拘急してひきつり、運動すると劇痛となる。

外見は疲労感が明らかで、乏力、煩躁、盗汗、眩暈、耳鳴があり

顔色は赤くほてり顴紅し、あるいは微熱が持続し、日晡(午後3~5時)に潮熱がある。

日晡潮熱にっぽちょうねつ:毎日夕刻になると出る熱。

陰虚痹は、腰がだるく膝に力なく、関節が赤く腫れて灼熱したり、

変形して屈伸不可となったり、日中は痛みが軽く、夜は重くなる。

陰虚痹は、口乾、心煩、食少、舌紅、苔少で、脈細、大便は乾結する。

病が長くなり陰虚となって肝腎不足で、あるいは長く温燥薬を遣い過ぎて肝腎の陰を傷つけ、筋骨が濡養を失い、血が虚して内風を生ずる。

その結果、筋脈が牽引、拘急し、骨節が痛み、運動時に悪化する。

陰虚痹は、陰虚陽亢なので、眩暈、耳鳴、盗汗がみられ、顔色は赤く、微熱がとれず、口乾、心煩がある。腰がだるく、膝に力がない。

これらは「肝腎の精血が不足」している症状である。

つづきは「治法と処方」について記述する。

治療

治療原則

痹証の治療に限らず、

寒ならばこれを温め、

熱ならばこれを清熱し、

留(湿、痰、瘀などの邪)があればこれを去り

つまり袪湿や燥湿、袪痰、袪瘀を行い、

虚ならばこれを補す

つまり気虚、血虚、陰虚、腎虚などを補すことである。

しかし、新病、久病、虚、実を見分ける必要がある。

初病や経過が短かく、全身状態がよければ、温散、温補を主とする。

久病では、その証は多く虚寒になるので温補を主とする。

実熱ならば、甘寒あるいは苦寒の方剤と用いて清熱し、

湿熱ならば、清熱と燥湿を兼用し、

虚熱ならば、滋陰し清熱する。

実を瀉するには正気の状態を考えて行うべきで、虚を更に虚することは避ける。

補虚の場合は、邪がまだ留まっているか考え、実邪を更に実することは避ける。

痹証は疼痛が主症状である。

その病理は、気血の閉阻不通で「通じざれば痛みを生ず」である。

したがって、痛みには「宣通」が痹証に共通した治法である。

気血が流通し、営衛が正常となると痹痛も逐次快方に向かう。

風寒湿痺は「辛味の薬」を用いて温め、陽気を振奮し、邪を駆逐する。

風湿熱痺は、「疏風、清熱、化湿の薬」を用いて袪風し、袪湿し、清熱する。

頑痹は痰瘀が膠結しているから、「袪瘀、化痰の薬」を用い、

あるいは「虫蟻類」チュウギルイを兼用して取り除く。

これらの方法は皆「宣通」を行う方法である。

なお虚証で長く痹証を患っている場合は、

陽虚では「温補薬」を用い、これに「温通、温散薬」を加える。

陰虚では「陰柔剤」を用い、その中に静中動という投薬をしなければならない。

痹証は往々にして不規則な発作性を呈する。

一般的には、発作期には袪邪を主とし、

静止期には営衛を整え、気血を養い、肝腎を補うことを主とする。

痹証の「実痹の治法と方剤」

実痹の行痹(風痹)、痛痹(寒痹)、着痹(湿痹)の治法

袪風、散寒、逐湿、経脈の温通をはかる。

方剤:蠲痺湯ケンピトウを常用方剤とする。

あるいは、烏頭湯・麻黄加朮湯・五積散・桂枝附子湯。

蠲痺湯:袪風湿・補気血・活血:風湿・寒湿:

羗活2 防風2 鬱金2 当帰3 赤芍2 黄耆4 炙甘草1 生姜1:

鎮痛・血行促進・発汗・利尿・鎮痙・滋養強壮:寝違・五十肩・腰痛・血虚の風湿痺。

蠲痺湯の中の、羗活・独活・桂枝・秦艽などは袪風、散寒、勝湿の剤。

羗活きょうかつ:セリ科羗活の根や根茎:辛苦温:

散寒燥湿・解表・袪風湿・止痛;

羗活は風邪薬によく配合される:荊防敗毒散・蠲痺湯・大防風湯に配合。

独活どっかつ:袪風湿・通経絡・散寒止痛:特に項背部の筋肉や下半身の関節の風湿を去る・臀部の痛み・両足のしびれ:独活寄生湯。

桂枝けいし:発汗解表・通陽化気・通陽利水・温通経脉。

秦艽じんぎょう:リンドウ科秦艽の根:胃肝胆経:苦辛平:

袪風湿・通絡舒筋・退黄疸・除虚熱:陰虚内熱・骨蒸潮熱:

三痺必用の薬:秦艽鼈甲湯・秦艽防風湯・痔瘻月光等に配合。

荊防敗毒散:無汗・辛温解表・袪風邪・袪湿邪・止咳化痰・止痛:

荊芥3 防風3 羗活2 独活2 柴胡3 前胡2 川芎2 桔梗1 枳穀2 茯苓3 炙甘草1 生姜1 薄荷1:無汗で疲れ易い体力の無い人の風邪。

大防風湯:和剤局方:袪風湿・散寒・補気血・益肝腎・活血止痛:

気血両虚・肝腎不足の風寒湿痺:四物湯+人参 白朮 甘草 黄耆 生姜 大棗 杜仲 牛膝 防風 羗活 附子:大病後の起立歩行困難に。

蠲痺湯:袪風湿・補気血・活血:風湿・寒湿:

羗活2 防風2 鬱金2 当帰3 赤芍2 黄耆4 炙甘草1 生姜1:

鎮痛・血行促進・発汗・利尿・鎮痙・滋養強壮:寝違・五十肩・腰痛・血虚の風湿痺。

蠲痺湯は、輔薬として、当帰・川芎・木香・乳香という

理気・養血・活血薬を配合している。

蠲痺湯は、全体は「温」であるが、燥ではないので正気を傷つけない。

蠲痺湯に、風に偏する場合は防風を加える。

蠲痺湯に、寒に偏する場合は麻黄・川烏頭(緩和な作用)・細辛・小活絡丹を加える。

蠲痺湯に、湿に偏する場合は防已・蒼朮・生米仁(薏苡仁)・蚕砂さんしゃを加える。

蠲痺湯に、発熱のある場合は知母・黄芩・金銀花・連翹を加え佐とする。

蠲痺湯に、痛みが上肢にある時は、威霊仙・姜黄(鬱金)・蒺蔾子を加える。

蠲痺湯に、痛みが下肢にある時は、牛膝・木瓜・続断を加える。

防風:発汗・利尿・鎮静・止瀉・止血。袪風の主薬。

麻黄:発汗平喘し、宣肺行水・宣肺平喘の効能。

烏頭うず:烏頭は袪風・散寒・止痛で鎮痛作用は附子より強い。

細辛さいしん:辛温:発散風寒・温経散寒・袪風止痛・温肺化飲。

小活絡丹:聖済総録せいさいそうろく:活血通絡・除湿袪痰法:

制川烏 制草烏 地竜 製南星 各180g 乳香 没薬 各60gを

細末とし煉蜜で丸を作り1gとし毎時1丸、毎日1~2回服用。

蒼朮:苦温辛烈で運脾燥湿作用を具えており平胃散の主薬である。

薏苡仁:清熱・解毒・排膿・利水滲湿(湿気をさばく)・治疣贅・胃薬。

蚕砂さんしゃ・晩蚕砂:カイコガ科カイコの糞を乾燥:甘辛温:肝脾胃経:袪風湿・止血・風湿による痹痛:布で包んで煎じる:3~5g。

知母ちも:ユリ科ハナスゲ(花菅)の根茎:苦寒:清熱瀉火:滋腎潤燥。

黄芩:苦寒:肺大腸小腸脾胆経:清熱燥湿、清熱瀉火、解毒涼血(血熱を清熱する)、清熱安胎:寒で凝固作用。

金銀花3~6g・忍冬:スイカズラの花蕾:甘寒:肺経:

清熱解毒・芳香化濁:

皮膚や頭頸部や肺の熱毒を除き、湿濁を化す:頭皮の角状の腫瘍。

連翹:モクセイ科連翹の果実:苦微寒:心胆経:

清熱解毒・疎風清熱・消腫排膿:

抗菌・強心・利尿:熱性疾患・化膿性疾患の重要な薬物:

目耳鼻皮膚の薬:3~5g。

袪風湿薬の威霊仙:キンポウゲ科シナボタンヅルの根・枝・茎:辛温:膀胱経:袪風湿・通絡止痛・消痰逐飲:魚骨が咽に刺さった時に酢と砂糖で水煎しゆっくり飲む。

鬱金うこん・広鬱金・川鬱金・玉金:

ショウガ科「姜黄キョウオウは広鬱金」と呼ばれこれを一般に使う)、「鬱金ハルウコンは川鬱金」で薬性が温和で別名温鬱金)それぞれの塊根:疏肝理気・解鬱袪瘀・止痛・健胃・利胆。

蒺蔾子しつりし・白蒺蔾・刺蒺蔾:ハマビシ科ハマビシの果実:辛苦微温:肝経:疏肝熄風・行瘀袪滞・解鬱・明目・止痒:降圧・鎮静・

眼科の常用薬。

牛膝ごしつ:袪瘀止痛・活血通経・補益肝腎・薬を下行させる引経薬。

筋疾患に木瓜モッカ・ボケ:ボケの成熟果実・カリンも用いる:酸温:肝脾経:舒筋活絡・和胃化湿:筋肉の痙攣を緩解し湿邪による筋疾患の常用薬:下肢痛に加える(牛膝、木瓜、続断)。

筋肉の痙攣に木瓜・五加皮・木通を加える。

続断ぞくだん:マツムシソウ科川続断の根:苦辛微温:肝・腎経:

補肝腎・続筋骨(筋骨を修復する)・活血・安胎(滑胎に):

打撲・捻挫・骨折・腰や下肢の疼痛。

木香もっこう:キク科インド木香の根:辛苦温:行気止痛(行気薬ぎょうきやく・理気薬)。

乳香にゅうこう:カンラン科の乳香樹の樹皮より滲出した樹脂:辛平温:心・肝・脾経:活血袪瘀止痛:活血・止血・舒筋:鎮痛・消炎。

烏頭湯:寒湿が合体して寒に偏する時は、寒がひどくて痛みが強い時は烏頭湯で温経散寒・逐痹止痛する。

「烏頭に麻黄を配合」すると、骨に入り込んだ風寒を除くことができ、これが烏頭湯の主薬である。

烏頭湯(金匱要略):寒痹:温経散寒・逐痹止痛:

烏頭は毒性が強く附子を使う:附子1 麻黄3 白芍3 黄耆3 甘草3 煎じカスを去り蜂蜜20g入れ、5分煮沸し温服:寒湿凝滞の四肢の浮腫や腫脹・散寒除湿。

烏頭は単味をとろ火(文火)で2時間くらい先に蜂蜜と煎じると毒性や副作用が無くなる。少量から始めて次第に増量すべきで、効果を感じる程度を限度とし長服してはならない。「舌のしびれ」の発生では中止する。

麻黄加朮湯:痹証の初期で、風寒湿邪が表にあり無汗で標実なら麻黄加朮湯で少し発汗する。

あるいは五積散を用い、

有汗表虚の場合は桂枝附子湯を用いる。

麻黄加朮湯:金匱要略:散寒袪湿・湿家の身疼痛・無汗の風水:

麻黄5 杏仁5 桂枝4 甘草1.5 白朮3g:麻黄湯合苓桂朮甘湯。

五積散は「風寒湿」:1.腰冷痛、2.腰腹攣急、3.上熱下冷、4.小腹痛の四症が目標となる:寒いと小便頻数となる人の神経痛・腰痛・手の痛みに効果があり患部に熱感が無い。二の腕の痛みに葛根湯。

五積散:太平恵民和剤局方(局方):半夏2 陳皮2 茯苓2 当帰2 蒼朮1 白朮2 白芍1 川芎1 白芷1 枳穀1 麻黄1 桔梗1 乾姜1 肉桂(桂枝1) 厚朴1 大棗1 炙甘草1g。

桂枝附子湯:傷寒論:有汗表虚:桂枝4 附子1 生姜3 大棗3 甘草2。

痹証の実痹の「頑痹がんひ」の治法と方剤

頑痹の治法:「活血化瘀・化痰通絡」を主とし、補腎、養肝、扶正を兼用。

頑痹の方剤:身痛逐瘀湯、大活絡丹、小活絡丹、益腎蠲痺丸。

瘀血薬の身痛逐瘀湯:医林改錯:活血化瘀・通絡止痛・袪風湿:

桃仁3 当帰2 川芎2 五霊脂2 没薬2 牛膝3 秦艽3 羗活3 

香附子3 地竜2 甘草1g 黄耆(日本に製品は無く折衝飲合防已黄耆湯加地竜で代用する)。

身痛逐瘀湯:代用処方は、折衝飲合防已黄耆湯加地竜。

折衝飲:活血化瘀・理気止痛:寒帯肝脈:

当帰5 赤芍3 桃仁5 紅花2 牡丹皮3 川芎3 桂枝3 牛膝3 延胡索3(すべて袪瘀作用の生薬)。

五霊脂:オオコウモリ科オオコウモリの糞便乾燥物:鹹温:肝経:

袪瘀止痛、生では活血、炒用では止血:婦人科で多用。失笑散。

秦艽じんぎょう:リンドウ科秦艽の根:袪風湿・退黄疸・除虚熱。

羗活きょうかつ:セリ科羗活の根や根茎:辛苦温:

散寒燥湿・解表・袪風湿・止痛;羗活は風邪薬によく配合される:

荊防敗毒散・蠲痺湯・大防風湯に配合。

湿に偏する場合は防已・蒼朮・生米仁(薏苡仁)・蚕砂さんしゃを加える。

防已黄耆湯は、風邪と湿を同時にとる処方。風邪は風が吹くと症状が悪化し、風邪の性質として痛む部位が移動するし、湿邪は体が重だるいし、黄耆が入っているので汗をかなりかく人に使える。

身痛逐瘀湯:医林改錯:活血化瘀・通絡止痛・袪風湿:

桃仁3 紅花3 当帰3 川芎2 五霊脂2 没薬2 牛膝3 秦艽3 

羗活3 香附子3 地竜2 甘草1g+黄耆10~20。

身痛逐瘀湯:活血化瘀・化痰通絡・袪風湿:打撲・リウマチ・関節炎・肩関節周囲炎・座骨神経痛・腰痛症など。

身痛逐瘀湯は、痹痛が長引いて「痰瘀互結」し、疼痛の続くものに良い。

身痛逐瘀湯の配合薬の、

桃仁・紅花・当帰で活血化瘀。

五霊脂・地竜で袪痰通絡。

川芎・没薬・香附子で理気、活血、止痛する。

羗活、秦艽で袪風湿

牛膝で強筋骨する。

小活絡丹:風寒を温散し痰瘀を去る。袪風、活血、散寒、清熱および扶正などの薬味が多い:痛みを長く病んで絡に入った患者に用いる。

小活絡丹:聖済総録せいさいそうろく:活血通絡・除湿袪痰法:

制川烏 制草烏 地竜 製南星 各180g 乳香 没薬 各60g

を細末とし煉蜜で丸を作り1gとし毎時1丸、毎日1~2回服用。

益腎蠲痺丸は、標と本を兼顧する処方である。

蠲ケン・ケイ:のぞく・除去する・あきらかにする・やすで・げじげじ

益腎蠲痺丸えきじんけんぴがん:生地黄・熟地黄・当帰・仙霊脾(淫羊藿)・鶏血藤・鹿銜草ろくがんそう・尋骨風、虎杖・全蝎・蜈蚣・烏稍蛇(白花蛇)・露蜂房(蜂の巣)・地鱉虫(䗪虫)・蟷螂とうろうカマキリ(カマキリの卵:桑螵蛸そうひょうそう)・白僵蚕。成薬無し。

益腎蠲痺丸の、生地黄・熟地黄・当帰・仙霊脾(淫羊藿)・鶏血藤は、養血・活血する。

益腎蠲痺丸の、鹿銜草ろくがんそう、尋骨風、虎杖は、袪風湿。

益腎蠲痺丸の、全蝎・蜈蚣・烏稍蛇(白花蛇)・露蜂房・地鱉虫・蟷螂・白僵蚕などの七味の虫類で活血化瘀して袪邪し絡を通じている。

銜:呉音ガン、漢音カン:くつわ、ふくむ、口にくわえる。

鹿銜草ろくがんそう・かかんそう:六、七月頃、白梅に似た白い花をつける:風湿を除き、筋骨を強壮し、風湿による痺痛や関節痛、腎虚による腰痛、腰や膝の力の弱さ、月経過多、長引く咳や労咳の治療に用いられる:益腎蠲痺丸。

尋骨風:全草を用いる。性平、味苦,袪風湿,通経絡、止痛,胃痛、筋骨痛等に用いる:益腎蠲痺丸。

虎杖・虎杖根こじょうこん:イタドリ:緩下薬、利尿薬、通経薬、じんま疹:益腎蠲痺丸。

露蜂房ろほうぼう・蜂房:アシナガバチやスズメバチの巣、幼虫を伴った方がよい:甘辛・有毒:胃経:袪風解毒・散腫止痛:血液凝固促進・利尿作用:毒性あり過量服用は急性腎炎を起こす:益腎蠲痺丸。

地鱉虫ジベッチュウ・䗪虫しゃちゅう・土鱉虫:シナゴキブリの雄の全虫:鹹寒:有小毒:肝経:破血逐瘀・續筋骨:筋骨折傷,瘀血閉経,癥瘕痞塊。血瘀による肝腫大及腰痛、捻挫:妊婦は禁忌:益腎蠲痺丸。

螵蛸ひょうしょう:タコの意味・蟷螂とうろう「カマキリの卵のかたまり:桑螵蛸」で漢方薬の材料

益腎蠲痺丸は、頑固な痹痛で、長く病み、一般の袪風、散寒、燥湿、通絡薬では効果が無く、すでに瘀血が絡に入り、血虚、腎虧に陥ったものに比較的著しい効果を発揮する。

大活絡丹:「蘭台軌範」:扶正袪風・活血止痛・化痰通絡:白花蛇・烏稍蛇・威霊仙・両頭尖・草烏頭・天麻・全蝎・何首烏・亀板・麻黄・貫衆・炙甘草・羗活・肉桂・藿香・烏薬・黄連・熟地黄・大黄・木香・沈香・細辛・赤芍・没薬・丁香・乳香・白僵蚕・安息香・黒附子・黄芩・茯苓・香附子・玄参・白朮・防風・葛根・虎骨・当帰・血竭・地竜・犀角・麝香・松香(松脂)・牛黄・竜脳・人参 以上49味の粉末を蜜丸1gとして1回1丸を服用する。

大活絡丹の処方構成

大活絡丹:補気:人参・白朮・茯苓・炙甘草

大活絡丹:補血滋陰:熟地黄・当帰・何首烏・亀板

大活絡丹:温陽:附子・肉桂

大活絡丹:袪風散寒:麻黄・羗活・細辛・防風・草豆蔲

大活絡丹:袪風解痙止痛:白花蛇・烏稍蛇・白僵蚕・全蝎・虎骨・葛根

大活絡丹:袪風湿・止痛:威霊仙・両頭尖・骨砕補

大活絡丹:活血通絡:地竜・血竭けっけつ・乳香・沈香・烏薬・赤芍

大活絡丹:芳香透絡:麝香・竜脳・松脂・安息香

大活絡丹:袪痰熄風:天南星・天麻

大活絡丹::清熱解毒:黄芩・黄連・牛黄・犀角・貫衆・大黄

大活絡丹:気機を通暢:藿香・木香・香附子・青皮・丁香・白豆蔲・

大活絡丹:「頑痰熄風、熱毒瘀血、経絡に入れば、この方にあらざれば透達することあたわず、およそ肢体の大証を治するに、必ず備うるの薬なり」といわれている。

痹証の実痹の「熱痺」の治法と方剤

熱痺の治法:「清熱解毒、活血通絡」を主とする。

風湿を兼ねる場合は「疏風、勝湿薬」で補佐する。

湿と熱が互結しているときは、「清熱と利湿」を用いる。

熱痺の方剤:麻杏甘石湯:初期の関節症状と発熱、悪風、咽痛、咳嗽には牛蒡子・豆鼓ズシ・薄荷、射干ヤカン・桔梗・金銀花・連翹・黄芩・金銀花藤・白僵蚕・桑枝・秦艽・赤芍を用い疏風・活絡・清熱し六神丸を加える。

麻杏甘石湯:肺熱を清肺・降逆平喘・止咳:麻黄4 杏仁4 生甘草2 生石膏10(肺気上逆し激しく咳込む・高熱・肺炎・痔核・睾丸炎)。

六神丸ろくしんがん:阿仙薬アセンヤク・麝香ジャコウ・蟾酥センソ・牛黄ゴオウ・竜脳リュウノウ・人参・熊胆ユウタン熊のい(以上七味):開竅剤。

救心:蟾酥5・牛黄2・竜脳2.7・人参25・動物胆8・鹿茸末5・羚羊角末6・真珠7.5・沈香3mg:六神丸より補腎・清熱・安寧作用が強い。

蟾酥センソ:シナヒキガエルの耳下腺・皮脂腺の分泌物(1頭から蟾酥約2mgが得られる):甘辛温:有毒:心胃経:解毒消腫・止痛・辟穢濁:心筋の興奮・心拍数減少・血圧上昇・知覚神経麻痺

阿仙薬アセンヤク・児茶ジチャ・孩児茶ガイジチャ・鉄児茶・珠児茶:マメ科孩児茶の樹枝を乾燥し、水煎液を濃縮乾燥:苦渋平:肺経:

収湿・収斂・斂瘡・消炎・止血作用。

麝香:ジャコウジカの雄の香嚢分泌物:開竅醒神・通経達絡・活血消腫・止痛・催生。

竜脳・冰片・氷片・ボルネオ樟脳、ボルネオール:熱帯アジアの常緑高木の幹や枝を蒸留:辛・苦・微寒:芳香開竅・散熱止痛:中枢神経興奮作用:熱性疾患の意識障害・痙攣発作・脳卒中の牙関緊急や意識障害。

白虎湯:陽明経証:病が表から裏に入り、高熱、口渇(大煩渇)、大汗となり煩悶し、動悸や脈数となったら白虎湯で気熱を強く冷やす。

白虎湯:加減法では、清熱解毒薬の黄柏・黄連・山梔子・虎杖を加える。壮熱がひかず大便が秘結するときは「芒硝と大黄」を加え、

さらに紫雪丹を加えて清熱し解毒・通便を促す。

白虎加人参湯合加味逍遙散(大熱・大汗・大煩渇・多尿+肝鬱)。

白虎加人参湯:清熱瀉火・生津止渇・補気:気分熱盛:「陽明経証」に用いる:生石膏15 知母5 生甘草2 粳米8こうべい 人参3:消渇病の多飲・大汗・多尿で体重減少が少ない人(つまり陰虚ではない人)

熱痺の生薬:関節、肌肉、筋脈の疼痛や拘攣があれば、常に、桑枝・桂枝・秦艽・豨薟草きれんそう・姜黄(広鬱金)・威霊仙・西河柳・金銀花藤・乳香などを加え、「活血通絡・除痹止痛」とする。

犀角湯合白虎湯:もし関節が熱で赤く腫れ、劇痛で、筋脈拘急し、日中は軽く夜重く、壮熱煩渇し、舌紅傷津で脈弦数では、熱毒が化火して深く筋骨に入ったためで犀角湯合白虎湯で清熱解毒する。

犀角湯さいかくとう:千金方:犀角サイカク 羚羊角レイヨウカク 前胡ゼンコ 黄芩 山梔子 大黄 升麻 射干ヤカン 豆鼓トウシ・ズシ。

犀角湯の犀角・羚羊角は高価なので、犀角湯には鱉甲・水牛角で代用し、同時に金銀花藤・地竜・淮牛膝わいごおう・桑寄生・乳香・秦艽・茅根ぼうこん・生地黄・虎杖コジュウなどを加える。

寒薬の前胡ぜんこ;苦辛微寒:セリ科白花前胡の根:苦辛微寒:

下気化痰・疏散風熱:風熱が原因の咳・痰を冷やして止める:咳止め痰切り薬。

射干やかん:アヤメ科ヒオウギの根茎:苦寒:肺肝経:

清熱瀉肺・利咽:消炎・利尿・袪痰:感冒による咳嗽で痰が多い時にもちいる・咽喉の腫脹疼痛:2~3g:射干麻黄湯。

犀角湯合白虎湯で、虚熱が盛んであれば、増液湯、石斛、知母、牡丹皮、地骨皮を合方する。

増液湯ぞうえきとう:温病条辨:増液潤燥:

玄参10 麦門冬8 生地黄8g:熱邪傷津(無水舟停):

便秘・発熱・口渇・腹満・舌紅で乾燥・舌苔黄燥・脈細無力:増水行舟。

玄参:涼血解毒・滋陰清熱。

石斛:ラン科石斛の茎:甘微寒:肺胃腎経:生津益胃・滋陰潤肺:胃陰を滋養する。

地骨皮ぢこっぴ:ナス科クコの根皮:甘淡寒:肺腎経:

清熱涼血・退虚熱:虚熱・労熱に用いる:血熱を冷ますが発散しない。

風寒湿邪が化熱した証には、悪風、口渇、煩悶、関節が灼熱し赤く腫れて痛む熱象がみられた場合も同上の治法をとる。

その場合、風寒湿邪が残っている場合は、

麻黄連翹赤小豆湯加味まおうれんぎょうしゃくしょうずとうを用いる。

麻黄連翹赤小豆湯:傷寒論:湿熱黄疸・表証(浮脉、発熱、悪寒):

麻黄3 連翹3 生姜3 大棗3 桑白皮3 杏仁4 赤小豆10 甘草1。

麻黄連翹赤小豆湯:麻黄で発汗し解表し、連翹で清熱し、赤小豆・桑白皮で袪湿し、杏仁で利気し、炙甘草と大棗で安中する。

麻黄連翹赤小豆湯に、口渇には石膏・滑石を加える

麻黄連翹赤小豆湯に、熱には知母・黄柏を加える

麻黄連翹赤小豆湯に、関節が赤く腫れ痛み灼熱には萆薢ヒカイ・防已・生米仁(薏苡仁)・金銀花藤・虎杖を加える

麻黄連翹赤小豆湯に、悪風があれば防風・羗活を加える。

滑石:含水ケイ酸マグネシウム・石灰・粘土:甘寒:利水滲湿・清熱・小便赤。滑石3~5g,8~10g。

桂枝芍薬知母湯:寒熱挟雑、関節が劇痛し、灼熱・腫大し、寒を畏れ、悪風し、発熱する場合に用い、温と涼を併用する。

桂枝芍薬知母湯に、麻黄と桂枝で風寒を去る

桂枝芍薬知母湯に、附子で温陽、開痹、止痛する

桂枝芍薬知母湯に、白朮・防風で除湿、袪風する

桂枝芍薬知母湯に、芍薬・知母で清熱養陰する

桂枝芍薬知母湯に、甘草・生姜で和胃、調中する。

桂枝芍薬知母湯に、無気力なら黄耆を加える。

桂枝芍薬知母湯に、陰虚内熱なら生地黄を加える。

桂枝芍薬知母湯に、胃納がよくなければ陳皮・神麹を加える

桂枝芍薬知母湯に、発熱があれば生石膏・黄柏を加える

桂枝芍薬知母湯に、血虚して肢節が腫れる時は

萆薢・沢瀉・防已・薏苡仁を加える。

湿熱痹:宣痹湯

湿熱痺:熱邪と湿熱が互結して関節が赤く腫れて痛む湿熱痹には、常に宣痹湯を用いて湿熱を清利し経脈を宣通する。

宣痹湯:温病条辨:清利湿熱・宣痺止痛:湿熱阻滞経絡・湿熱痹:

防已5 杏仁5 連翹3 山梔子3 滑石5 薏苡仁5 蚕砂3 半夏3 赤小豆皮3g。成薬無し。

宣痹湯は、痛みがはげしければ

海桐皮・姜黄(広鬱金)・蒼耳子オナモミ・萆薢(粉萆薢)・地竜の宣絡、袪風、利湿薬を加え、さらに三妙散で清熱、燥湿を強めてもよい。

三妙丸(散):「蒼朮 黄柏 牛膝」:成薬無し。

三妙丸(散)の代用処方:黄連解毒湯合平胃散。

二妙散(黄柏・蒼朮)

海桐皮かいとうひ・刺桐皮:マメ科海桐(デイコ)の樹皮:苦平:肝・腎経:海桐皮アルカロイド:袪風通絡・清熱化湿:関節リウマチに使用:

海桐皮酒(海桐皮、牛膝、羗活、川芎):

湯剤(海桐皮、続断、杜仲、当帰、五加皮)

湿熱生風の四肢抽搐に蒼耳子そうじし:キク科オナモミの成熟果実:

甘苦:』温:小毒:肺経:虚風散湿・通鼻竅つうびきょう:副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎。

萆薢ひかい:ヤマノイモ科粉萆薢の地下根茎:苦平:肝胃経:袪風湿:頻尿・小児の尿失禁・膏淋・湿熱による痺痛:萆薢分清飲(前立腺炎)。

萆薢分清飲:丹渓心法:前立腺炎:成薬無し。

萆薢3 益智仁2 烏薬3 石菖蒲2 茯苓3 生甘草1g。

益智仁やくちにん:ショウガ科益智の果実:辛温:脾腎経:

補脾温腎・縮尿:脾腎陽虚に用いる。

湿熱痺

湿熱痺:熱邪と湿熱が互結して関節が赤く腫れて痛む湿熱痹には、常に宣痹湯を用いて湿熱を清利し経脈を宣通する。

宣痹湯:温病条辨:清利湿熱・宣痺止痛:湿熱阻滞経絡・湿熱痹:

防已5 杏仁5 連翹3 山梔子3 滑石5 薏苡仁5 蚕砂3 半夏3 赤小豆皮3g。

宣痹湯:温病条辨:「湿あつまりて熱蒸し、経絡にこもり、寒戦し 熱盛ん、関節煩疼し、舌色は灰滞、面目萎黄なるは、病は湿痹と名づく、宣痹湯これを主る」。

宣痹湯の適応する湿熱邪は、湿熱が蘊蒸するので発熱し、

湿邪が陽気を鬱阻するため悪寒があり顔色も萎黄となる。

湿熱が気血を瘀滞し骨節経絡を阻滞するので関節の腫脹・疼痛・熱感がみられる。

熱軽ければ舌苔は舌のこけは灰色がかって厚く、

熱が重ければ舌苔は黄じ(黄色がかった厚ぼったい舌苔)となる。

蘊上うんじょう:上部にこもる。

宣痹湯の、主薬の防已は、苦辛寒で、清熱利湿・通絡止痛する。防已で経絡の湿を急走す。防已で清熱、利湿、通絡、止痛する。

宣痹湯の、薏苡仁・赤小豆皮は、経絡の湿熱を清利する。赤小豆皮にて血分の湿熱を清す。薏苡仁は淡滲して攣痹を主る。滑石と薏苡仁で、輔として痰湿、利湿する。蚕砂・半夏・赤小豆で除湿、化濁する。

宣痹湯の、杏仁は、上焦肺気を開いて水道を通調する。

杏仁にて肺気の先を開く。杏仁で宣肺、利気する。

宣痹湯の、滑石は、鬱熱を下泄し湿熱の排出を促進する。滑石は竅を利して熱中の湿を清す。滑石と薏苡仁で、輔として痰湿、利湿する。

宣痹湯の、半夏・蚕砂は解鬱化湿する。半夏は辛平して寒熱を主る。

蚕砂は濁道中の清気を化す。蚕砂・半夏・赤小豆で除湿、化濁する。

宣痹湯の、山梔子は三焦の鬱熱を除く。山梔子は粛肺し湿中の熱を瀉す。連翹、山梔子で鬱熱を清泄する。

宣痹湯の、連翹は軽清宣泄し透邪外達する。連翹にて気分の湿熱を清す。連翹、山梔子で鬱熱を清泄する。

宣痹湯は、全体で湿熱を清泄し、経絡を宣通して痹痛を解除する。

舌の灰色目黄をもって湿中生熱たるを知り、

寒戦し熱さかんなるをもってそれ経絡にあるを知り、

骨節疼痛をもって痹証たるを知る。

温病条辨:の上焦篇の宣痹湯は効能・主治が異なる。

2026/8/28

痹証の 虚痹の「気血虚痹」:黄耆桂枝五物湯加当帰・補中益気湯加附子・四物湯・独活寄生湯・独活寄生湯加附子・三痺湯・三痺湯(去続断・杜仲・秦艽・地黄・独活・牛膝加白朮・防已・烏頭)・当帰生姜羊肉湯

気血虚痹:気血を調補するため黄耆桂枝五物湯加当帰を用いる。営の滞りを和紙、衛のめぐりを助ける。

黄耆桂枝五物湯に当帰を加えることで、更に養血・活血の効果を高める。

「風を治すには先ず血を治せ。血がめぐれば風はおのずから滅す」

当帰:補血 行血 活血 潤腸 調経:婦人薬の補血の基本。

黄耆桂枝五物湯加当帰:黄耆と当帰の配合でよく益気、生血できる。

たとえば当帰補血湯:気血両虚を峻補・補気生血の基本:

黄耆15 当帰3:重度の貧血・再生不良性貧血・慢性腎炎・褥創(黄耆は肉芽再生に効果):成薬は無い。

気血虚痹で、気虚に偏するものは補中益気湯加附子を用い、更に桑枝・姜黄(広鬱金)・防風・威霊仙・秦艽・豨薟草キレンソウなどの二~三味を加えて疏通・開痹する。

補中益気湯:補気健脾・昇陽虚寒・甘温除熱:黄耆4、甘草1.5 人参4 当帰3 陳皮2 升麻0.5 乾姜0.5 柴胡1 白朮4 大棗2:

中気下陥・脱肛に腎虚薬の真武湯を合方・疲れると発熱に適用。

気血虚痹で、血虚に偏する者には、四物湯を基本とし、適宜加味する。

四物湯:「血虚の基本方剤」:当帰4 白芍4 川芎4 熟地黄4g。

気血虚痹で、「気血両虧し肝腎虚」には独活寄生湯を用いる。

独活寄生湯:千金方:袪風湿・散寒・補気血・益肝腎・活血止痛:

独活2 防風2 桑寄生4 秦艽3 杜仲3 熟地黄5 白芍4 当帰3 牛膝3 川芎2 茯苓3 党参3 細辛1 肉桂0.5(沖服) 炙甘草1。

独活寄生湯の、当帰・芍薬・川芎・地黄(四物湯)で、養血活血する。

独活寄生湯の、人参(党参)・茯苓・甘草で補気健脾する。

独活寄生湯の、桑寄生・杜仲・牛膝で肝腎を補い、筋骨を強め腰膝を強くする。

独活寄生湯の、独活・細辛・防風・秦艽で風湿を去り、痹痛を止め、標本を兼顧し扶正袪邪する。

独活寄生湯は、痹証が長く、慢性となって治らず、肝腎気血が不足し、関節が痛み腰痛脛痠する証に適する。

独活寄生湯は、寒に偏するものには附子を加える。

独活寄生湯は、熱に偏するものには秦艽を加え、さらに地黄は生地黄とし、桂枝は桑枝に代える。

独活寄生湯は、湿が重く便溏であれば、もたれる地黄を去り蒼朮・白朮を加える。

三痺湯:独活寄生湯の桑寄生の代わりに続断を用い、黄耆を加えたものは三痺湯というが、独活寄生湯と主治は同じである。

三痺湯さんぴとう:婦人良方:風寒湿邪が明らかな時:黄耆 続断ぞくだん 独活 秦艽 防風 細辛 当帰 白芍 川芎 熟地黄 杜仲 牛膝 人参 茯苓 甘草 肉桂:遊走性で痛みが強くおもだるい時。

独活寄生湯:独活2 防風2 桑寄生4 秦艽3 杜仲3 熟地黄5 白芍4 当帰3 牛膝3 川芎2 茯苓3 党参3 細辛1 肉桂0.5(沖服) 炙甘草1g。

三痺湯去続断・杜仲・秦艽・地黄・独活・牛膝加白朮・防已・烏頭としたものは、風寒湿邪の合病で、気血凝滞し、手足拘攣を治す。

益気養血の上に、袪風散寒逐湿するもので、正虚邪実の証に用いる。

気血虚痹には、また当帰生姜羊肉湯加桂枝・白芍(羊肉250g 当帰30g 生姜15g+桂枝・白芍)を用いて調養、治療する。

当帰生姜羊肉湯:金匱要略:「腹中痛み、脇痛裏急するは当帰生姜羊肉湯これを主る」「産後腹痛㽲痛するは当帰生姜羊肉湯これを主る。ならびに腹中寒疝、虚労不足を治す」産後などの血虚に寒邪が深入し疼痛。

当帰生姜羊肉湯:金匱要略:温経養血・散寒止痛:血虚兼寒で腹痛・冷えを伴うもの。

裏急:筋脈の攣縮を意味する。

「虚労して裏急」とは疲れて手足が痙攣すること。(マラソンランナーの足の痙攣など)、

当帰湯:千金要方:当帰生姜羊肉湯に柔肝止痛・養血の白芍を加え、

止痛止痙の効果をたかめた処方である。

当帰湯の別の処方:千金要方:当帰5 半夏5 芍薬3 厚朴3 桂枝3 人参3 乾姜1.5 黄耆1.5 蜀椒1.5 甘草1:心腹絞痛、諸虚冷気、満痛を治す。

当帰羊肉湯:済生方:当帰生姜羊肉湯に人参、黄耆を加え補気の効果を強めた処方である。

痹証の虚痹の「陽虚痹」:真武湯加味・附子湯・附子八物湯・補腎健脾丸・小金丹・

真武湯:回陽救逆・温陽利水:附子1 茯苓5 白朮3 白芍3 生姜3g。

真武湯加味は、附子・生姜は温経散寒、茯苓・白朮は健脾除湿。

白芍は養血止痛と附子の峻烈の性を緩和する。

気虚のものは真武湯の生姜を去って人参を加え附子湯とする。

               

附子湯:傷寒論:温腎助陽、袪寒化湿:

附子1 茯苓4 白朮5 白芍4 人参3g:陽虚の寒湿内侵による肢体関節痛・悪寒・四肢冷・舌苔白滑・脈沈「「脈沈は陽虚を表す」「沈脈は一般には裏証を指している」。

附子湯は、真武湯の「附子・白朮を倍量」とし「人参」を加え、生姜を去ったもので、「附子湯は附子・白朮・白芍で温補して寒湿を除く」目的がある。真武湯が生姜を用い人参を用いないのは「真武湯は生姜による水気の行散」が目的だからである。

附子湯:子宮虚寒の腹脹満・腹痛・悪寒・下腹の冷え・陰盛格陽の発熱を治す。金匱要略「妊娠六七月、発熱し、胎は脹り、腹痛悪寒するは少腹あおるがごとし子臓開くが故なり附子湯をもってその臓を温むべし。

「附子と人参」の組合せは、元陽を温補する。更に「桂心・乾姜・甘草」を加えて附子八物湯とする。

附子八物湯は、「陽虚で陰寒が盛ん」で、肢体が針で刺し、刀で切るように痛くて耐えられないのを治す。

八物附子湯:当帰・人参・桂枝・芍薬・茯苓・蒼朮 各3、白川附子 1

白川附子:カラトリカブトの根茎の上部と下部を去り、塩水に浸け、石灰をまぶして乾燥したものを白川附子という。

附子八物湯を服用し、痛みが緩和されてから、黄耆・当帰・淫羊藿・桑寄生・続断・巴戟天・狗脊クセキ・杜仲・牛膝・松節ショウセツなどを加えて気血を補益し、肝腎を温養し、筋骨を強健する。

痹痛のはげしい場合は、益腎蠲痺丸や小金丹を附子八物湯に配合してもよい。

附子八物湯合益腎蠲痺丸や小金丹。

小金丹:外科証治全生集:外科瘡瘍で、流注が陰証に属するものを治す。当帰・紅花・没薬・五霊脂・白膠香は活血袪瘀。地竜・木鱉子は化痰通絡。川草烏頭は袪風寒止痛。麝香は辛温で通絡・止痛作用がある。

流注りゅうちゅう:体の深部に膿が生じ、熱無く膿むもの。

主に結核性の寒冷膿瘍のことをいう。「乾酪」もいう。

小金丹:外科証治全生集:化痰袪湿・袪瘀通絡:白膠香 草烏頭 五霊脂 地竜 木鼈子モクベッシ 乳香 没薬 当帰 麝香 墨炭ボクタンの粉末を丸にし、1日2回1~2g。

白膠香:フタバガキ科沙羅双樹(サラノキ)の樹脂:辛微苦平:肺経:活血止痛・解毒生肌・涼血止血:跌打損傷・癰疽腫痛・衄血・外傷出血:妊婦は禁忌。

木鼈子もくべっし:ウリ科ナンバンキカラスウリの種子:甘温:

消積塊・化腫毒:解毒・消腫・鎮痛作用。

炎症性の腫脹に酢とすりつぶして湿布し外用に使う:毒性が強い。

小金丹の、草烏頭は袪風湿・温経散寒:野生品で毒性が非常に強い。

小金丹の、五霊脂・乳香・没薬は活血袪瘀・消腫定痛。

小金丹の、当帰は和血、地竜は通絡。

小金丹の、白膠香ビャクコウコウは調気血・消癰疽。

小金丹の、木鼈子は袪痰毒・消結腫:毒性が強い。

小金丹の、墨炭は、消腫化痰。

小金丹の、麝香は、走竄通絡ソウザンツウラク・散結開壅カイヨウ:

開竅剤。

壅ヨウ:ふさぐ。

小金丹は、温通・活血・消壅・散結によって、散寒通路・袪痰化瘀して「疸腫(流注:寒冷膿瘍)」を消退させる。原著では陽和湯と併用したり交替で使用している。虚弱者には慎重を要する。

陽和湯:外科全生集:外科証治全生集:熟地黄 白芥子はくがいし 鹿角膠ろっかくきょう 炮姜炭ほうきょうたん 麻黄 肉桂 甘草。

痹証の虚痹の「陰虚痹」:六味丸加当帰と白芍・さらに加える生薬を提示。

陰虚痹の治法は、「滋腎養肝」を主とする。

陰虚痹の方剤は、六味丸加当帰と白芍で、

六味丸は腎陰を滋養し、当帰と白芍を加えてさらに「肝血を養う」。

さらに「肝腎を補益」し「筋骨を強壮」するために以下の生薬を加える。

石斛・木瓜・阿膠・枸杞子・桑寄生・杜仲・続断・沙苑蒺蔾・薏苡仁・桑枝・絡石藤・淮牛膝ワイゴシツ・何首烏・玉竹ギョクチク。

陰虚陽亢、肝風内動に対して「平肝潜陽」をはかる生薬は、

石決明・牡蛎・桑葉・釣藤・菊花・二至丸(女貞子5 旱蓮草5g)。

筋脈肌肉に搏動感のある場合に「疏風」する生薬は、

蒺蔾子シツリシ・天麻テンマ。

関節疼痛に「活血通絡」する生薬は、

丹参・鶏血藤・絡石藤・木瓜・豨薟草キレンソウ・穿山竜(ヤマノイモ科ウチワドコロの担根体)・桑枝・伸筋草・海風藤の2~3味を加える。

痹証の治療禁忌は、下すこと、収斂すること、酸寒、苦寒であり、

痹証の推奨治法は、辛散、行気、燥湿、甘湿、淡滲という古人の説があるが、拘ってはいけない。

それは、風寒湿痺がまだ熱に化していないものについて述べたもので、既に熱に化したものについては、上記の方法に拘ってはいけない。

久しくなると寒は熱に化し、湿は燥に変わる。証が変われば治法も変わるわけである。